マンションの省エネ基準は、将来義務化されるのか?
義務化された場合、基準を満たしていないマンションの資産価値はどうなるのか?
【もくじ】
◇じろうさんからの質問
◇建物の省エネの促進と規制強化の流れ
◇省エネ基準不適合マンションの資産価値
じろうさんからの質問
誰に答えて欲しいですか?
⇒全員
いつも楽しく拝見しております。
先日挙がっていたグリーン住宅ポイント制度に関する質問に付随した内容となります。
現在購入検討している新築マンションがあるのですが、以前の質問者様と同様、売主より「断熱等性能等級4は適合、一次エネルギー消費量等級4は不適合」と言われました。
そこで質問なのですが、この点はどれくらい重要視すべき点なのでしょうか?
立地・金額等その他条件は概ねマッチしていて、前向きに検討していたのですが、省エネ条件に関しては恥ずかしながら、あまり目を向けていませんでした。
素人ながらに色々調べていくと、現時点では、義務化は見送りになっているが、いずれは義務化される可能性が高いと 感じました。条件不適合のマンションをこのタイミングで購入することに少々不安を感じて来ました…。
ぜひマンションの省エネ基準に関してのご意見を伺いたいです。宜しくお願い致します。
建物の省エネの促進・規制強化の流れ
建物の省エネ化は1980年の「省エネ基準」(≒省エネ等級2)、1992年の「新省エネ基準」(≒省エネ等級3)、1999年の「次世代省エネ基準」(≒省エネ等級4)と変遷を続け、2013年以降は「一次エネルギー消費量基準」が加わりました。2020年には建築物省エネ法が改正され、非住宅では中規模建物(300m2以上2000m2未満)にも新たに適合義務が課せられるようになりましたが、住宅では適合義務は見送られた、というのが建物の省エネ制度に係るザックリとした流れです。
そんななか、新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだ経済の回復を図るためとして、一定の省エネ性能を有する住宅を取得する人を支援するために「グリーン住宅ポイント制度」が創設されました(最大100万円相当のポイント付与)。
このような建物の省エネ強化の流れを踏まえると、今後、建物の省エネ化はさらに促進されることはあっても、規制が緩和されることはないでしょう。
昨年11月のG20サミットで菅総理が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするとの決意表明をしたので、ますます建物の省エネ化が強引に進められるかもしれませんね。
省エネ基準不適合マンションの資産価値
「一次エネルギー消費量等級4」という省エネ水準が高いのかといば、必ずしもそうは言えません。さらに高い省エネ指標が待ち構えているからです(次図)。※TOTO・DAIKEN・YKK APリフォーム情報サイトの資料「Topics 省エネの基準と表示」をもとに作成
さて、マンションの省エネ基準は、将来義務化されるのか? 義務化された場合、基準を満たしていないマンションの資産価値はどうなるのか?
私は資産価値が下落する可能性はゼロではないと考えます。このことは旧耐震仕様のマンションと新耐震仕様のマンションとの資産価値に大きな落差があることからも容易に想像できるのではないでしょうか。
ただ、省エネ基準不適合マンションが旧耐震マンションほどの資産落差になるのか分かりませんし、また、そのような調査研究文献も見当たりません。
まあ、21年4月の住宅の省エネ基準の義務化が見送られたことからも、政府は今後とも住宅への省エネ基準の義務化には慎重であり続けるのかもしれません。義務化すると”既存不適格”となった中古マンション(中古の戸建ても)への影響が大きいからです。また、耐震基準の場合は生命に係りますが、省エネ基準は生命には直結していないからです(長期的には地球温暖化による生命への影響はありますが)。
よって、条件不適合のマンションを購入することに少々不安を感じているじろうさんへの回答としては、「先のことはよく分からないので心配しても仕方がない」です。
省エネ性能が高いマンションのイニシャルコストは増高しますが、ランニングコストのほうは低下します。デベロッパーには、分譲価格を抑えるだけでなく、温室効果ガス低減効果のある省エネ性能の高さにも注力してほしいですね。
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