湾岸の新築(タワー)マンションの管理費が最近高騰しているが、その理由はなにか?というスムログへの質問です。湾岸タワーの事例を集めているはるぶーのほうでお便り返ししておきますね。結構長いのでお暇な時にね。
目次
さて質問は
届いている質問は以下の通り:差出人: Oさん
メッセージ本文:
はじめまして。
いつも楽しく拝見させていただいてます。
現在の住居から、住替えを目的に湾岸の新築マンションのモデルルームを見学して、購入致しました。入居は1年先です。
気に入ったマンションなので、楽しみでしょうがないのですが、1つ気になってることがあり質問させていただきたいと思います。
気になってるのは管理費の仕組みです。築10年程度の今住んでいるマンションと新しく購入したマンションは規模や内廊下などの仕様、共用施設やサービスはほぼ同じなのですが、管理費が2倍くらい差があります。
コスト、主に人件費が高騰していると説明は受けましたが、素人考えで人件費であれば今住んでいるマンションの管理費にも影響するはずですが、管理費の値上げの話はありません。
実際に入居しないとサービスレベルの差は分かりませんか、購入したマンションに限らず、近年の新築マンションの管理費も物件価格と共に上がっているのが気になります。
何か理由が有れば、ご教示頂きたいです。
管理費を下げたいわけではなく、理由が知りたい趣旨です。
よろしくお願いします。
【お名前はイニシャルにさせて頂きました】
湾岸マンションの管理費は実際に上がっている?
湾岸タワーの管理費・積立金のデータをせっせと図にしているハルミズムさん(→ https://twitter.com/harum_ism )
の図を3枚拝借。全て湾岸東側・300戸以上のタワーのみのデータ。
管理費も積立金も専有面積に比例するのが普通ですので”専有面積1㎡あたり”で比較するのが普通です。
<湾岸の管理費と築年数>
<湾岸の積立金と築年数>
<管理費と積立金の関係>
経年別の傾向をみて判ること:
- 確かに管理費は10年前に比較して単価が上がっている
・・・1㎡ 300円超は、元は有明の2棟(BMA/BAS)くらいだったが、ここ5年ほどのものでは珍しくなくなった。 最上階全ぶちぬき共用施設で巨大プールのあるBMAと同じ管理費!?と思うのは気持ちとしては判る。 - 1000戸を超えるような”巨大”タワーは、同時期の竣工物件としては管理費が安い傾向があリ、管理費負担にはスケールメリットが認められる(KTT/TTT/Wコンなど)
- 一方で積立金は逆に10期目程度に向けて大きく上がっていく
・・・修繕できないとやばいから、組合が値上げするもので、特に、超長期に均等割り移行を達成していると思われるマンションは1㎡300円のライン周辺に集まっていてすぐわかる。 - ②と③の結果として、管理費と積立金は”逆相関”で、「合計金額として1㎡あたり月500円程度」が初期設定の上限として意識されている感じがある
・・・超えているマンションの殆どは、理事会が鉄の意思で積立金徴収の均等割値上げに成功したところ。
人件費上昇分の委託経費→管理費への反映は?
下の図は、東京都の最低賃金の時間単価の年度別の推移。管理員さんなど現場の人は、最低賃金に少し足した程度(近隣のコンビニの時給は確保しないと誰もこないといわれている)での雇用の場合が多く、最低賃金のアップは直接管理コストアップに直結する。
<東京都の最低賃金の推移>
交通費支給、社会保険、有給休暇への代行派遣など人件費比例でかかるコストも大きく実際には、管理会社は管理員等への支払い時給の1.5-1.6倍を管理組合に払ってもらわないとやっていけません。無論消費税は別途。
図でみて10年で220円/時間のアップですから、10年前の契約から25%くらいは”委託経費の人件費部分”を上げないとやっていけないでしょう。
委託契約書から計算すればわかりますが、昔のままの設定で耐えているマンションは消費税込みで、管理員さんは昔は時間1500円、昨今の新しい設定では1時間2000円超えも普通に見かけます。特に、警備員や、コンシェルジュなど派遣で人を雇う部分が人手不足で人件費の高騰が激しい。(つまりタワーに特に厳しい)
管理費のどのくらいの割合が人件費か?ですが、コンシェルジュなどの設置はないうちのマンションで、マンションに常駐の管理員・警備員・清掃員”のみ”にかかる費用で税込み一般管理費こみで住戸の面積で割り算して 120円/㎡/月に達して、一般会計にかかっている総コストの約5割です。25%の人件費アップは、ざっと最終的に負担するしかない住戸の管理費の値上圧力としてはうちでも30円/㎡/月。 湾岸のタワーだともっと潤沢に人を貼りつけているだろうなで、”上昇分の半分”くらいは確かに人件費アップで説明がつくかな。
委託経費って気軽に毎年人件費上昇反映でアップね!とはいかない。うちは2年前に人件費の単価アップ+人員1割削減くらいで委託契約を更新していますが、半年間のシビアな交渉が管理会社との間であった。支店長とか支社長とゴリゴリ差しで、管理士事務所と理事会を三者で交渉しました。
契約更改で値上げを提案すると、けしからん!とか理事会が怒って、リプレースでコンペじゃとかいわれて、G社 or NH社か(両方は来ない)、D社とかとコンペで争わないといけないケースも多い。既存マンションはではかなり厳しくても管理会社は結構ぎりぎりまで耐えているもの。
一方、値上げを提案してくるときには、この先も人件費があがるであろう分数年分も織り込んだ単価提示となり、特にコンシェルジュの契約更新は単価5割アップなんて提案を受けるのはよく聞きます。
管理会社の努力で吸収できる分には限界があり、特に10年くらい委託経費の人件費単価をアップしていないマンションはこれから管理会社の提案を順次受けていくと思います。
理由のある値上げ要求なので、適切な額まで受けた上で管理費徴収に転嫁することが望ましく、そこでリプレース・・・とかあんまり考えないほう吉だと私は思うけど。
管理費設定高騰のもう一つの理由?
