このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
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「築年数」という項目は重要です。このテーマは複雑になるので、別の検討課題として次回以降で取り上げることにします・・・このようにお約束しましたので、早速今日お届けすることにしました。●新築同士の比較で
マンション購入予算は人それぞれで、下は3000万円未満から上は3億円以上などと幅があります。しかし、その予算はしばしば変動します。5000万円の予算の人も、親の援助を頼むことで6000万円になったり、ファイナンシャルプランナーに相談して家計そのものを見直した結果、6000万円に増やせることもあります。
気に入ったマンションを見つけたが、予算オーバーという場合も、頭金を増やすとか、銀行を変えることで背伸びせずに買えてしまう人もあります。
予算を決めてから見学行動を始めるわけでもなく、見学しながら決めるのが一般的です。
見学をしながら担当営業マンに尋ねるなどして知識を蓄え、徐々に予算の立て方を学びます。その結果、「新築なら6000万円まではいいが、中古なら5500万円だ」とか「新築でも中古でも諸費用込みで6000万円まで」などと決めます。
さて、日本人は新築を望む傾向が強く、先ずは新築に向かいます。新築のモデルルームを訪問するところからスタートを切るのです。初めての人は、モデルルームの設備やインテリアに驚き、ときに感動し、欲しいという気持ちが高まって来たところに、「資金計算をいたしましょう」の声が担当営業マンからかかります。
そして、計算結果に驚き「俺って大したものだ」と思うようです。なぜなら、こんなに多額の買い物ができるんだと知るからです。一方で、かたわらの妻は、そんな大きな借金を背負って心配だわとブレーキを掛けたりします。
ともあれ、1%を大幅に割り込む低金利のおかげで若い世帯も多額な買い物ができる時代になっています。金利はいつ上がってもおかしくないと、金利上昇に警戒せよと言い続けていた専門家も、予想が外れてバツが悪いと思ったか、最近は金利上昇リスクについて語る専門家もどこかに消えてしまいました。
最近の調査によれば、「固定金利」より、より低いレートの「変動金利」を選ぶ人が3分の2もあるそうです。そのせいか、高い新築マンションでも買えそうだと希望を抱きながらマイホームの夢を追い続け、何件かのモデルルームを見ていくうちに物件の選り好みもはっきりしてきます。
そこで気付くのです。自分たちの予算では欲しいものが意外にないことを。
猫も杓子も3LDKがいい、広さは70㎡以上などと、判で押したように希望を口にします。ところが、その条件で探すと立地条件の妥協が伴うことを知るのです。
立地条件については、妻の希望で職住近接の条件を変えずに探しますが、住みたい街とは異なる街にターゲットマンションを見つけて悩むことになったりします。住んだことがない、知らない街だからと、インターネットの口コミなどを読み、治安やショップや、レストランその他の「街情報」を取得しようとしたりもします。
こうした活動を経て新築マンションの候補が決まれば、あとは、どちらがいいかだけになるものです。予算もほぼ同じなので、立地条件と眺望、間取り、建物品質などで迷いながら答えを見つけることになります。
どうしても決められない人だけが、筆者の「マンション評価サービス」や「将来価格の予測サービス」を依頼してくるのかもしれません。
筆者にご相談くださる方は、年間に約600人(月間50人)に過ぎません。1年間にマンションを買う人の数は新築・中古合わせて8万人なので、1%もないのです。筆者以外に相談に乗ってくれる人がいるにしても、90%以上の買い手は自らの力で決断して行かれるのかもしれません。
それはそれで結構なことですが、選んだ物件は本当にそれでよかったのか、他人事(ひとごと)ながら大いに気になってしまいます。たまに、契約したあとで「念のために」と、上述のサービスをお申込み下さる方もありますが、その数は僅かです。
話が脱線しました。新築マンション同士で悩むケースに一言添えておきます。
ある街の75㎡の6000万円と別の街の65㎡の6000万円で悩むとしたら、大半は65㎡の方を選択した方が良いのです。例外もありますが、理由は前回も述べたので、ここでは結論のみ短く述べて終わりとします。
●新築と中古の比較で
さて、ここからは「新築 VS 中古」という場合について述べましょう。新築の場合は、決断を下すまでの時間に割合ゆとりがあります。仮に買い逃しても未発売分があるので、2か月くらい、ときには半年の猶予期間をもらえます。
一方、中古マンションは一品限りなので、もたもたしているとすぐ売り切れてしまいます。同じマンション内で売り物が出たら教えてと仲介業者に伝えておいても、半年も連絡がなく、あっても広さが希望条件から大きく乖離していたりします。
