このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
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今日は「価格の安い1階や半地下住戸は、できるだけ選ばない方がよい」という話をしたいと思います。1階住戸は格安。そのわけは?
言うまでもないかもしれませんが、1階住戸は売りにくいので分譲価格を抑えるのがマンション業者の常道です。なぜ売りにくいのでしょうか?眺望価値がない、日当たりが悪いなどですが、他には防犯性が低い気がする、大雨で水害の危険があるといった理由を挙げる検討者もあります。
売りにくい1階を魅力的な住戸にするにはどうしたらいいのだろう。デベロッパー各社は、様々な工夫をします。以下のようなものが定番です。
①専用使用ができる庭を大きく取る
②上階にはない、体ごと入る大きな床下収納庫を設ける。キッチンの床にも収納庫を設ける
③和室に堀こたつを仕込む
・・・こうした付加価値を設けて2階より上の住戸との差別化を図ります。
それによって価格を下げることなく販売が可能になるのです。
10年以上前は、こうした工夫をした1階プランをよく見かけましたが、最近は大幅に減りました。今でも時々見かけるのは、専用庭付きプランですが、建築コストが最も安いためです。
他のアイディアは、コストアップ要因が大きいので、最近は採用を見送ってしまうことが多いようです。
1階住戸のあるマンション、ないマンション
1階に住戸を設けないマンションと設けたマンション。その理由や事情についてお伝えしておきましょう。ロビーやラウンジ、キッズルーム、シアタールームといった共用部が多ければ多いほど、販売面積、すなわち住戸面積が減ってしまいます。
専用面積と共用面積の比率を表すのが専有率、もしくはレンタブル比と呼びますが、レンタブル比率が高いほど、分譲単価が安くるので、住戸面積または住戸数を増やすことが売主・設計事務所の腕の見せ所となります。
しかしながら、共用施設が貧弱な計画は付加価値の低いマンションになりかねないので、バランスをどう取るかが設計士・売主の腕の見せ所となります。
共用施設は、タワーマンションなら景色を楽しむビューラウンジなどを上階に取るのが普通ですし、集会所や管理人室などは1階に設置するのが一般的です。ロビーなども1階にあるのが一般的です。ゴミ置き場やメールルーム(集合郵便受け)なども1階にあります。これらは、どれも共用部分です。
しかし、面積にゆとりがあれば、1階にも住戸を設けている例もあります。また、当該計画地の建築条件(建てられる建物の限度)が決まっているので、1階に共用部を集約してしまうと、肝心の住戸を上階に積み上げることができないこともあり、やむを得ず、共用部の面積を削って1階にも住戸を設ける例が少なくないのです。
つまり、売りにくいと知っていながら、法的制限のために1階住戸を作ってしまうというわけです。
容積率200%が条件の用地に、仮に建物を100%しか設けなかったら1戸当たりの土地代が2倍になってしまいます。デベロッパーは、容積率200%の土地なら199.99%まで建物面積を増やし、余すところなく建てるのがコツと知っています。
地下・半地下住戸も同じこと
地下住戸や半地下住戸を作るのも発想は同じです。地域ごとに建築制限があり、容積率や高さ制限を守りつつ、可能な限り建物ボリュームを増やそうとしますが、上階に積み上げることが難しい場合があります。そこで、地下に住戸を設けようという発想が誕生します。面積の制限はあるものの、制限いっぱいまで建物を設けることで、単位面積当たりの土地代が安くなるからです。
中低層マンションに多い地下住戸ですが、地下住戸の課題は採光です。道路境界線から一定の距離を確保すれば地下住戸でも斜め上から太陽光が届くケースがあります。
しかしながら、地下住戸・半地下住戸は太陽が降り注ぐことはないため、快適な住まいとは言えません。前方が公道であれば、通行人から室内を覗かれることもあるかもしれません。
また、1階住戸も同じですが、眺望が良くない家は敬遠されます。高値でも眺望が良くない家よりは眺望が良い家に人気が集まるのです。
価値が低い1階住戸・地下住戸を買う人
人気のない部屋と承知しながらデベロッパーは1階住戸・地下住戸を作らざるを得ないとき、それを売るための工夫も忘れてはいません。重複しますが、1階・地階住戸を売るには、上階にない付加価値を用意して買い手の関心を誘うことが必須とされます。地価の高い東京圏では、有効に利用することが必須だからです。
ところが、少しくらいの差別化では買い手の関心を呼び込めません。そこで、価格を「格安」に設定します。少しくらい下げても見向きもされない住戸も多いので、大胆な低価格に設定して売り出すのです。
「これだけ安ければ値打ちはありそうだ」と興味を惹きつける作戦です。この作戦がはまって1階住戸・地下住戸も売れて行くのです。
安値の住戸は将来価値も期待度は低いと思うべき
購入時点で、将来の売却価格など考えたこともないという人もいるようですが、少なくとも筆者に相談してくださる人(評価レポートのご依頼者)の90%以上は、1階・地下住戸について、「これだけ安ければ損はあるまい」などとは考えていないようです。筆者はよくこう言います。「高値の価値あるマンションは将来も高値が期待できます」が、「安値のマンションは価値が低いから安値なのであって、お得な買い物をしたとは言えない」のだと。
新築マンションの購入時は、現場を隅々まで確認せずに売買契約を迫られることが多いものです。いわば、映像と完成予想図などから商品イメージを膨らませて買うほかない場合があります。
そんな場合、完成して現地に足を運んでみると、大抵描いていたイメージとは乖離があって、落胆するということが多いものです。「もう少し明るいと思っていた」とか、「前の家との距離が想像していたより近かった」などと落胆する人も多いのです。
将来、そのマンションを売るとき、「安く買ったのだから、このくらいで売れれば御の字だ」と考えたが、「予想を下回った」とか、「全く買い手が現れない。たまに来てもすぐに帰ってしまう」、「売り値を下げたら見学者は増えたが中々決まらない」といった落胆を味わう羽目に陥るのです。
「元気な子供がいるので1階にしました」は正解か?
「走り回る子供がいるので、ご近所に迷惑を掛けないために1階に決めました」という声をときどき耳にします。筆者は、聞き分けがよくなるまでの短い期間のことなので、近所にあいさつに回っておけば心配いりませんよ。筆者はご相談者に必ずこう言います。
1階住戸の防犯・水害対策は大丈夫か
ゲリラ豪雨や台風が日本各地を度々襲います。何十年に1回の被害だったりもします。「天災は忘れたころにやって来る」とも言われますが、今年も方々で大きな被害が出ています。災害に強いはずのマンションですら、想定外の雨によって被害が出たりしています。そんなこともあって、1階住戸や地下住戸を敬遠する人も多いようです。
デベロッパーは対策を講じているから大丈夫だと言いますが、より安全のためにと考えるなら2階以下の住戸は避けた方が良いのです。まあ、高いところが苦手な人でも4階なら床までの高さが10メートルはあるので、大雨でも心配は無用でしょう・・・筆者はいつもこう答えています。
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資産価値の観点は大切です。家は住むためのものだから、いくらになろうと関係ないという考え方をする人もあります。確かに、売らない限り損得は表面化しません。しかしながら、一生そこに住み続けるのでない限り、売却・買い替えという概念を無視はできません。
折角買った家が二束三文の評価では悲しすぎます。高値で売れる価値ある家を買っておきたいものです。そのために「資産価値論」です。
「筆者の理論と将来予測がお役に立ちますように」そう願って日々の調査研究を続けています。今日の記事も、そんな見地からお送りしました。