前回のブログは私にしては珍しく沢山アクセスがあって、なんか続編が書きにくい・・・
マンションのオーナーになると、毎年通常総会があって決算の議案からマンションの財務状況がわかります。真面目にやっている理事会としては、その情報は住んでいる人にも、中古で購入を検討する人にも正しく読み取れるようでいてほしいものですから、何回かに分けて書いていきましょう。
積立金が高いとマンションのお値段は下がる?
ほぼ全てのマンションは、新築時には売主の設定で、積立金が将来的には不足した状態で販売されています。 これは、管理費+積立金のランニングコストと、ローンの返済額の合計額で払えるかどうかを判断する人が多いためです。前回のブログの後 twitter 上で全宅ツイの”かずお君”さんが書いているのがこれ
だいたい月の支払いが1万円の差は0.5%で380万くらいなので、修繕積立金抑えとくとその分高く買えちゃう気分になる新築マジック。住宅ローン減税切れるあたりで積立金値上げすることになるからダブルパンチ感ある。ここはマジで是正しろよ。
— かずお君 (@kazuo57) September 6, 2019
後で積立があがるのを気にしないで、出だしのローン返済を目いっぱいで考えるのであれば、単純計算で、積立金を月1万円余計に最初から徴収されないなら、300万円以上新築マンションのお値段は高く設定しても、”背伸びすれば手が届くと錯覚”させる効果はあることになります。いやちゃんと契約時の説明書類に、この後放置しておくと積立金会計は破綻しますと書いてありますとかおっしゃる(正しいですが)デベ系の方とかずお君さんでやりとりが・・・自己責任でしょ、100円や150円くらい積立金が上がって払えないような人はとんじゃってOKって立場もありますが、積立金の値上げ同様、値上げで払えなくなったなんて滞納者が湧いてきたら苦労するのはやっぱり理事会です。
中古の販売でも、今の積立金の徴収額は必ず表示されますから、資金計画で同じように考える人も多いかもしれない。一方で、”今”積立金が安くても、来年には爆上げを理事会は考えているかもしれないわけで、今の徴収額だけではなく、今その管理組合にはいくら積立金会計の貯えがあるかは意識してほしいわけです。
同じ築浅の築年も同じ2つのマンション。
Aマンションは、積立金は1万円ですが、貯えは1戸あたり100万
一方Bマンションは、積立金は2万円だけど、貯えは1戸あたり200万円ある。
新築時に売主が積立金だけ激安設定する理由となっている当初の”ランニングコスト”+”ローン返済”の考え方だと、Aマンションのほうが300万円高くうれることになりますが、このままでは円滑に修繕を実施できません。 せめてBのマンションのほうが100万円”以上”高く売れるようになってほしいな・・・が意識高めに頑張っている理事長さんの思い。
タワーの積立って200円/㎡/月とかで本当に足りるの?
国交省の”積立金に関するガイドライン”の数字が引用されているのを最近よく目にするようになりました。オリジナルは大した長さでもないし通読できないほど難しいものでもないのでこちらから。https://www.mlit.go.jp/common/001080837.pdf
これの数字が独り歩きしていて、積立金は1㎡あたり毎月200円に値上げすれば足りるかな・・・とか錯覚されがちです。特にタワー物件では月200円/㎡というのはまずとりあえず超えてないとやばいという必要条件であって十分条件とは言えません。
40-50階といったタワーは最近ようやく1回目の大規模修繕の事例がでてきていて、やはり結構1戸あたりでは高くつくというのが明らかになりつつあります。
エルザタワー55 12億円(1戸185万円)
センチュリーパークタワー 17.5億円(1戸230万円)
ザ・ガーデンタワーズ 8億円 (1戸170万円)
これらの事例を見ると、超高層のタワーの修繕は初回から戸当たり200万近くはかかっています。足場仮設等にとてもお金がかかるせいで、初回はせいぜい100万円台の下のほうですむ通常の板型のマンションと”同じ”では足りないような気がします。
タワーの場合大抵修繕周期を伸ばしているわけですが、その場合2回目の修繕ではもう設備系(タワーの設備は大抵特注ものです)の更新も入ってきますから、そこでもずっと通常のマンションよりもお金はかかるはず。私のマンションは24階とそんなに”タワーっぽく”ないですが、一応超高層認定の建物で、いろいろ周期を変えたりとか理事会でExcelシートを弄りまくって検討しましたが、早期に均等割りに移行した今の248円/㎡/月でもギリギリというか多分ちょっと足りません。いかにもタワーらしいタワーで、中途から移行して超長期に均等割の計画を組んで、【実効的な】積立が1平米300円未満では足りる気があんまりしません。実効的な・・・と書いているのはこの後で議論していきます。
これに見合う”今の貯え”と”将来に向けての確かな積立”が確保されているかに、そのマンションに関わる人全員が高い関心をもっていてくれないと、後になってから困るわけです。今すぐ廃墟になるわけはないけど、30-40年先も大丈夫と言い切れるほどの健全な財務状態にあるかどうかは、マンションごとに財務状況を検討するしかありません。
湾岸タワーの管理費と積立金の相場は?
