このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
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高いものほど値下がり率が低いことをご存じない人も多いと思います。誤解してもらってはいけないので先にお断りしておきますが、①高いものとはグロスの価格ではなく単価の方、②相場から大きく逸脱した高値(どう見ても高過ぎる)のものは例外であるという2点です。
今日は、坪単価の安いマンションを狙うのは得策ではないという話をしたいと思います。
●坪単価が表す立地条件の良し悪し
100㎡(30坪)の専有面積のある物件が6000万円とすると、坪単価は200万円ですが、同じ6000万円で専有面積が66㎡(20坪)しかない物件の坪単価は300万円になりますね。極端な例を引きましたが、@300万円のマンションは利便性の高い都心部などにあります。他方、@200万円のマンションは郊外や駅から距離のある不便な地域にあります。
便利だから高い、不便だから安いというわけです。
立地条件がマンションの価値を左右する大きな要素ですが、そればかりではありません。同じ最寄り駅で同じような環境にあっても、築年数で差が付きます。例えば、新築で60㎡のマンションが6000万円していても、中古では6000万円のマンションの専有面積は90㎡もあるという例は普通のことです。
同じ広さなら、新築は6000万円もするが、中古は4000万円以下で買うことができる場合もあるというわけです。
立地条件と築年数で大きな差ができるというわけですが、それ以外にどのような要素があるのでしょうか? 中古マンションになったとき、その価格を左右するものはどのようなものになるかをおさらいしておきましょう。
●中古マンションの値動きを左右するのは?
(1)物件の魅力の差
値上がりするマンションの条件の第一は、周辺新築物件にない特長や利点があって、中古であることのマイナスを補って余りある物件だからです。例えば、小型物件の多いエリアにおいて、所有マンションが大規模で様々な付加価値を有する物件であれば、その差別感や存在感が新築・中古を問わず特別なものと認定され、高い価格を付けるのです。
駅直結マンションであるとか、駅に近い立地は便利な反面、雑多な環境である場合が多いですが、例外的に緑の多い住宅街の入口にあるとか、或いは隣が大型スーパーである、大規模公園に接している、遮るものがない一面オーシャンビュー、といった格別な立地条件の物件も同様です。
これらは、物件固有の条件が中古マンションの将来価値(リセールバリュー:RV)を決めるものであることを指しています。その条件を整理すると次のようになります。
将来価値を決定する要素は、 ①立地条件(利便性と環境。地域イメージ・マクロ的な人気度)、 ②スケール(存在感)、 ③外観・玄関・空間デザイン、 ④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、 ➄ブランド、 ⑥管理体制です。 |
ひとつひとつの詳細は割愛しますが、この中で一番比重が高いのは①の立地条件です。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の悪さを完全に補うことはできません。
ここに「築年数」という項目が出て来ないのは何故でしょうか?言うまでもないですが、同じ築年数同士を比較する場合の項目だからです。
買い手の立場に立ったとき、新築同士を比較して、仮に10年後に売却するとしたら、Aマンションがいいか、Bマンションがいいかという選択で悩むことになるわけですから、築年数はともに同じなので、比較項目から除外されるのは当然というわけです。
しかし、新築の6000万円か中古の6000万円かという比較で悩まれる場合もあるので、「築年数」という項目は重要です。このテーマは複雑になるので、次回以降で取り上げることにします。
(2)需給バランス
中古マンションの価格を左右する項目としては、需給バランスも外せません。当該エリアで新築の供給が数年間殆んど見られないとか、あっても比較対象にならない物件ばかりという場合は、期待以上の価格になることがあるからです。
例えば、80㎡以上の広さを求めても、新築に70㎡台までの売り物しかないという場合や、駅近の物件を探したが、徒歩15分以上の売り物しかないというとき、80㎡以上の物件、あるいは徒歩5分の物件は有利に働きます。
これらを一言で表すと、「希少価値」ということになります。中古マンションの価格は需給関係で決まります。新築の供給が少なければ、中古が取引の中心になり、上質な中古物件は新築並みの価格になるものです。
(3)価格変動のタイミング
他力本願みたいな要素ですが、これも軽視はできません。中古マンションは、平均的には20年もすると新築相場の半値くらいになるものですが、タイミングによっては需給バランスが変わり、高値になったり安値に戻ったりするのです。
