ここ数か月割と本業(ずっと夜中シフトとか穴籠り系)と、管理組合の両方でばたばたしていました。ご指名の質問が今月初めに来ていましたので先にお返事から。
質問は…
差出人: 初心者
メッセージ本文:
はるぶーさんに質問です。
新築マンションを初めて購入したものですが、以前から”はるぶーのブログ”を拝見させて頂き、管理組合のガバナンスや共有部の2年アフター活用の重要性等を知ったため、管理組合に積極的に関わることを考えておりますが、その一方でかけられる時間も有限のため、優先度を考えた上でどこまで関わるか悩んでおります。
もしもマンション購入の初心者が初年度の管理組合の理事を目指すとしたら、どの点を優先的に取り組むべきか、はるぶーさんの考えを教えていただけますか?
1年でできることは限られる
1期目はその管理組合のありようを決めていけるということから1期目に立候補してでも管理組合役員になろうとする方は、その志の高さから盛沢山な達成目標をたてようとする傾向が強いです。私が代表をしている理事長の会RJC48でも、1期目新理事長さんの自己紹介での目標が理事会をきちんと立ちあげて、管理費支出の無駄も見直しながら、2年のアフターサービス補修もこなしながら、大規模修繕計画も見直して積立不足の問題も解決・・・とか。実はこれ1期に理事長になった私が”2年くらいやれば達成可能”とか思っていたことでもあります。実際には大体ここまで5年。
実際には『神様級』の能力の理事長が統率して理事会が団体戦で進まない限りこのうちの1つで1年かかります。ごく稀にこの普通5年コースの仕事を2年くらいで達成する超人はいますが、200人超えで加入している理事長の会でも数人いるかいないか。
ご希望のように仕事や、家族への義務も果たしながら理事会でも活躍しようとすると細く長くやるのか、この年次には絶対これだけは実現とテーマを絞るしかありません。
狙ってはいけないこと
優秀な人ほど陥りやすい失敗が、自分が理事会に関与できる期間は1年とか2年だからで、すぐに目に見える数字の改善でもして、『管理組合の収支を1年でV字回復して称賛を浴びながら去りましょう』みたいな無理目の数値達成目標を立てることです。たっぷりお金は貰うけどゴリゴリ時には人減らしもしながらコストカットするといったエグイ系のコンサルタント会社とかの食い物にされやすくなります。管理費支出の行先とかは別にどこからでも改革可能ですから最初の1年程度は様子見で全く構わないんですよね。
沢山の目標をたてて全部こなそうとすると、理事会の抱える仕事量が、初年度管理を軌道に乗せていきましょうという他にいろいろ理事会で議論されて過剰になり、理事会が長時間化するなどで多くの場合輪番などで選任されてきた理事がついてこられなくなります。 それでも構わない、他の理事は理事会に来て挙手だけできればよいとか独裁制?を敷くことも可能ですが、無理なく理事会役員もこなしたいという目標とは合いませんよね。
絶対達成しなければならないその期の目標を絞り込んで、皆で分担して前進できる仕組み作りをまず達成したほうが長い目でみると有利です。10年たったとこで10年間の年表をつくったら毎年この年はこれを達成しましたとか1-2行で書けるものがあるという路線の最初の1年目を目指しましょう。
スピードは押さえても確実にこなしてあることが大事です。陸上競技の100m走とマラソンは速さは2倍しか違いませんがマラソンのほうが400倍以上遠くまでいけます。1年で駆け抜けて去っていったパターンは長い目で見るとあんまりなにも残せてなかったとなりがちなんです(1期理事長やった私自身もこっち)。
瞬間に替えたものは元に戻ってしまうのも実は瞬間です。
建物関連で1期目に達成すべきこと
1-2期目の目標で真っ先に“期限”がくるのは共用部の2年アフターサービス補修です。ド派手な新聞に載れるような瑕疵案件でない限り理事会で扱う建物の不具合をただで直してもらえるアフターサービス補修の期限はほぼ全てが2年で期限切れします。典型的な頻発する例が外壁タイルの不具合。2年を超えた後はプロに竣工時からの故障だと証明して貰わないと素人では太刀打ち困難です。入居から2年を経過する前に売主にこことここと直してください!と報告して受け入れられれば3期目あたりで全部不具合は直るわけですから、修繕計画だの積立金の不足問題なんかは後回しで、「ここ壊れてますっ!」と指摘しまくるのが管理組合とってずっと有利です。ただで直るチャンスはアフターサービス補修しかないわけですから。
ただし、多くの場合に管理会社って売主さんの系列会社である場合が多いことが問題を難しくします。やってみるとわかりますが、売主系列の管理会社はあんまり理事会の味方にはなってくれません。誰か第三者のプロを雇って指摘をしっかりやってもらうしかない。これにはお金がかかりますが当初の予算案には非計上ですから、このための予算をどうしても2期目に向けて総会で承認をとるしかないわけです。
2期目の予算は1期終わりに1期理事会が上程します。どうしても1期目の間にこの予算計上だけは済ませるしかないわけです。そのために別途臨時総会する手はありますが:案外管理会社にただで見てもらえ!というなんでも無料で済ませようという提案をする理事や住民は多いもので、説得に半年かかったりします。
どうしても1期目というものは他には思いつかないくらいにこれは重要。アバウトにしていると10年くらい経ってから実はタイルが何割もはがれかけているとか苦労することになります。
