前編はこちらです。
DJあかいのマンション傑作選その1「コープ・オリンピア」前編
今、ナウなヤングにバカウケの東京タラレバ娘、皆さまもうお読みになっているでしょうか?3人の33歳の独身「娘」たちが自分たちの置かれた状況と戦いつつ、自虐しつつ、女子会で傷を舐めあいつつ、もがいていく話なのですが、実は主役の倫子の事務所のモデルがこのコープ・オリンピアなのです。
倫子はドラマの脚本家なのですが、実際にコープ・オリンピアにはデザイン事務所やマスコミ系の小さい事務所やアパレルの会社などいわゆる「感度の高い」人たちが多く入っています。事務所として使われる区画が多くなっているのは、コープ・オリンピアに限らず60年代70年代の傑作マンションに共通してみられる傾向なのですが、その理由としては以下のような点が挙げられます。
1.給排水の老朽化、住民の高齢化(非バリアフリー)によって住居として使うのが難しくなってきている
2.好立地に建つため打ち合わせや移動がしやすい
3.マンション自体の知名度と評価が高いので、覚えられやすかったりして仕事の成果につながりやすい
4.こだわりを仕事にする人と親和性が高い
なので、倫子がコープ・オリンピアで仕事をするのは必然(言いすぎか)ですし、コープ・オリンピアで会社をやってる人の一つの典型的なタイプと言えるでしょう。
竣工から半世紀を経て未だに魅力を放ち続けるコープ・オリンピア。その魅力はどこからきているのでしょうか?
一つにはデベロッパーのこだわりです。東京コープの宮田氏はコープ・オリンピアの用地選定にあたってヘリに乗ってふさわしい場所はないか探したという伝説がありますが、原宿駅1分で表参道と明治神宮を望むこの立地の得難さは不動産関係者のみならず一般の人にも伝わるレベルのものでしょう。
もう一つは当初からこだわりを持って作り、こだわりを持つ人をターゲットにしたことでしょうか。アメリカのホテル風のこだわりについては前回触れました。また、コープ・オリンピアが分譲された1965年、住宅ローンは今ほど一般的なものではなく、現金一括買いが主流でした。このコープ・オリンピアを買った人も役者、経営者、個人事業主、医師等等で、一般のサラリーマンはほとんどいませんでした。
あとはこのようなコープ・オリンピアのようなマンションがなぜ現代にはないのかという問題ですが、理由は大きく言えば次の2つになるかと思います。
1.大規模修繕を見据えた構造、低コスト化の徹底
低コスト化と大規模修繕を見据えた設計が重視され、写真のような雁行型(部屋同士の角がずれて全部屋が角部屋のようになる設計)はあまり見られなくなりました。コープ・オリンピアの頃は大規模修繕のことなどほとんど考慮に入れられていませんでしたが、だからこそデザイン・ファーストのマンションが作れた部分はあると言えます。
2.法令の改正
建築基準法改正(新耐震基準の導入)によってコープオリンピアのようなガラス面の多い設計が難しくなりました。また、消防法改正により二方向避難が義務付けられるようになり、バルコニーなしの部屋が許容されなくなりました。安全面を考えれば妥当な改正だったのでしょうが、こういったデザインのマンションを新しく建てるのは難しくなってしまったのは残念です。
いろいろ話しすぎましたかね・・・。今日はこれだけ覚えて帰ってください、「コープ・オリンピアは今はもう作れないが、だからこそ今あるうちに楽しもう!」(そんなこと一言も言ってないと聴衆ざわめく)
さて次回はこの半世紀経ったコープ・オリンピアのこれまでの動きと今後の話に入っていきたいと思います。こうご期待!
⇒DJあかいのマンション傑作選その3「コープ・オリンピア」後編
宮田氏が、作った大学の卒業生でーす。そこの不動産学科を先攻していました。とにかく詰まらない授業ばかりでした。こんかい のようなためになることは1つも、なかったです。これからも真剣に読みますので、シリーズ化してください。むかしのマンションで、秀和や地産や中銀など今で考えられない漢字系のマンションについても知りたいです。よろしくお願いします
おお、なんというご縁でしょう。お褒めの言葉いただいて恐縮です。大学の方は宮田氏の思惑はあったのでしょうが、不動産ってなかなか座学と親和的じゃないですからね。やって覚えて一人前というところがあるのでなかなか教育のスキームでやるのが難しいのかもしれません。
いくつかこれから取り上げる予定のマンションも決めてますので引き続き楽しんでいただければと思います。こういう反響があると筆も乗りますので。(笑)
数々のマンションブログを拝見しておりますが、非常に興味深いシリーズですね。私も引き続き、他では取り上げられづらいこのようなマンションネタを、期待しております!
今回のスムログでは「誰にでもできること」「他の人のほうが得意なこと」は極力避けて「自分にしかできない見方・切り口」「自分が得意なこと」にしぼって書いていこうと思っていまして、これも回が重なってシリーズとして厚みをもってくればちょっとしたDBになるかなという期待を持っています。これから取り上げる話も自信を持ってお勧めできるものにする予定ですので楽しんでいただければ幸いです。