第212回 「近隣相場の2倍も高い価格で取引されるマンション」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

毎日、どこかの地域を調べていて驚くことが度々あります。

今更ながらと思いながらも、知らない人もあるだろうから、機会があったら整理してお送りしようと思っていました。今日それを書くことにします。ただし、具体的な物件名は差しさわりがあるのでご容赦いただきます。

 

●2倍もの価格差がある千代田区 ”番町”

何億円もするマンションが普通に売買される特別な地域「千代田区番町・麹町付近」の築15年中古の相場を見ていたら、上は950万円、下は480万円と2倍もの開きがありました。以前に見たときも差が大きかった記憶はあるのですが、あれは築何年のマンションであったか? でも、2倍もの差はなかったはずだ。

 

瞬間に、そう思ったのです。たまたま、ペントハウスのような物件と密集地で眺望も日当たりも悪い物件が同時期に売買されたものかもしれないなと推測しつつ、その日の作業に必要というわけでもなかったので、それ以上の調査はしないで終わったのですが、翌日の作業で、錦糸町でも同様の事例に遭遇しました。

 

さすがに2倍の開きはないのですが、ある物件は同年代の最も安かった物件の1.5倍の価格差で取引されていました。

 

このように、同じ地域の同じ年代のマンションで比較しても、物件格差は大きいものです。

 

どんな要素が価格差を生み出すのでしょうか?高額マンションに焦点を当ててみます。

 

タワーマンションの上層階にあって眺望が素晴らしいから、近隣マンションから覗かれないから、下界を睥睨する高さに優越感を覚えるから、有名ブランドだから、共用部が広く豪華でホテルのような趣があるから、目の前に広がる公園の借景が美しいから、リビングルームをはじめ室内の天井が一般マンションより20㎝以上も高いから、窓がワイドで、かつ天井までの高さを誇るハイサッシだから、設備も床仕上げも建具も高級だから、住戸玄関のたたきは広く、収納もたっぷり、続くホールもそこで簡単な接客もできるほどの広さがあるから・・・等々。

 

これらの要素がひとつでなく複数重なって購入者を喜ばせ、購買意欲を強く刺激したとき、高値の売買が成立します。予算が足らない人は、見学にも来ません。高いとしても、予算が一定レベルにある人だけが見学に来るわけです。

 

地域内で突出した価格の売買が成立するのは、その地域で一番のマンションであって、その高いマンションに手の届く階層も一定量存在することを意味します。

 

番町で@950万円するマンションは、面積も100㎡もあって総額で3億円もするのですが、このような買い手は、年に1人や二人ではないのです。築10年~15年の中古でも、番町辺りは現在の相場が平均@600万円もするので、70~80㎡クラスなら1億5000万円です。その前後の取引件数は年間に何十人とあるのです。

錦糸町の高額マンションは、そこまでは高くないものの、近隣マンションの1.3~1.5倍もの高値で年間に10件前後の取引があるのだと地元の不動産業者が教えてくれました。

こちらも、番町エリアほどでなくとも「高いが価値あるマンション」を購入できる階層が少なくないということが裏付けられます。

 

以前も書いたことがあるのですが、南青山や麻布、赤坂といった昔から高級マンションが多く供給されてきたエリアでは、中古価格の上下格差は他地域に比べて大きいのです。番町エリアも同じ傾向が見られますが、このエリアには富裕層が多く住み、ここの住民になることは一種のステイタスシンボルを持つことでもあるのです。

高級マンションは、館内は高級ホテルのようなロビーやラウンジ、アトリウムなどが圧巻です。マンションの価値は、立地の差であり、建物全体のスケール感や格調の高さ、デザイン性、ブランド力などで差がつくものですが、富裕層ばかりが集まる番町エリアは、いわば「金に糸目を付けない」買い物をする人が多く、その習性から格別の物件の取引価格は一段も二段も高くなって地域の平均を押し上げる傾向があると考えられます。

一方、条件の劣る物件に対しては、価格を少しくらい安くしても富裕層は食指を動かすことはないのです。かくして、価格差が大きくなるというわけです。

 

これらの高級マンションは維持管理もきめ細かに実施されることもあって、築年数を重ねても、価格の下方圧力はかかりにくい傾向が見られます。言い換えると、中古になっても高い価格を維持し続ける物件が存在します。言い換えれば、地域の相場と乖離した値動きを見せる物件があるのです。

 

こうした特別の価値を持つマンションは、建物も素晴らしいのですが、それ以上に立地条件(街並み、環境・雰囲気など)が価格を支えています。マンションの価値を左右する立地条件には経年劣化がないこと、すなわち何年経とうと場所の価値は減価しないからです。

 

●マンションの資産価値を決める要素は?

