積立金の均等割り方式移行へのアプローチは?【お便り返し】

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お便り返し。多分管理組合の理事をしている人から、築浅で積立金徴収を均等割に移行したいけど、そのためにはどう進めたらいいか?というお問合せです。

質問は

差出人: 松ぼっくり

はじめまして。
築年数が浅いうちに修繕積立金を段階積立方式から均等積立方式に変更できたらと思うのですが、理事の中でも反対の方がおり、なかなか難しい状況です。
均等積立方式に切り替えたい場合、どのようなアプローチで進めるのが効果的でしょうか?アドバイスお願いします

140文字で回答を募ってみた

築浅の均等割り移行には定番の”パターン”があります。
こんな感じ:


この方はRJC48のメガマンション元理事長さんですが、総会参加率100%を達成した人です。超人理事長の剛腕に頼って達成される例が多く、その場合凡庸なレベルでは困難です。言ってることが、私と同じですので 140文字で回答済ませるならこれ。それじゃ手抜きなので解説します。

均等割り移行は実は「至難」!!

下の図は、平成30年(最新)の国交省によるマンション総合調査を図示したもので、積立金を均等割に設定しているマンションの割合の経年変化。


<↑  均等割り移行のマンション割合の経年変化>

新築マンションの殆どが”均等割り”の設定ではありませんが、5年刻みのグラフで見てわかるように、”じわじわ”とは均等割りに移行します。その割合は1年あたり全マンションの1%程度にしかすぎません。新築のマンションで、”均等割り”でないマンションを買って、自分では理事会とかしないで黙って待っていて、10年の間に均等割に理事会が替えてくれる確率は10%に過ぎない。

※註:この調査、実は回答するマンションが管理会社紹介で選ばれる部分があるよう。ほぼスラムなんてマンションは紹介されない。さらに、膨大なアンケート項目には回答するだけで大変なので、もともとかなり意識高めな理事会のみがアンケートに返事を返してくるという”生き残りバイアス”のある調査結果に留意。法人化されているマンションが10%もあるわけない・・・とか実際はもっとお寒い実態だと私は思っている。

積立金の均等割りへの移行を目標に掲げる、なりたての理事長さんってとても多い。熱い気持ちに水を差すのもなんですが、実際には築浅での達成は「至難」で、以下に書くようないろいろなことを済ませた上でようやく総会に上程可能な、「築浅マンション理事会の究極目標」ですから、少なくとも数年は理事会の施策の継続性が維持されないと難しい。3年は理事会役員を続ける覚悟のある方以外にはおススメはしかねます。

毎年殆どの人が完全に入れ替わっていく理事会で、1年でここまで進めたから、あと2年でその先やってねといってもうまくいかないことが多い。私のやっている理事長の会RJC48でも”やるぞ!”とか宣言していた理事長が任期が終わって去ると・・大抵積立金はそのまま。理事会で一番難しいのは、何年も安定して同じ目標に進み続けることです。


<↑ 理事会運営方針の継続性の確保は至難>

私は、1-2期と理事長。1期から気持ちの中での目標は積立金の均等割り移行でした、2年で財政をV字回復して理事会を抜ける予定が、実際には均等割り移行できたのは4期終わり。

RJC48には200人近い理事長の加入があって、中に均等割り移行の達成マンションがその期数・積立金の㎡単価などを書き込むスレッドがありますが、現在の登録数が40。早い事例で4年以内が10マンションほどで、最速達成は確か3期です。1期とか2期で達成できれば『現人神』ってことでRJC48内で君臨?できますから是非そのノウハウを伝道に会に加入して欲しい。

3年は理事会をやる覚悟ができましたか? では次へ。

均等割り移行には最適な期数がある

優秀な理事長さんが長期政権で移行を目指したとしても、RJC48の中で見てきた事例からは均等割りに移行するには”最適な期数”があって、それより前でも後ろでもなかなかうまくいかない気がする。

