第215回 「選択に迷ったときの考え方」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

将来の売却が不利なマンションと分かっていても選択する、それが現実ということもあります。

例えば、通勤の問題や子供の特異な身体的理由、通学の問題などから、本当はもっと都心に住みたかったが、やむを得ず郊外マンションを選択しましたという人がいるのは事実です。

それが家族にとって幸せな場合も多いことでしょうし、その選択を他人がとやかく言うものではありません。この記事は、そのような事情を一切忖度することなく、資産性という観点から解説しています。

 

しかしながら、これまで何回となく述べて来た方法(選択の条件)は理想論であって、予算に限りがあればあるほど理想から乖離する物件になってしまう可能性があります。今日は判断に窮したときの考え方を述べることとします。

 

マンション選びの法則として、ここでは7つ挙げることにします。1は立地条件、法則2は「立派な外観」です。法則3は「玄関に風格がある」です。法測4は「緑地スペースが多い」、法則5は「維持管理」、法則6は「規模が大きいこと」、法則7は「ブランド力」です。

 

(1)法則1.立地条件の妥協は是か非か?

駅からの距離の妥協範囲・・・5分以内が理想ではあるが

高級住宅地は周辺の街並みが整然として緑も多く美しい。こうした街は、再開発の余地が少なく、新築マンションの供給は滅多にないため、中古マンションは高く売れることが多いものです。

このような地域は徒歩5 分以内には少なく、概ね7~10 分という距離にあったりします。つまり、5 分以内は絶対条件ではなく、少しの妥協は構わないのです。といっても、妥協に値する環境の良さを備えていることが必須です。

 

稀に、駅前に商業施設が少なく駅から5~10 分の場所に大型ショッピングセンターほかの利便施設が集積している街があります。こうした場合は、駅から10分くらいまでは駅5 分以内と比べても劣らない場合があります。

 

住環境が良いとは言えない駅近マンションでも・・・

駅近マンションで利便性と環境の良さが両立するケースは、駅前再開発地域内の場合だけです。

駅近マンションは便利で良いものの、雑多な環境にあるものです。ひっきりなしに電車の走行音が入って来るとか、駅前の道路が国道であったりすることも多く、クルマの騒音も激しいものです。

また、駅前は商業地域に指定されており、大抵は高層ビルが密集しています。バルコニーに出ると、目の前に別のマンションが迫っていたりします。駐車場の前に建つ物件では、前が開けているものの、いつか高層建物が建つ懸念があったりします。

このような場所でも駅に近いだけで立地条件が良いマンションと言えるのか、そんな疑問が湧きます。しかし、極端な場合のみでNO を言うべきであって、「少々の懸念材料も駅近という条件が優る」 という答えになるのです。

例えば、駅前マンションで線路際に建つという場合でも、超高層マンションの上階なら、窓を開けない限り音は気にならないことが多く、駅まで傘なしで行ける利便が勝ってしまうのです。線路の上には高い建物がないため、窓面に開放感があるというメリットも加わる場合も多いと言えます。

周囲に高層ビルが密集する場所でも、購入物件が大規模で敷地に余裕があるうえ、公開空地が取られていたりすると、前面建物との距離は長く、日当たりの問題も少ないといったケースとなります。

 

また、ビルとビルの谷間のような場所でも、間に小さな公園があって切迫感が緩和されていれば問題ないというケースもあります。

 

要は程度問題なのです。我慢ならない環境の悪さなら、いかに便利であっても高い評価が受けられないはずです。ただ、多くの事例を見ていると、駅近マンションはやはり強いという実感があります。つまり、徒歩5 分以内の駅近マンションに外れは少ないと言えます。

 

どんな駅でも駅近は価値があるのか?

駅近マンションは強いと述べましたが、駅近ならどんな駅でも価値があるのかという疑問もあります。

これも程度問題です。都心の駅なら、どこでも大体問題ないと考えていいのですが、郊外の場合は、中核都市の中心駅であることが必須です。

ターミナル駅なら文句なしですが、ローカル線や幹線鉄道ではない、つまり都心に出るには幹線鉄道の駅まで一旦出る必要がある駅は、それなりの評価しかできません。言うまでもなく乗り換えは面倒で、人気薄だからです。

同じ駅近でも、より高く評価されるのは、都心の駅や郊外なら幹線鉄道の急行停車駅などです。

以前も書いたので詳細は割愛しますが、「駅力」の問題もあります。

 

