このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
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少し前ですが、こんなお便りをいただきました。
「現在の賃貸マンションの家賃が13万円、ただし住宅補助が6万円あるので実質7万円です。家を購入すると補助が消滅します。それでも買った方がいいのでしょうか?」
最近届いたお便りをヒントに、今日は「買うか借りるか」の根本問題について書くことにします。
●そもそもマイホーム購入は何のため
筆者も若いころは社宅住まいでした。転勤に伴って勤務先が用意してくれた借り上げ社宅でしたが、賃料の何割かを会社が負担してくれました。東京から大阪へ、大阪から東京へと2回の転勤によって、そのたびに贅沢な賃貸マンションに住まわせてもらった記憶があります。初めて東京にマンションを買ったときは、家族が3人だったのでコンパクトな2LDKにしました。収納部分を増やして、室内がスッキリするように工夫した記憶が残っています。会社を辞めて独立してから何年か経ってから買い替えたのですが、そのときの希望エリアには丁度よい大きさの物件がなく、たまたま気に入ったマンションは少し贅沢な広さでした。
そのマンションには長く住みました。その後、一戸建てに住むことになりましたが、注文建築だったので自分の好みを思う存分に取り入れ、間取りは無論のこと、設備・仕様も選択したのです。
土地が親のものだったので、資金は建物分だけで済みました。そのおかげで少し贅沢な2世帯住宅を建てることができました。今は、両親とも他界したので要らない部屋、要らない設備が残っています。
家族が減って、家もダウンサイジングの必要が生まれています。このまま今の家に住み続けるのがいいのか、それとも再びマンション住まいに戻るべきか、ただいま思案中です。家族は今のままを望んでいるようですが、筆者は一戸建てを処分してマンション住まいに戻りたいと考えています。
というのも、今の住まいは立地が良くないからです。空気も綺麗で環境、なかんずく眺望がよく、その点では申し分ない家ですが、通勤の必要がない筆者でも、家に閉じこもって仕事を続けることはできないからです。
久々の転居を検討するに当たっては、家族それぞれの事情や希望などを勘案しなければなりませんが、実現にはしばらく時間がかかりそうです。
私事はこの辺りで終わりにして、今日のテーマは根源的な「マイホームのあり方」について述べようとしています。
広い世の中には賃貸派の人もあるようですが、多くの日本人はマイホーム(持ち家)を望んでいることは明らかです。ともあれ、そもそもマイホームを購入するのは何のためなのでしょうか?あらためて整理してみると以下のようなことになりそうです。
※マイホームのメリット(その1)家賃は一生の借金みたいなもの
一定の年齢に達したら家賃は払わなくてよい。そのような老人福祉制度の誕生は期待できるでしょうか?まあ、無理でしょう。家賃は一生払い続けることが必要です。これに対し、マイホームの場合、住宅ローンを家賃に見立てたとしたら、完済したときから永久に払わなくてよくなります。
「一生の借金」と「期限付きの借金」という違いが両者にあるということが言えそうです。
(その2)ローン返済は待ってもらえるときもある
失業したとき、家賃支払いを猶予してくれる家主はいないが、住宅ローンには返済猶予の途が開かれています。返済猶予を願い出れば、どこの金融機関でも大抵は承認されるそうです。数年間、金利だけの返済に変更してもらうことも可能です。
(その3)住宅ローンには生命保険が付帯している。万一のときも、遺族の家は無借金で確保される
住宅ローンを利用して家を購入する場合、あらかじめローンにセットされている生命保険への加入が一般的です。融資した金融機関は、返済途中で借り主が亡くなっても、この保険金で残額を回収できるからです。これによって、残された家族は住む場所を失う心配はありません。賃貸住宅の場合では、一家の大黒柱が死んだからといって、同情して賃料を下げてくれたり、免除してくれたりするような奇特な家主さんはいません。
(その4)ローン返済の方が家賃より負担が少なく、より快適な家に住めるというメリットが大きい
持ち家は大抵の場合、頭金なしで購入したとしても、それまでの家賃並みのローン返済で足りるケースが多いはずです。しかも、持ち家は借家よりグレードアップされた住まいであることが多く、満足度は高いはずです。●景気が悪いときの購入の是非を判断する方法
バブル崩壊から30年も経ち、国内景気は随分良くなったという実感があります。しかし、伸び率は小さいせいか、実感が湧いてこない国民が多いと言えそうです。足元では「新型コロナウイルス」の世界的な拡大が経済活動にブレーキをかけてしまい、東京オリンピックの開催も危ぶまれています。景気の悪化は免れないようです。
こんなときだから、マンション購入を見合わせたいと考え始めた人もあるようです。2012年ころから始まった価格高騰が購買意欲を削ぎ、マンションの契約率が低迷、新築では建物竣工後も売れ残る例が激増しているところへ、世界的な経済の停滞。
オリンピックも果たして実施されるのかどうか分からない。そんな声も増えているようです。
訪日観光客の激減によって廃業に追い込まれた旅館・ホテルだけでなく、多くの零細・中小事業所も出始めているようです。ウイルスの活動が夏になったら収まるという期待は持たない方がよいという報道もあります。
学校は休み、スポーツイベントも延期、花見も行きにくいといった行動のブレーキは未曽有の不況をもたらすかもしれません。そんな状況下、マイホーム購入を検討中だけれども先行き不安が消えないという人も水面下では増えているようです。
しばらく様子を見た方がいいのでしょうか?そんなご質問も耳にするようになってきました。購入するかしないかの判断ポイントをご紹介しましょう。
(その1)「悲観の錯誤」に陥っていませんか?