これに比較すれば、なんかあちこち管理費関連の拠出が多すぎかもとかいうのはどの年次でも手掛けられますからとりあえずは後回しで構わないものです。 こと管理費に関しては1期目はEVの保守が最初3月は無料とか、植栽は立ち枯れ保証付きであんまり有償メンテがないとか特殊事情で黒字がでやすいので、一般会計の収支構造は見にくいせいもあって、まずは貼ってある人が余っていないか、逆に不足していないかをじっくり観察するほうが先だと思います。
重要:2年アフターの第三者調査(売主系列会社以外)の予算計上は1期末
理事会の仕組みをきちんと組みあげること
”初心者”さんのマンションの戸数など規模にもよりますが、例えば売主がどこかでそもそも1期目に希望しても理事になれるとは限りません。例えば三井の管理会社に初期設定されているケースでは、1期の役員選出は抽選によるのが普通で、例えば立候補者を採用するかどうかなどは2期目のテーマになります。理事会として、どのように理事を選ぶかとか、大きなマンションならどのように専門委員会を導入していくかなどの理事会の運営ルールは、明文化されていなかったばっかりに、あとから
① 立候補しても理事にはなれない・・・地位確認訴訟は無数に事例あり
② 威張ってる大規模修繕委員長と理事長が仲が悪い・・・理事会内の軋轢
などを将来生み出しやすいものです。
まだあまり変な癖が理事会につくまえに、理事会の仕組みはどうあるべきかということをじっくり理事会内で話し合ってそれを規約なり細則なりに書き込んでいく作業は、あんまり理事会の外の住民の方の関心は引きませんが、実はとても大事なことではないかと”今の私”は思っています。
私は1-2期に理事長だったのですが、振り返ってみると収支改善などはあちこち虫食い状に手掛けただけで基本はやりなおしになりました。
一方で2年でようやく明文化できた規則が 2期目の終わりに制定した”理事会役員の選出細則”と”専門委員会の設置細則(3委員会を常設設置)”だったのですが、今の10期にいたるまでこちらはきちんと効果を発揮しています。
理事会の内紛みたいなことは必ず避ける仕組みを構築すべきです。普通なら関与する人数の足し算になるパワーが引き算になってしまうと、時に管理組合が後ろ向きに進んでいるようなことにもなりかねません。
重要:理事会自身のガバナンスの整備を進めて、理事会が”逆向き”に進むことはないようにする。こうしたほうがよいというルールは全て成文化して残す。
よかったらこちらの動画もみてね
4月末の総会を収益不動産のサイト”楽待”を運営しているファーストロジックさんが取材して記事にしてくれました。”総会”にカメラを入れてという例は割と珍しいのかここ数年うちの通常総会は取材対象になっています。気楽にうけちゃう理事会もノリが軽いというか全議案可決できる自信がないと無理というか・・・
はるぶープレゼン下手だねとか楽しめるYouTube動画も貼ってくれていますのでよかったらご覧ください。私はちょっと早口で滑舌もよろしくないですが、うちのマンションの積立金を値上げするまでの経緯などをお話ししています。こちらからご覧ください。→ https://www.rakumachi.jp/news/column/222683
YouTubeの動画はこちら → https://youtu.be/-sOXWlY4PeU
この先の理事会の2年目以降はどうするの?
積立金の値上げまでやりたいけど何年かかるの?
あたりはまた気が向いたら別のブログの回で。
!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
はるぶーさん。
質問をさせて頂きました、初心者です。
お忙しいところありがとうございます。
おしゃる通り、アレもこれもと手を広げるのではなく、
2年アフターに絞って取り組んでいきたいと思います。
未販売が残る200戸近いマンションですが、
一期の理事会には参加出来る事になったので、
2年アフターのための予算確保に注力して行きたいと
思います。
問題は理事会でどのように予算の合意を取り付けるか
ですね、先々の保守を考えれば安い投資ですが、
お金の工面(予備費とかあるはずだが足りるのか?)と
必要性の合意の取り付けはとても悩ましいです。
私としては能力面と、金銭面でプロに任せたいですが
自分達でや、管理会社に任せて無料でという人は
出てくるので。
ご質問から3週間もブログ化が遅れてもうしわけありませんでした。
2年アフターの点検は数か月で実施可能ですから2期目に”臨時総会”を実施しても予算は引けます。
但し売主(大抵の管理会社の親会社ですから管理会社は利益相反です)に指摘して、その指摘を売り主が受け取った(直っていなくても指摘を受けた証拠があればよい)までを入居から2年以内に済ませないといけません。
これだけでも十分大変ですよ。
・・・1期目は3月くらいエレベータの保守費用の発生がないのが普通ですのでそこそこ黒字が出るのが普通ですから実際にはお金がなくて実施できないということはまず起こりません。
あと植栽の”立ち枯れの補償”も1年ですのでこちらの確認もお忘れなく。いえば簡単に植え替えてくれるのは最初の1年だけです。
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難しく考えるより理事全体で飲み会とか企画したほうが手っ取り早いですよ。
あとはもし気が向いたら・・・ ”RJC48” にお越しください。