第234回 「一に立地、二に立地。肝心なのは立地条件

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

正月明けは毎年のことながら超多忙の日々を送っています。年明けから1か月を経過してしまったのがウソみたいに、毎日、朝から夜おそくまで、ご依頼マンションの調査とレポートをまとめる作業に追われています。

 

新築の販売物件が激減したにも関わらず暇にならないのは、悩ましい物件が多いからかもしれません。また、昨年出版した「マンション大全」のおかげで地方都市からのご依頼が増えたせいもあるのです。

 

根本的には判断に苦しむ物件が増えたせいだろうとも思います。

 

さて、今日はマンション選びの「現況における留意点」について書いてみようと思います。購入を検討中の読者にストレートに役立つ記事にしようと思います。

 

●マンションの価格はどう決まる?

<新築マンションの場合>

・・・・・いうまでもなく原価積み上げ式で決まります。原価とは土地代と建築費、これに広告費等の販売経費を加えて最後に利益を見込んで分譲価格が決まるのです。

 

マンションデベロッパーの最終利益は10%前後と言われています。 これによって本店経費や借入金の金利、最後に企業利益を賄うのです。

 

ざっくりと言えば、粗利20%によって分譲マンション事業は構築されています。別の言い方をすれば、分譲価格を柔軟に決めることができるほどの余裕は元々ないビジネスなのです。

 

無論、値引き販売や予算を大きく超える広告費、追加工事費といった計算外の出費がなければ、マンション事業は儲かるビジネスと言えなくもありません。しかし、思惑通りに進むとは限りません。計算とおりにすべてが運ぶことはないのです。

 

実務経験者である筆者は、すこぶる好調に進んだプロジェクト(物件)もあった反面、期待外れだったプロジェクトもあったことを知っています。経済環境の変化、住宅ローン金利、政策的販売促進制度の変化・有無によっても結果は変わることを、身をもって体験して来ました。

 

中でも、用地取得の難しさに苦労をした経験が痛く記憶に残っています。

 

ともあれ、企業は利益追求が絶対的な使命ですから、赤字と分かるビジネスを進めることはしないものです。 原価と販売経費の積み上げによって販売価格が決まるとしても、売れないような高値を設定するわけもありません。

 

マンション分譲は、土地を買い、設計して行政の許認可を得る。そのあと、工事会社との建築費を決めて着工に踏み切るまで、大型マンションなら2年以上を要します。小規模マンションでも着工までには1年近い時間がかかるのです。近隣住民の建設反対運動によって着工まで5年を要したなどという例も少なくありません。

合意に達したとしても、様々な要求を呑むことになって原価が増えたりします。

 

<中古マンションの場合>

・・・・・新築マンションの価格が「原価積み上げ式」に決まるのに対して、中古マンションの価格は市場動向によって決まるという点が大きく異なります。

 

中古マンションの売り手は、買い値より高く売れたら嬉しいですが、市場は売り手の希望額とは無関係に価格を決めるのです。買い手から言わせれば、いくらで買った、いくらのリフォーム代がかかったなどというのは全く関係ないことです。

 

総額で5000万円を要したから、それ以上で売りたいと考えたとしても、市場はそれを許しません。反対に、8000万円でも買い手がつくといったこともあります。それが市場です。

 

値札を5000万円と書いても、誰も買いに来ないときもあれば、8000万円と書いた値札のマンションがあっという間に売れる。これが中古マンションの市場の実態です。

 

中古マンションの価格は、どのように決まるのでしょう。 技術的なことはさておき、たちまち買い手がつく価格は安値、長い時間がかかって買い手が決まらないのは高過ぎる価格、その中間が適正価格ということになります。

 

しかし、買い手がつく価格をあらかじめ予想するなどということはできるものでしょうか?適正な売り値をどのように決めるのでしょうか?そんな疑問が湧いて来た人もあるでしょう。

答えを短く述べましょう。それは、過去の当該マンションを含む「近隣の成約事例」を指標にすればいいのです。

 

売却を不動産会社に依頼すると、査定書なるものが届きます。あなたのマンションはいくらなら売れるでしょうという数字が書いてあるものです。そこには、査定額と売出し額という二重表示になっているのが普通です。

 

「査定額はOO万円だが、売出しはOO万円でやってみましょう」というわけです。売り手は、高く売れるのに越したことはないので、高値売出しを希望します。結果的に、過去の成約事例を上回る高値で売買が成立することもあるのです。

 

この成約価格が業者だけが見ることのできる記録(REINS情報)に残り、その高値が次の売り物件の査定価格に反映され、数か月後には、地域相場の上昇となって流布されるのです。

 

つまり、中古マンションの価格は買い手が決めているようなものです。ゆえに、人気マンションは高値が続き、ときに独り歩きして高値が定着したりもするのです。

 

