★マンション購入で後悔したくない方へ★このブログは、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線でハウツ―をご紹介するものです★
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5日おき(5、10、15・・・)の更新です。
このブログでも繰り返しお伝えして来たように、値上がりが5年も続いて、新築マンションは2016年1月以降、販売スピードが悪化しています。 物件個々に見ていると、過熱感のある人気物件もたまには登場しますが、竣工時点で売れ残ってしまった物件も増えています。
今、注意しなければならないのは「物件がないから仕方ない」と、妥協してしまうことです。
パーフェクトな物件はなく、話題になった人気マンションですら欠点はあるもので、妥協はマンション選びにつきものとはいえ、どこをどう妥協するかは市場に物件が少ないだけに悩ましい問題です。
そんな現況では、建物が竣工し一部に入居者がいるマンションを検討することも多いはずです。「売れ残りマンション」について考えてみました。
●売れ残りマンションの仕分け
そもそも売れ残りマンションとは、どのような状態にあるものを指すのでしょうか?新築マンションの販売は、工事中に始めます。そして工事が完成するまでに販売を完了させます。例外的に建物が竣工してから販売を開始する例もありますが、ほとんどのケースは「竣工完売」、ここをマンション業者は目指します。
マンション業界の共通認識としては、建物竣工時点で未販売であれば、その住戸は「売れ残り」というレッテルを貼ることになるのです。
ご承知のように、マンション工事は超高層マンションのように何十か月もかかるものもありますが、中低層マンションでは1年以内に完成します。この期間を利用して竣工までに完売させたいと目論むのです。
それには、もちろん理由があります。次のようなものです。
建物が完成すれば工事会社(ゼネコン)から品物の引き渡しと交換に代金の支払いを求められます。契約時と中間時に支払い済みの分を除く残代金は、数億円、大規模マンションになると何10億円になります。
この支払資金は、マンションの販売代金を充当するのが普通です。
しかし、販売が完了していないと、購入者からの受け取る代金だけでは足りず、不足分は預金を取り崩すか銀行から借り入れることが必要になります。これはデベロッパー(売主)にとって好ましいことではありません。
ほかにも竣工完売を目指す理由がいくつかあります。
ひとつは、管理費の問題です。半分が売れ、半分の居住が始まったときでも、管理費は半分ではなく全戸分が必要だからです。
半分しか入居していないからエレベーターも半日しか動かさないとか、共用部分の照明も半分は消しておく、管理人はまだいませんなどという事態を発生させるわけには行きません。
そこで、未販売住戸分の管理費を売主は負担します。金額は僅かかもしれませんが、数が多かったり、長く続いたりすれば馬鹿にはなりません。
二つ目は、商品管理の問題です。建物が完成すれば、工事中と異なり外部に設けたモデルルームを見せるだけでは済まず、実際に買いたい住戸を案内する必要が出て来ます。
普通は、完成後の空き部屋に家具調度品を持ち込んでモデルルームを設定しますが、見学にやって来た人の大半は別の部屋を検討することになるわけですから、どうしても候補となる住戸を、しかも複数の住戸を案内することになります。
そうなると、何度も複数の人の出入りが繰り返されます。結果的に、品物が傷つき汚れが着くことになりかねません。品物が誰とも知らぬ大勢の人の手垢に塗(まみ)れてしまうわけです。
一般消費財もパッケージに収まっていない品物、例えば衣類などでは似たようなことがあるわけですが、明らかな汚れや傷がつけば売り物にはなりません。
マンションの場合は、傷や汚れ、色褪せなどは、軽微であればそのまま売り物ですが、その代わり価格を下げることも必要になります。
日当たりの良い位置に和室があれば、畳が灼けてしまいますから、その養生にも気を遣います。
竣工後何か月も経っていたら、傷も汚れもなかったとしても、新品でなく新古品のように感じるのが買い手の心理です。 つまり、価値が下落したと考えるのです。としたら、当然ディスカウントがあるものと期待もしますし、売主がそこに触れなくても要求をしたくなるはずです。
人が住まない家は傷みやすいと昔から言われて来ましたが、通風を切らさず、カーテンなどで遮光も行い、時間が経てば埃をはらう程度の掃除も必要になることでしょう。
また、案内のたびに、マンションの居住者でない者が何度もエレベーターに乗って上下移動や平行移動してマンション内をぞろぞろと歩くことになります。
売買契約書・重要事項説明書の中では、竣工後の販売活動について、購入者から予め了解を取っているものの、好ましいことではありません。
このような理由で、マンション販売は「竣工完売」が業界常識となっているのです。しかし、目標は目標に過ぎません。結果的に残してしまうことがあるのです。
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売れ残りの原因