新築価格が急騰している時期に売り出すと、割安な中古に需要が向かうので、中古価格は底上げされます。
固有の条件は「平凡」の域を出ていない物件であっても、期待できるのはこのケースです。過去にも、その恩恵に浴することができた物件は多いのです。従って、売り出しのタイミングが重要と言えます。
ただ、市場全体で価格が上がってしまうと我が家が値上がりして喜んでも、買い替え先の物件も値上がりしている可能性が高いことを忘れてはいけません。しかし、タイミングと買い替え先の選定によっては、恩恵に預かれる可能性が残ります。例えば都心のマンションが値上がりしていても、横浜はまだ値上がり前夜ということもあるからです。つまり、不動産は広域で一斉に値上がりすることはないのです。
繰り返しますが、中古マンションの価格は新築価格に連動します。新築が上昇中のときは、割安な中古に需要が向かいます。すると、やがて中古も値が上がるのです。築20年の中古マンションは新築の半値程度の位置になるとはいえども、新築相場が2倍になっていれば、購入価格から見れば値下がりしない理屈になります。
(4)購入価格
最も大事な要素は「購入価格」です。価値に見合わない高値で購入(高値掴み)すれば、どれほど立地が良くても、また建物が立派でも将来価格は期待外れになります。今(2019年)は2013年から続く高値の時期に当たっているので、例外なく高いマンションを買ってしまうことになりそうです。
反対に底値のような時期に購入した物件なら、次の上がり相場のときに売れば、平凡な物件でも値上がり益を得ることができるのです。
(今は購入時期ではない、しばらく様子を見た方がいいと言っているのではありません。過去に何度も書いてきましたが、買い時はいつも今です)
●単価の高いマンションがなぜいいのか?
はじめにお断りしたように、相場から大きく逸脱した高値のものを除くと、購入価格から大きな値下がりなしで売却することができるマンションの多くは購入時の坪単価が高いものです。新築にせよ中古にせよ、販売に成功した高値のマンションは市場がその価値を認めたことを意味します。新築マンションで、例えば駅直結の大規模タワーマンションなどは、人気を博し短時間で完売に至るものですが、それは買い手を短時間に多数集めることができたことでもあるのです。
このような人気物件の価格は安くありません。むしろ、単純な比較をすると同駅または近隣の物件より2割も3割も高いのが普通です。それを市場は価値がある、安いと認めたのです。
このような高いマンションは、中古になっても人気は落ちにくいはずです。先に挙げた6大条件をすべて満たしているからですが、坪単価の高いマンションは、なぜ価格が下落しにくいのかを別の角度から説明しましょう。
●マンションの価格を土地分と建物分とに分けて考えてみる
値上がりは市況のおかげいうことにもなるのですが、その市況が良くない時期にも値下がりしにくいマンションはどんなマンションでしょうか?需給バランスのところで説明したように希少価値が高い物件だからです。一戸建てのように、マンション価格を土地分と建物分とに分けて考えてみましょう。
建物には経年劣化がつきものです。使用する部材や施工の方法などによって寿命は異なりますが、短命な建物でも最低50年は持ち堪えるようにマンションは設計されています。長いものは100年です。しかし、コンクリートの構造部と違って、エレベーターや給排水管などの設備の寿命はもっと短いのが現実です。
従って、修繕や更新(交換)の必要が何十年かに一度やって来ます。それを適切に実行して行けばマンションの寿命はおおむね80年、100年と長く、まあ人間の寿命に近いと言えます。
ともあれ、建物は時の経過によって劣化し、価値は下がるのです。これに対し、土地は腐りません。簡単な例を取れば、駅から3分というマンションの土地部分の価値は変わらないのです。無論、その駅・街に住みたい人がいない状況になれば別です。購入時点から売却予定時点までに大きな衰退がない限り、土地分の評価は不変です。言い換えれば、10年や15年程度なら土地分の価値は不変なのです。
土地分はマンションの価格に対し郊外や駅から遠いエリアでは30%、40%と低く、都心やブランド地では50%、60%と高いシェアを占めるのです。反対に、建物分は郊外で70%、60%、都心で50%、40%と高いわけです。
時の経過で建物が同じように減価しても、土地分の高い場所では値下がり率が低いことになるというわけです。これは、新築を買った場合も中古を買った場合も同じです
●マンションの「価格維持率」という概念
新築も中古も、値下がりしにくいのは土地分の割合が高い物件であると言いましたが、土地分が100%ではないのですから、建物分の減価によって、どんなマンションも値下がりするはずです。先の6大要素の違いによって格差はできるものの、市況変化(値上がり相場)がない前提を置いたとき、マンションはいつか値下がりしてしまうものではないでしょうか?
