第214回 「老後資産2000万円不足問題とマンション投資」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

金融庁が老後の金融資産に2000万円必要との試算を報告書に書いたことが大きな反響を呼んだのは1か月前のことでした。その是非はともかくとして、統計というものは、基礎として用いるデータを入れ替えるだけで全く違った答えが導かれます。

 

2000万円不足問題も1500万円という試算もあったようです。また、不足金額は全国一律ではないはずだし、年収の高い世帯と低い世帯でも準備すべき老後資産の多寡は違うという当たり前の区分によって試算したデータも、その後発表されたりしています。

 

これらの数字を公表することの是非、数字の多寡はともかくとして、ある世論調査によると老後の生活を心配する人は8割にのぼるといいいます。

 

その心配について「自助努力が必要だ」と与党議員は発言、それを聞いた野党議員は政治家の責任放棄だと非難。一方、冷静な国民は国に期待せず「自助努力」を覚悟している人が多い。これは、筆者の感想です。

 

30年後の年金受給額に期待していないとの声は随分前から聞いていました。そのせいか、サラリーマンによるマンション投資は大きな潮流になっていると感じます。筆者のところに集まるのは氷山の一角ですが、関心の強さを感じます。

今日は、不動産で資産形成を図る方法の一面について述べることにします。

 

●不動産投資といえば

サラリーマンの不動産投資と聞くと、マンションやアパートを持つことを思い浮かべることと思いますが、投資対象は1棟丸ごとではなく、区分所有が現実的です。

 

検討者の多くは、研究を進めるとワンルームマンションがいいらしいと知ります。セミナーや書籍を読み、投資先行者の先輩から勧められたりするからです。

本音をうがつと、ワンルームマンションは一般マンション(ファミリータイプ)より予算が少なくてすむので、手を出しやすいからです。頭金も殆どいらないうえに、アパートローンという名の借金も少ないためです。

しかし、ワンルームマンション投資には危険な罠が用意されており、筆者は勧めないことにしています。その理由は、このブログでも書いたことがあるので、そちらを参考にしていただきたいと思います。

こちら→https://www.sumu-log.com/archives/3637/

 

筆者が勧めるのはワンルームマンション以外の物件ですが、それがどのようなものかは追々分かっていただけるはずなので、一旦話題を変えます。

 

●自宅投資で儲けたい人も多い

筆者にご相談くださる方の90%以上は、買おうとしている自宅(自己居住用)マンションの評価、および将来の価値(価格)予測についてです。

 

平たく言えば「価格は適正か」と「品質に問題はないか」です。その延長上に「検討間取りをどう思うか」や「ディスポーザーがないが大丈夫か」「売主が無名だが問題ないか」など、検討マンション及びその特定住戸について意見を聞きたいのです。将来価格の予測(リセールバリュー)については、「儲けなくてもいいが、損しないか」や「10年後いくらで売れそうか」というご相談です。

 

これらのご相談も、突き詰めていくと根源は「資産形成」、すなわち「老後資産として有効か」というご相談に他なりません。

 

マイホームとしてのマンション購入を考えるきっかけは「家賃を捨てるより低利のローンを使って買う方がいいのではないか」というところにあったとしても、検討を進めて行くと、マンションは老後の金融資産に化けるものであるという究極の答えに気付きます。

要するに、自宅を失うことなく現金も手に入れられる、それがマイホームである。ただし、選ぶもの次第である――ここに目覚めるというわけです。よく耳にするのは、「買ったマンションの売却で手にする資金で郊外の古家を安く買って暮らしたい。残った資金と年金があれば困らない生活ができるはずだ」という計算です。

 

つまり、住まいは資産という側面があるので、売れば多額の現金を手にできると信じる人が多いのです。少なくとも、筆者の「マンション評価サービス」をご利用の方はみな「マンションは資産」という前提を置いていることが分かっています。

 

言い換えれば「自宅(自分で住むためのマンション)」も投資目的にしていることになるのです。自宅を担保に老後資金の融資を受ける「リバースモーゲージ」を利用する道もありますが、利用をしない人は、売却しない限り現金を手にすることはできません。

売ってしまったら住む場所を失いますが、買い替えをうまくやれば自宅を失わずに現金も残すことができるのです。「大きな家から小さな家に」、「都心の家から郊外の家に」、「東京の家から郷里の家に」、といった方法はいくつも見つかります。

ある相談者はこう言いました。「最後の家はうんと安く買いたいです。安ければ不要になったとき二束三文でもいいと思えるから。駅に近いから賃貸も考えられるかもしれません。家賃は管理費や固定資産税は払えればいい。それくらい安くしたら借り手もあるでしょう」

 

●資産形成に役立たなかったマンション

「老後の資産と思って買ったマンションだったが、その時が来たら売るに売れない」とか「買ってくれる人をようやく見つけたが、たったの100万円だった」――こんなことになったら資産形成もあったものではありません。

 

最近、「25年前に買った郊外マンションに住んでいますが、高値の今でも売れない。10年残っている住宅ローンを整理するとともに、手持ち現金と売却資金と合わせて買いたいマンションがあるが、その資金に届かない」というご相談がありました。