原価積み上げ式の新築マンションの場合ですが、デベロッパーは当該地域で売れる価格の上限レベルを知っています。過去の分譲事例と、その販売経過、成否を調査すれば「価格の壁(上限)」が分かるので、それを大幅に超えそうなら、そのプロジェクトには手を出さないものです。

 

しかしながら、思惑通りには行かないことも多いもので、予定外の出費や予算に収まる建築費で請け負うゼネコンが見つけられない場合もあるのです。用地取得も難しいので、他社との競争で高値の仕入れを余儀なくされる場合もあります。

 

個人には、こうした「仕入れ額を基準に置くという概念はない」のです

 

<新築と中古の価格決定方法の差>

・・・・・新築も中古も過去の販売事例が指標になって価格が決まるという点は同じですが、決定的に違うのは「価格の硬直性・柔軟性」です。

 

新築は、原価積み上げという確固たる決定方式であるのに対し、個人オーナーの中古マンションには、たとえいくらであろうと「売りたい・売らなければならない」事情があれば、購入額(仕入れ額)がいくらであるかは無関係だという点です。

 

補足しておくと、新築は組織ですが中古は個人だけが関わりを持ちます。価格決定のスピードも柔軟性も個人が早いものです。

 

●価値ある建物とは

新築にせよ、中古にせよ、マンションの価値を左右する要素は5つあります。優先順を付けると、第1位は「立地条件」なのですが、立地は後回しにして「建物」を先に見ることにします。

 

第2位:建物規模・・・・・少なくとも50戸以上が望ましいですね。小さいと存在感に欠けるきらいがあるからです。また、小さ過ぎると管理費が割高になるか、管理内容が悪くなる心配もしなければなりません。

さらに、一定の規模がないと共用スペース・共用設備も貧弱になって豪華さを醸し出すのが難しいためでもあります。

共用施設も、建物規模が大きいほど様々な利便施設や癒しの空間を設けることが可能になりますが、小規模マンションでは集会室(談話室・雨天こども遊技場など)すら用意できないものです。

 

第3位:外観・玄関・空間デザイン、及び共用部分のプラン・・・・・外から見て他人が羨むようなものであるかどうかも大事なポイントです。価値の源泉とも言える要素です。どのようなデザインが良いかの法則はありませんが、抽象的な表現を使うと、「格好がいい」、「豪華絢爛な雰囲気」、「個性的で異彩を放つ」、「上質・高級な感じ」、「美術館や博物館みたい」、「高級ホテルのようだ」などでしょうか。

 

第4位:間取りや内装、設備など専有部分と共用の設備・・・・・共用設備の装備内容や耐久性・耐震性の高い構造かどうか等で価値が変わります。

 

専有部分に関しては、向き、階数、間取り、設備・仕様などを総合的に見て判断されるものです。これらをひとくくりにしたのは、それぞれのアイテムの価値が持つシェアは高くないからです。

 

第5位:ブランド有名業者が売主、または大手ゼネコン施工の物件)・・・・・これは第4位に繰り上げたいほどですが、ブランドイメージにふさわしくない物件も見かけるので5番目としました。

ただ、ブランド価値も築30年を超えた辺りから価値判断には関係がなくなる傾向が見られます。

 

第6位:管理体制とメンテナンス・・・・・建物規模と密接な関係になるのが管理人の勤務態勢で、最も懸念されるのが巡回管理という管理人不在マンションです。小規模マンションに多い管理方式で、いわば取締り(番人)がいないマンションはルール違反者が増え、秩序の乱れが常態化してしまうのです。

マンションは管理を買えといわれるほど重要な管理は、管理人がいればそれで良しといった単純なものではないものの、少なくとも週5日以上、1日5時間以上はマンションに勤務・滞在し、目配りをすることが必須なのです。

長期的なメンテナンスをいかに実行していくかは、資産価値の維持の観点では最も重要な項目と言ってもよいのです。築20年くらいまでは、どのマンションも見た目で差はできにくいのですが、その先は徐々に格差が生まれます。

 

従って、中古マンションを検討するときは優先順位が第6位ではなく、第2位に繰り上がると考えなければなりません。

 

●価値ある立地条件とは

マンションの価値を大きく左右するのは立地です。価値ある立地とはどのようなものを指すでしょうか?

