第229回 読者からのご質問「郊外とはどこまで?」に答えて

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

こんなお便りが届きました・・・毎度、ブログの記事を読ませて頂いております。マンションの購入を検討している者です。さて、よく記事の中で【郊外】という言葉が登場します。これは東京23区内を都心と考え、それ以外を郊外と考えてよろしいでしょうか?また、東京23区内でも、駅からの距離が離れているものも郊外と考えてよいでしょうか?

 

今日はこのお便りにお答えしつつ、マンションの場所選びについて書くことにします。

 

●郊外・都心に明確な定義があるわけではないが・・・

一般的に23区以外は郊外と言っても間違いではありません。23区以外とは、武蔵野市や三鷹市、町田市、青梅市などですが、すべて東京都心から見て西側にあります。一般に「東京都下」と呼称されます。

 

しかし、駅で見ると吉祥寺や国分寺といったJR中央線の駅を郊外と断定的に言うのは住人に対する気使いからか少し遠慮がちになる人が多いようです。

 

ともあれ、中央線はビジネスの中心地「丸の内」の玄関「東京駅」へダイレクトにつながり、快速電車も頻繁に走るので昔から人気の高い鉄道でした。一方、東京駅の近くにあった東京都庁が新宿に移転して以降、「新宿」は副都心の位置づけが強まり今日に至っています。

 

ビジネスの拠点も新宿に一部が移転し、新宿駅に直接つながる「京王線」と「小田急線」の沿線も開発が進み、居住地域として発展して今日に至っています。これらの沿線の駅の中には、人口の増加に伴って大きく変貌して来た中核都市があります。

 

中核都市の中には、郊外といえども大きく人口が伸びた都市が存在します。例えば、東京郊外の八王子市(人口:58万人)、町田市(人口43万人)、府中市(同:25万人)、調布市(22万人)、などです。

 

ここでの郊外は、東京都の郊外を念頭に置いていますが、実は東京都から見れば神奈川も千葉、埼玉も郊外です。話がどんどん広がってしまうので、ここは「東京都下」に限定して進めることにします。つまり、23区外の東京はすべて郊外と規定します。。

 

●郊外都市の多くは住宅街

東京郊外には、工場の多い街もありますし、大学が集積している学園都市もありますが、多くは住宅都市です。

 

都内は高くて手が出ないので、郊外に住宅を求めて東京から移り住んだ人が多かった時代がありました。職を求めて地方から東京にやって来た若者も、当初は都区内のアパートに住みましたが、やがて結婚を機会に郊外に移住するようになりました。

 

また、郊外に建設された規模の大きな工場の職員は地方都市からも集められましたが、最初は独身寮に住み、何年か先には家族寮か近隣アパートに移り住みました。

 

こうして、東京郊外に定住人口が増えて行きました。ところが、高度成長が止まり、郊外立地の工場が海外に移転して行くと、工場勤務者は職を失い、新たな職場を求めて東京都心に向かうようになりました。

 

その一方、東京都心に職場を得た人が結婚を機に職場から遠い郊外に住まいを求める流れも起こりました。東京は家賃が高いためです。企業の家族寮も郊外に数多く建設されました。

 

こうして、郊外に家族で住み、都心の職場に通うという構図が出来上がったのです。

 

家族寮は、郊外といっても都心の職場に通勤しやすい「準郊外都市」に建設されました。通勤時間で言えば、1時間前後の立地でした。

 

●マイホームのブームが来て

日本が戦後の貧しい時代を経て次第に豊かになって来ると、やがて借家からマイホームに移り住む階層を増やすこととなりました。

 

マイホームは一戸建てが中心でした。庶民は遠距離通勤してでも、郊外の庭付き一戸建てをマイホームとして「男子一生の仕事」というくらいの覚悟で買った時代もありました。言い換えると、マイホームと言えば「庭付き一戸建て」が夢の対象でした。

 

ところが、地価の高騰によって「庭付き」は購入が困難になり、広い庭付き一戸建てを買うためには長距離通勤を強いられるようになりました。

 

その一方で、西洋長屋と揶揄された分譲マンションが登場します。マンションなら、遠くに行かなくても、つまり、遠距離・長時間通勤をしなくてすむ近距離に住むことができると、人気を集めるようになって行ったのです。

 

●人手不足とマンション需要

日本の少子高齢化は人口減少につながるだけではなく、活力を失い国の衰退につながると懸念されています。そして、それは大きな社会問題ともされます。人口を減らさないようにするには、一組の夫婦が2人以上の子供を産む必要があります。しかし、現実には1.4人しか生んでいないのです。複数の研究機関が、そう遠くない将来、日本の人口は1億人未満に減ってしまうと発表しています。

 

高齢化が進んでいます。街を歩くとお年寄りばかりが目立ちます。人口が減れば、必要な家の数も減ります。既に「家余り」の時代になっています。

 

人口減少は、生産年齢人口の減少、言い換えれば働き手の減少を意味します。人手不足の解決策のひとつは、主婦が働きやすい条件を整えることですが、住まいに関して言えば、職場から近い所に家を持たせることです。

 

職場に近い場所に安い家賃の社宅や賃貸マンション、分譲マンションを用意することと言い換えることができます。賃貸マンションを低家賃で住めるようにするには、雇い主が一部を負担する策しかありませんが、それが可能なのは大企業だけです。しかし、その大企業であっても、負担を長く続けられるわけではありません。大抵、年齢制限などを設けています。

 

