第239回 「コロナの流行で不穏な情勢下、購入に踏み切ってもよいのか?」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

世界中で大不況が来るという発言もチラチラ聞かれるようになりました。不安は消えません。しかし、先進国が協力しながらコロナに打ち勝つ日も遠くはないでしょう。なかんずく、危機に臨むときの日本人は「一致団結できる伝統」がありますから、影響を受ける業種・企業・個人はあるものの、国全体としては遠からず平穏を取り戻すでしょう。

勤務先の業績が一時的に悪化して賃金が減るといった例もあるかもしれません。仕事がなくなったと窮地に立っている人もいるのは確かです。他方、全く影響を受けない業種・企業、公益法人もあるのです。

 

マンション購入者にスポットを当てると、大きな影響はないと見て良いかもしれません。

そもそもマンションを購入する世帯は、年間に総世帯の0.4%しかいないのです。(新築・中古合わせて首都圏全体のは年間購入者数は約7万人。首都圏の世帯数は単身者世帯も含めて約1760万

しかも、購入者は一定以上の所得があって、経済的にも安定している階層です。最近5年ほどの短期間にスポットを当てると、70%以上は安定企業・大手企業の勤務者や自由業の人たちだったと言って過言ではありません。

 

価格高騰のため、所得階層の低位に分類される需要層は多くが水面下に消えているのです。言い換えれば、最近数年の買い手は大半がサラリーマン階層でも花形とされるIT企業や世界でも先端を行く有名企業に勤務していて、高所得を得ている人が中心なのです。

購買物件の価格は7000万円、8000万円と高く、都心・準都心といったエリアを選択しています。筆者にご相談くださる方は、年間の購入者数と比較すれば、ほんの一握りですが、プロフィールと検討物件の平均像は似通っており、予算は少なくとも5000万円、上は1億円を超えていますし、新築でも中古でもどちらでもよいという人たちです。

 

立地だけは譲れないので、結果的に中古物件を選択しているご相談者が非常に多いことに気付きます。(2010年以降、新築マンションの供給戸数が激減しているからです

郊外マンションのご相談もありますが、予算5000万円以下のご相談者は極めて少ないのが実態です。今のマンション購入予定者は、余力のある人ばかりと言って過言ではないかもしれません。

コロナ騒ぎにもかかわらず、具体的な物件のご相談から優良中古マンションの探し方・選び方を聞きたいと面会を求めて来る方が3月は目立って増えています。

 

昨日(=2020年3月24日)も今日も、仕事の合間に、また有給休暇を取って面談を希望して来られた方が3人ずつ計6人、3月は記録的な相談件数になるかもしれないなあと独り言ち(ひとりごち)ながら、一方で評価分析レポートの作成に追われています。

実は、このブログも書く時間が取れないと読んで、昨夜のうちに80%程度完成させたものです。

 

さて、本題に戻りますが、急速な景気後退があっても、マンション購入者の大半は殆ど影響を受けないと考えています。最近5年ほどは価格高騰の影響で、マンション購入に踏み切る階層は、名だたる大企業勤務者や公務員、自由業者などが中心だからです。

価格が大きく上昇したので、資金的に余裕のある階層が主体の市場(需要構造)に変わっているのです。その面から、所得の安定感がある階層が最近の需要層の中心になっていることが伺いしれます。

マンションの市場構造を知らない人が、思い違いをしてしまったり、社会の不透明感などから模様眺めに転じたりする人も増えるでしょう。その結果として、市況が一段と悪化する可能性は高いかもしれません。

 

●新築マンション市場の見通し

しかし、だから価格は下がるかと問われると、筆者は即座に「新築マンションに限れば、市況の悪化が価格の低下にスグつながることはない」とお答えしています。

生鮮食品のようなタイムセールもありませんし、そもそも新築マンションの利益は10%程度しかないので、大幅値下げなどの期待もできないのです。

 

消費財の場合、膨大なアイテムのひとつや二つを投げ売りしても企業のトータル利益に影響する度合いは小さいですが、分譲マンション業界は大きく異なります。

1物件ごとの重さは一般消費財の比ではないからです。言うまでもなく、企業によっては、1住戸さえ軽視できないのです。投げ売りのような真似はできる道理がありません。

また、値引き販売が既に定価で購入している買い手に知れると、同率で値引きしろという要求につながりかねず、そこでトラブルになってしまう懸念もあるので、値下げ販売に踏み切ることも難しいのです。

定価契約の顧客に知られるような売り方ができないものかと悩む企業もあるらしいのですが、「既契約者も同率で値引きする」ことが必須です。従って、継続販売中の物件に関しては、値下げは事実上できないのです。

30年以上も前のことですが、大幅な値引き販売に踏み切るに当たって既に契約していた購入者にも同率で値引きする旨の通知をしてから値下げ販売(新価格で登場というキャッチフレーズが多かった)に踏み切った例がありました。

 

立地条件が悪く、かつ大量に売れ残っていたため、販売の進捗見通しが立てにくかったのでしょう。大胆な方針を打ち出して短期完売に成功したのです。ここで実行企業名を明らかにするわけには行きませんが、年間に売り出す新築マンションの現場数・戸数が多い「今も現存する大手マンションデベロッパー」でした。

「このプロジェクトは失敗だった。損は他のプロジェクトで取り戻そう」、このように決断した瞬間だったようです。筆者の記憶では、当該企業は数ある全国のマンション販売現場から2物件だけを選んで見切ったのでした。