築浅で目指すなら、ずばり5期前後を目標にするのが宜しいです。
  1. 多くのマンションで、新築時に設定されている段階値上げの初回が予定されていて、もともと初回の値上げの総会決議を上程しないといけないので、同じ通常決議で初回の値上で一気に後何十年同じですという均等割に移行するのが有利なせいです。
  2. 3-4年善政を行うほかに、各種の問題を解決して見せるなど、理事会の信頼度を確保しておいて、マンションの”理事会支持率”を上げておかないと、いきなり年に10万円以上”値上げ”ですといっても通らない
  3. 逆に10期近くまで均等割移行が遅れると、かならず”そのみちあと数年で初回の大規模修繕だから、その実施価格を見てから考えよう”という意見がでてきます。実は初回の大規模修繕の”後”で均等割り移行すると、12期で全弾打ち切りとなりやすく、均等割の設定金額が高くなりすぎます。通常のマンションの修繕年次は12・24・30・36・・・期というのが普通です。最初12年で1回だったのが、その後24年で3回とかくるのに、2回目には新築時の積立準備金(今は何年分も集めるのが普通)が使えない。積立金問題は”2回目以降のお金が確保できない”問題です。

均等割の提案前のアプローチ

積立金の均等割り移行が望ましいのは、論理的には自明です。移行すべき時期(いつ移行するのでもその時しかない:今でしょ!)と移行後の金額(えいやっと工事予定の積算金額のグラフの上で直線を引くだけ)がユニークな徴収方法が他に存在しえないので、それを骨太な論理で総会で訴えるだけです。

以下の事前の対応が済んで地ならしができていれば、最終段階の総会は簡単です。うちでは理事会決議から、総会で可決されるまで2月の電撃戦で全戸の90%の賛成で可決しています。(変に匿名掲示板とかで話題にならないように電撃戦を仕掛けた)

一方で、これができていないと、必ず総会で質問が嵐のようにやってくるものがいくつかあり、年単位の努力がかかりますが、城攻めの前に”外堀”と”内堀”を埋めておかないと難易度が跳ね上がります
  1. 管理費支出の見直しなどで、積立金の値上げを圧縮できないか?
    本来管理費は日々の生活費、積立金は貯金のようなもので用途が異なるわけですが、殆どのオーナーにとっては、その”合計額”が”税金”のようなものとしてしか認識されません。管理費を各種コストカットで削ったら、積立金の値上は減らせないの?という質問への回答ができないといけません。 管理の初期設定には、必ず削り代はあるものですから、ある程度も済ませてあったというコストカットの理事会実績はあったほうが望ましい。
  2. 徴収計画のもとになっている長期修繕計画は検算してあるか?長期修繕計画は、大抵売主か、その系列会社である管理会社の作成です。積立金値上げに反対する人は、大抵管理費が高い!とか叫ぶ傾向があります。
    実は、大抵のその主張をする人は自分のマンションの管理員の雇用時間も、その時間単価も知らないので猿なみの主張なのですが、そう総会で答えてももっと燃えるかダースベーダーが一般人を辻斬りしていると思われるだけです。管理会社はなにかぼったくってくるのでは?!という心配があるのでしょうから、その対策は簡単。管理会社とは一切関係のない建築のプロ(修繕コンサルタント会社)などに、修繕計画を検算してもらえばいいだけですね。 費用を総会計上したりでかなり時間はかかりますが、これはやっておいたほうがいいです。検算すると”直さないといけないものの計上漏れ”が見つかることが多く、うちでは過去何回かやったものでは実は必ず修繕計画の工事の総額は上がったのですが、それで心折れないようにしましょう。
  3. 理事会活動の継続性を確保する
    前の2つをクリアするにはどうしても複数年必要で、その間の理事会活動の継続性が必須です。理事会は”人がつないでいく”しか維持方法がないので、まず理事会の制度を整えることが何よりも優先です。輪番理事のみ1年で全員入れ替わりで数年のプロジェクトをするのは困難です。後で大規模修繕(大きなマンションだと3-4年かかりです)も扱えませんから、この機会に是正します。
    -2年任期半数改選でない
    -理事が再任できない
    -立候補者が理事になればい
    など理事会運営の足枷になることが今設定されているのなら、それを変えることが真っ先だと思います。
  4. 修繕積立金の徴収額の改定が”規約別表”の変更で特別決議でないことを事前確認する
    なお、稀に(実際にはしばしば)規約の”別表”の面積表に、住戸別の表があるので、そこに積立金の徴収額をべた書きした上で、それが”初期設定だけ(1年目のみ)”の規定であるとの記載を忘れているデベ・管理会社があります。この場合、値上が規約の改定になってしまうので、全戸の3/4の賛成の要る特別決議になってしまいます。
    この場合、まず打診棒でその初期設定をした人を100叩きの刑にしてから、積立金そのものは変えないで、”規約の齟齬の修正”(規約本体には大抵積立金会計は単なる過半数決議だと書いてあるので規約にバグがあることになる)なんて表題で、前もって徴収表を規約別表から切り離しておきます。