そこで、別のマンションを探します。平行して新築マンションも捨てていません。分割販売方式のマンションなら、次回販売分の住戸の数も、その価格も未定となっているものの、買い逃した(見送った)住戸の実績から、次回分も大きな差はないだろうと推測できるからです。
諸費用込みの予算がほぼ同じとした場合、物件価格は新築より中古は安く見ておくのが普通です。仲介手数料とリフォーム代がかかるからです。
さて、中古マンションで予算に納まる物件を見つけたとします。その際に悩むポイントは次のようなものです。
①検討中の新築より立地条件は良さそうだが、広さは新築より15㎡も広い80㎡。間取りが魅力的だ。角部屋なので、プライバシー性が高いだけでなく、通風・採光に優れる。ただ、築年数が気になる。18年と古い。当然ながら坪単価は新築より安いのだが・・・
②周囲の新築より単価が高い中古。築6年とまだ新しいからでもあるが、駅1分の利便性が魅力で、価格の高さの要因はここにあるのかもしれない。だが、高い分、間取りが少々不満だ。65㎡もない。
上記のようなお悩みに対して筆者の助言を紹介しましょう。
①について・・・
古いから心配という理由が「長く住めるか?」ということでしたら、問題はありません。マンションの寿命が80年として、新築の場合は余命80年ですが、築18年のマンションの余命は62年ということになり、十分に長く住むことができるからです。無論、80年というのはコンクリート躯体のことで、設備はもっと短いのです。コンクリートの箱だけでは生活できませんから、寿命の短い設備は更新しなければなりません。
また、コンクリート自体も、点検をして雨漏り対策などを施す必要があります。
これらをメンテナンスという言葉で表すとして、怠れば80年は持たないのは言うまでもありません。
となると、18年中古の購入に当たっては、18年間のメンテナンスの履歴と今後の計画をチェックすることが大事です。無論、メンテナンスを適切に行うには資金が先決問題です。浮上します。積み立て金がどうなっているかのチェックも必須です。必要なメンテナンス費用をつど集金するわけにはいかないからです。その費用が潤沢であるかどうか、ここがカギです。
(中略)
駅に近くて、間取りも広く角部屋で住みやすそう。予算内に納まっている。心配は古いだけというなら、中途半端な新築より、この中古に軍配を上げていいように思います。
しかし、購入したマンションが新築であれ中古であれ、そこに永住することにはならないものです。いつか売却処分するときが来ます。換金処分が果たしてうまく行くか、もしくはできるだけ高く売りたい。そう考えるのが人間として自然な想いですが、この中古マンションには「資産性」の視点で問題があります。
駅に近く便利な立地にあるのに、広くて安い理由を考えてみましょう。築18年ということも確かにありますが、それだけが理由ではないのです。東京には築年数に関わらず新築を超える高値のマンションは少なくありません。
このマンションが安いのは、建物に魅力がないからです。28戸の小型マンションですが、外観が貧相とは思わなかったですか?エントランスが広くて豪華でしたか?
(中略)
要するに、ズバリ「格好が良い、豪華、立派、高級感がある」とは言えないマンションだから安いのです。両脇をビルと賃貸マンションに挟まれています。そこに埋没しているマンションとも言えます。存在感は希薄ではないでしょうか?
(中略)
安いマンションには安い理由があります。安さに飛びついてはいけないのです。
では、新築を選ぶべきという結論になるのでしょうか?選択肢が本当に二つしかないというならそうですが、その新築にも問題があるからです。問題点は以下の通りです。
(以下、略)
②について・・・
新築より高い中古、立地も新築よりいいし、築浅。だから面積で妥協せざるを得ない。出来たら70㎡以上が欲しいが、その中古は65㎡もないという。筆者は言いました。
ここは黙って中古選択とすべきです。なぜなら、あなたのご家族は赤ちゃん一人の3人家族なのですから、2LDKで足りるはずだからです。赤ちゃんが成長し、いずれ個室が必要になるでしょう。その時期は10年後です。その時に備えて2LDKを選んでおくというのは大事な姿勢です。しかし、3LDKは欲張りではないでしょうか?
欲を言ったら切りはありません。10年住んでみて手狭を感じるようになったら、そのときに買い替えましょう。お子さんが二人になったら、いやでも3LDKが必要な時期が来るでしょう。その時期がいつごろかは見えて来るはずですが、早くても一人目のお子さんに個室を与えてから1年後れです。最初のお子さんに個室を与えるころになったら買い替え作戦を実行に移せばいいのです。
買い替え作戦は、いかに高く売れるかが成功のカギを握ります。そのとき売りやすい物件はどちらかをキーポイントにすると、この中古の方になります。新築を上回る価格の中古、それは新築より価値があるからです。どうしてそう言えるかですって?市場が高値を付けていることが証明になりませんか?
