このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
以下のデータは、過去1年間に取引された中古マンションの中から、平成年代初頭に建てられた、築20年前後の物件をピックアップしたものです。
いずれも東京郊外の郊外にあって、通勤便が良いとは言えない駅を選び、かつ取引価額が1000万円未満のファミリーマンションの成約事例です。
今日は、こんなに安いマンションが現実にあることの意味について書こうと思います。
●格安マンションの実態
個人情報保護の観点から、物件が特定しにくいように価格と面積は加工しています。各行の最後の数字は坪当たり単価です。分数はすべて徒歩によります。平成〇〇年とあるのは、建物の竣工時期を表しています。~国土交通省の「不動産取引価格情報」から検索しました~
1)東京都
JR「青梅」駅 9分 930万円 3LDK 60m² 平成6年=@51万円JR「青梅」駅 16分 500万円 2LDK 60m² 平成18年=@27万円
JR「青梅」駅 21分 220万円 3LDK 65m² 平成元年=@11万円
西武線「西武立川」駅 9分 850万円 3DK 50m² 平成5年=@56万円
西武線「西武立川 」駅25分 990万円 3LDK 65m² 平成4年=@50万円
2)神奈川県
小田急線「長後」駅 19分 950万円 3LDK 60m² 平成10年=@52万円JR「平塚」駅 12分 910万円 2LDK+S 55m² 平成12年=@55万円
3)埼玉県
西武線「狭山市」駅 9分 700万円 3DK 50m² 平成7年=@46万円西武線「狭山市」駅 14分 950万円 3LDK65m² 平成18年=@48万円
JR「深谷」駅 16分 260万円 3LDK 65m² 平成3年=@13万円
JR「深谷」駅 4分 630万円 3LDK 60m² 平成3年=@35万円
4)千葉県
京成本線「京成大久保」駅 7分 900万円 3DK 55m² 平成4年=@54万円京成本線「実籾」駅 16分 860万円 3LDK 65m² 平成7年=@44万円
京成本線「実籾 」駅23分 870万円 3LDK 85m² 平成元年=@34万円
新京成線「元山」駅 15分 730万円 3LDK 60m² 平成6年=@40万円
上記データから読み取れるのは、以下の5点です。
➀東京都でも、新宿駅から40キロ離れた青梅市や、20キロ圏の立川市でも奥に入った地域になると価格は坪単価で@50万円以下になってしまう。
②最寄駅から徒歩15分以上など、交通便が一段と悪くなると@30万円未満、中には@10万円強、ファミリーマンションが総額200万円と激安になってしまうことさえある。
③千葉県、埼玉県の郊外では、坪30万円台も珍しくない。@10万円台の取引事例もある。
④これらは、昭和40年代、50年代の古い物件ではなく、平成年代も少なくない。平成18年という新しい事例もある。
➄築年数に関わらず、1000万円を切らなければ、この立地では買い手が付かなかったということになりそうです。
昭和末期から平成年代の初頭にかけて、超郊外でマンションが多数開発・販売されました。バブル経済期のこと、地価が暴騰し、土地ころがしという言葉が闊歩していた時代、まじめにマンション開発をしたかった業者も用地の確保が困難になり、トコロテンのように外へ外へと押し出されて行ったのです。
そして通勤の限界点まで開発の波は押し寄せましたが、勤め人の多くは不本意ながらそれを買ったのです。
上記事例の竣工時期には、平成10年以降のものもあり、バブルとは直接の関係がなさそうなものも見られます。しかし、何故かマンション遠隔地で開発に挑んだデベロッパーがあったようです。それら、まだ新しいものさえも格安です。
●格安マンションから学ぶ教訓
これらのデータは、これからマンションを購入しようとしている買い手に次の二つの教訓を示してくれているようです。➀超郊外はマンション需要が少ない。一戸建てが安く手に入ることも背景にはあるようですが、価格の問題ではなく、そもそも買い手が殆どいないのです。
②駅に遠い物件や乗り換えが必要な奥地になると、ただでも要らないとなるらしく、買い手を探し当てることが極めて難しいのです。
データは割愛しますが、逆説的に補足しましょう。
マンションは、東京に限らず、首都圏の中核都市(さいたま市、千葉市、八王子市、立川市など)へ通勤が便利なダイレクト路線の、かつ駅近が資産価値を維持するための最低条件です。
価格の安さに惹かれて、郊外の、しかも駅から遠い物件を選んでしまうと、資産価値がどんどん下がって行くだけではなく、売るに売れないという困ったことになりかねません。
ここに挙げたような地域では買うつもりがないから自分には関係ないと受け止めてしまう読者もあるかもしれませんが、他のエリアでも原理原則は同じです。
本稿では、1,000万円以下のマンションを、説明をわかりやすくするために敢えて採用したわけですが、2000万円以下に拡大したときも、そこに未来予測の悲劇的な姿が浮かんで来るのです。
需要が減れば価格は下がるのです。今後、人口減が進みそうなエリアでないかどうか、その立地(街・駅)の将来を展望してみましょう。
超長期で見たら、東京圏も人口減少は避けられないと言われています。としたら、売りたい人が買いたい人より多くなってしまうので、売りたい物件同士の競争に勝てる物件を選ぶことが必須です。買おうとしている物件の地域内競争はどのくらいあるだろうか?その視点で検討しましょう。
マンションは売らなければ損も得もないのだから、関係ないと思っている人も、再考した方がよいでしょう。本当に永住ができるでしょうか?築50年、まだ住み続けることはできるかもしれませんが、最後はどうなるのでしょうか?
賃貸することは可能な場所でしょうか?借り手が付きにくい家を誰が欲しがるでしょう?しかし、空き家にして放置しておくわけにも行かないはずです。マンションは管理費も修繕積立金も支払わなくてはなりません。
このようなことにも思いをいたさなければならない時代が近づいています。
勉強になりました。特に「今後のマンション選びで気を付けたいこと」の内容で、今後今冬する時にちゃんと考えさせていただきます