「理事長」から提案する形はとらない(戦術)

どうしても、このプロジェクトを理事長がトップダウンでぶつけると、理事会内には必ず反対する理事がでてきますから、可能な限りは「理事長」からは提案しない形をとったほうが、理事会はスムーズに通せることが多いです。”殿様”には”軍師”が必要。他の人(外部の人でもいい;管理士とかコンサルとかこのためにいるわけだし)がこれしかないと思う!とか熱く提案するのに、理事長は”うむ、皆も頼む” というだけですむのが美しい。

理事会内だけでやる場合でも、例えば、”長期修繕計画+積立金問題”を扱う委員会を理事会内有志で立ち上げておいて、そこに諮問した検討結果を答申した形にすれば、そこに参加していない人が”気分”で反対というのはしにくくなります。うちは、計画修繕と日常修繕&その資金計画を扱うのは、常設の”営繕委員会”で1期から12年の活動実績があります。

他には、近隣の事例を集めて、そろそろなにか手を打たないと、うちだけ遅れているかも?とかやる手もあります。 これは、経済誌(ダイヤモンドなど)でもおなじみ Twitterの”ハルミズム”氏の図ですが、無論趣味だけで作っているわけではない。やはり、周りが次々と対応を済ませたみたいだよ?というのは”うちだけダメ扱いされたら困る”という危機感を煽るには最適ですね。


湾岸タワーで、均等割りを達成すると普通積立金は1㎡300円ほどにはなります。達成しているマンションがどこで、何期当たりで上げてきているかは図示するとちょっと隠しようはなくなります。 どこが済ませているか、これだけでほぼ一目瞭然です。



<↑ 湾岸(東のほう)タワーマンションの積立金 .vs. 築年(ハルミズム)>

上に書いたものを『戦略』とすれば、理事長でないとこから提案させるというのは、とくに理事会内を通過させる『戦術』としては有効です。

ダイヤモンド誌などと違ってもろマンション名実名で私が出している理由はそのうちブログにします。

来たれRJC48!!

何年も本気でとりくむ覚悟ができたなら、是非理事長の会においでください。
理事長でなくても、理事会を運営側から支える役員等(経験者含む)であれば加入できます。均等化を達成すみの多数の理事長でお待ちしています。
https://rjc48.com/

・・・ここをクリックするとちょっと幸せになれるかもしれない。なんか宗教団体の宣伝のよーな。なお、怖い理事長が血を分けてやろうとか、下弦の理事長は解体するとかそういう怖いことは全くありません。

6戸から2000戸以上まで、築年も新築から50年とかまで。いろんな主に首都圏のマンションの殆どは理事長の参加で、その所属マンションの総戸数は7万戸を超えています。



※ 直近で溜まっていた”はるぶー”個人指名の質問をまとめてかたずけるのが目的で4日連続でのアップを目指していましたが、クリスマスでつい飲んでしまって・・・。
夏前に来た質問とかもう今回答されても困るやろでごめんなさいってことで。”マンション自販機の課税対応”の方くらい、質問する方も少し細かく詳細に質問してくれたほうが、私の芸風(長め)にマッチしやすいです。なお私が回答するのは、”全員”ではなく、”はるぶー”を回答者に明示的に指名しているもののみ。

!! 重要 !!
 本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。

ABOUTこの記事をかいた人

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

2 件のコメント

  • 裏方理事長15回目 より:

    ”殿様”には”軍師”が必要
    そうですなぁ

    >質問する方も少し細かく詳細に質問してくれたほうが、私の芸風(長め)
    イヤイヤ
    はるぶー節はそんなところにはありません
    ポイントに合う質問であるかどうか
    その一点にあります

    • はるぶー より:

      質問が不明確で1行だけとかだと返事もなにを書いたものかで
      途方にくれちゃうわけです。 自販機税金編の質問が回答のかきやすさでは
      マイベストでした

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