このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
どうやってマンションを探したらいいの?どんなマンションを選んだらいい?この2大テーマに取り組んでインターネットをサーフィンしたり、参考書を買ったりして勉強中いう段階にある人は今もたくさんいらっしゃることと思います。
一方、何かのきっかけがあってマンション探しを始めた人が、急いで買わなければならない事情も理由もないので、マンション見学を勉強の一貫にしているだけで中々決めない人もあります。
筆者は、こうした研究途上ににある人たちに必ず助言する言葉がいくつかあります。今日は、そのことについて書こうと思います。
●パーフェクトはない
見学マンションが与える影響なのでしょうか、検討者はその過程で気に入らないこと・落胆したことを知るとともに、魅力・美点も感じ取ります。天井が高い、バルコニーが広くて良かった、キッチンの最新設備に軽い感動を覚えた、玄関収納にびっくり、洗面所がお洒落で格好良かった、お風呂も広くて気持ちよさそう、リビングルームがドラマに出て来るワンシーンみたいで素晴らしかった――といった印象が心に刻まれるのです。
初めて新築マンションのモデルルームに行ったとき、そこにディスポーザーや食器洗浄乾燥機がなくても、住んでいる賃貸マンションと比べて「素敵!」を感じてうっとりとした人も、2軒目、3軒目と見ていくうちに、感動が薄れていきます。やがて、こちらのマンションはウオークインクローゼットもシューズインクロークもないんだわ、なんだかお風呂が安っぽい感じがするなどと、批判の声が漏れてくるようになります。
だんだんプロのような発言も増えます。ディスポーザーのスイッチを入れると自動的に水が流れるのでなく、手動で水を流し手動で止めるのか、少しグレードが低い。天井高が2550だと平均よりは高いようだ。柱がアウトフレームなので、部屋が広く見えていいね。室内廊下がタイル張りなのは高級感があるね。バルコニー面に2寝室+リビングルームが並ぶ間取り。これがやっぱり理想だなあ。角部屋は窓が多いので開放的でいい。共用廊下は絨毯張りのホテルタイプがいいなあ。
エレベーターは2基ですか?少し足りなくないですか?管理費は平米でいくらですか?小型マンションにしては管理費が高くありませんね。巡回管理ですか?共用施設が豊富ですが、使わない施設はどうなるのですか?コンパクトタイプの住戸が少なくないようですが、賃貸に回るのでしょうか?
このように着眼点も変化し、理想的なマンション像がそれぞれの頭の中に完成して行きます。
担当者に「100点満点のマンションはないです」と言われても、「それはそうかもしれないが、できるだけ理想に近づけたいので・・・」とひとつ見送り、ふたつ見送りしてしまう人も多いようです。
●見過ぎは禁物
見れば見るほど目移りして決められなくなるという弊害が生まれます。残念ながらパーフェクトのマンションはないので、どれを見てもどこか気に入らない所が出て来ます。あちら立てればこちら立たず、帯に短しタスキに長しというやつです。だから、そろそろ決めようと思っていても決めかねてしまうのです。
物を選ぶコツは最終的には二つに絞って、二者択一にすることなのですが、たくさん見ている間に、前に見た物件の記憶が薄らいで来ますし、記憶の鮮明な最近見た物件の中ではどうかと言えば、たまたま気に入ったものがひとつもないので、結局二つに絞るまでに至らないのです
人間には欲があるので、予算を棚に上げて、もっといい物をと考えるようになってしまいます。高望み、ないものねだりというやつです。
自分の予算をはるかにオーバーする物件であればハナから諦めて除外してしまうものですが、届きそうなものだと、記憶から消えず、それよりもっと良いものをと考え、自覚無しに高望みして行きます。
モデルルームが予算を超えているタイプを展示してあることにも原因がありそうです。
5,000万円の予算の人が5,000万円のタイプを見たいと思って現地を訪れても、モデルルームは7,000万円のタイプしかないというケースでは、次のモデルルームへ行って5,000万円のタイプを見ても満足できなくなってしまいます。
予算に合ったタイプは図面で見るだけですから、目に焼きついたモデルルームの印象に負けてしまうのです。
こうして、見れば見るほど目移りし、目が肥えて高望みし、ありもしない理想を追いかけてしまいます。
「ひとつやふたつ見送ってもマンションはここだけじゃないのだから」などと考えているうちに、言い換えれば、「ひと月やふた月遅れても問題はない」などとタカをくくっていると、半年や1年はあっという間です。