景気、不景気は繰り返すもので、今は悪くてもいずれ良くなるでしょうし、逆に景気の良い状態も永遠には続かないのです。あのバブル時代、国民の大半は、「永遠に好景気が持続する」と錯覚しました。経済学の本には、「楽観の錯誤」という言葉が出てきますが、それをそのまま日本人は体現してしまったのです。
しかし、その後の状態はどうだったでしょうか?「景気がいいのは、隣国の中国や東南アジア諸国ばかり。日本は、高度成長が終わり、もはや昔のような好景気に沸くことはない。円高の影響によって、日本成長の生命線だった製造業までが、海外に移転していく。景気浮揚の政策を講じたくても、財政赤字が巨額にのぼり、何もできない」。このような見方が一時は一般的でした。
こうした発言を耳にしたとき、筆者は「悲観の錯誤だ」と思いました。
少子高齢化は、いびつな人口構造をもたらし、医療費が増え、年金が減る。若者は内向き志向で、グローバル化に乗り遅れ、外国人が日本企業に入りこむ。賃金は下がり、物価も下がる。中小企業は利益が出ないから、ますます人件費抑制の方向に走る。
こうした現象は、すべてネガティブなもの。明るいニュースはあまりありませんでした。ようやく上向きになって、さあ今年は東京オリンピックもあるから好景気に沸くぞ。そう思った人も多かったはずです。そこに、全く予想外の「新型コロナウイルス」の世界的大流行。
オリンピックは延期されてしまうのでしょうか?先が見えない日々が続きます。しかし、じっとしていては生きていけません。具体的な方策はこれから続々と出て来るでしょう・・・・筆者は楽観論者なので、そんなふうに思っています。
(その2)暮らしを豊かにしたいと思うのが人間。豊かさを取りに行こう
人間は、幸福になることを望んでいます。幸福は、精神的満足を意味しますが、精神的満足は、物質的な欲求と密接な関係があるとも言えます。住まいに関して言えば、広くて日当たりがよく、使い勝手のよい設備が付いていて、便利な場所にある。それが、賃貸住宅なら低家賃で住め、マイホームなら月々のローン返済などが少なければ、家族はより幸福を感じることでしょう。
(その3)先が見えないから無理はしないでおこう
不景気な時は、購入を決断したとしても、きっと無理な買い物はしないはずです。不景気なときの住宅購入は、何年か先に景気が良くなって収入が増えたら、月々のローン返済の負担感は軽いものになることでしょう。不景気な時の慎重な買い物は、先々も安心と言えます。
(その4)将来を完璧に予測することはできないのだから、考え過ぎは意味がない
さまざまな考え方がありますが、先のことは誰も分からないのですから、心配し出したらキリがないことになります。そこで、「まあ、何とかなるさ」と考えている人も多いですし、「家賃を払うのもローンを払うのも同じだから」という理由で決断している人もあります。いわく、「給与が減ったから家賃も減らしてと叫んでも仕方ないのだよ」と。
(その5)でも、もし万一が起きたら?
安全運転のつもりでも、何が起きるか分からないのが世の中。万一、住宅ローンが払えないような事態になったらどうしよう?最悪の場合は賃貸に出し、自分は安い借家を探して移転すればいいのです。
但し、賃料で住宅ローンと管理費を賄うことができるかどうかがキーポイントです。購入しようとしているマイホームを「賃貸に出したらいくらになるか」を調べてから判断するといいかもしれませんね。
●一生借家住まいで行くと仮定してみましょう
20年、30年先のことなど、誰にも分からないわけですが、それでも長期ローンを組んでマイホームを買う人がたくさんあります。勇気ある行為なのか、自信があるからなのか、まあ何とかなるさ、なのか。とにかく新築マンションを購入する人だけでも、毎年8万人前後(全国)は現れます。一戸建てを買う人や古い家を建て替える人、中古住宅を買う人なども含めたら数十万人にもなるのです。
その一方で、「みんなで渡れば怖くない」でなく、やっぱり怖いと逡巡する人もいるのは事実です。
しかしながら、仮にローンを組むのが怖いからと、いつまでもマイホームを持たず、高い賃料を払いながら頭金を貯めることができるでしょうか?