ところで、マンションのリセールバリューに影響を及ぼす要素はいくつあるのでしょうか?もう一度見ておきましょう。

 

それは、①立地条件(利便性と環境。地域イメージ・マクロ的な人気度)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、➄ブランド、⑥管理体制です。

 

この中で一番比重が高いのは①の立地条件です。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の悪さを完全に補うことはできません。

 

強調しておきます。マンションは「一に立地、三四がなくて五に立地」と言われるくらい「立地」が重要です。

 

拙著「マンション大全(たいぜん)」にも書いたのですが、ここでは次の項目を挙げておきます。

1)駅から遠い物件(10分以上)は避ける(5分以内が理想)・・・5分をも超えてもリセールバリューに影響ない物件は、その弱点を補うインパクトある長所・利点があるもの。

2)バス便のマンションは値下がりする(例外は殆どない)

3)東京都心に一直線でアクセスできる鉄道の駅がいい・・・幹線鉄道が良い。支線や枝線は避けた方がいい

 

●郊外は価格差が小さい

郊外とは限りませんが、比較的安値のマンションが流通する地域は、価格差が小さいことが分かっています。予算の少ない人が集まるエリアだからです。

 

どれも似たような価格とでも言えば良いでしょうか、坪単価をはじいてみると、価格差は高々20%程度なのです。上記のリセール価格を決める6要素のうち、立地条件以外は、あまり影響がないといって過言ではない、それが低価格マンションが集まる地域のマンションです。

 

同年代の取引価格で、差が出るのは主に「駅からの距離」で、他の要素もゼロではないですが、確信を持って「ブランド力が違う」とか「管理が違う」と言えるものはほとんどありません。勿論、築年数は大きく、「古いほど安い」のです。

 

先に述べた番町や3A地区(赤坂・青山・麻布の頭文字はA)などは、その地域的価値(立地条件)が価格に占める割合が大きく、ここが古くなっても変わらないため、築年数による影響は小さいのです。

 

●例外があるとしたら?

一般的傾向に逆らう事実、常識では測れない現象がときどき表れるのは世の常ですが、マンションのリセールバリューを左右する要素でも同じです。

駅から徒歩10分以上と遠いにも関わらず、駅近のマンションより高い物件があったりします。

小型マンションでも大規模マンションに引けを取らない高額取引が続くマンションもあります。

眺望が良いはずがない低層マンション、もしくは低層階のマンションがタワーマンションの上階に負けない価格で売買されている物件もあります。

また、築年数で10年もの差があるのに10年若いマンションより高い取引も現にあるのです。新築に並ぶ築20年マンションが存在するエリアもあります。

こうした要因は地域性にもありますが、多くは物件固有の条件です。いくつかの条件が重なって価格差ができてしまうのです。これらを慎重に検証してから購入しないと、あとで「しまった」になりかねません。

うかつに飛びつくと、けがをしかねないのです。新築マンションのモデルルームと映像によるプレゼンテーションのとりこになってしまう人もあります。とても危険です。

中古のリノベーション物件も同様です。

一面だけを見て冷静さを失い、舞い上がって契約してしまう。契約してしまったら、手付金を放棄するしかなくなります。「あばたも笑窪」状態になって買ったマンションが、実は地域の標準・平均以下のマンションだったと気づいたのは10年後だったという笑えない話もあります。後の祭りです。

 

●購入価格が問題

高く売れるマンションの条件は勉強して頭に叩き込んだうえで慎重に品定めに奔走している人に最後にお伝えしておきたいこと、それは購入時の価格です。

購入時の相場に照らして妥当な価格で買えば、リセールでは期待通りの高値が出るものですが、相場から大きくかけ離れた価格で買ってしまうと、せっかくの優良マンションでも全く儲からないどころか逆に損失につながることもあるからです。

 

特に、相場観が分かりにくい新築マンションには気を付けなければなりません。

 

新築マンションの土地は、用地不足のため業者間での争奪戦が展開されて、どうしても高値仕入れになってしまいます。建築費も東日本大震災を契機に上昇し、その後も自然災害が頻発して来たこと、東京五輪関連工事、景気刺激策としての官公庁工事、景気回復に伴って増えている民間工事、各地で進む再開発工事、リニア新幹線工事といった建設業の繁忙が建築費を押し上げています。

 

地価の上昇と建築費の上昇は、マンション価格にまともに影響を与えて来ました。第201回「23区だけが価格の上昇に歯止めがかからない」の中でもグラフ化してデータを紹介しましたが、新築マンションの価格上昇は2013年以来、止まりそうで止まらないのです。

https://www.sumu-log.com/archives/14805/

 

どのマンションかは明らかにしませんが、高過ぎると言えるマンションが多数あります。そのことを知らずに買った個人が、事情あって5年も経たずに売却しようとすると、中古相場の上昇過程の今でも、購入価格と変わらないと言われて落胆したという声は筆者のところにも多数届きます。

妥当な価格で買った人が5年で1000万円も高く売れてホクホクというニュースとは対照的です。

 

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マンションを買うときは、必ず将来の売却を想定して買うようにしましょう――筆者は長年これを言い続けて来ました。

マンションは必ず買い替える必要が起こります。快適で満足して長く住んだとしても、いざ手放すとき、二束三文になるよりは、何千万円かのキャッシュを残してくれる方がいいに決まっています。1000万円より5000万円の方がいいではありませんか。将来の資産価値、これを意識しつつ物件選びをしましょう。

今日の記事も、この筆者の主張に沿うものです。参考になさってください。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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ちなみに、6月20日の第682回は「40年先を見据えてのマンション購入作戦・シリーズ第3回」です。

 

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