この中古マンションの売買履歴、それこそが市場評価なのです。売出しの段階で強欲にも高い値段を付ける売主もいますが、成約段階では落ち着くべきところに落ち着き、そのマンションの市場評価というものが出来上がるのです。このマンションはお調べしたところ、現在の相場に近い価格で売り出されているようですから、物件価値なりの適正なものと判断できます。
もちろん、買い手から見て、安ければ安いほどいいに決まっていますから、価格交渉は必要ですが・・・
●中古同士の比較で(その1)
築23年の中古と築18年の中古があって、どちらがいいかと悩む人がありました。築18年の方が安く、築23年の中古の方が高い気がします。駅からの距離も大差ないのです。物件はお知らせしたURLでご覧いただけるとおり、大きな違いは築18年の方が50戸、23年の方が100戸という規模の差くらいです。どちらも大手の分譲マンションです・・・このようなご相談でした。
筆者の答えは、築18年マンションより単価の高い築23年の物件の方に価値があるというものです。詳しく説明しましょう。
①築25年を超えていたら勧めなかったかもしれないのですが、23年なので、住宅ローン控除の対象物件になり、最大200万円の税額控除が受けられるので、18年中古と差はありません。
②古い方が高い(面積が若干異なるので単価を比較)――高いなりの理由が必ずあります。新築マンションは土地の取得減価と建設原価の上に利益を乗せて販売価格を決めますが、高い土地を買ってしまえば高くなるのは当然のことで、最近の新築はみな高いのです。
買い手は、分譲業者の言い値で買うしかありませんが、その価格が高いのか適正なのかが分からないものです。それでも、大量の戸数が短期間に売れてしまったとするなら、その価格は適正だったことになるかもしれえません。しかし、それが分かってからでは遅いですし、確認する術もありません。
これに対して、中古マンションは売買履歴の形でREINS(不動産流通機構)のデータベースに記録が残されます。つまり、市場評価が分かりやすいのが中古です。
それぞれの売出し価格が最近の取引事例と大差ないとすれば、23年中古の市場評価が築18年中古より高いことを示しています。5年若い築18年マンションの方が安いのは、それだけの評価しかないことの証左です。
③市場は何をもって23年中古を価値があるとしているのでしょうか?ヒントは戸数規模にあります。大きい方が価値が高いという単純なことではないのですが、明らかに築23年の100戸規模の方が50戸の築18年マンションより優れているようです。具体的には、ここが違います。
(中略)
④立地条件においても大差ないと思われているようですが、古い方が実は優れています。理由は簡単です。背中にする形とはいえ、18年中古は●●通りに面しています。窓を開けても音が気にならなかったのは、内覧されたのが週末だったからです。そのあたりは、道路騒音が回り込んで反対側の部屋にも届くはずなのです。
古くても、市場評価=売買履歴が高いなら、それは優良マンションなのです。選ぶべきは単価の高い方です。
●中古同士の比較で(その2)
駅は違うのですが、駅3分でタワー型のAマンションと駅7分で14階建てのBマンション。戸数はAが180戸、Bは320戸。築年数はAが11年、Bも10年。二つのマンションで悩んでいます。どちらを選ぶべきでしょうか?――こんな質問がありました。価格を聞きました。グロスは差がありませんが、単価が違うのです。当然、面積にも違いがあります。Aマンションは68㎡、Bマンションは63㎡で2LDKですが、面積の関係で収納スペースや洗面脱衣室の広さに差が出ていました。しかし、よく聞いてみると、悩んでいたのは面積や間取りではなく、「駅力」の差でした。
AマンションのA駅は各駅停車のみ、BマンションのB駅は準急も急行も止まる比較的大きな駅でだったからです。マンションは立地条件で決まる割合が大きいので、駅に近いとはいえ、少し寂しい感のあるA駅より、賑わいのあるB駅のBマンションを勧めたくなります。しかし、駅から距離のあるBマンションを迷わず勧めるには調査が必要でした。
筆者は、両物件の売買事例を調べて、物件価値はBが上と判断しました。駅の大きさだけでなく、建物価値でも差があったからです。180戸のAマンションと320戸のBマンション。規模以外に何が違ったのでしょうか?
Aマンションはタワー型ですが、細身のプロポーションが頼りなく見え、かつ共用部にこれといった付加価値を感じるものがないのです。一方の14階建て320戸のBマンションは、様々な共用施設が付置され、敷地も広いので植栽が見事でした。駅からの距離では「近からず・遠からず」ですが、プライベートガーデンやエントランス周り、その内外の広さ・豪華さが格調の高さを誇っているように見えました。
これらが、中古売買の価格差になって表れていたのです。敷地が狭く、建物にも敷地のオープンスペースにも付加価値が設けにくいAマンションの差別化策は「背丈の高さ」しかなかったのです。
東京都心ではないA駅・B駅、駅前にも超高層ビルはなく、最高で14階建てマンション。そんな街の中で20階建てのBマンションは言ってみればランドマークでした。一方のBマンションは敷地の広さを生かした計画だったようで、先述のように各種共用施設とプライベートガーデンなどで中小型マンションではできない付加価値を盛り込んだのです。
Bマンションの弱点は駅から近いとは言えないところでしたが、既述のようにそれが大きく足を引っ張っているとは言えないと分かり、「価格の高さは、市場評価が高いことを意味するのですから、将来のリセールでもBマンションの方が期待できるでしょう」と筆者は助言しました。
現時点の人気の差が価格の差として現れています。「10年後もB駅がA駅に負けないと信じられるなら、B駅のBマンションを選んだ方がいいでしょう」とも付け加えました。
中古マンションの価格は、おおむね市場の価値評価を表しているのです。新しいものより、古くても市場評価の高い方、すなわち価格の高い物件を選んだ方が、不動産価値の視点では正解になるのです。
・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。
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