こんなご質問をいただく時がありますが、購入してから10年や20年でのレンジで考えた場合、値下がりどころか値上がりもあるのです。
購入価格からの変動率の意味で「価格維持率」という表現をすると、あるマンションは80%、あるマンションは110%といった差があります。新築で買った場合と築20年マンションを買った場合で異なりますし、年数に関わらず価格維持率が100%を超える例もあります。市況が良かったから110%になったなどというラッキー―ではなく、物件価値が高く、100%超となった物件は少なからず存在します。
繰り返しますが、その要因は土地分が高い、つまり都心や駅近マンションだからです。つまり、そこに住みたい人が多い駅・街の利便性で勝る立地条件にあるからです。
人気のある街は、たくさんの人を惹きつける魅力にあふれています。マンション需要が多いのです。供給が少ないので価格は上昇傾向、もしくは強含みになるため、結果的に「価格維持率」は100%に近づいたり超えたりするのです。
人気エリアでは、新築マンションの供給がないだけでなく、中古も売り出す人が少なかったりするため、その街に住みたい人を惹きつけて、中古で買ったものが更に10年経ても全く値下がりなしで売れてしまったなどという現象が起こります。
価格維持率は立地条件で決まると言って過言ではありません。立地条件の良いマンションは築年数が重なっても土地の魅力(土地分の価値の上昇)によって高い価格維持率を示すのです。
土地の価値が時間の経過とともに上がる場合もあります。街の発展のことではなく、敷地内の公園や敷地境界に植えられた樹木が成長して緑濃い土地として高い市場評価となる物件があるのです。
まるで森の中に建つマンションという風情を見せるマンションがありますし、芝生や中低木とともに美しい景観を見せるマンションも多数存在します。
誤解ないように付け加えておきますが、どんなに美しいマンションであっても駅から遠い物件は、利便性のマイナスを補いきれず、多くの需要を集めることには力不足なのです。
●中古マンションの価格維持率
新築マンションが品不足状態にある今、中古マンションへ向かった人も多いようです。その中古マンションの価格はどうなっていくのでしょうか?古いマンションほど安くなる傾向は確かにありますが、「価格維持率」という概念ではどういうことになるでしょうか?築10年のマンションと築20年のマンションでは、統計的には、前者より後者が安いのです。ということは、築10年マンションを買った人の10年後は等しく値下がりしてしまうことを意味します。
今日は「坪単価の高いマンションほどいい」という話を展開しています。中古マンションでも、同じ年数ながら高いものと安いものとがあります。その差は、繰り返すと先の6大要素によって生まれるのですが、中でも立地条件の差が大きな影響を与えます。
近隣マンションに比べて、築年数で差がないにもかかわらず坪単価が高い中古は、価値ある中古として市場が認めた物件です。少なくとも過去1年の売買履歴はそのことを証明しています。その大部分が立地、すなわち土地分が高いことを意味します。駅から5分と10分の差であったり、環境の優劣によって価値ある立地と認められているのです。その土地分が将来も値下がりしないとするなら、そのマンションの建物分が下ってもトータルの値下がり率は低いことになります。
つまり、中古マンションを購入するときも同じで、同年数の中古との比較で高いマンションは値下がりしにくい(価格維持率が高い)ことを覚えておきたい点です。
売買履歴は、仲介業者に依頼すれば教えてくれますし、その価値に見合う高さで、かつ近隣マンションより高いことが分かったら、将来の価格(リセールバリュー)は期待できることになるのです。あえて言います。「坪単価の高いマンションを狙え」と。
新築マンションの購入時は言うまでも売買履歴がありません。その意味では中古マンションより判断が難しいかもしれません。
・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。
新・マンション購入を考える
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(写真は丸善書店の丸の内本店にて撮影したものです)
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