広さと立地条件の関係

立地条件の良いマンションを買おうとすると、予算に合う住戸がない、若しくは狭い住戸になってしまうという場合が多いはずです。そのとき、「狭い」を理由に簡単に諦めてはなりません。

よく考えてみましょう。10 年で売却することを計画に組み入れているならば、10 年間の家族構成によっては、狭くても問題ないのではないか。このような自問をしてみるといいでしょう。

例えば、子供が二人いて、上の子供が3歳であるとしましょう。10 年後は中学生になります。そのときは個室が強く求められるでしょう。それまでは1室を子供二人の共用にすればいいのです。そうすれば、2LDK で10年は足りることになります。

広いに越したことはありませんが、広さや間取りに執着すれば、立地条件を妥協しがちになります。これが陥りやすい落とし穴で、マンション選びの法則に反する選択です。

立地条件は決して妥協すべきでない「優先条件」、すなわちマンション選びの大原則と認識しておきましょう。

 

(2)小型マンションは絶対だめか?

法則2は「立派な外観かどうか」と書きました。法則3は「玄関に風格があるかどうか」です。法測4は「緑地スペースが多いかどうか」です。

これらは皆、法則6の「規模が大きいこと」 と深い相関関係があります。

立派な外観は小型マンションでは造りにくいのです。玄関の風格も小さなマンションでは醸し出しにくいものです。

緑地スペースも、敷地に余裕がなければ広く取ることができません。特に商業地は建ぺい率制限が緩やか(80%まで可能。角地は90%)なため、オープンスペースが殆んどなくなるような建て方になるケースが多いのです。

 

法則5の管理も、規模の大小と密接な関係にあります。小規模マンションの多くが、見かけの管理費を抑えていますが、管理内容はお粗末なものが多いのです。

メガマンションの管理費は高い例が多いのですが、これには高い付加価値が伴っています。全く異質の管理内容で、比較にならないのです。

小型マンションで理想的な管理をしようとしたら、どれだけ高くなってしまうことでしょう。高くなっても構わないという人だけが、小型の高級マンションを選ぶことができるのです。

 

駅近で、緑が多くて、規模も大きなマンションがいいなどと言っていたら、とても難しい話です。購入できるマンションはなくなってしまうかもしれません。

しかし、土地が少ない駅近でも、相続や法人のリストラなどから売却されて、古い建物がマンションに生まれ変わっている例はあります。今後も稀に見られることでしょう。

その中で比較的規模の大きな物件を狙いましょう。その規模とは、戸数で言えば50 戸以上が目安です。それ以下の物件には、あまりお勧めできるものがないのです。

 

(3)売主のブランド力が低くても大丈夫なケースはあるか?

良いマンションとは思うが、「売主が無名である」とか、「親会社は立派な企業だがマンション開発の子会社(売主)は実績に乏しい」、「経営に不安を覚える中小メーカーが売主なので気になる」といった懸念の声をよく聞きます。

これには、二つの側面があって、ひとつは、契約を結んだものの途中で倒産したりすることはないかという心配と、引き渡し後のアフターサービスは約束通りに実施してくれるかという「継続性」への懸念です。

もうひとつは、「品質の証明」に関する懸念です。

 

第一の継続性に関しては、問題が生じても解決策が法的にも用意されているので心配は少ないのですが、第二の「品質の証明」に関しては、ブランド力の低いマンションは価値も低く見られがちとなり、解決策はないのです。これは避けられない宿命です。

但し、ブランド力が低くても大丈夫な場合があります。それは、そのエリアにおける最高の立地条件にあり、かつ建物の形状や規模において大手に引けを取らない立派なもの、そしてグレード感も備わっていれば、大手ほどのブランド力がなくても価値の低下はありません。

言い換えれば、無名企業のマンションほど、場所も建物クオリティも大手に負けない物件でなければならないということになります。

 

現実にはどうでしょうか。場所はともかくも、建物のクオリティに関しては大手と並ぶものすら滅多に見られないのが実態です。そのような物件は、価格が安くても手を出すべきではないのです。

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優先条件をつけて、後順位の条件や些末な部分は捨てるくらいの考えも、ときには必要です。

立地条件は絶対条件です。その次は、できるだけ大きい建物を選ぶことです。

 

(4)価格高騰が起きたときの考えかた

本を買って読んだり、ブログを継続的に見たりと、勉強を続けながら検討している間に市況が大きく変わってしまったということがあります。

2006 年から2008 年にかけて、ミニバブルが発生して地価が高騰し、マンション価格も急上昇しました。その後、一度は値下がりしましたが、2013年から再び値上がりが始まり、2018年までに35%も上昇しました。新築マンションの値上がりのことですが、中古マンションも連動して上昇し、平均すれば同率の値上がりとなったおです。

 

そのような時期に購入のタイミングが重なったときはどう考えたらいいのでしょうか?

