このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
マンションの敷地が所有権でなく借地権という物件が存在します。マンション探しをしていると、借地権マンションに遭遇して不安を抱く人があるようで、ときどき「借地権のマンションってどうなんですか」と聞かれます。以下、借地権マンションについて解説します。
●借地権も2種類あり
借地権には大きく分けて普通借地権と定期借地権があることをご存知の方も多いと思いますが、簡単に整理しておきます。普通借地権は、地主から見ると一度貸すと二度と戻って来ないという法的な欠陥があります。「正当な事由がない限り借地契約の更新を拒絶できない」からです。正当な事由とは、事実上ほぼ存在しないのです。「自分で使いたい」は正当な事由に当たらないとされているからです。
一方、定期借地権は、更新ができない完全な期限付き借地契約として誕生した新法の制度です。普通借地権は「旧法・借地権」と呼んだりします。
定期借地権は、一般定期借地権と事業用定期借地権がありますが、マンションの場合は50年以上の契約期間とする一般定期借地権となります。
定期借地権は、期間満了と同時に土地上の建物を解体・撤去して、すなわち更地にして地主に返還することが条件となっています。ただし、地主が建物解体を義務付けない契約も可能です。
「更地にして返還」、ここが普通借地権との大きな違いです。「半永続契約」の普通借地権と「期限付き契約」の定期借地権という2つの借地権があるというわけです。
普通借地権は、30年契約が普通なので、中古マンションの場合は期限が10年後に迫っていたりします。しかし、案ずることはありません。契約は更新できるからです。
●借地権マンションは固定資産税に代わって地代が必要
土地が借地ということは、普通借地権も定期借地権も「地代」を地主に払うことが不可欠です。所有権の土地付きマンションではマンション所有者が固定資産税を払うわけですが、借地権付きマンションでは税金がない代わりに地代を払う必要があるのです。
固定資産税と地代、どちらが高いのでしょうか? 地代は地主が借地の対価として収受するものですが、一方では固定資産税を払う必要があるため、その納付額を上回る地代を要求するのが当然です。
借地契約書の標準的な例を見ると、地代の改定に関する条項が出て来ます。そこには、固定資産税が改訂されたときは、改定後の固定資産税に3を掛けた値にするとあります。
納税分を除いた地代を収益とする地主としては当然の要求なのでしょう。お寺さんが地主という場合には、もう少し低い例が多いと聞きます。
●借地権は安くないと割に合わない
そのため、借地権マンションは(土地)所有権マンションより価格が安くなるのが普通です。地代と固定資産税の差は3倍、安くても2倍ですから、その差だけは安くなっていないと割に合いません。地代は、70㎡のマンションで毎月7000円ほどが都心を除く物件の平均です。1年では8万4千円です。仮に土地が所有権だったら固定資産税を払うわけですから、差額を考えれば正味負担は6万円以下です。仮に30年住むとしたら、少なくとも購入価格は180万円安くないといけません。
実際には、もっと安いのです。東京の一般マンションの70㎡が築20年で5,000万円のエリアでは、普通借地権マンションは8掛けの4000万円という例もあるからです。高くても9掛けの4500万円という価格になっています。
最近の印象は、8掛けより9掛けに近いのですが、それでも所有権(土地)マンションよりお得とは言えないでしょうか?
●モノの値段は心理的価値から決まる
上の例で、180万円安ければバランスするはずの借地権マンションが実際は500万円以上も安く取引されているのは何故でしょうか?厳密な損得計算によって価格を算定するわけではありません。
何でもそうですが、物の値段はブランド価値、商品イメージ、デザイン、色彩などで変わって来ます。借地権マンションは「他人の土地上にあるマンション」なので、何となく価値が低く見られます。売却するときも「土地がない」ことが買い手の購買心理に影響を与えるので、「売れないのでは?」などと心配させるのです。「借地かあ!」と、見下げたりします。更新はできるのか?地代が不当に値上げされたりしないか?などの不安心理も湧いて敬遠する人が少なくありません。
結果的に、安くしないと買い手が決まらないことになります。
以上のようなことを踏まえて購入を検討して行くと、中にはお買い得と思われる物件に遭遇することがあります。借地権マンションは積極的に検討して良いマンションです。
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定期借地権マンションは、全く違った考え方でないと選択を誤ることがあるので注意しなければなりませんが、「定期借地権マンション」は次回(4月5日)のブログで詳しく解説します。
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