立地条件が良くない、品質が劣るといったことが売れ残りの理由。これはごく一般的です。最寄り駅まで徒歩15分もかかる、高速道路に面している、隣地のビルによって眺望が遮られている、設備が不十分、内装のグレードが低い、間取りが悪い等々。
こうした劣等マンションは、価格がとても安いもの。それに魅かれて購入する人もあります。しかし、安くても買いたくない人も多い、だから売れ残るのです。
優良でも売れ残るケースがあります。それには、3つのタイプがあります。
1)優良だが売れ残ってしまったマンション
高価格が販売不振を招いてしまう物件があります。価格は高いですが、それなりの立地、それなりの商品内容となっています。それらの良さに魅かれて見学者も多いのですが、予算が届かないために諦める人も多いというわけです。最初は広告に低額住戸を掲載できるため、詳細の分からない見学者は「高額」と知らずに訪れます。そのうちに高額住戸しかなくなり、見学者は一気に減ります。優良でも価格が高ければ、需要層は薄くなります。そうして売れ残ってしまうことがあるのです。
2)全体は優良だが、条件の悪い一部住戸が売れ残っているマンション
場所も建物も申し分なく、かつ、価格も高くはないのに、発売当初は人気を博した物件が何故か売れ残っていることがあります。調べてみると、売れ残っている住戸の個別条件が悪いようです。例えば、そこだけが前面建物の影響を受けているとか、そこだけがバルコニーが斜めにカットされて小さい、斜め柱や梁が室内に圧迫感を与えている、そこだけが使いづらい間取りになっている等々。
全戸が億ションでも短期完売という事例も見られるように、東京のような大都会には金持ちも多いのですが、売れ残りを抱える高額マンションというのは、最高の立地で最高の建物でも、一部の住戸に条件の悪いものがあります。それらが残ってしまうのです。
3)優良だが戸数が多過ぎて時間がかかっている例も
価格は平均的でも、戸数が多過ぎて販売が長期化し、売れ残りを抱える事例もあります。首都圏では500戸、1000戸といったメガマンションが時々発売されます。こうしたマンションは、需要を吸収しきれずに売れ残ることがあります。
マンションを購入する人が最も優先する条件は立地です。東京都心に職場のある人が、札幌や福岡のマンションを居住目的に購入することはありえません。住み慣れた地域や鉄道の沿線、あるいは親の住まいに近い場所といった一定の範囲で求めます。
埼玉県に職場があれば、埼玉県下のマンションを探すでしょう。
従って、どんなに優良で価格もリーズナブルなマンションであったとしても、関東一円から、1カ所に買い手を集めることは困難なものです。言い換えると、ひとつのマンションが集客できる数には限度があるということです。無論、需要は時間の経過とともに新しく発生しますから、しばらくすると買い手は現れるので、いつかは完売しますが、その過程では売れ残りマンションのレッテルが貼られることになることがあるのです。
誰が見ても素晴らしい物件が、何故か竣工後1年も経つのに売れ残っているという例は少なくありません。広告予算も底を着き、ほとんどPRもしていないために残ったままというケースもあります。
売れ残る理由を今度は別の角度から整理してみます。
<立地条件が悪い>
典型的な例は、駅から遠い・環境が悪いなど「立地条件」が良くないケースです。駅に近くて便利、バスが頻繁に走っているから便利、どちらがいいか言うまでもありませんね。後者のケースは、例え5分に1本の割合でバスが発着しているような場所でも嫌う人が多いので、中々売れないものです。
環境については説明の必要がありませんね。高速道路沿い、新幹線の線路沿い、工場が隣接しているか工場地帯の面影が残っている、公園がない、小学校が途方もなく遠いといったような問題物件は少なくありません。売れ残り物件でよく見られる例です。
<郊外都市の物件>
人口の多い首都圏でも、郊外のマンションはしばしば売れ残りが発生します。人口が多いとわざわざ「但し書き」を付けたのも、郊外のマンションの需要は意外に少ないことを伝えたかったからです。毎年、毎年あらたにマンション需要は発生しますが、数には限度があります。結婚や子供の誕生、あるいは進学などを機にマンション購入を考える家庭は、人口(世帯数)に対し、毎年一定割合で発生して来ます。これが需要というものです。
社宅が会社の都合で取り壊しと決まったので、それを機に賃貸ではなく分譲を買おうと考える人もいたり、地方都市から東京に転勤が決まったので通勤圏でマンション購入を考える人も現れたりします。
需要ボリュームは、年間どのくらいあるかというと、新築マンションに限ると世帯数の高々0.5%くらいなのです。首都圏1000万世帯の合計では50,000のボリュームですが、そのうち、都心、準都心、郊外と区分して行くと、郊外ほど少なくなります。
郊外に住み郊外で働く人も大勢いることは確かですが、圧倒的に東京都心へ勤務する人が多いことに加え、郊外では比較的安価に一戸建てが手に入るので、マンション需要はさらに絞られてしまうのです。
需要が少なければ供給量によってはバランスしなくなり、売れ残りが発生しやすくなります。尚、地方都市にも当てはまるのがこの項目です。
<価格が高過ぎる>