 

郊外よりは都心が良く、駅から離れているよりは近い方が高く評価されます。

仕事の関係で郊外都市に住むほかない人はどうしたらいいかと聞かれれば、「当該エリアで一番の立地を狙うべき」と答えます。

 

東京なら、順位をつけるのが難しいほど一番の立地は多数あります。都心と言ってもその範囲は広いのです。区別で言えと言われても、その数はひとつではありません。

 

都心なら、たとえば中央区のマンションなら、最寄り駅を徒歩5分以内としても二つも三つもあったりしますが、少し都心を離れると徒歩10分以内に拡大しても最寄り駅はひとつしかなかったりします。

 

その意味で、郊外の場合、駅から近くて便利という基準を今は「徒歩5分」に置くべきと考えます。

 

統計調査のデータを見ても、5分と10分ではマンションの売り値に大きな差が出ています。将来の売却額を気にするなら「駅から近い物件とは5分圏のこと」と思うべきなのです。

 

●妥協しても良い条件と妥協しない方が良い条件

無論、誤解のないように補足しておきますが、5分を超えてもスケール感や環境など他の要素が抜きん出ていれば差し引きプラスがないわけでもないのです。

 

環境や眺望といった要素も立地条件の中に包含されます。つまり、他に素晴らしい差別感を有する条件が備わっていれば、多少のことなら駅から距離があってもマイナスを補ってくれるのです。

得難い眺望、得難い緑・公園といったことです。

 

環境の良さは、マンション開発そのものがもたらしている場合があります。すなわち、大規模マンションは、敷地の中に公園を設けたり、樹木をふんだんにレイアウトしていたりします。新築中の場合は、描かれた完成予想図や模型などから想像力を働かせていくしかありませんが、中古マンションの場合は現地を訪れれば一目瞭然です。

 

価格が安くても駅から遠い物件には手を出さない方がよいと筆者は言い続けて来ました。用地不足の時代には、仕方なく駅から距離のあるマンション開発も少なくなかったのですが、近年は駅距離を優先して開発する傾向になりました。

そのせいもあって、駅近マンションは珍しくない時代に移行しているのです。従って、駅近マンションに人気が集中し、駅から距離のあるマンションは不人気、ゆえに駅から距離のあるマンションほど安値になっているというデータも公表されているのです。

 

駅から多少遠くても高値売却が可能なのは、マイナスを補う条件・要素が明確な場合だけです。

「絶対距離で都心に近い」、「眺望が素晴らしい」、「公園都市のような好環境の中に建っている」、「マンション独自の足(バス)がある」、「建物も大規模で共用施設が豊か」といったものです。 無論、「管理サービスも良い」ことや居住者が「ルールを順守して気持ちよく暮らしている」といったことなども加わるのです。

 

これらは、小型マンション、小規模開発ではなしえないものです。「隣地が大公園でわが庭」といった得難い立地条件を備えているマンションも加えておきましょう。

 

●リセールバリューの観点を忘れずに

マンションは住んで快適かどうか、そこが最も優先されるべき選択ポイントです。しかしし、マンションに限らず、家はいつか売る時が来ます。そのとき、老後生活を豊かに送るための資産になるのかどうか「負の遺産」にならないかどうか、こうしたことを考慮して物件を選ぶということが大事です。

 

残してやりたい遺産は多いに越したことはないはずです。その意味から、マンション選びは快適な暮らしを送るためのものであると同時に優れた資産であるべきというのが筆者の考えですし、筆者の提供する「マンション評価サービス」や「将来価格の予測サービス」の原点なのです。

かれこれ10年を経過するサービスですが、ご依頼も増えていますし、過去にご利用の方から繰り返しのご依頼も目立つ昨今、筆者も少しは世間のお役にたてていると悦に入るところです。

 

●高値もやむを得ないときだが、立地は妥協しないことが重要

現時点で最も大きな課題、お悩みと言い換えた方が良いですが、価格の高騰が壁になっている点を挙げざるを得ません。

 

新築も中古も高い、これが実感として伝わって来ます。そんな中から買い物を見つけ出すのは難しい、人によっては至難の業なのかもしれません。結果的に、安い物件を求めて立地を妥協してしまう。具体的には、駅から10分に妥協してしまうことだったり、魅力の足りない駅の物件を選んでしまったりするのです。

 

立地条件は妥協をしないこと。これを肝に銘じましょう。

 

筆者がときどき同じテーブルを囲んで物件候補を探すお手伝いをさせていただくことがあるのですが、あっさり見つけ出してしまう体験から、「簡単じゃないか」とさえ感じることがあります。

 

無論、「安くて良い物件はない」のです。しかし、視点を変えると、「ほらこの通り」となったことは1度や2度ではないのです。基本的に、筆者は業者ではありませんし、物件探しをダイレクトにお手伝いすることは滅多にありませんが、行きがかり上、面前でお手伝いし、候補物件を探し出したことは何回もあるのです。

 

運が良かっただけなのか?そんな疑問は残ったままですが、マンション探しはインターネット時代の今、難しいことではない—――候補物件を複数拾うだけなら。そう思えて仕方ないのです。

 

候補物件が探し出せたら、あとは見学をして「素早く決断する」ことです。新築マンションは比較的ゆとりがありますが、中古マンションは素早く結論を出すことが必須です。

 

「素早く結論を出す」そのお手伝いは無論、筆者が喜んで致します。ご縁があれば、探し方ももちろん実演しましょう。

 

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

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