第237回 「歴史的高値の時期だが、今後はどうなるの?」――のご質問に答えて

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

コロナウイルスの問題が日本中、いや世界中を駆け巡っています。学校が休みになっているだけでなく、経済活動も止まって、日本経済はどうなってしまうのでしょう。

 

有名人のH氏が次のようなことを語っています。

 

新型コロナウイルスに対する日本国内の反応は「過剰」だとし、「不必要に怖がっているように見えます」

 

感染を心配するネットの声などについて「騒ぎすぎ。正直、普段からウイルスを蔓延させやすいような所にいる人とか、インフルエンザワクチンとかを打たない人たちが大騒ぎしているのが、本当に滑稽でしょうがない」(中略)と批判し、食事や睡眠をしっかりとって免疫力を高めるなどの対策をすべきだと説いた。

 

また、渡航した海外と比べて、日本は新型肺炎に対する反応が過剰だとし、「情報弱者の人たちがマスコミに煽られて不必要に怖がっているように見えます」とH氏。

 

―――この意見を偶然ネットで見つけたとき、筆者は「そろそろ騒ぎは終わりに近づいている」と思いました。

 

現実には、終息に向かっているという報道もないので警戒は続けなければならないのですが、客の激減で観光地のホテルが倒産したなど、景気の面で悪影響が出始めているのも事実です。日本経済は沈没してしまうのでしょうか?そんな不安も頭をよぎります。

 

マンション市場を絶え間なくウォッチングしている筆者も、今後のマンション市況を心配せざるを得ません。

 

昨日お会いしたご相談者の婦人も不安そうでした。「主人の収入が減るようなことがあったら、マンション購入どころではありませんよね」と。

 

筆者は「心配いりませんよ。日本人は、これまで何度も結束して危機を乗り越えてきたではありませんか。何がどうなるかについて詳しくお話しすることはできませんが、過去の難事も危機も、日本国民はみんなで結束して乗り越えて来たのですから」

 

そんな答えをしながら、マンション市場の行方に改めて思いをいたしてみました。

 

●リーマンショック級の経済危機が来たらマンション価格はどうなる?

景気の先行きを懸念する声も出ています。外国人観光客が景気浮揚に少なからず貢献して来たのは周知の事実ですが、しばらくは当てにできなくなったかもしれません。そのうえ東京五輪が延期にでもなったら日本経済に及ぼす影響は計りしれません。

 

中国に生産を依存して来た企業の経営不安も大きくなりつつあるかもしれません。何より、国内の経済活動が停滞し、企業経営の悪化を招けば、雇用される側の賃金にも影響する懸念が強まります。

 

また、倒産企業が増えれば、従業員の所得にもたちまち影響を与えます。その数が増えれば他人事ではないと身がすくむ思いに至る人も増え、贅沢をしばらく慎もうとする心理、旅行その他の行動を休止しようといった、国民活動の停滞を招き、それが景気の停滞・後退につながります。こうした連鎖は、さらなる景気の悪化となって、まさに「負のスパイラル」を呼ぶかもしれません。

 

高額商品の購入などは暫く慎もうという心理が広がってしまうかもしれません。百貨店の売り上げも落ちるでしょうし、住宅やマンション販売にも影響するかもしれません。

 

売れないマンションは価格が下がるでしょうか?本題はここからです。

答えは、新築と中古で分かれます。先ず新築マンションについて述べましょう。

 

新築マンションの場合は、値下がりはないと思った方がよいでしょう。完成マンションの場合、建築費の支払いがあるので売れない状態を長く放置することはできませんから、多少のことなら値引きしてでも完売を急ごうとしますが、多少とは高々5%です。それ以上は企業存続の危機につながるので避けたいのです。

何より、既に定価で契約した買い手から同率の値引き要求が出てくることが副作用として軽視できないからです。

既契約者に分からぬように値引き販売するでしょうか?それは困難です。値引きの大義名分が必須だからです。たとえば、「モデルルームとして数か月使用して来た部屋だから」がポピュラーですが、それだけで10戸も20戸も売る理由には使えません。

 