買いたいマンションは、実は郊外でも郷里でもなく、都心からさほど離れていない立地の物件ゆえに安くないのです。なんのための買い替えかを尋ねると、「もう少し働いていたいが、自宅が遠いので通勤が大変。今の職場にも定年後の職場にも近い交通便の良い所に住み替えたい。今ならローンを利用できる最後のチャンスだし」というのです。

 

さらに聞いていくと、買い替えのチャンスは10年前にもあったが、そのころは切実に考えなかったらしいこと、自宅のローンも多額に残っていたので、買い替えは現実的でなかったらしいことが分かりました。

 

このご相談者は、まだ60歳になっていないので、完全リタイアにはまだ早いのです。子供たちが独立したので夫婦二人だけの住まいというわけで60㎡もあればいいらしい。それなら、今の家より都心寄りに買えるはずと踏んだのです。ところが、自宅売却は思惑通りに進まず、せっかくの新築マンションの契約も白紙に戻すはめになってしまいそうだと苦しい胸の内を明かしてくれました。

 

なぜ売れないのかを筆者なりに分析すると、「郊外マンションなので専有面積が広く、査定単価をかけるとグロス価格が高くなってしまった。査定額にそもそも間違いがあったのかもしれない。駅から徒歩14分と距離がある。70戸の中規模マンションだが、建物としての魅力に乏しい。ブランドマンションでもなく、分譲業者は破綻してしまった。築26年経ったが、管理状態も普通」という物件でした。

半年前に価格を下げてみたが反応は変わらない。3件の内覧があったが決まらないというのです。

 

かつては、郊外都市の中でも人気のある駅でしたし、分譲当時、駅から10~15分というマンションは珍しくない時代でした。地価の高騰で採算の取れるマンション用地は枯渇し、デベロッパーは安い土地を求めて郊外に進出しました。しかも、郊外都市にすら駅に近い用地はなかったのです。

郊外でも、駅から遠くても、マイホーム欲しさからサラリーマン諸氏は買えるのなら何でもいい、そんな空気が蔓延していた時代でした。昔のお父さんは偉かったのです。家族のために歯を食いしばって通勤苦に堪えました。

これは、地価の高騰が招いた悲劇でした。通勤圏から、その外へ押し出されたのです。誰かが言いました。「ところてん」だと。バブル期のことでした。

 

時代は逆回転しました。

女性の社会進出が増え、結婚しても仕事を辞めない人、子供を作っても保育園に預けるなどして仕事を続ける人、それを支える企業の各種制度、自治体の保育園整備、育児支援制度などが普及しました。

このため、郊外にマンションを求める人は激減したのです。まして駅から10分以上も歩くマンションには関心を示さないのが当たり前の時代になりました。その駅の周辺か郊外都市で仕事をしている人だけに買い手は限定されるようになりました。

 

売れないマイホームは、資産価値(換金価値)ゼロと言って過言ではありません。資産形成には全く役立たないことになったのです。30年前、これを予測できた人はいたでしょうか?多分、誰もが予測しなかったのです。そのころは1億国民が永遠に右肩上がりに資産は膨張するという「錯誤」に陥っていたからです。

 

今後の日本はどうなるのか、それを「やや悲観的に」予測しつつ資産形成を図らなければなりません。

 

●資産形成にプラスとなるマンション

自宅マンション以外に別途買い増しできる人はともかく、ここの記事は1軒目のマンションで資産形成を図ることに主眼を置いています。購入したマンションに長く住むか、何回かの買い替えた先のマンションかはともかくとして、いつでも有利に売れるマンションの条件を整理してみることをお勧めします。

 

先ず、市場の背景について考えてみましょう。

東京都が遷都(首都移転)しない限り、政治の中心は東京都のままでしょう。

経済の中心はどうでしょうか?オフィスを郊外や地方に移転する企業はあるとしても、東京にある企業の2割も3割も移転することは考えられません。せいぜい、近郊の横浜市や川崎市、さいたま市に少数の企業が移転するようなことはあるかもしれませんが。

 

経済成長は続くでしょうか?中国のように年率6%の成長はないでしょう。しかし、1%台、2%台の成長は続くのではないか?たまにリーマンショック級の世界同時不況などということはないだろうか?リーマンショックのときは百年に一度の不況がやって来るなどと言われました。

円高不況はないか?企業が世界の中で競争力を失い、日本の産業は力を失うことはないのか?

 

外国人の流入が増えそうです。増えすぎて日本人の仕事を奪うとか犯罪が増え、社会不安が高まることはないか?外国人の流入といえば、短期滞在者(観光客)は増える方向にあるのではないか?LCC(格安航空)の成長で、訪日客は伸びるはずだ。我が国は、世界に認められた和食を含む独特の文化があり、おもてなしの精神が魅力を世界中に発信中だ。東京オリンピックを契機に訪日客はますます増えるに違いない。

 

少子高齢化の波は都心にもやってくるのではないか?それでも人口が減らなければマンション需要も減らないのではないか?むしろ、仕事を求めて東京に流入する人口は今後も増えるのでは?

