羽田新ルート周辺のタワーマンションは上層階ほど騒音レベルが大きくなるので、資産価値への影響も上層階ほど大きくなる。
タワーマンションの1階住戸と最上階の住戸とでは、騒音レベルがどの程度違うのか試算してみた。
【もくじ】
◇玉川氏が不動産業界が知られたくないことをコメント
◇タワマン1階と45階で騒音レベルはどのくらい違うのか?
◇1階と45階の騒音レベルの違いを例えると…
玉川氏が不動産業界が知られたくないことをコメント
平日の8時からテレビ朝日で放送されている『羽鳥慎一 モーニングショー』。8月12日(月)に羽田新ルート問題が取り上げられた。そのなかで、玉川徹氏(テレビ朝日社員)のコメントが興味深い。
伊丹空港の騒音状況を取材したときの話として、タワマン29階の騒音の大きさを紹介している。
東京でいうと白金あたりに匹敵する場所も行ったんですね。(略)
そこの公園でインタビューした人の娘さんが29階に住んでいる。タワーマンションの。そこに行くと全然(騒音レベルが)違う。だいたい30階くらい違うと100mくらい違うんですって、地上と。(略)
そこはずっと昔から飛んでいる場所ですからね。それでもやっぱりタワーマンションの29階となると窓を開けると怖いっていうくらいのレベルだって言ったんで。
いままで飛んだことがない場所で上飛ばれたらどうなんだろ。タワーマンションって上に行くほど価値が高いわけですよ。でもこういう場所では上に行くほど騒音は大きい。
タワマン1階と45階で騒音レベルはどのくらい違うのか?
羽田新ルート周辺のタワーマンションは上層階ほど騒音レベルが大きくなるので、資産価値への影響も上層階ほど大きくなる。タワーマンションの1階住戸と最上階の住戸とでは、騒音レベルがどの程度違うのか試算してみよう。
港区内で羽田新ルート(C滑走路到着ルート)直下から210mほど離れた敷地(以下、「仮定敷地」)に、45階建ての超高層マンションが計画されていると仮定する。
次図の大型機ボーイング777-300(全長73.9m、全幅60.9m)の大きさとマンションの外形は、水平距離の縮尺に合わせて描いてある。ボーイング777がいかに大きいのか、実感できるのではないか。
仮定敷地の真上を飛ばないとはいえ、全長74mの大型機が近くを通過するというのは、けっこう迫力があるのではないだろうか(次図)。
飛行機がマンションに最接近するとき(赤色の飛行機)の高度を525m(=(600+450)÷2)と想定すると、マンションとの直線距離は屋上で約430m、1階で約570m。その差140m。
国交省が公開しているデータによれば、大型機旅客機(777-300)が港区上空を通過するとき600mから450mに降下してくるにしたがって、ルート直下地上での騒音レベルは74dBから76dBに上昇する。
そのときルート直下から210m離れた仮定敷地での1階住戸と最上階(45階)住戸の騒音レベルを計算した結果を次表に示す。
1階住戸の騒音レベル74.3dBに対して、最上階(45階)住戸の騒音レベルは76.8dB。その差2.5dB。
※計算方法は「「新飛行ルート問題」騒音の影響を地図化してみた」参照。
1階と45階の騒音レベルの違いを例えると…
分かりやすく例えると、旅客機1機の地上での騒音レベルが70dbだとして、2機同時に飛んだ時の騒音レベル73dBとなり、3dB増加する。音源が2倍になると騒音レベルが3dB増加することは、音の専門家にはよく知られている。計算は次式のとおりだ。
- 2機の騒音レベル=10LOG10(10^(A/10)+10^(B/10))
=73dB- A=B=70dB
では、騒音レベル差2.5dBの場合はどうなのか?
計算内訳は端折るが、1機と0.78機が同時に飛んだ場合、騒音レベルが2.5dB増加する。
すなわち、1階住戸と45階住戸とでは飛行機が1.8機分飛行しているくらい、騒音レベルに違いがあるということになるのである。
【注意書き】
- 港区内に仮定した敷地とマンションはあくまでもフィクション。実在の物件やプロジェクトとは一切関係ない。
- 本試算には慎重を期しているが、データの精度について保証するものではない。これらの情報をあなたが利用することによって生ずるいかなる損害に対しても一切責任を負うものではない。念のため。
通常高層階では風の強さを考慮してガラスを厚くすることが一般的かと思います。おそらく騒音にもある程度効果があり、データもあると思いますが、その場合にどのくらいになるか計算できますでしょうか?
セントラル硝子社のサイト「板ガラスと遮音」に「各種ガラスと窓の透過損失」の一覧表が掲載されています。
http://www.cg-glass.jp/pro/pdf/all/technique_P67-76.pdf
たとえば、単板ガラスであれば、厚さの違いによる透過損失(=防音性能)は次の通りです。
3ミリ:25dB
5ミリ:27dB
6ミリ:28dB