郊外都市でマンション販売が苦戦し、しばしば売れ残るのは価格の問題にあります。「そこまで出すなら一戸建てが買えるよね」という購入者心理です。これが常に壁となって立ちはだかるのです。一戸建てと違い、駅の近くに建設されることが多いマンションですが、郊外都市の居住者、もしくは郊外に住みたい買い手は、その近くに職場があって車で通勤していたりもするので、駅前マンションでなくても構わないと考えるため、いくら駅前で便利と言っても高ければ敬遠するわけです。
地方では一戸建てとの競争が必須なので、価格政策を誤ると大量に売れ残ってしまうのです。
都心・準都心でも高過ぎるマンションは売れ残ってしまう場合が少なくありません。
ここで言う高過ぎるという基準は、「競合する物件に比べて割高になっている」というものです。競合には建売住宅も加わることがあります。
マンションは唯一無二の商品のため、価格の妥当性が分かりにくいのは確かです。しかし、買い手とは聡明なものです。
「駅3分のA物件は確かに便利でいいけれども、私の予算を当てはめると、駅から10分のB物件なら3LDKが買えるのに、Aは2LDKしか買えない」といった明確なことだけではなく、微妙な差でも順位づけする能力を持っているのです。
その結果、予算を増やしたり、面積を妥協したりしながら高い駅近マンションを選ぶ人も多いのですが、価格差が大きくなれば便利な駅近マンションでも売れ残る場合があるのです。
「〇〇の割には高い」が売れ残りをつくるわけで、〇〇の部分は、「品質やブランド価値が低い割には高い」や「線路沿いでうるさい割には高い」、第三者的に言えば「場所も品質もたいそう立派だが、あの価格に手が出せる人はこの辺にはいないなあ」などと評される物件は残ってしまうのです。
<無名業者の物件>
「場所も特に悪くはないし、モデルルームを見たが大手に引けを取らない内容だった。価格も高くないようだ」といった物件が売れ残っているのを見ると、原因はブランド価値がゼロという点にある場合が多いのです。「大手の物件は高いが安心料が含まれていると思っています」という感想を聞くことがありますが、無名業者の物件は、この反対評価なのです。
「実績・経験が少ない。大丈夫だろうか?」や「一度経営破綻しているよね。再建途上というが大丈夫か?」などは、品質への疑念とアフターケアに対する不安なのです。その疑念・不安は簡単に取り払うことができません。結果的に、そのような売主は多くの買い手候補を失い、竣工した時、売れ残りマンションを抱えるのです。
<戸数が多過ぎる>
ここに優良な物件があります。大手業者が売主で建物プランも良く、付加価値の多い大規模なものです。価格も適正と思われる。いや、むしろ安いかもしれない。その数500戸・1000戸―――こうした物件の中に、竣工後1年以上を経過しても在庫を抱えている例が今も何件か見られます。数が多過ぎたのです。多くは郊外都市に見られるのですが、23区でも都心を少し離れた区でときおり発生します。
立地条件が比較的良い物件でも、東京中の人が全てそこを望むわけではありません。仕事や学校や、その他の事情から人はそれぞれに生活圏を持っているわけですから、販売されるマンションがどんなに高い評判を得ていたとしても数には限りがあります。
従って、供給される数が多いと、一定期間に集められる数との差が売れ残りとなってしまうことがあるのです。
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時間はかかっても売れて行くものだが
ひとつは、先に触れたように「需要は時間とともに湧いてくる」ことにあります。一定期間に発生する需要は限られても、毎年、毎年あらたな需要が生まれるので、その人たちが買ってくれるということです。
価格を下げると売れるということもあります。
値下げ・値引きによって考え直す買い手もあるので、販売担当者から「価格が下がりました」や「値引きに応じます。いくらなら買ってもらえますか」などの声がかかれば、一旦見送った買い手が再検討してくれるのです。
安いと思ったがバス便なので止めたという人でも、さらに安くすると言われると考え直すということもあり、「より安い」魅力で売れて行くのです。
新規の集客においても、「価格の一段の魅力」を広告で明示することで販売が進むことがあるわけです。
その他、「営業部隊の強化」とか「新規供給の近隣物件が動員してくれたことによるおこぼれを得た」、「全体的な価格上昇、すなわち相場の上昇が売れ残り物件の相対的な安さを浮き彫りにした」、「当該エリアの新規供給が途絶えている」などで販売が進んで行くこともあります。
●売れ残りマンションを上手に買う
売れ残りでも気に入ったものがあれば、納得のいく価格まで値引きを交渉してみましょう。当然、安いほどいいわけですから、駆け引きしてでも高額値引きを勝ち取るように頑張りましょう。価格が安くなることで、幾分かの気になる点、妥協点が解消できるかもしれません。
尚、売れ残りマンションの場合、同時に別の買い手がつく確率は低いはずですから、時間をかけて交渉しましょう。ほどなく希望者が現われたとしても、良心的な業者は交渉の決着までは「商談中住戸」として待たせるはずですから、慌てる必要はありません。
●売れ残り物件を買うと?