会社員としては、勤務先が負担してくれている間に頭金を貯めるなどしてマイホーム購入に備えることが不可欠になります。企業が優秀な人材を確保するために、給与その他の負担を増やすのは当然としても、永久に負担することは困難なはずです。

 

雇用される側の会社員にも転職の事情が生まれる場合があります。転職先に社宅や家賃負担制度があるとは限りません。夫婦のうちの一方の勤務先にあっても、他方にはないということもあります。その意味でも、タイミングを見てマイホームを購入することが必須と言えます。

 

優良企業に勤めることができれば、家賃負担の少なさから手取りの高所得が得られます。優良企業は都心に社屋を構えています。通勤に便利な場所にマイホームを取得するのは必須と言えそうです。しかも、夫婦そろって通勤しやすい立地が条件となります。

 

好立地のマンションは需要が多いので、中古といえども価格は高いのです。「中古なのに」と憤慨して検討をやめてしまった人にときどきお目にかかりますが、利便性が高く、好条件のマンションは新築に少ないので、いやおうなく中古も検討物件に挙げざるを得ないのが現状です

 

たまに出て来る新築の候補物件も立地の良いものは高過ぎます。それでも手が出せる人がいるのも確かです。しかし、新築マンションの供給は大きく減少しています。待っていても、予算内で希望する物件は出て来ないと考えなければなりません。

 

日本経済が成長を続ける限り、人手の確保は必須です。人口が増えそうもないので、外国人の雇用を増やす以外ありません。しかし、当面は結婚後の継続雇用、高齢者の継続雇用などが不可欠です。

 

歴史ある大企業だけでなく、新興の成長企業も優秀な人材を確保しなければなりません。そのためには、給与の多寡だけでなく福利厚生にも力を入れなければなりません。借り上げ社宅や賃料の補助です。

 

言い換えると、都心に近いマンションには需要が集まるのです。その結果、価格は強含みになるというわけです。

 

買手の立場では、高いことを覚悟しておかなければならないことを意味します。しかし、将来の売却においては、高値を期待できるということでもあるのです。

 

 

●東京23区でも地域を分けて考えることが必須

東京都区内でもマンションなら買える。マンションでも問題ない。このような認識と理解が広まるに伴って、庶民のマイホームは一戸建てからマンションが主流となって行きました。遠距離通勤より、庭はなくても「マイホームはマンション」という認識が広まったのです。

 

マンションは庶民のマイホームとして定着しました。その後、マンションも値上がりすることがあると分かり、東京ではマイホームと言えばマンションというイメージが定着したと言って過言ではありません。

 

同時に、高く売れるマンションと売りにくくて安いマンションとの差異に関する研究、沿線による人気度といった研究も進んで行きました。

 

しかし、新築志向の強い日本人にとって中古マンションはまだ遠い存在とも言えるかもしれません。人気のない中古は安くなってしまうのが当然と受け取られているからです。

 

その一方で、新築並みの価格で取引される中古マンションも多数存在することも知られるようになりました。新築マンションが次々に建設された時代は中古に目を向ける人はなかったので、中古マンションは価格が下がる一方でしたが、今日、とりわけ最近数年は同地域の新築を上回る高値の取引も特殊なことではなくなりました。

 

同じ地域に新築マンションがいつでも買えた時代から、最近5年ほどは新築マンションの供給が激減したため、中古人気が高くなりました。

 

しかし、高く売れる中古マンションといえど、新築マンションとの差異を見ると、一律ではありません。あるマンションは地域の新築マンションの価格を超える高評価になっていますが、あるマンションは地域の新築マンションの半値でも買い手がつかないなどという例もあるのです。

 

新築マンションと中古マンションの価格差は、どのような要因によって生まれるのでしょうか?築年数の差でしょうか?ネームバリュー(マンションブランド)の差でしょうか? 駅からの距離の差でしょうか?あるいは、同じエリアでも鉄道沿線の差や最寄り駅の差でしょうか? それとも、マンションの高さやスケールの差でしょうか? 間取りや日当たりでしょうか?

 

以上のような要因も確かにありますが、新築マンションの供給の多寡が大きいのです。新築志向の強い日本人でも、品物がない状態であれば嫌でも中古に目を向けざるを得ません。

新築にこだわり続ける人は、場所を変えてでも探そうとするでしょう。とはいえ、場所を変えるといっても範囲は限られます。通勤の問題、子供の教育環境の問題などがあるからです。一番の問題は価格です。予算を無視して購入を検討する人はいないわけで、そこから目標を探すと、自ずと立地条件は絞られるようになります。

 

ここで具体の鉄道沿線や駅、地名を挙げて解説するのは憚りますが、以下の10項目だけお伝えしておきます。

 

①郊外よりは都心・準都心がベター

②駅から徒歩10分よりは5分以内の立地がベター

③都心に出るのに乗り換えを要する鉄道より都心ダイレクトの鉄道沿線がベター

④乗降客数の少ない駅より多い駅が最寄り駅である方がベター

⑤各駅停車のみの駅より急行停車駅がベター

⑥新築にしろ中古にしろ、販売価格が高いエリアがベター

 

ついでに、そのほかの条件もお伝えしておきましょう。

⑦階数が高い物件の方が低い物件より高値になる場合が多い

⑧戸数は、少ないより多い(小型より大型)がベター

⑨月額の修繕積立金の多い物件の方が良い物件である場合が多い

⑩中古マンションの価格は市場に査定がゆだねられているが、新築は売主の都合だけで決まっている

 

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

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