以下は単価を最近初期設定した”デベ側”の気持ちを推し量ったもの:※この価値観を私がよしとしているわけではありませんので注意
湾岸タワーの駐車場が激減しているということと無縁ではないだろうなと。多くのマンションで、管理費収入+駐車場代で日常的な管理に充てているせいです。
<駐車場収入の行方はいろいろ>
- マンション価格の上昇とともに、車を手放して入居するオーナーが増え駐車場の設置率が下がってきた。この付置率低下に伴う減収分をどこかに付け回すしかない。
・・・都心・湾岸は駐車場代が高く設定できるので都心部のマンションの収益源ですが、車を駐車してくれないとマンションの収入にならない。豊洲のマンションは昔は100%設置があったが、今は30%で普通。 - 駐車場の収入は、管理費会計・積立金会計のどちらに回すこともできるから、その2つの徴収の”合計金額”が潤沢であればなんとかなる。ただし、修繕積立側に駐車場の収入を回そうとすると必然的に管理費側を上げるしかない。
・・・機械/タワー式の駐車場は、長期では1万円/月/区画くらいをメンテ+更新含む修繕でみないといけないが、機械式なのに修繕計画に更新の計上なしとかやると、昨今はすぐに指摘をする煩いネット民が増えた。国交省も金食い虫の機械式の修繕費確保にはいろいろと煩い。駐車場収入の一定割合を、駐車場そのもの修繕費用に計上が今は必要。 - 一方で管理費+積立金の初期のランニングコストは、ローンの返済額と合わせて、検討者が”買える・買えない”を判断するのであまり高くできない。
・・・気安く月1万円とかランニングコストを上げてしまうと、ざっとマンション本体を300万円値下げしないと”背伸びしてぎりぎりで買う”購入検討者に営業が買えますよと押し込めなくなる。 - 一方本体の価格がここ10年上がっている(特に湾岸)ので購入検討者の懐具合も少し余裕ができている筈で、その分は管理費を上げてもよかろう
・・・管理費は、コストアップで考えるのではなく、坪単価350万円のマンションなら、1㎡月350円まで管理費OKとか、購入者収入∝マンション価格∝管理費に設定されやすい。上の数字が同じだとマンションの管理費250年分がマンションそのものの値段になるざっくりいってオーナー世帯年収の2%が年間管理費。そこまでは気前よく払うだろう。 - このように設定して、やっていけるぎりぎりまで駐車場代は積立金会計に回すけど、積立徴収の初期設定をあんまり高くすると③で買ってもらえなくなるから、積立金は120-150円/㎡/月程度までにとどめておくのが基本。
・・・スラムにしたくなきゃ、理事会が値上げを総会で通すでしょ。大変なら理事会なしでで管理者管理で全てお任せ頂いて構わない(M♯社) - だけど初回の大規模修繕もできないとかいうと、また管理系原理主義マンクラがわいわいと騒ぎそうだから、そこは、新築時の”修繕一時金”を爆上げして時に10年分くらい集めて帳尻を合わせておく。
・・・幸い?マンションの値段が7000-8000万とか上がっているから、後100万くらい一時金を上げておいても誰もきがつかない筈。
① 人件費の高騰で最近の管理費の高騰の全ては説明できない。
②管理費はいつでも月に”坪単価”円。他で帳尻を合わせているだけ。
③積立金と、駐車場代がどこに使われているかを見るべき。管理費だけ比較しても意味がない
こちらもよかったら読んでください(関連のブログ・記事)
区分賃貸マンションオーナー向けの記事ってことで、リノシーさんに3回ほど寄稿したうちの最終回が、”通常総会の議案書の第1号議案”から、マンションの財務状況をどう読むかという話でした。 関連が深いですが、ちょっと違う切り口から書いてみましたのでよかったら。→ マンション管理組合の財務状況、外からの見分け方
このあたりまでで予習してあれば、かの ”がりべん” さんの無料のNote
『実質管理費・実質修繕積立金・マンションBPSの解説』
https://note.com/garibenz/n/nb4bd7ed36358
の意味も理解できて、彼が『貴方のマンションの駐車場収入は 100円/平米/月だから・・・』とか突然いいだしても???とはならずに話についていけるかも。
(よかったらこっちも読んでね)
管理費や積立金は単なる固定費じゃない。不動産投資でマンション管理が大切なわけ
区分賃貸マンションオーナーにとって、管理状態のよいマンション選び
実例調査はこちらから
せっかくなので、勝どき・豊洲あたりの10分以内・15年以内程度の築浅のマンションで、70-80平米と広さの揃ったものを貼っておきますので、調査してみてください。しかし凄い値段だな・・・これ買える人が、管理費とか積立金とか気になります?
気になる人は買わなきゃ・・・(発言がのらえもん化)
!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
うーん長い
それに裏拝啓ではなく背景を読むに力量がいる
もっとDJあかねさん風にしてくだされ
https://www.sumu-log.com/archives/24146/
>管理系原理主義
はるぶーでは期待するほうが無理か
なお裏方マンションでは
最低時給の上昇に伴う管理委託費値上げは必要
と裏方理事長14回目が管理会社に伝えました
いまその幅をめぐり交渉中
芸風ってのがあるから、自分として気に入らないものを書く方向での
妥協はしません。読まない自由は誰にでもあるので。