 

どちらも駅から遠いとか、都心から遠い物件で不人気でした。大きな値下げを決断しての再出発だったようです。利幅がそもそも大きくないマンション分譲ビジネスのこと、その物件も当然ながら赤字プロジェクトとなってしまったのです。

 

今後、このような値下げ販売に踏み切るデベロッパーは出て来るでしょうか? よく尋ねられますが、筆者は以下のような話をします。

マンション業界はかつての大失敗の経験から学んだことも多く、かつ金融環境がまるで違う時代でもあるので、大幅な値引き販売に踏み切らざるを得ない状況にはない」のです。

無論、コロナショック以前の2016年初頭から新築マンション販売は急ブレーキがかかったかのようにスピードが鈍化しています。つまり、販売不振の状況に慣れていて、マンション業界に限っては「コロナショックはない」と言って過言ではない耐性を身に着けているのかもしれません。

 

とはいえ、一段と売れ行きが悪化し、業者の中には値引き・値下げ販売という方針を打ち出すところも出て来るかもしれません。これについては、今のところ筆者も見通せないでいます。

 

しかしながら、値引き・値下げ販売が続出する事態になったとしても、物件単位に見れば、その件数は僅かですし、値引き・値下げに踏み切る物件は立地条件が著しく劣る物件のはずです。要するに、問題物件です。都心・準都心の物件で大手ブランドマンションが値引き・値下げ販売される可能性はゼロ、筆者はそう思っています。

 

これまでもよく見られた「モデルルームとして使用していた住戸の値引き販売」は今後も続くことでしょう。その件数も増えるかもしれません。しかしながら、基本的に売れ残ってしまった物件・住戸には難点が少なくないものでもあるのです。果たして、値引きを喜んでいい物件なのかは疑問と見るべきでしょう。

 

●中古マンション市場の今後

過去5年ほどの中古マンション市場を簡単に整理しておきます。

新築マンションの価格高騰のために中古人気が盛り上がり、また、新築マンションの供給減少によって中古マンション検討者が増えた結果、新築マンションの契約戸数を中古が上回る状況になりました。

中古マンションの人気が上昇したのは確かですが、新築マンションの低落ぶりはひどいというほかありません。

新築マンション低迷の原因は価格高騰にあるのですが、開発用地の大幅な減少の方が問題です。買いたい人は多数いるにもかかわらず、作り手(デベロッパー)が、その期待に応えられていないのです。用地がないのが要因です。

郊外に目を向ければ売地はあるのですが、郊外マンションは売れない時代になってしまったので、用地があってもデベロッパーは二の足を踏んでしまうのでしょう。

 

人気の都心・準都心は、再開発などでときどき大型マンションが登場しています。それらの殆どが高い物件価値によって買い手の期待に応えているものの、需要ボリュームを充足するほどの件数・戸数があるわけではありません。

 

買い手は多く、売り物が少ない新築市場なので、売れ行きは好調であってしかるべきですが、むしろ悪化している現況を見ると、その原因は価格の急騰にあると考えられます。

高値の新築、希望地に売出しがない新築。ならば中古を探そうという流れは必然です。その中古も下のグラフからも分かる通り価格高騰が顕著です。もうそろそろ危険水域に入りつつあるなあ・・・少し前から筆者は感じていました。

◆中古マンションの価格推移◆


 

売れ行きが悪化して価格が下がるのは、中古マンションの方です。中古のオーナーは新築と異なり、大半が企業でなく個人です。持ち家を売却して買い替え先のマンションの代金に充当しようとしている個人が多いので、売れないと困ったことになります。

 

従って、今後は広告反響(見学希望者)を見ながら、価格を下げる売主さんが増える可能性が強まっています。 とはいえ、人気物件は嫁1人に婿10人といった状況から「婿が5人に減るだけ」なので、高値は変わらないという物件も多いでしょう。

繰り返しておきましょう。新築マンションの価格は硬直的ですが、中古は比較的早い段階で値下がり傾向を見せるかもしれません。とはいえ、特定の人気物件は何も変わらないと見るべきなのです。

 

●様子見(模様眺め)は正しいか?

「値は下がる可能性が高いから待った方が得策だ」などと発言する人が増えているそうです。「どう思いますか?」と筆者に質問をくださった方も増えていて、確かに最近は少し目立つようになっています。

しかし、購入意欲のある方の発言(問いかけ)なので、自分の考えは間違っていないかの確認という色彩が強いと筆者は見ています。

 

筆者は思います。良い物件に、また割安な中古に出会う確率は高まっているのかもしれません。慌てることはありませんが、良い物件に出会う可能性は高まっているはずです。

丹念なチェックを続けながら、「住みたいマンション」を見つけましょう。ただし、どのくらい待ったら良いかの答えはないのです。そう言えば、「マンション探しは男女の出会いに似ている」と語った人がいたことを思い出しました。

 

候補物件の探索、厳選しての見学などを続けながら、無理をしないで買おうと心の中で叫びつつ、出会いを信じましょう。世間が様子見するならチャンス到来・好機でもあるのです。不況でも家賃は下がりません。金利も低いままで推移するでしょう。・・・・・「購入の絶好機が来た」そう思いましょう。

 

※今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

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第237回 「歴史的高値の時期だが、今後はどうなるの?」――のご質問に答えても併読ください。

 

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