迷いながら行動を起こさず、モヤモヤしたまま進んでしまうとしたら、その先はどうなるのでしょう。
借家であっても、より快適な住まいで暮らしたいと考えるのが普通の人間の感覚というものでしょう。つまり、広い、設備がいい、近いなどを求めるわけです。最初はそうでなくても、家族が増えたり、家財が増えたりすることによって欲求が高まります。
ところが、そのような立派な住まいの家賃はバカ高いのが常です。結局、家賃が勿体ない、馬鹿馬鹿しいと感じ、やっぱりマイホームを持とうと心変わりするでしょう。つまり、ずっと借家で行くつもりであったのが、やっぱりマイホームを持とうと方針転換するわけです。
ということは、マイホーム取得のチャンスが大幅に遅れるというデメリットに繋がります。方針転換までの時間や捨てる家賃が損です。こうした方に筆者も何度かお目にかかりました。
誰でもそうなると断言はできませんが、より快適な住まいで暮らしたいという欲求が生まれることが分かっているのなら、早いうちに買ってしまった方がよい。そう言えるのではないでしょうか。
もちろん安い住宅に住み続けるという選択肢もありますが、それで満足できるだろうか。家族は幸福に感じてくれるだろうか、その懸念がデメリットのひとつと言えます。
持たないデメリットの二つ目は、死ぬまで家賃を払い続けなければならないという点です。収入の減る老後、家賃を払い続けながら、不安なしで暮らしていけるだろうか。低家賃の住まいを見つけて住み替えるという方法はどうだろうか。このような観点から検討してみましょう。
従来、賃貸での生活は、高齢者にとって、新規契約の難しさ、住宅の老朽化などの不安が大きなものでした。しかし、少子化、人口減、高齢化していく日本では、住宅市場も高齢者を意識したものへと変わっていくと考えられます。生活のケア、バリアフリー、コミュニティの充実など、さまざまなサービスが賃貸物件にも盛り込まれるようです。
しかし、高齢者にとって満足度の高い賃貸住宅の数が急に増えることはないだろう。まだまだ現実は厳しいという状況が続くと考えるべきなのではないだろうか。老夫婦が快適に暮らせる低家賃の住まいは果たして見つかるだろうか――そんな疑問が湧いてきます。
過疎地の廃屋でも探して住むことにしますか?そんな場所に引き込もりたくないとしたらどうしますか?やはり、マイホームの取得は切り離せないのではないでしょうか。
早めに手当てし、サラリーマンなら、定年退職時までにローン完済の目処をつける。これが理想なのではないでしょうか。
●買い時かどうかの判断をするときの方法論
日頃から現状の住まいに不満を持っている人が、何かのきっかけでマンションを購入することを考え始めます。そのとき、今が買い時かどうかに悩むことがあるはずです。低金利、ローン控除などの税金の特例、エコポイント付与、いくつも買い時を誘う文句が踊っています。でも、冷静な人は、ちょっと立ち止まって「景気が悪いしなあ。返済していけるかなあ」などと考えます。
ここでは、マンションの買い時に悩んだときの、考え方の整理法をご紹介したいと思います。
(その1)社会情勢を見る
社会情勢とは、景気動向・経済情勢と言い換えてもよいでしょう。景気が悪い時は、浮揚のために必ずと言ってよいほど住宅の建設や購入を促進する政策が登場します。今は、住宅ローンを利用する人に最高で400万円の税額控除をしてくれますし、親から頭金の贈与を受ける人には贈与税を大幅に安くする制度もあります。
また、大きいのは住宅ローンの金利です。毎月の負担は驚くほど軽くなっています。
(その2)マンション市場を見る
次にマンション市場がどうなっているかを見ることが大切です。完売に継ぐ完売と好調なときは、欲しい物件が抽選になったりして手に入らず、本意でない商品を選ばざるを得ないときがあります。そういうときは、業者も強気なので値段の相談を一切受け付けません。言いなりの条件で買うしかないのです。
価格が上昇傾向にあるときも要注意です。まごまごしていると高くなってしまった物件を買うはめになるかもしれません。しかし、慌てて契約したところ、その後しばらくして同じマンションの売れ残り住戸が値下げを始め、悔しい思いをすることもあります。値下げを知って、先に契約した人が文句を言いに行ったとしても後の祭りです。裁判しても勝てないのです。
・・・・誤解のないよう断っておかなければなりませんが、新築マンションの値下げは期待できません。大幅な値下げがあるとしても立地が悪く競争力が著しく低い売れ残り物件だと思いましょう・・・・・