多くの買い手が抱えるのが「2020年まで様子を見ようかとも考えています」という悩みです。言うまでもなく、価格上昇が激しいため、「高値掴み」をしてしまうのではないかという懸念を抱いていることに理由があります。

 

しかし、マンション購入のタイミングは、市況とは無関係にやって来ます。

マンションを買いたいと思い始めるきっかけ・動機とも言えるものとしては、結婚、子供の誕生、転勤、子供の進学、子供の独立、定年といった人生の転機やライフステージの変化が挙げられます。

 

買いたいときに価格も金利も高かったという記憶をお持ちの人も多いはずです。会社までもっと近い場所にマイホームを買いたかったが、予算が届かず仕方なく郊外に買ったという先輩も多数あるのです。

 

筆者も最初に購入したときの住宅ローン金利は現在の金利に比べると信じられないほど高いものでした。買い替えのときは、元のマンションを高く売ることはできたものの、次の物件の価格も大きく跳ね上がっていました。しかし、買い替えの動機は我が家の事情で「待ったなし」でした。

このように、買いたいときの環境が絶好だとは限らないのです。

 

一方、あるときマンションデベロッパーの役員だった知人から新築マンション開発の苦労話と企画に当たっての創意工夫、その結果誕生した優良なマンションについて熱く語る話に引き込まれて買う気になったことがあるのですが、それが思わぬ売却利益をもたらしました。

 

前者は、買わなければならない家庭内の事情によるものでしたが、現在の市況と似たようなときで、購入できるマンションが少ない中から偶然見つけた良いマンションでした。他に満足できるものでは全くなかったことに加え、残戸数が2戸しかないと聞いて、慌てて申込金を入れて部屋を抑えた記憶が残っています。

後者は、全く買う気がなかったにも関わらず、いつか都心へ住み替えたいと思っていたものの縁がなく、買い替えを急ぐ理由もなかったので、何となく10年以上のときが流れていました。そこに現れた知人の自慢話に、心の奥に仕舞っていた願望が刺激されて浮かび上がった結果の買い物でした。いま思えば、そのマンションはとても安かったので、思いがけず儲かってしまいました。

都心なので、それなりの価格ではあったのですが、値上がりトレンドを描く手前の時期でラッキーでした。

つまり、儲かるかどうかは時の運、タイミングによるのです。それを意識して選ぶことはできないと思いましょう。

 

買いどきに買いたいと思わなかった――それを悔やんでも仕方ない

家は買いたい時、買わなければならない時に、都合よく安値である確率は低いのかもしれません。

先に触れたとおり、ライフステージと購入時期とは無関係ではありません。結婚、子育て、転勤、定年、子供の独立などとマイホームの購入や売却は密接に関わっています。

 

高度成長期に社会に出た人、バブル期に就職した人、バブル後のデフレ時代に少年期にあった人、高金利時代にマイホームを買った人、バブル時代に郊外で買うしかなった人、低金利のローンでマイホームを買えた人、バブル後に都区内でマンションを買えた人など、例を挙げればキリはないですが、それぞれの人生は経済や社会構造の変化など、時代背景によって良くも悪くも影響を受けるものです。

 

人生のイベントの中でマイホーム購入は最も重みあるものですが、タイミングが悪いとしても、それを不運と嘆いたり恨んだりしても仕方ないことです。つまり、5年前に買っていたらなどと考えても、死んだ子の年を数えるようなものなのです。

 

過去には、高値で買ってしまったために売るに売れず苦しんだ人もあったのです。売れた場合も、その損失額が半端なものではなかったという人もあるはずです。

 

