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僕が、マンションについて固執するきっかけとなったのは、初めてのマンション購入を失敗したからに他なりません。
マンション前のバス通りを挟んだ所に月極の駐車場があったのですが、売却する際、仲介業者だけでなく、内覧に来た方からも『将来、駐車場に高い建物が建たないか心配…』と言われ、売却活動に苦労しました。結果、その駐車場には、やはりマンションが建ってしまったわけですが…。
今回、以下のようなお便りを貰いました。
差出人:じょん
現在、郊外駅近のマンション購入手続きをすすめています。まだ若く、世帯年収も低いため低層階で購入しました。
手付金も払いあとは内覧、引き渡しを残すのみなのですが1点不安要素があります。それは、ベランダ目の前が時間貸し駐車場であり物件が商業地域に建っていることです。商業地域ということもあり、将来的にはビルやマンションが目の前に建つのかもしれないのですが、そうなると日当たり0、眺望0になります。
いまのとこ、低層とはいえ目の前は抜けていて日当たりもいいのですが、将来眺望0、日当たり0になったらどの程度資産価値を維持できるのでしょうか。
(原文のまま)
当時の僕と同じような切実な悩みとお見受けし、僕なりの回答を致します。
資産価値に関する概念、価格を維持するという比較対象や、マンションにまつわる諸条件が不明なことから、以下をイシューとしました。
新築で購入した駅近マンションのバルコニー前にビルが建ち、住環境が悪化したら、10年後にリセールバリュー(以下RV)は影響を受けるか
目次
新築で購入した駅近マンションのバルコニー前にビルが建ち、住環境が悪化したら、10年後にRVは影響を受けるか
結論から。人気のエリアや希少な立地の駅近であれば、RVへの影響はほぼ無いと考えます。ただし、郊外の人気が無い駅、乗降客数が少ない駅などでは、いくら駅近であっても、住環境の悪化の度合いによっては売却に時間がかかる、つまり値下げをしないと成約できないケースが想定されます。そうした場合、周辺RVの相場よりも10%前後くらいまでは下がる覚悟をしておきましょう。
以上の回答については、3つの視点から考えてみました。
1、RV(%)に影響する売出し価格
2、駅近であること以外の条件
3、バルコニー前の住環境の悪化度合い
RV(%)に影響する売出し価格
RV(%)は暴落率ですから、後々の相場に影響するかを見る上で大事なことは、新築時の売出し価格です。RV(%)=(中古の価格 / 新築時の価格 ✕ 100)
条件が悪い住戸は、相対的に価格を下げて販売します(値引き後でも同じ事)。条件が良い住戸と、悪い住戸で売出し価格が同じだったら、悪い住戸がリセールにおいては影響を受けるのは当然です。そこを前提として押えておきましょう。
質問者の方の部屋の価格は、周辺のマンション相場、他の条件の良い部屋に比べてどうだったでしょうか。割安に購入できたでしょうか。
駅近であること以外の条件
リセールバリュー(以下RV)とは、需要と供給のバランス、人気のバロメータの表れだと思っています。マンションの人気を形成する要素はなんでしょうか。立地、間取り、日当たり、眺望、周辺環境、大手ブランドなど、様々な要素があると思います。中でも不動産の価値、人気は、なんといっても立地です。これは今更、疑う余地は無いでしょう。国土交通省のマンションに関するアンケートでは、72%の人が「駅に近い事」を1番の検討材料にすると答えています。
マンション総合調査から分かる、マンション選びのポイントとは? https://t.co/kdM3nCxiEQ @suumo_journalより
— すまいよみ (@sumaiyomi) December 23, 2019
世に世に溢れている様々なデータからも駅近が有利だということがわかります。例えば、SUUMOでは、直近の「東京カンテイ」のデータを以下のように紹介していました。
築10年のマンションで、駅徒歩3分以内が107.3%、6分以内が103.2%のRVです。
しかしながら、駅近であれば、どこでも同じようなRVを維持できるでしょうか。
各駅停車しか停まらない郊外の駅や、モノレール駅の駅近では、検討者に訴求しきれず、駅近以外の条件、例えば、間取りや日当たり、子育て環境まで吟味される余地が生じるかも知れません。そもそも選択肢として戸建ても競合に入ってくるかもしれません。そうした街では、「駅近」という要素だけで需要がマンションの供給を上回らず、売却に時間がかかり、結果、値下げしないと成約にいたらないため、RVに影響が出ます。
ただし、郊外でも、例えば首都圏、立川、八王子、海老名、松戸など、ビッグターミナルや人気の街であれば、相当数の需要が見込まれるでしょうから、駅近以外に少し条件が悪くても、RVへの影響は軽微ではないでしょうか。
他の条件が悪くても、需要が上回ることで早々に売れる街は、以下のような「資産価値が落ちない街ランキング」に掲載されるような街(エリア)です。
資産価値が落ちない街ランキング2019 10年間の資産価値を調査~首都圏編 | SUUMOお役立ち情報 https://t.co/Sz4PjkhSrb
— すまいよみ (@sumaiyomi) December 23, 2019
バルコニー前における住環境の悪化度合い
住環境の悪化する度合いはどれくらいでしょう。バルコニーの目の前なのか、車2台がすれ違う10メートル道路を挟んでなのか、その度合いにもリセールへの影響は少なからずあるかも知れません。目の前の駐車場の用途地域が「商業地域」と言うことでしたが、どのくらいの広さなのでしょうか。まさかタワマンが建つほどの広大な土地でしょうか。高さ制限などの諸条件は地区によって異なりますので、本来であれば、事前にデベロッパーや地元の自治体に確認しておきたいところです。例えば、道路を挟んだ距離で、建っても7階建てまでの高さなどであれば、日当たりや眺望は制限されるものの、駅近という利便性と天秤にかけた時、そこまでのデメリットにはならず、影響はほとんど出ないかも知れません。