その間に金利が上がったり、消費税がアップしたりで慌てる事態になることもあります。金利動向や税金は、日々の報道に気を付けていれば分かることかもしれませんが、気付かないものもあります。
それが何かというと、市場に供給される物件(商品)の数です。
新築マンションの供給は、ひと頃の半分になっているのです。需要も半分になったなら問題はないですが、そこまで需要は減っていません。ここは、見逃せない問題なのです。
ところが、ポータルサイトでは、半分に減っているようには見えません。中々これといったマンションがないなあと気付くのはだいぶ後になってからです。
その結果、理想にほど遠いものを選択してしまうことになるかもしれません。それじゃ今まで1年以上も研究し、探して来たのは一体なんだったのか、ということになってしまうかもしれません。
そもそもマイホームは何のためにあるのでしょうか。老後の安心のためとか、ステイタスシンボルとして持ちたいためとか、いろいろあるでしょうが、本来は快適な暮らしをしたいからだと思うのです。
大抵の人は、今住んでいる賃貸マンションより広くて、新しくて、設備が良くて、毎日が気分よく過ごせる住まいを求めて手に入れようと考えるものではないでしょうか。
少しでも良いものをと考える気持ちは十分過ぎるほど理解できますが、それも度を越せばいつまでも快適な住まいを手に入れられないということになってしまうと思います。過ぎたるは及ばざるが如しです。青い鳥症候群にかかってしまった人も少なくありません。
もう少し先へ行けばもっと値下がりし、金利も低下するかもしれないと思っても、それを誰も保証はしてくれません。価格も金利も底だったというのは後になってから分かることですが、それが分かった時では遅いのです。
無理をせず何とか購入できて、かつ、今の住まいより快適な暮らしができそうだと感じられるなら、あまり深読みせず、また目を肥やし過ぎずに適当なところで手を打ってしまう方が幸せになれるのだと思います。
●他人比較をしたがる人へ
他のみなさんは何件くらい見て決めているのですか?どのくらいの勉強の時間を取るものですか? 私の年収では、どのくらいの買い物をするのがいいですか?どのくらいのローンを使うのが適当なのでしょうか――このような質問をよく受けます。人間の習性として「他人比」というのがあるのだと何かの本で読んだことがあります著者は、故・堺屋太一さんだったと記憶していますが、それはともかく、どのあたりで決断していいのかが分からないため「他人比」が必須なのでしょう。
何件見たらいい―ということはありませんし、他人がいくらの買い物をしようと、いくらのローンを使おうと自分には関係ないことです。しかしながら、こんなに借金してよいのか、このマンションを買ったあとにもっと良いマンションが出てきたらどうしようなどと思い悩むものです。
そこで、大勢の人が買っているマンションだ、大勢の人が多額の借金をしている、大勢の人が頭金なしで買っているという事実を知ろうとするのです。
営業マンや悪質FPの誘導に乗って多額のローンを組むことは避けなければなりませんが、自分が払っていけると思えるならいいのですし、自分が気に入った・ここに住みたいと思ったら他人の行動と違ってもいいではありませんか――こう語る人もあります。
しかし、その判断が間違っている場合もあるという点に注意しなければなりません。
●最後は専門家に聞く
判断の誤りはウソの情報を信じてしまうことから生じる場合があります。例えば、大勢の人が買っているという情報が正しければ、「これだけの人が買っているなら多分大丈夫」、「今は頭金を入れずに買うのが普通ですから」、「3か所も見たら、もう十分ですよ」、「抽選にならないようにします。後から来られた人には他の部屋に誘導しますから大丈夫」、「次期は価格が上がる予定ですから、今回のお申し込みがお得です」、「建物本体にモデルルームを設けて棟外モデルの建設費を浮かしたこと、広告費を掛けずに販売していることなどから、相場の10%安になっております」、「この鉄道は延伸される予定なので、発展するエリアです」――このような情報には欺瞞や虚言、詭弁にまみれたものがあります。
しかし、それを見抜くのは難しいものもあります。目が曇っている、あばたもえくぼ状態にある、そんなときです。冷徹な第三者に意見を求めることが必須です。
●一気に走ろう
「善は急げ」という言葉があります。マンションを買って幸せに暮らす。これは善行です。楽しい暮らしの実現です。そのために「思いたったが吉日」と覚悟を決めて一気に突っ走ったほうが良いことも多いのです。昔の人は好いことを教えてくれるものです。