しかし、経済的には損失だったとしても、そこに住んでいた時間の幸福は、大きな「精神的利益」を得て余りあったはずです。

幸福はお金で買えるものばかりではありません。また、幸福をお金に換算することはできないと思います。そこに住んで得られる幸福感や、住まいの満足感を「使用価値」としましょう。「使用価値」は、個人の価値観や家族の事情などによって幅があるもの、その大きさは他人には測り知れないものがあります。つまり、場所を含め、快適な暮らしができそうなマンションであるなら、どんなに高額であっても、また値下がりして経済的な損失を被っても、その決断は間違いでないことが多いのです。

 

「買いたいときが買いどきである」と考えましょう

未来やチャンスなどを読む才能に恵まれた人はともかく、そうでない人は今のような時期にどこへ拠り所を求めたらいいのでしょうか?考えるほど混乱するばかりという人も見られます。また、急がないとますます高くなるという焦りが先走り、現場の営業マンの口車に乗せられてしまう人もあるようです。

こんなときは、「買い時はいつか」を考えない方が良いかもしれません。買い時は貴方にとって常に“今”だからです。

見学したとき、この場所、このマンションに住みたいと感じた、その気分を大事にすることですね。

「買いたい」そう思ったときが買い時というわけです。そう考えれば後悔せずに済むことでしょう。

 

「高いけど買うことにしました」のお便りに拍手を送りたい

歴史を振り返ると、マンション価格は上下動を繰り返して来ました。

突き詰めると、物の値段は需要と供給の関係で決まって来るもので、材料費が上がった、人件費が上がったなど供給者側の事情から値段を付けても、買い手の購買力がついて来なければ需要は減退し、売り手は値段を下げるほかありません。

 

マンション価格もバブル経済崩壊後に大きく値下がりしましたが、2000年ごろに底を打ちました。その後、2005年頃から再び上昇、2010年には再び値下がりに転じました。底這い期間は僅か3年、2013年には急転して、前年比8%も上がりました。2014年以降、上昇が続き、2016年は2012年比で25%も上がったのです。

2017年も前年比8.4%も上昇したのです。2018年も23区に限れば5%上がりました。(以上、新築。データは首都圏全体。出典は不動産経済研究所)

 

では、今後の見通しはどうなのでしょうか? 多くの識者が語るのは2020年までは下がることはないというものです。とすれば、価格が低下し、買いやすいレベルになるのは早くても2021年以降ですが、2年先のマンション用地は今買っておく必要がありますが、最近マンション用地が安くなってきたという情報はありません。むしろ逆です。つまり、マンション価格の低下は期待薄です。

建築費が着工直前に大きく下がるようなことがあれば、用地費は高くても販売価格が下がるでしょうが、オリンピック後に仕事が減って安値受注に走るゼネコンが続出するとは思えないのです。

 

ではいつまで待ったら安いマンションが出て来るのでしょうか?少なくとも、新発売マンションで「待ったら安いものが発売される」可能性はなさそうです。地価(用地費)が異常に安値だった唯一の例外「晴海フラッグ」のような安いマンションが次々に売り出されるなどという期待は夢のまた夢です。

待っても安値のマンションが出て来る可能性は低いのです。

 

待って得があるとしたら、売れ残った新築マンションの中の「モデルルーム販売」など、値引き物件の情報です。

 

中古マンションも値下がりに転じる様子は見えませんが、こちらは新築と異なり、比較的反応が早いので、景況の悪化などで様子見に転じる人が増えれば値下がりに転じるかもしれませんから、待っても良いかもしれません。しかし、誰も景気が悪くなることを望んでいません。悪化の兆候がはっきりすれば、政府は補正予算を組んで対策に乗り出します。

 

新築も中古も、高止まり(高値安定)がせいぜいです。値下がりに転じるとしても、10%も20%も下がる可能性はないはずです。

2008年に起きたリーマンショック級の経済事変が世界同時不況をもたらすといったことを期待することもできませんし、今後の下落を待つとしても、何年待てばいいのか、それも確信は持てないのです。

 

このようなことを掘り下げて行くと、購買環境の変化を予測するのは簡単でないことに気付くことになります。としたら、あまり先行きを考え過ぎても仕方ないというのが結論です。

5年も6年も待てない事情があるなら、高い物件でも買ってしまう選択は悪くないのです。「思い立ったが吉日」「善は急げ」の格言ではありませんが、「高いけど買うことにしました」、そう言って決断された方に拍手を贈りたいと思います。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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ちなみに、7月20日の第687回は「内装に惚れてはいけない!!」です。

 

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