 

こうして多方面の未来を考えていくと、心配なことは少なくありませんが、劇的に日本経済が衰退してしまうことはないのではないかと思います。50年先はまだ見えないものの、20年か30年は楽観的に見ても大きな狂いはないのでは?

 

考えれば考えるほど行動が委縮して何もできなくなってしまいます。少し楽観的に前提を置きつつ、マンション選びで需要なポイントは以下の10点です。

①都心に近いエリアにする

②駅から5分以内にする

③新築にこだわらない

④中古は管理の良し悪しに注目する

⑤小型より大型にする

⑥安いマンションは狙わない

⑦外国人村が近い場所は避ける

⑧格好がいいマンションにする

⑨セキュリティの良いマンションにする

⑩眺望が悪い住戸は避ける

 

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以上のようなマンションなら、売却時に多額のキャッシュを手にすることができるはずです。

 

人口減は空き家の問題を表面化させていますが、東京でも都心以外では空き家が増えるかもしれません。最後の住処は古い空き家を改造して住むといった選択肢も見つかる可能性があります。介護付き有料老人ホームも増えるでしょうし、介護の不要な人にはサービス付き高齢者マンションという選択肢が増えて来るでしょう。それも、比較的都心に遠くないエリアで。

温泉地の古家なら50万円も出せば取得できます。首都圏郊外でも、500万円以下で購入可能な家は今でもありますし、最後は二束三文でいいと割り切るなら選択肢は広がります。

 

多額のキャッシュを生むマンション、すなわち資産価値の高いマンションを手前で買っておけば終の棲家は選り取り見取りです。

現金資産は多いほどいいのです。2回目か3回目の買い替えで頭金50%、住宅ローンを20年くらいの短いものにしたら、20年後借金はゼロになります。20年後に売却すると、20%の値下がりがあったとしても購入額の80%相当額がキャッシュとして残ります。

頭金20%で購入したものでも、住宅ローンが完済できていれば、結果は同じです。ローン残債があっても、値上がりするか、買い値と同じくらいの値で売れれば、残債の清算後に残るキャッシュは大きいのです。

 

最後に言いたいのは、売り値が買い値を下回っても、ローン債務は確実に減って行くので、その分がキャッシュを生むということです。

金利が低い今だからこそですが、毎月の返済は金利より元本返済に多く回るので、いつの間にか借金は大きく目減りし、含み資産を増やしていきます。

 

敢えて言いましょう。買い値を上回る売り値にならなくても十分なメリットはあります。毎日株価を気にするような利殖でなく、「ほったらかし」のマイホーム投資は、いつの間にか資産を増やしてくれる、誰もができる投資です。先に挙げた10大条件を守れば誰でも金持ちになることができます。少なくとも、筆者はそう信じます。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

新・マンション購入を考える

是非ご購読ください。680本以上の記事があります。

ちなみに、7月10日の第686回は「素晴らしい物件だが購入に踏み切れない築古マンションの限界」です。

 

★★★晴海フラッグの「将来価格予測レポート」承り中★★

全国的に有名な話題のマンション「晴海フラッグ」。スタート時の人気は上々のようです。マスコミ各社も取り上げているせいか、見学希望者は引きも切らないと聞きます。

 

スムログでも座談会形式で2回にわたり、情報をお届けしたので、ご高覧いただいたかもしれません。

 

筆者には「選手村マンションは買いか」という本を上梓したこともあって、新聞社やネット配信ニュース社、雑誌社などから取材の要請も多数来ましたが、「本の宣伝になるなら」と可能な限り応じていますが、売れ行きにどれだけ寄与したかは分かりません。

 

しかし、増刷になるらしいので、少し加筆できたらいいなと思ったりもしています。というのも、初版本の内容に自身が満足していないからです。

 

というのも、原稿を書いた時点では価格が決まっていなかったため、肝心の「物件価値と価格のバランス」について触れることができなかったことが食い足りないなと感じていたからです。

 

そうこうしているうちに、価格情報も入って来ましたし、物件の評価依頼と将来価格の予測レポートの依頼が何件も入って来るようになっています。

 

書籍には書けないこともあるので、拙著を読んで「物足りない」と感じた方には、個別のご相談で対応した方が良いのかもしれないと思い直したりもしています。

 

現況は陸の孤島のような晴海フラッグ、5000戸以上、12,000人の街になるのに、1時間当たり2000人の輸送能力しかないBRT(バス高速輸送システム)に頼るマンションの人気はどこから来ているのか、将来の予想価格はいったいどのくらいになるのか、過去の売買履歴がゼロの街の未来の予測値はどの程度に見ればいいのか。

この答えをズバリとお届けするのが「将来価格の予測レポート」です。「物件評価レポート」とのセットが条件ですが、是非ご利用ください。個々の購入条件(資金内容など)に合わせて精緻なレポートをお届けいたします。

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

マンション業界の裏側を知りつくした、OBだからこその視点で切り込むマンション情報。買い手の疑問と不安を解決。マンション購入を後押しします。