「売れないから安くする」のは経済原理から当然の措置であっても、同じマンションなのに高く買わされたことになる購入者は納得ができません。裁判に持ち込もうなどという動きも出て来ます。そこまで行かなくても、納得できない購入者は同率の値引きをしろと売主企業に迫るでしょう。

 

現場は大騒ぎになります。随分昔のことですが、他社の騒ぎを見て対策を講じてから値引き販売を断行した企業も少なからずありました。対策とは、既契約者に対し、値引き率に応じて差額を返金したのです。

 

このような思い切った策を講じたのは、今から30年も前のことです。値下げを決断したデベロッパーは何社もありました。その経験から、デベロッパーは二度と同じ失敗はしないようにと、慎重にマンション分譲ビジネスを展開して来たのです。

 

また、時代背景も異なります。特に超低金利の今日は売れ行きが多少遅くなってもデベロッパーの経営は揺るがないのかもしれません。中堅・中小の専業デベロッパーの多かった時代から大手総合不動産企業が中心のマンション業界に変貌したからです。金利も低く、資金繰りに窮するデベロッパーも少ないのです。

 

景気回復までじっと耐えよう。それまでは、少しずつでも販売を伸ばそう。ケースバイケースで値引きの許可もしよう。デベロッパー各社は、きっとこんなふうに考えているに相違ありません。

 

●中古マンションの場合

中古マンションの売主は殆ど一般個人です。個人の場合、多くが夫婦二人だけで決断することが可能です。法人のように、上司への根回しだ、稟議決裁だなどと、面倒な手続きは不要です。しかも、値引き率も企業より大きくできる場合が多いのです。なぜでしょうか?

 

マンション分譲の利益は、率で見れば読者が想像するほど大きくありません。従って、値引きの許容幅も少ないのです。売れないからといっても、今は大きな値引きを決断するに至っていないのです。

 

他方、個人の場合は売れる・売れないは死活問題と言って過言ではありません。自宅を売却して次のマンションを買おうとしていますが、売れないなら仕方ない。売れてから買えばいいなどと悠長なことは言っておれないからです。

 

つまり、「買い先行」だからです。買い物が見つからないうちに自宅を売ってしまうと住む家がなくなる。そう考えるためです。「買った方のマンションの完成は1年後だから、それまでに自宅を売ればいい。時間はたっぷりある」と高をくくって売りに出している人が多い。これが実情です。

 

無論、買い替え先のマンションの竣工時期が3か月先などという場合もありますが、そんな場合も購入マンションの売主の計らいで時間のゆとりを設けてもらったりもします。

 

それならば、と安心して「買い先行」の行動を決断してしまう売主さんも多いのです。今まではそれで問題はありませんでした。しかし、今後は様相が変わります。

 

思うように自宅の買い手が決まらず、焦る局面がやって来るからです。所有者は止むを得ず値下げを決断します。売却活動を担当する仲介業者と相談して、値下げして再度の売り出しを図ります。

 

この時の値下げ率が問題です。チビチビ、二度三度の値下げをすると逆効果ということがあるからです。中古市場でたなざらしになってしまった物件は適正、適正価格以上に値引きしないと買い手が付かないという事態も起こりえるからです。

 

ともあれ、値下げすれば買い手はつくものです。その下げ幅ですが、新築の売主と違って、実は余裕たっぷりの売主さんが少なくないのです。というのも、中古相場の上昇で、売り物件の多くが購入価格から値上がりしているからです。

 

しかも、購入時からの経過時間が10年以上あれば住宅ローンの債務は大きく減少しています。このため、値下げ幅に余裕のある売主さんも少なくありません。つまり、下げる余地はたっぷりとあるのが普通なのです。

 

従って、中古マンションの場合は売れ行きにブレーキがかかっても、所有者は価格を下げて成約を狙いに行くはずです。言い換えましょう。中古マンションには価格の下げ余地があり、かつ決断にも時間がかからないのです。

 

買手から見れば、中古マンションの方が予算を抑えて購入するチャンスが多いと言えます。「高値の物件を無理して・慌てて買わなくてもいい」のです。無論、今後も強気な価格が通ってしまう人気物件もないわけではありませんが・・・

