第132回 タワーマンションの希少価値が一段と高まる?

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2018年3月21日の日経新聞の一面トップに「タワーマンションは造りすぎ・再開発が招く住宅供給過剰」という見出しを見て、ただ事ではないと感じました。

一部の区では、容積率の緩和措置を止める方針であるという記述もありました。

 

タワーマンションは今後建てにくいことになるのでしょうか?土地のない東京では、狭い土地に高く積み上げるしかないのですが。

 

それができにくくなるということは、タワーマンションの希少価値はますます高くなるということでしょうか?

ますますと表現したのは、今でもタワーマンションは、何階であろうと一般マンションに比べて高く売れる傾向があるからです。

 

今日は、タワーマンションの価値について改めて整理してみることにしました。

 

●希少価値がなくなりつつあったタワマン

タワーマンションの数は、一般マンション(15階建て以下)より多くはありません。しかし、タワーマンションは1物件当たりの戸数が多いので、戸数カウントすると大きなシェアを占めるのです。

 

筆者のメモを見ると、京急蒲田、大泉学園、国分寺、立川、三鷹、横浜、中華街、二俣川、船橋、といった駅では駅のそばにせいぜい1棟か2棟のタワーがあるだけです。タワーマンションが一棟もない駅も多いのです。

 

一方、豊洲、月島、勝どき、東雲、武蔵小杉、川崎駅、みなとみらい駅などではタワーマンションの方が多いようです。右を見ても左を見ても、タワーだらけといって過言ではありません。

 

こうした光景を見ているせいか、タワーマンションも珍しくないなあという感想を抱いてしまうのですが、マクロに見ればタワーマンションは希少価値があるのです。言い換えると、「タワーは当たり前」となる地域は限定的なのです

 

ともあれ、タワーの多い湾岸エリアなどは、希少価値が低くなったのですから、今後はタワーマンション同士の競争になり、タワーというだけでは売れないといった見解を何年か前にブログで発表したこともありました。

 

そして、筆者の予想とおりになっていると感じて来ました。付加価値をたくさん用意し、差別化策を講じたタワーマンションが続々と誕生したからです。

 

また、タワーマンションの多くは駅前など交通利便の良さもあって高い人気を博して短期完売することが多かったのです。

完売までの期間が長いのは何らかの間違い(?)で価格が高過ぎたものだけです。つまり、多くのタワーマンションは魅力にあふれているのです。

●タワーマンションのメリット

タワーマンションには、どのような魅力があるのでしょうか?整理すると次のようになるでしょう。

①タワーマンションは、ほとんど例外なく免震構造や制振(制震)構造で建築されているので、大地震が来ても揺れが小さく、家具の転倒による怪我など二次災害に遭いにくい。

災害対策も充実しており、ライフラインが切れたときのために非常用設備(72時間自家発電装置・太陽光電源・飲料水生成装置・簡易トイレ・かまどなど)も充実している物件が多い。

③タワーマンションは、大抵が戸数300戸以上の大規模な物件なので、ホテル並みの豪華な共用施設がふんだんに用意され、またコンシェルジュを置いて住民サービスに当たるなど、付加価値の高い物件が多い

④既成市街地の駅前再開発の一環として誕生することも多いので、ペデストリアンデッキで駅まで繋いだものもあるなどアクセスが良いことに加えて買い物施設・飲食店も充実していることから、生活利便性が非常に高い。

⑤多くは20階以上の高層階に限ることですが、都会の喧騒から遠い住まいであることも長所。窓を開けると、はるか下を走る車が小さく見えますが、騒音は殆ど聞こえて来ない。

⑥タワーマンションの足元には広いオープンスペースがあって、都会とは思えない庭園が設けられるケースが多いもの。これは、出入りの際に住民に潤いを与えてくれる。また、中低層階の住戸では、その緑の景観をリビングから楽しむこともできるはずです。

眺望という無形の付加価値が付いてくる(住戸位置によって異なるものの、富士山や東京タワー、スカイツリー、レインボウブリッジといった魅力的な光景をリビング内からいつでも見ることができる)。これが最大のメリット・魅力となっている

 

