現在スムログは、ご相談キャンペーン中で、無数に質問が来ています。マンション管理ネタは私のカバー範囲なのでお答えしておきます。質問は、中古マンションの購入検討で、滞納の金額を示して問題とすべきかどうか意見を訊くもの。 マンションマニアさんあてに来ていたのですが、2人の間でのやりとりで私のほうに回ってきました。はるぶーからお答えします。 理事会の外から、理事会の優秀さ・ダメさ加減を数値判定する方法の一つということで、むしろ理事会の”中の人でない方向け”のつもりです。
質問は
差出人: めどろーあ
メッセージ本文:
マンションマニア様
いつも記事を拝見させていただいております。
めどろーあと申します。
中古マンション物件検討時における、管理費や修繕積立金の支払い状況のチェックポイントについてご質問します。
現在、●●市にある某大規模物件(築5年弱・500戸)の購入を検討しております。
検討に際し、不動産会社から重要事項にかかる調査報告書をいただきまして、検討物件の修繕費の積み立て状況や、管理費・修繕費の滞納の状況を確認したところです。
そうしたところ、物件全体で 約9万円の修繕費と 約30万円の管理費が
滞納となっていることがわかりました。
築浅物件なのにもう滞納があるのか!と驚いた反面、
多数の入居世帯のうち、一部に過ぎない滞納を気にすることもないのか?
とも思っています。
つきましては、マンションマニア様からみたマンション全体における修繕費・管理費の滞納状況からみた物件検討の判断基準があれば教えていただけますでしょうか。
よろしくお願いします。
【地名のみ伏字にしました。他は原文のままです:はるぶー】
手っ取り早く結論から
手っ取り早く結論からいうと、これを買うかどうかで重要な判断材料にするほどでもなく、他の面で気に入られたのなら購入に進まれで構わないと思います。理由は、滞納の金額からせいぜい長期に滞納している人は1-2戸に過ぎず、500戸を超えるマンションで”長期滞納がない”マンションは1/4程度に過ぎないからで、管理費会計の1%を大きく下回るレベル(今回でいえば0,2-0.4%)での1-2名の滞納者がいるかいないかは統計的なばらつきの範囲にすぎず、管理組合や管理会社の力量の指標とはならないからです。
むしろ、5年程度を経過しているので、そろそろ初回の積立金の値上げが必須ですが、長期修繕計画にあった、一時金によらない積立計画を考えないといけない年数に達しているのに、修繕積立金が管理費の3割しかないという安さが気になります。長期修繕計画とそれにあった積立金計画の存否を私なら気にするところで、専有面積1㎡あたり100円を切っている積立金のまま放置すると後でとても困りますので。実は組合の財政上はこっちが桁違いに大きな問題になります。
滞納のパターン・組合の処理限界
滞納者には、”払えない”人と”払わない”人がいます。前者の滞納は、そのうちその部屋がローン破綻したりして売りに出したときに、管理費は次のオーナーから回収するのが定番ではあります。一方で”払わない”人は早期に理事会と管理会社で0になるように撲滅しなければなりません。また、ずーっと払っていない長期滞納なのか、ついうっかり口座の残金のチェックを忘れていてたまたま1月引き落としに失敗した”うっかり”滞納なのかでも深刻さは異なります。500戸もの戸数になると・・・私のマンションとほぼ同じです・・・1月の滞納は毎月複数件発生しますが、早期に注意喚起するなどのケアで、そのほぼ全数が翌月には2月分引き落として回収されているので、私のマンションの長期滞納者は少ないときで0・多いときで1名程度です。1/500=0.2%程度ということになりますね。
5年目でもう滞納?とか驚いておられますが、実は1期目から多数の滞納者を出してしまったりということだって理事会・管理会社が放置していると起こります。約1000戸の都心のタワーが、”1期目に1000万円近い滞納”を引き起こしていました例もあります。名前を言えば知ってる人も多いところで、管理会社も漢字2文字の超有名財閥系ですが、管理組合理事会が放置しておくとこんなことも起こります。新築での入居から1回も管理費を払っていない外国人の方(そもそも管理費って何?なのかもしれない)が沢山いたんだとか。
滞納って回収するのは、管理会社はお手伝いはできますが、弁護士さんと違って理事長の法的立場を代理はできませんから、滞納訴訟で裁判所におでかけするのは通常理事長さん。管理組合理事会側が督促回収の主体になるので、長期滞納は割合も大事ですがある一定数を超えると理事会側の処理限界を超えて処理できなくなります。
管理費の一定割合のコミッションを払うと、全額回収(残りの金額)を保証するような滞納者でまくりのマンションをお世話する会社もありコミッションを訊いたら2%とかでした。500戸だと10戸超えたらもう個別に手弁当の理事が解消可能とは思えず、誰かに丸投げするしかないでしょうで、これは私の体感からも納得です。 おおむね未収金が1%を超えると黄色信号、2%で赤信号(私なら逃げる準備をする)だと思ってます。
思っているよりもはるかに速く、滞納率があがるとスラム化予備軍ということで価格崩壊は進みます。例えば、過去にスキーリゾートで無数に販売されて、あちこちで0円でも売れないとか値段のつかないマンションでも、皆滞納しているわけでもなく滞納率はせいぜい10%ほどに過ぎません。
滞納者の割合の全国統計