 

●「どのくらい待てばいいですか?」に答えて

待っていれば値が下がると考えている人が少なくないなあ――そう思う瞬間が何度かありました。その声の裏には、「売れなければ値を下げるはずだ」という単純な経済原則への期待があるのでしょう。

 

しかし、そう単純なものではありません。購買力を超えた価格で市場に出た物件は、やがて修正を余儀なくされるはずですが、期待するほどではないのです。バブル経済の前後を特殊な時期と見て除外し、2000年以降の価格推移(新築)をなぞる限り、修正幅は買い手の期待を裏切るはずです。

 

東日本大震災(2011年)とは全く無関係だったマンションの値動きをおさらいしてみましょう。震災前年の2010年の価格は2008年比で3%余の下落でしたが、そこから再び上昇して今日に至っています。

 

・・・23区だけで分譲単価の推移をなぞっておきます・・・

2005年:坪単価@226万円

2008年:@281万円(05年比+24%)・・・年平均8%の急騰

2010年:@274万円(08年比▲3%)

2012年:@264万円(05年比+17%)・・・この間7年

2016年:@326万円(12年比+23%)・・・4年間でこんなにも

2019年:@371万円(16年比+14%)・・・2010年比で35%も上昇

 

66㎡(20坪)換算で比べてみると、2009年は5260万円でしたが、2019年には7420万円に上昇しています。つまり、10年間に40%余も上ったのです。

 

これだけ上がると、買い手の所得が増え、頭金も大幅に増えなければ売買は成立しません。同一人物なら年齢も10才増えているが所得も増えているはずです。しかし、統計上は違います。10年前と今では買い手集団の構造が変わっているのです。

 

需要層を構成する個々の内容をつまんでみると、共稼ぎ夫婦が増えているため、年齢は大差なくても世帯所得が増えているようです。さらに、住宅ローンの金利も10年前に比べると小さからず低下しました。これによって高くなったマンションにも手が届く家庭が増えているのです。

 

とはいえ、せっかく増えた購買力も、それを超える価格の上昇が起きてしまい、売れ行きは悪化しました。

 

売れ行き悪化の兆候は2016年初頭に既に表れていました。4年を経過した今、売れ行きが好転したというニュースはないのです。

 

購買力を高めた要因が価格高騰トレンドの継続によって打ち消され、販売の低迷状況を脱することができないでいるというわけです。

 

代わって、安いはずの中古マンションを探そうといういう心理が働いた買い手は中古マンションに向かうようになりました。その結果、中古マンションも高騰しました。中古は物件格差が新築の比ではないので、条件の良い物件には新築並みか新築以上の高値が付いています。

 

新築価格が上昇。それが限度を超えてしまったので、代わって中古人気に。その中古も、物件によるとはいえ全般的に高くなってしましました。

 

ここで具体の物件名を出して解説するわけには行きませんが、買い手の多くが購入に慎重になれば、中古マンションの売れ行きは悪化し、困った個人の売主はしかたなく値下げを決断する。早晩そんな状況が来ることでしょう。

 

としたら、買い手は慌てず物色を続けることができます。

 

「いつまで待てばいいか」のご質問をよくいただきますが、「納得できる物件・悪くない条件の物件に出会ったら決断すればいい」とお答えしています。「不透明な時期ゆえに、無理はしないで、ローンを返済していけると思ったら前に進めばいいのです」とも。

 

市況を睨みながら、余裕のある予算を組んで購入物件を選びましょう。不透明な世の中、不透明な経済、不透明な先行き、不安に思うことはたくさんありますが、それはいつの時代も同じです。

 

それでも私たち同胞はたくましく生きて来たのです。筆者も、大損したときもありましたが、大儲けできたマンションもありました。大損したときわが身を嘆いたことはありません。それらの経験を生かしながら、多くの購入者に転ばぬ先の杖と思っていただけるよう、少し厳しく、安全側に見た「将来価格の予測レポート」等をお送りしています。

 

この記事は、第236回「高値のマンション。それでも買いますか?」と併読いただければ幸甚です。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」の

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