このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
ときどき大規模マンションの分譲が話題になることがあります。この記事でいう「大規模」とは、500戸以上のマンションとご理解下さい。
スケールの大きなマンションは、付加価値が高く、魅力たっぷりの物件になっていることが多いものです。
敷地が広いので、子供が走り回れる広場や花壇や樹木を配したプライベートガーデンが設けられていたりします。駐車場も自走式の立体駐車場になっており、出し入れに時間がかからないのが利点ですし、デザイン的にも武骨な3段式機械式駐車場よりはスマートです。タワー型の場合は、地下に格納されているのが普通です。
そのほか、防災用備品が専用倉庫に納められてる、太陽光発電システムが搭載されている、ペット用のグルーミング施設があるなどと、至れり尽くせりの感もあります。隣接にスーパーがある例では、ショッピングカート用の駐輪場まで備えられています。
間取りも多数のバリエーションがあり(実は似たり寄ったり)、「よりどりみどり」の感もあります。さらに、マンション以外に保育園やカフェ、各種ショップが設けられたりする例も見かけます。
こう書いて来ると、話題になるだけの魅力があるマンションだなと思います。
関心を持った人の中から届く「マンション評価サービス」の依頼の際に添えられる質問から「将来性」に注目していることが窺えます。期待しているということかもしれません。
確かに、大規模開発は街のイメージをがらりと転換します。大規模な土地は、そもそも工場跡地である場合が殆どで、多くは用途地域が「準工業地域」になっているからです。
大規模マンションができて街並みが奇麗になって、人口も増え、ショップに人が集まって賑やかになるという姿をイメージするのでしょうか、将来性が高いと思い込んでしまうように感じます。
しかし、その期待は裏切られることが多い。今日はそんな話をしようと思います。
●資産価値の向上が期待できるパワーは?
街のイメージが大転換し、大きくバリューアップするためには、どんな条件が必要になるのでしょうか?実例を挙げてみましょう。広大な工場跡地を開発し、短期間に大きな発展を見せて来た代表格が「豊洲」と「武蔵小杉」です。
豊洲は2000年から2017年までの17年間で人口が6889人から37,034人に5.4倍になりました。2007年が16,530人だったので、直近の10年では2.2倍です。
武蔵小杉の単独データは見つかりませんでしたが、川崎市中原区全体を見ると、再開発が始まった約10年前から毎年1000人から5000人超の勢いで人口が増加、川崎7区の人口順位で2005年から1位を続け、2015年の国勢調査では10年と比べた人口増加率が5.8%増と、県内市区別で1位だったとあります。
平成17年からの10年間に中原区は21万人から25万人と4万人も増えています。
武蔵小杉も豊洲も短期間に大量のマンション開発が進み、並行して「グランツリー(武蔵小杉)」や「ららぽーと豊洲」をはじめとするショッピングモールが出店して魅力を増し、それが更なるマンション開発を促すという好循環をもたらしたのですが、その発展に連れて価格もうなぎ上りとなりました。
それでも人気は衰えず、新たな人口流入をもたらしたのです。二つの街の強みは東京都心に近いことです。武蔵小杉はJRなら東京駅も新宿駅も20分程度で到達しますし、豊洲は交通手段が地震や事故で利用できなくなったとしても帰宅難民にならないですむ絶対距離の近さ(東京駅から5km)にあるからです。
●少しは期待していいのでは?