最近は新築マンションの供給量は大幅に減っているのですが、供給状況を見ておくことも大事です。品数が豊富なときは見つけやすく、品数が少ないときは良い物を見つけることができないため、たまたま気に入った物件に巡り会ったとき、慌てて決めてしまうことになりがちです。それで後悔する人も多いので、市場に踊らされない冷静さが必要です。
こうした市況は、どうやって知ることができるかですが、新築マンションに限れば「不動産経済研究所」という専門の調査機関が毎月定期的にデータを公表していますから、インターネットで調べてみるとよいでしょう。
(その3)景気動向とローン返済能力を考える
好景気のときは収入が増えるだろうと期待が膨らみ、つい多額なローンを借りてしまう心理が働きます。反対に、景気が悪いと、勤務先の将来、ひいては自分の将来にも漠然とした不安な気持ちが起こります。景気が回復すれば、経済的不安は小さくなるのでしょうが、それもいっときのことです。最近20数年は、小さな景気、不景気を繰り返していますが、どちらかと言えばずっと悪い状態が続いているとも言えます。
今後も楽観的な状態はなかなか来ないかもしれません。ということは、極端な経済変動がない限り、あまり気にしないでもよいとも言えます。
心配がある今は多額のローンを組まないでしょうから、先へ行って景気が良くなり収入が増えたら、月々のローン返済の負担感はとても軽いものになるでしょう。
バブル期に背伸びして高額な買い物をした人が、その後苦労したことと真反対の状態になると言えます。不景気な時の慎重な買い物は、先々も安心。このように言うこともできそうです。
(その4)ライフプランとすり合わせしてみる
「マイホームは、どうせ買うなら早いに越したことはない」や「子供ができたら買えなくなるから、共稼ぎしている間に買ってしまおう」という考え方もありますが、「子供をつくるのが先だ」というのもあるでしょう。また、「転勤が多いから、定年まで社宅住まいで割り切り、定年後に現金で購入する」という考え方もあります。会社を辞めて起業するとき、直ぐにはローンが組めなくなるから在職中に買ってしまおうと勇気ある決断をした人もあります。
これらは、人生設計と絡めたマイホーム計画と言えるでしょう。
どれが正しいかの判断は難しいところです。そうかといって、何も考えずに行き当たりばったりの思い付きや衝動買いをするのも、いかがなものか。そのような疑問も起きます。
(その5)偶然の出会いがマンション購入につながることも
ところで、モデルルームを見学に行く人にはどのような動機があるのでしょうか。結婚や転勤などの事情がある人も中にはありますが、ほとんどの人が今スグに買わなければならないという事情を抱えているわけではないはずです。でも、急いでいないと言いながらもマンションを買ったりします。
「家賃が勿体ないから」とか、「現在の住まいが手狭なので」、「いつかはマイホームを持ちたいと思っているから」などと、やや漠然とした動機や背景があって行動を開始するのが普通です。
きっかけは、「近くにマンションができたから」、「友人から勧められて」、「転居したお隣さんに刺激を受けて」といったものです――これらが、衝動買いに繋がったという例は少なくありません。
これは、夫婦の出会いに似ているとは言えないでしょうか。たまたま縁があって結婚したというのと同じで、「たまたまの縁でマイホームを購入した」というケースが多いのです。
(その6)買いたい時が買い時
私たちの周囲を見てみると、快適なマンションライフを手にしている人たちの共通点は、いち早く購入しているという点です。既にローンを完済し、日々ゆとりある暮らしを送っていたり、終の棲家で優雅な老後を過ごしていたりします。よく、「金利が安いから今が買いだとか、価格がまだ下がるから様子見が賢明だ」などと、したり顔の人物(専門家?)を見かけますが、それは、人生の中では一瞬のことに過ぎません。
金利の動きは誰にも読めません。毎月の返済額を減らそうと、時間をかけて頭金を増やしても、いざ借りるときに金利が上がっていたら、返済額が減るどころか増えてしまう可能性もあります。
今は低金利が続いているから、今後は金利が下がる余地よりも、上がる余地の方が大きいかもしれません。でも、ずっと横ばいという可能性だってあります。
結局、欲しいと思える物件と出会って、余裕をもって返していける資金計画が立てられるなら、そのときが買い時とも言えます。
価格の変動でも同じことです。金利よりは読みやすいですが、それでも、予想は予想で絶対ではありません。
金利にせよ、価格にせよ、その動向に一喜一憂しながらマイホームの買い時を探すという考え方は、本末転倒と言っても過言ではありません。
ですから、買い時はいつかと考えるのではなく、「買いたいと思ったときが買い時」と考える方が良いのだと思います。