「眺望は優越」

メリットの一番は、何と言っても前記⑦番の「眺望価値」です。

「夕暮れ時の刻々と変化する空のグラデーションは何度見ても美しい。夕陽が沈んだあとの短い時間(マジックアワー)が一番心を奪われる」と語るタワーマンション居住者もあります。

 

何度見ても感動するということなのでしょうが、反対に見慣れた光景に感動を覚えるのは最初の内だけだという冷めたコメントも聞きます。

 

そう言えば、「景色は5分見たら飽きる」という声を随分昔に誰かから聞いたことがありました。ともあれ、タワーマンションの魅力は何と言っても眺望価値にあるのでしょう。

 

筆者は内覧会の立会いで30階、40階の部屋に入ることはあっても、そんな高い階には住んだことがないので、天空に暮らすって、そんなに魅力のあることなのだろうかと思わないわけでもありません。しかし、これは世界的にも価値あるものとして認知されているのです。

 

摩天楼という言葉がありますが、天にも届く高層建築物を指し、英語のskyscraper(スカイクレーパー)の和訳だそうです。摩天楼と言われる超高層ビルの歴史はシカゴが先だそうですが、イメージ的にはニューヨークの街が浮かびます。

 

ともあれ、タワーマンションは普通の家では望めない羨望の景色を見ることができるのですから、居住者の優越感を満足させてくれるわけです。

羨望の景色とは、例えば東京湾のオーシャンビュー、隅田川や晴海運河などのリバーまたはキャナルビュー、東京都庁やスカイツリー、東京タワー、レインボウブリッジなど東京を象徴する建築物、花火、銀座の夜景、公園ビュー(代々木公園、小石川植物園、新宿御苑、青山霊園、六義園、神宮外苑、皇居、昭和記念公園、井之頭公園など)、富士山ビューなどが挙げられます。

 

大空(スカイ)ビュー、すなわち開放感も共通点です。

 

リビングから見える特別な光景は心を癒してくれることもあるでしょうし、秘かな我が家の自慢ともなりそうで、やはり高い価値を持つと言えましょう。

 

ある契約者はこう語っています。「手紙に書く住所の末尾4けたの数字3000番台は30階に住んでいると伝わりますもの。〇〇タワーと書き込まなくてもね」と。

 

優越感は、奥ゆかしい日本人のこと、密かな自慢に留める人も多いと感じますが、中には新居お披露目パーティを誇らかに催す人、花火大会の日に友人を招く人もあるようです。

大型タワーマンションには「パーティルーム」や「スカイビューラウンジ」「ゲストルーム」などが必ず用意されています。この施設を利用すれば、10人でも20人でも招待できます。

 

Viewの良さを享受できない下層階の価値

眺望の良さを誇るタワーマンションですが、そのメリットは高層階の住戸に限られます。

また、眺望が良いのは夜景だけというタワーマンションも多いように感じます。

階数によっては既存の低いビルの、綺麗とは言えない屋根が視界に入ることもあって、景色が良いとは言えない例もあります。

例外があるとすれば、隅田川や東京湾の運河など幅の広い河川や上述の大公園などに面する立地のマンションということになるでしょう。

 

超高層マンションがまだ珍しかった時代は、低層階であっても超高層マンション住んでいるというだけで誇らしく思えたものですが、今その感覚は持てないかもしれません。

真にViewの良い高層階住戸だけが、タワーマンション本来の価値を享受できることになりそうです。

 

ある高層階の居住者は、「何階ですかと聞かれたとき、2階とか3階とかは言えないよ。やっぱり20階とか30階と答えたいね。次の質問が、“それじゃあ景色が良いでしょうね”と来るからねえ」と20階以上を購入したことの喜びを語ったそうです。

 

しかし、超高層マンションは多くの場合、200戸、300戸、ときには500戸、1000戸と大型であることから、共用部分は広く豪華な造りになっています。 エスカレーターで上がった2階に設けられたコンシェルジュカウンターやラウンジはちょっとしたシティホテル並みの設え(しつらえ)です。

 

このような建物が完成したとき、購入者の殆んど全員が驚嘆し、感動して喜びに浸るのです。仮に3階くらいのレベルでも前が敷地内の公園の緑が目にやさしく、綺麗であったりすれば、それも悪くない景観です

 

どのような分野につけ、誇りとは周囲の賞賛(他人が羨ましいと感じること)があってこそです。これは自宅マンションでも同じで、ステイタスシンボルになり得るのは、「どうだ俺の家は」と胸を張れる建物だからではないでしょうか?

