5月末に発覚した、関東宇部コンクリート工業(以下「関東宇部社」)の生コン材料の仕様不適合事案。
「第三者機関から、仕様と異なる産地の石灰石を骨材として混入したことによるコンクリートの品質への影響はない」との同社報告につき、悩めるシルバー羊さんからのご質問。
【もくじ】
◇悩めるシルバー羊さんからの質問
◇生コン骨材の産地偽装!?
◇なぜ関東宇部社は非認定・認証骨材を混入させていたのか?
◇書類審査だけでOKな理由
◇何が問題なのか?
悩めるシルバー羊さんからの質問
解約には手付放棄が必要だということだけは理解された、悩めるシルバー羊さん。すでに施工されたコンクリートの品質が、なぜ「問題がない」と言えるのか、分かりやすく説明してほしいという。
拝読し始めたのは最近ですが、新着記事が出ていないか数時間おきにチェックする毎日になってしまっています。そんな私を悩ませているのは、BBSを賑わせている関東宇部コンクリート工業(株)の産地偽装問題です。
契約したマンションに件のコンクリートが使用されていることが判明したとのお知らせが届きました。説明は国土交通省の報道発表のコピーのみでした。問い合わせ電話番号がありましたので、問い合わせてみましたが、素人なのでわかったことは解約には手付放棄が必要だということだけです。
使ってしまったコンクリートの品質に問題がないことがなぜわかるのでしょうか。書類審査だけでしょうか。偽装を行った会社の書類を信用できるのでしょうか。
終の棲家にするつもりで割高を承知の上購入を決めたマンションですので、リセールバリューとやらは気にしていないつもりだったのですが、割り切れない思いでおります。
わかりやすく説明していただけますでしょうか。
生コン骨材の産地偽装!?
悩めるシルバー羊さん以外の読者にも理解できるようまず、国交省が5月29日に公表した資料をおさらいしておこう。関東宇部コンクリート工業(株)が出荷したコンクリートにおけるJIS認証、国土交通大臣認定の仕様への不適合
- 関東宇部コンクリート工業(株)が建築工事向けに出荷したコンクリートについて、国土交通大臣認定(以下「大臣認定」という。)及びJIS認証(以下、併せて「認定・認証」という。)の仕様と異なる産地の石灰石が骨材として混入していたとの報告があり、国土交通省は、同社に対し、安全性の確認及び不適合の解消を行うよう指示しました。
- これを受け、同社は、第三者機関から、仕様と異なる産地の石灰石を骨材として混入したことによるコンクリートの品質への影響はないとの見解を得たとのことです。(以下略)
簡単に補足すると――
- 関東宇部社の工場から供給されている生コンの材料に、同社の4工場(豊洲、溝の口、横浜、浦安)が大臣認定・JIS認証を受けていない産地の骨材を混入させていた(建築基準法第37条「建築材料の品質」違反)。
- 問題の生コンを12年間(2006年~2018年4月)、東京、神奈川、千葉の2,560か所の工事現場に出荷していた。
建築業界に不慣れな方のために、今回のプレイヤーを模式図にしておいた(次図)。
なぜ関東宇部社は非認定・認証骨材を混入させていたのか?
非認定・認証骨材の混入は品質的には問題なさそうだが(理由は後述)、なぜ関東宇部社は非認定・認証骨材を混入させていたのか? そちらのほうが気になる。関東宇部社が5月29日にリリースした「弊社が出荷しましたコンクリートにおける国土交通大臣認定及び JIS認証の仕様への不適合について」によれば、伊佐品(山口県美祢市伊佐産の骨材)の供給量不足を補うために鳥形品(高知県仁淀川町鳥形山産)を混入し、その後常態化したという。
本混入の発端は、2006 年に需要に対して伊佐品の供給量が不足したため暫定的に鳥形品を購入供給したことにあり、その後伊佐品の増産に努めたものの、以降も鳥形品の混入供給が継続し、二種類の骨材の混入が常態化したものです。
なぜ、混入が常態化したのか?
第三者委員会の調査を期待したいところだが、同委員会を立ち上げるというような話は聞えてこない。
本事案は大手不動産の超大規模タワーマンションなどが絡んでいるからなのか、忖度メディアはあまり報じていない。
書類審査だけでOKな理由
レディーミクストコンクリート(いわゆる生コン)の品質は、国交大臣認定品かJIS認証品であることが求められる。今回問題となっているのは、生コンの材料を構成している石灰石骨材(粗骨材)の品質。
同骨材の品質は、物性値(絶乾密度、吸水率、粗粒率など)やアルカリシリカ反応性(アルカリ性に対して安定して性質が求められる)などで評価される。
同評価結果は、骨材出荷元である宇部マテリアルズ(株)が関東宇部社に提出したであろう試験成績書などによって確認することができる(書類が偽造されていないことが前提だが)。
また、生コンの品質のほうは、関東宇部社の品質管理記録などで確認することができる。
今回問題となった鳥形品は、関東宇部社の4工場で認定・認証されていなかっただけで、一般的には大臣認定品・JIS認証品として使用されているので、技術的には問題になるような事案ではない(手続き的には問題視すべき事案である。後述)。
なお、関東宇部社は6月26日、「産地の異なる粗骨材が混入したレディーミクストコンクリートのJIS適合性に関する評価報告書」を公表。第三者機関(一般財団法人建材試験センター)により、今回問題となった生コンの品質に問題なかったお墨付きを得ている。
何が問題なのか?
問題の本質は、認められていない骨材を使い続けたという、関東宇部社の品質管理に甘い企業体質にある。関東宇部社の親会社である宇部興産は今年2月、製造するポリエチレン製品の一部で定められた検査を実施せず、出荷時につける検査成績表に虚偽のデータを記入していたと発表。
問われるべきは、宇部興産グループ全体の品質管理に対するコンプラ精神の欠如だ。
生コンの品質管理に対しては、ゼネコンのチェック能力に期待したいところだが、現実的にはムリ。ゼネコンも生コン会社も、団塊の世代が第一線を退き、現場力が落ちている(衝撃データ!将来、建物の品質・安全確保が危うい)。
これからは、バカ高い新築マンションだけでなく、品質管理がしっかりしていた時代の中古マンションの選択もありかと。
中古マンション選びに関心を持たれた方は、次の記事もどうぞ!
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わかりやすく解説いただきありがとうございます。
同一産品は一般的に使用されているものだから、品質に問題はないはず、と理解しました。
さすがにデータ偽造まではないだろうと。ですが、別の会社がしでかしたデータ偽造マンションが建て替えをすることになったのは記憶に新しいところですので、疑心暗鬼になってしまいました。
実は、私は子供のころに有名な欠陥住宅に住んでおりました。竣工の年がとあるビッグイベントの開催年であったために人手も物も足りずに水で必要以上に薄めたコンクリートが使用されたことが原因でした。今回、オリンピックのための工事と工期が重なるような物件を購入するつもりはさらさらなかったのに、なぜか魔が差してしまいました。二十世紀少年である私が住んでいた欠陥住宅は、お上が売り主であったので建て替えをしてもらうことなく補修工事で済まされたのですが、震度5弱程度の地震に耐え数十年を経た今も居室部分は居住に耐えているようです。
というわけで、お薦めの“ちゃんと調査をしたうえで中古マンションを購入する”、というのが賢いマンションの購入方法だったのだとため息をついております。