売れ残りが発生する理由、それが解消されていく理由などがお分かりいただけたと思います。最後は、売れ残り物件を購入した場合、それを将来リセールするとき首尾よく売れるものかについて述べようと思います。
売れ残り物件でも、数が多過ぎて残ってしまっただけの優良な物件は苦労の度合いは少ないと考えて良いでしょう。
立地条件も悪くないし、建物品質等も悪くないが価格が高過ぎて売れ残ったという物件の場合で、値引き交渉に成功し、適正なレベルの価格で買えた場合も、欲張らない限りリセールの苦労は少ない(さほど安くはならない)と考えて良いでしょう。
リセールで苦労するのは、立地条件の良くない物件です。
立地条件が悪くても構わないから買いたいという人は、予算を極端に抑えたい人なので、その願望・条件に答えられるだけの価格にしなければ売れないからです。購入時も安かったはずですが、更に安くしなければ立地の良くない中古は売れないということになります。
中古になっても新築を超える、または新築並みの価格で取引される中古が存在しますが、それは都心の人気エリアや人気沿線の人気駅・街にあり、かつ新築の供給(開発)が極めて困難な立地条件を持つ物件です。それと対照的なのが立地条件の良くない売れ残りマンションなのです。
●買ってはいけない「安いだけ」のマンション
何もかも希望条件を満足するマンションは中々ないものです。あちら立てればこちらが立たずと言いましょうか、「ここは気に入ったがあそこは嫌だ」や「概ね気に入ったが、ここが気になる」といった感想を持つものです。理想のマンションなぞ、あり得ないはずで、「理想のマンションが買えた」と思っている人は、ある種の錯覚をしているに過ぎません。恋をした人間が「あばたも笑窪に見える」のと同じなのです。
冷静に考えたら、購入を決断する人は、気に入らない部分を妥協しているはずです。そのとき、大いに悩み迷うものです。売れ残りマンションということになれば、その迷いぶりは半端ではないでしょう。
間取りが気に入らない、それ以外は満足というなら、間取りを変えてもらうことで決断が可能かもしれませんが、売れ残りマンションの多くは既に完成しており、間取り変更は容易ではありません。
また、多くのマンション業者が「家具付きで分譲します」や、予算が不足気味の買い手向けには「購入資金プレゼント」といった販売促進策を打ち出します。これらは、いずれも実質的な値引きです。それが効果的であることを知っているからです。
結局、最終的には値引きの額によって決断することになるものです。つまり、「少し気に入らない所があったが、〇〇〇万円の値引きがあったので決心した」と自分を納得させているのです。
ただ、いくら安くても手を出してはいけない物件もあります。それは、元々が低価格を売りにして販売して来たような物件で、多くは交通便の悪いマンションです。これだけは、値引きがあると一段と安く感じることでしょう。しかし、それでも飛びつくべきではありません。「安もの買いの銭失い」となる可能性が高いからです。
●買って良い売れ残りマンションは?
筆者は、今は中古マンションか、新築の売れ残りから選択するのが賢明な策だと言い続けて来ました。今日は、新築の売れ残りの中で候補に挙げて良い物件と避けるべき物件の分別の仕方もお伝えできたと思うのですが、いかがでしょうか?
・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。
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