Twitter で私がよく管理ネタのやりとりをするハルミズムさん @harumi_ism https://twitter.com/harum_ism と
がりべんさん @garibenZ https://twitter.com/garibenZ
の2人はともに、湾岸タワーの理事会に関わっている(経験を含む)知り合いですが、2人の許可を特に得て2人の集めた、湾岸タワーの管理費・積立金や、財務状況などのデータを図示しながら今後の議論を進めていきます。
湾岸を選んだのはタワーばかりで、お互い近くに立っているのに、結構違いがあるから興味深いから。
下のグラフは湾岸地区のタワー(20階超え、1998年移行、300戸以上)の管理費と積立金の現状をプロットしたものです。丸の面積が戸数比例。
<1㎡あたり管理費と積立金:うちは湾岸じゃないけど>
これだけ見ると、広い範囲に分布していて相場?といえるものはなく、さらには管理費と積立金の金額はむしろ弱い逆相関の傾向があることがわかります。2つの徴収額の合計で1㎡あたり500円くらいのラインが、意識されている感じかな。
大きくこの線を超えているマンションは一人超パワープレーで我が道をいくブリリアマーレ有明(BMAと略)を除いてありません
・・・この値段を全戸に納得させてるのは凄いことです。上の理屈だと月1万徴収が違うのを”住民や購入検討者全員に納得”してもらえないと何百万か値段が下がったのと同じことになるわけですから。
無論管理費は主に一般会計充当で日々の管理に使われるフロー【家計に例えれば毎月の生活費】なのに対して、積立金は、修繕計画工事への利用以外では簡単に引き戻しのできないストック【同じく例えれば教育資金の積立みたいな使途の確定した貯金】ですから、合計金額が同じであれば、修繕積立に振っている割合が高いほうが将来的にかなり有利です。タワマンによらず大抵のマンションは管理費のほうが積立金より高く初期設定されます。
これだと、傾向が見にくいので、管理費と、積立金とそのマンションの築年数とで各々グラフにしてみると以下の通り。こちらもむしろ相関は逆ですね:
<1㎡あたり管理費と積立金:うちは湾岸じゃないけど>
はっきり相関がわかるのは、積立金のほう。
図の中では、CPT(センチュリーパークタワー)がすでに初回大規模修繕を終了、Wコン(Wコンフォートタワーズ)が今全周でゴンドラをかけて修繕中ですが、多くはこれから。初回までに1戸~200万かかるとして、専有面積1平米あたりに割り算すると3万円/㎡ですから、100円/平米/月ではたまるのに25年かかることになりますから(新築時に払う積立準備金があるけど)、どこかでさっさと値上げするしかない。
ほぼ全マンションが大抵10期くらいまでに200-300円/平米への値上げに成功しています。
<築年数と、1㎡あたりの管理費徴収>
一方で、管理費は新しいマンションほど高くなる傾向があります。年数が経過する間に委託経費の値下げに成功して、管理費も値下げしたというマンションもないではないですが、基本は最近のマンションの管理費が上がってきているせい。
10年前には、有明のマンションがリゾート風のサービスを盛り込んで300円超えに驚いたものですが、今はプールみたいな派手な”お水系”の共用施設とかがなくても、今は300-350円が相場というかごく普通になってきました。坪300万のマンションの管理費は、月平米300円とか不思議なくらいにこの数字は一致する傾向があります。この数字が一緒の場合、マンションの価格は管理費の250年分ということで、マンションの価格が、購入者の平均的な世帯年収の5倍程度とすると、管理費は世帯年収の2%くらいになるようにまず数字が設定されて、利益などをとったうえで可能なサービスレベルが設定されていることになります。
坪400万に達した、ブランズタワー豊洲はちょっと値下げして400円ですね。”貯金”なんですからなにも積立金まで同じ割合で下げなくてもいいのにとか私は思ったのですが。
駐車場収入はどこに消えるの?
最近の湾岸タワーの特徴は、”駐車場の設置率が低め”なことです。ま値段が上がった分堅気の夫婦が購入するには、まさか教育費カットともいかないので、利便性がよいからパパ車いらないでしょ!で優先度の低い車は手放されやすい傾向があるせい。湾岸ー都心では、駐車場の利用料はかなり高めに設定することができますから、例え機械式だとしても、駐車場の使用料は、駐車場そのものにかかるコストを超えた収入となります。実は、これをどこに使っているかはマンションによって千差万別なので、駐車場収入がどの程度組合に入っていて、それをどのように一般会計・積立金会計に振り分けているのかが財務状態を見ていく上でのポイントになります。
これを見るためには、あるマンションの駐車場収入も、12×総専有部の面積で割り算して、専有面積1平米あたりいくらと表記したほうが有利です。例えば駐車場から年4800万円の収入があり、専有部の総面積が4万平米なら、4800万/4万/12=100で、駐車場収入は専有面積1平米あたり100円ということになります。(ほぼうちのマンションの数字です)これで、積立金や管理費と同じ単位になるので、駐車場収入への依存度や、その行先などを議論しやすくなります。
がりべんさん(@garibenZ)あたりは、いきなり駐車場は1㎡ 200円ね!とかTweet しているわけですが、さすがにちょっと解説がいるかな・・・で予習おしまい。
!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
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