筆者の仕事は、ご相談者の個人的な価値観や家庭内の事情、仕事の関係などを斟酌せず、資産価値の視点からマンションの評価をすることです。マンションは必ず、売却するときが来るから、そのとき多くのキャッシュを残したかったら「将来の換金価値」を意識することが大事であると、これまでに様々な提唱をして来ました。
しかし、ブログでは具体的に個々の物件の資産価値について将来を予測して言及することができませんし、書物等でも著したものはありません。週刊誌等で目にするのは、「購入時から高くなったマンションの上位100の紹介」などといったものです。
将来価格(リセールバリュー)を事前に予測するのは簡単ではないのです。そこで、駅から遠い物件はリセールに不利だとか、小型マンションより大規模マンションの方が有利らしい、ノンブランドマンションよりブランドマンションがいい、郊外より都心がいいといった基本的なことを抑えつつ選択することになります。
マンション選びの条件をまとめたものは、拙著「マンション大全」に詳しいですが、このブログでも「マンションの資産価値」のカテゴリーに複数の記事が掲載されています。
こうした情報と知識に基づき、慎重に選択するとしても、何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。考え過ぎに陥らず、理想を求め過ぎず、時間をかけ過ぎず、買いたい・欲しいの気持ちが熱いうちに「購入」というゴールに一気に走った方が良い――筆者はいつもそう思います。
・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。
新・マンション購入を考える
是非ご購読ください。670本以上の記事があります。ちなみに、5月5日の第680回は「古いマンションほど値下がり率が低くなるわけ」です。
★三井健太の新刊 「選手村マンション・晴海フラッグは買いか?」
2019年5月13日発売
全国の一般書店・アマゾンにて販売中
https://www.amazon.co.jp/dp/4023317926/
<プロローグより>
賛否両論が飛び交う注目の物件。「果たして買いか否か」その判断のために公平な指針となる書を目指したい。これが執筆動機です。
筆者の日常業務は、買い手(購入を検討している人)からのマンションの評価レポートを作成することですが、人気のマンションでも不安要素があるものなので、大規模になると複数の検討者からレポート依頼が届きます。晴海フラッグも戸数が多いこと、販売が数年に渡ることからみて、大量にご相談・評価依頼が来るだろうことを予想しています。交通便で疑問が残る物件だけに、判断しかねる人も多いだろう。そうなると大変だな、いったいどれだけ来るだるうか。
この本でレポートの前段部分を代用できたら助かるなどと思っています。
前後しますが、特定の物件だけで1冊の本にするというのは、冒険かもしれない。商品になるだろうか?そんな疑問も持ちましたが、走りながら考えようと決心して動きだしました。朝日新聞出版の調査協力の申し出があったことも決心の後押しになりました。
業界関係者は無論、購入を検討する買い手の迷い・悩みの解消に資するなら筆者の日頃のスタンス、すなわち購入者向けアドバイザーの立場としても本望であるし、売り手にとっても第三者の客観的な意見はマイナスにはなるまい。このように、筆者自身の心の整理をして臨むことにしたのです。
分譲マンションだけで4000戸余の極めて大きな分譲プロジェクトゆえに、また、選手村マンションという話題性もあって、全国的な規模で関心を持つ人が多い。ゆえに出版の意味は十分にあるとも思いました。
前著でも「晴海フラッグ」のことを少し書きましたが、情報が十分でない中で述べることができたのは、僅か12頁でした。
ページタイトルは、「選手村マンションの激安価格に思う」でしたが、内容は少々疑念に満ちたものでした。価格は格安とは思わないとか、BRTの運行に期待していいのかといったことでした。
前著を書き上げてから数か月の時間が経過し、販売活動(いわゆるプレセールス)も始まっています。この本が店頭に並ぶ頃には、検討者の手元には細部の情報が届くことでしょうから、この書では物件の細部について論評することは最小限に抑え、販売現場ではおそらく聞けない情報を主体に紹介しながら、読者の判断に有益な書にしたいと執筆しました。
<主な内容>
*晴海フラッグというマンションの位置づけを整理する
*バス便マンションの将来価値を考証する
*晴海フラッグに魅力を感じる階層を予想
*カギを握るBRT
*晴海フラッグの将来価格を予想する?