武蔵小杉も豊洲も、万単位の人口増になったことに気付きます。マンション開発は、広大な土地に複数のデベロッパーが挑みました。名だたる不動産会社だけでなく、準大手・中堅の会社も多数参画したのです。1社単独で万という単位の開発は困難です。できるとしても長い時間がかかるはずです。
ひるがえって、最近話題の大型マンションは500戸か1000戸、高々1500戸という規模です。これでは、武蔵小杉や豊洲の街のような発展は望めません。周囲に空地が広がっているでしょうか?先々も伸びて行く可能性はあるでしょうか?その可能性が薄ければ、期待はできないと思った方が良いでしょう。
そうは言っても、工場中心だった街が住宅(マンション)と店舗、保育園などの街に変わるのだから期待できる余地もあるのではないか、そんな声も聞こえます。
美しい景観・街並み・環境になるわけですから、とても良いことです。しかし、街の価値(駅力)は高くなりますか?その点に注目してみましょう。
新開発のマンションが駅近くに建設されるとしても、生活インフラが十分とは言えない駅、すなわち駅力が高くないものです。駅力が低い場合は、ローカル駅と変わりなく、結局ここに住みたい人を万単位で増やすことは難しいのです。
最寄り駅が駅力が高いとされる場合でも、マンションの建設地から徒歩10分以上と距離があるとしたら、期待度は低いと言わざるを得ません。駅とマンションのアプローチ上に生活インフラが豊富に集積しない限り、マンションのバリューアップは期待できないのです。
豊洲や武蔵小杉のように短期間に人口が増える見通しがなければ、ショップの採算は合わないと経営者は判断することでしょう。積極的に出店を検討する場合は、広範囲に来店客を増やす戦略が必須になります。
遠くまで買い物に行くより、近くで済ませたいというニーズの方が大きいので、遠くからきてもらうには、大規模なショッピングモールのような魅力あふれる施設が必須です。隣接地にその進出予定はあるでしょうか?期待できるでしょうか?
魅力的なショップやグルメ店が多数あれば、買い物に来た人々の中には、この街に住みたいと思う人も現れます。そうして人気の街になれば、マンションのリセールバリューも上昇するはずです。
しかし、そうした開発が見込めない街は「駅力」も高まりません。1000戸程度のマンションができたくらいではショップ飲食店も僅かしか増えません。
鶏が先か卵が先かという問題ですが、マンションが万の単位で増える可能性がある地域か、あるいはショッピングモールなどの店舗群が大量にできない限り、将来価値に期待を寄せることはできないと思った方がよいのです。
もちろん、多少の不便を承知で、またはリセールバリューを期待しないで買うという選択があっても不思議ではありません。ただし、価格の安さが条件となるでしょう。つまり、その物件価値に見合う価格で分譲されるかどうか、その判断が重要になります。
●将来性に賭けるより既に成熟した街が無難
リセールで損をしたくなかったら、街の将来性に期待せず、成熟した街のマンションを選びましょう。理由は、⓵底堅い需要がある、②新規の開発は期待できないので、いきおい中古に需要が集まるからです。
成熟した街は、高くて手が出ないのでは?
そんな疑問にもお答えしておきましょう。成熟した街とは、都心の街のみを指しているわけではありません。23区以外でも、成熟している街(もちろん成熟は衰退の意味ではありません)は広い首都圏のこと、無数にあります。成熟している街の中でも人気のある街がいいですし、駅力の高い街がいいのです。
(駅力とは何かに疑問を持たれた方はこちら)
https://www.sumu-log.com/archives/11558/
●大規模マンションはリセールバリューが高いのでは
脱線したので元に戻します。1000戸規模のマンションは付加価値が高いので、リセールバリューも高いのではないか、このように期待する人もありますが、その点はどうでしょうか?そうですね。同年数の中古マンションを比較したとき、付加価値らしきものが何もない50戸のマンションと、24時間有人管理やコンシェルジュサービスが付き、共用部が広くデラックスであったりの1000戸のマンションとでは明らかに価格差ができるものです。
小規模マンションが4000万円というとき、大規模マンションは5000万円というくらい差ができるケースは中古取り引きの市場で多数見られます。
●問題は分譲価格にあり
しかし、購入価格はどうであったか、そこが問題です。4000万円でしか売れない中古の購入価格が4000万円で、大規模マンションの購入価格が5500万円ということがあります。つまり、付加価値が高く立派な物件でも高過ぎる価格で買えば(高値つかみすれば)期待は裏切られるのです。注意したい部分です。・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。
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