実際の取引事例から見る
東京イーストの物件で例を挙げます。「プラウドシティ越中島」(2019年竣工)は、住環境がそれほど良くなくても、駅徒歩4分、また、湾岸や都心エリアに近接しながら築浅のマンションが極めて少ないエリアの希少性という要素で人気の物件でした。
特に低層階はお世辞にも良いとは言えない住環境の部屋が多かったのですが、バス通りにほど近く、10メートル道路を挟んで9階建てのマンションが建つ向かいのAFタイプ(角から2番目)の部屋の価格設定は以下でした。2階72.86㎡、5,780万円
8階72.86㎡、6,609万円
住環境がほぼ潰れた2階と、日当たりが望める8階の価格差は800万円以上ありました。
では、10年後のRVが90%としたら、どうでしょうか。それぞれ、2階→5,202万円、9階→5,948万円になります。将来的に2階住戸の方がリセール面で影響を受けるか、つまり、2階住戸の方が、85%や80%まで下げるかと言うことですが、僕はそう思いません。分譲時、エリアの希少性や駅近であることで需要が高く即売れたのです。売れるまで時間がかかるどころか、営業さん曰く、むしろ『安い部屋からあっという間に売れました』だったのです。ひょっとしたら、デベロッパーが付けた価格差ほど、8階の住戸と比べてリセールが下がらないことさえあるかも知れないのです。
もう1つ例を挙げます。これも東京イーストの物件。2009年竣工、押上駅徒歩6分の「ラヴィアンコート墨田業平」というマンションがありますが、西向き住戸のバルコニー目の前、本当に目の前です、5m程前に6階建てのマンションが建っています。
このマンションは、ちょうど築10年でしたが、今年、6階、62.31㎡の住戸が、4,980万円で成約に至っています。この部屋厳しいなあと端から見ていましたが、すぐ成約されました。10年前の分譲価格は4,148万円です。先ほどのリンク内「人気の街ランキング」60位の押上のRV106%、「駅近から見るRV」駅徒歩6分の103.2%をはるかにしのぐ、120%で決定したのです。つまり、住環境など他の諸条件などよりも、築浅マンションが皆無であるエリア特性、押上エリアの人気、駅近への需要が勝った結果、住環境が悪くてもこの価格ですぐ買い手がついたのでした。
以上、3つの視点から考えてきましたが、質問者の方の購入したマンションはどうでしょうか。
購入価格はハンデが反映された価格だったでしょうか?
郊外としても人気の街や急行停車駅など乗降客数が多い駅でしょうか?
ビルが建ったとして、住環境はどれくらい悪化しそうでしょうか?
結論に戻りますと、相場より低めの価格で購入して、人気のエリアや街の駅近物件でしたら、リセールに影響は無いと考えます。少しでも当てはまらないところがあれば、相場のリセールよりも10%くらいは下がるリスクを覚悟しておく必要があると思います。
5,000万円で購入→10年後のRVが相場的に90%とすると4,500万円
そこを▲10%の80%くらいまで、つまり4,000万円くらいまでは見ておくと言うことです。
今後、どうすれば良いのか・どう考えるべきか
質問者の方は悩んでいることと思います。これからどうすれば良いでしょうか、どう考えれば良いでしょうか。
住環境は潰れたとしても、駅近の利便性は、何にも代えられません。交通利便性だけで無く、駅前には様々な施設が集まりますので、マンションのそばに大型商業施設があるのと同じ環境になります。雨の日や、荷物が多い日のお出かけや、子育てにも困ることが少なく、快適に暮らすことができます。そのメリットを優先して購入したのではないでしょうか。
そして、資産価値に影響するかと言う不安ですが、そもそも永住する終の棲家として購入したのであれば、RVや資産性は含み益として自己満足的な概念として留まる事が多いように思えます。マンションなんて、人が住めばどこも中古になって、資産価値とか大きな事を言えるのは、都市中心都の限られた物件くらいです。確かに、この7年間でどこもかしこも大きくマンションは高騰し、リセール、資産性などの言葉がもてはやされるようになりましたが、ある程度上がりきってしまった今、これからも資産価値が高まる時代であり続けるかは不明です。せっかくの住まい選び、お金や資産性だけに追われて、一喜一憂するのも寂しい気がします。
それとも、いつか売らないといけない、流動性が高くないといけない何か事情があるのだとすれば、資産価値として購入時の価格と比較するより、現在借り入れしている住宅ローンの残債よりも上回っていることが重要だと考えます。
ただし、そもそも根本的な事として、目の前にビルが建ったときに、駅近とか関係なく、住宅として、眺望と日当たり、住戸内の明るさが潰されることが許せないと言うのであれば、それはよくわかります。もし支払っている手付金が100万円などの『少額手付け』だとしたら、勉強代として割りきり解約する手もあります。
それでもです。また戻りますが、忘れてはいけないこと。質問者の方には、「駅近」という何にも替えられない大きなメリットがあるということ。そして、まだ目の前に大きなビルが建った訳ではありません。もう一度、自分自身の住まいへの優先順位、価値観とよく向き合ってください。
大きな後悔はして欲しくありませんが、住まいは今や一生物の時代でもありません。後悔したら買い替えたり、貸し出せば良いだけです。駅近という強みがあるので、困らないはずです。さほど重く考えないでいただきたいと思います。
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