5年に一回国交省が全国のマンションのアンケート調査をしていてその結果がまとめられています。各種マンション統計のなかでは一番充実しているものです。現時点で最新なのは平成25年のもの。 長期滞納者の割合が全国的にはどうかはこちらから確認できます。→ http://www.mlit.go.jp/common/001081459.pdf
ここに、滞納期間別、戸数別などでのマンションの滞納戸数の割合の分布がでています。(このPDFファイルの最後あたり)
この国交省の調査、管理崩壊しているマンション理事会はそもそもアンケートに回答しないせいか、やけに優秀なマンションが多いなとか”アンケートに回答するマンションが分母になる”ことによる”生き残り”バイアスがかかっていて、私は全国平均での滞納者割合はもっと多いかなと思っています。
<6か月の滞納者の存在確率を示した表がこちら>
長期滞納者が”いる”確率は当たり前ですが古いマンション、大戸数のマンションほどに大きくなるます。 500戸以上だと、長期滞納者ゼロなのは1/4ほどしかないということが分かります。
全マンションでは1割未満にすぎない滞納住戸率2%以上(逆に小さいマンションでは1戸でもくらううと厳しい)が500戸以上のマンションでは何割もあることがわかるでしょう。これを理由に購入を避けるなら2%超えは避けろくらいで、相当に下位のマンションは避けることができます。特にメガマンションではまるで0が1/4、10%を超える滞納率が2割とかですから、長期滞納者割合は理事会の力量の数値的なバロメータになっているわけです。
<滞納者対応の本なんてものもあります>
いろいろ本を買って研究とかで、ここまで読み始めるとかなりビョーキレベルかなとか。私は両方もってます。
滞納率の通常総会議案書からの確認方法
検討者が訊いても、何人長期滞納していて・・・とか詳細な状況を逐一教えてくれるというのは、下手すると理事全員で確認していない組合すらあるわけで、まずありがちではありません。一方で、決算はごまかしようがありませんから、会計年度終わりを越年した滞納額は、会計から読み取れますからそれを見るのが適当です。最新の通常総会の議案書で、通常は最初の議案がその期の決算・活動報告になっています。ここからある程度読み取れます。 組合が最新の決算報告の開示閲覧も拒否するようなら、中古で買うのはおススメできませんから、その時点で見切ってよいでしょう。
管理組合の会計は、”発生主義””複式”で処理されます。通常トップにくる”一般会計”の収支報告書に管理費収入というのがありますが、この金額は”誰も滞納していない場合”に支払われるべき金額です。”発生主義”ですので、請求を立てた時点で”払ってもらうこと”は確定しているので、全額を”滞納があってもなくても”ここに計上するので、一般会計の収支報告書の管理費収入はいつでもあるべき数字で”いつでも予定通り”ということになります。
では、滞納があってお金が入ってきてないのはどこ見ると分かるかというと、同じ一般会計の貸借対照表です。通常左側になる”資産の部”(反対側が負債+剰余金の部で合計すると同じ数字になってる筈です)では”未収金”という項目に分類されて現れます。
・・・”貰うべき金額は確定しているのに受け取れていない”というのは掛け売りするわけでもない組合ではレアケースで”未収金”の殆どは通常は滞納ということになります。
あるべき回収される管理費は上でわかっていますから、後は”未収金”を収支報告書の”管理費収入”で割り算すれば、回収されないまま越年した管理費の割合がわかることになります。
0でないのはあんまり気にしなくてもいいです。1月程度のうっかり滞納はうちでも全戸の0.5%位の割合で期末にも発生しますが、厳密に決算を合わせるためには未収金に計上するしかないわけですので。ただしここに1000万とかの”未収金”が計上されていたら・・・
私なら購入は避けます。
総会で訊いてみるのにいいネタかも
未収金の割合が高いですが、これなんですか?ってのは、総会の1号議案向けの質問ネタとして、おススメ度の高いものです。 但し私も刺されるのはいやですから、はるぶーたらいうのが訊けとか言ってたとかは口にしないでくださいね。いくつかのメガタワーでヤバい割合になっているのは知っています。例え数十戸滞納でもスーパー理事長が現れれば1-2年で解消は可能ですが、マンション価格>>滞納額でなくなると、最悪部屋をたたき売っても回収できないので滞納は、心を鬼にして”溜めない”ことが管理組合理事会からみて大事です。
お便り返しはご指名を推奨
スムログブロガーへのお便り返しの希望、”指名”してないのは誰も返事しないまま放置されやすいです。 今回はご指名のブロガーが再指名になりました。① スムログブロガーへの質問はできれば1名を指名する
② 質問はできるだけ詳細を書く(管理ネタなら規約が標準管理規約と同じかどうかなどは、規約関連案件では殆どの場合で書いてないと回答不能)
③ そのまま記事にされては物件特定されて困るような案件ではほげほげ@gmail とか捨てメールアドレスからで構わないので連絡先もつけてくれると便利です。
過去には、お返事かいたら、特定されて酷い!とかもめてた例もあったので。
<この本は合わせて15000円位ですが、ここに出てなかったらはるぶーに訊けば・・・応えられるわけはない>
!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
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