 

そのような顕著に差別化された超高層マンションなら、Viewで劣る低層階に住んでいても秘かな自慢の種になるのかもしれません

 

比較的少ない購入金額で価値あるマンションの住人になって、眺望は上階に設けられた共用施設を利用すればいい。このような合理的価値観も成り立ちそうです。

 

ものの考え方や価値観は百人百様です。合理的な価値観や情緒的な価値観があるでしょうし、虚栄心の強い人と他人の目を気にしない人でも価値観は変わるはずです。 ゆえに、超高層マンションの2階や3階でも買い手は少なからず現われるのです。

 

●総合判断でタワーマンションの価値は?

中低層階で眺望も特に良いわけでもないという条件のタワー物件を買ってしまったら、そのとき我が家の価値はどのようなことになるでしょうか? そのような心配の声も最近はときおり耳にすることがあります。

 

階数の如何を問わずタワーマンションの価値は、立地条件が同じもの同士での比較で言えば、トータルでは文句なく一般の中高層マンションよりタワーマンションが上回ると考えます。そのことは、リセールバリューの数値でも証明されています。その理由は先述のメリットで説明できましょう。

 

地震が起きてエレベータが止まったようなときの心配は、階段の上り下りだけです。購入する部屋が20階くらいの場合、確かに復旧までに数日を要する事態となったら大きな懸念材料ではあります。

しかし、電気の復旧はライフラインの中では最も早いと考えられるので(阪神大震災のとき、完全復旧までガスが83日を要したのに対し、電気は僅か7日だったという記録が残っています)、不便をかこつのは短時間のことでしょう。

(湾岸の一部地域ではライフラインの寸断の懸念も殆どないところがあります)

 

最も安心なのは構造です。揺れによる恐怖感が小さく、家具の転倒で大けがといった心配は、多くのタワーマンションで採用されている建物構造によって解消されるはずです。

 

タワーマンションということでの稀少価値が地域によっては薄らいだ今日ですが、これから購入を検討する人が比較項目に加え、かつ重視しておきたいのは「外観デザイン」です。どれも似たようにしか見えない平凡なデザインでなく、際立った個性が価値を左右するはずです。

デべロッパ―によっては、外国人建築家などにデザイン料を別途支払ってでも力を入れています。外国人だから良い、日本人だから駄目ということではありませんが、過去の事例を見ると、一味も二味も違うことは確かです。

 

デザインの良さを具体的に言葉で表わすことは困難ですが、「何十年にも亘り陳腐化しない、かつ上質なデザインであること」です。マンションはデザインが勝負。これは、当職の持論でもあります。

 

●タワーというだけで価値あるマンションになる地域もある

タワーマンションに限らないことですが、資産価値を重んじてマンションを購入するなら、「稀少価値」がキーワードになります。そこにしかないもの、今後も滅多に現れないものが価値あるマンションとなるのです。

 

冒頭のように、新築タワーの建設を阻む要素が出てくればタワーマンションは希少価値が高まります。

タワーマンションが好きでない人もいるのですが、多数の人がタワーを支持する以上、タワーマンションを買えば高い資産価値を維持することになるのは間違いありません。

誤解のないように補足しておかなければなりませんが、小規模マンションでも、中低層マンションでも価値ある物件はあるのです。タワーが全てのようにお取りいただかないよう願います。

 

●タワマンの値段は高過ぎることもある

価値あるタワーマンションですが、新築時の購入は要注意です。なぜなら、その価値以上の高値がつけられている場合があるからです。高過ぎるマンションをうっかり買えば、リセールバリューは期待したようにならないのです。

何年か先にリセールしようとして査定をしてもらったら、近隣の一般マンションより明らかに高いことを知ったが、分譲時の価格も高かったので、損はなかったものの、値上がりもなかったというようなことになるのです。

 

・・・・・・本日はここまでです。ご購読ありがとうございました。

 

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