興味深いお便りをいただきましたので、代表して私が答えさせていただきます。
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差出人: りんごの木
誰に答えて欲しいですか?
マンションマニア, のらえもん, 住井はな
メッセージ本文:
いつも拝見しています。
新築マンションのHPを見ていると時折、柱がリビングの中を貫く間取りに遭遇します。(柱が壁から出っ張っているのではなくて、柱の周りをくるっと回って歩けるようになっている)
直近では、パークコート神宮北参道ザ・タワーのP104AやS90A等で見かけました。(当該マンションはこれ以外にも多数そのような間取りがあります)
これは意図的に部屋の中を柱が貫くように設計しているのでしょうか。私としては、柱は極力部屋の中にない方が良いものと思っていましたので、「見せる柱」のようなものは一般マンションでは考えにくいと思っていたのですが、いかがでしょうか。(例えば広大な敷地の美術館などでは、あえて柱を何本も部屋の中に見せるということは十分美的感覚が理解できます)
どうぞ宜しくご回答いただけると幸いです。
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リビングを貫通する柱が存在する間取りを知らなかったので、インターネットを探したのですが、資料請求者限定公開でした…いま取り寄せたら身バレしてしまうので後程取り寄せてゆっくり見ることにします。
ご質問者のりんごの木さんがいう、遭遇する間取り。都心部のマンション限定ですよね?なぜだかわかります?簡単に言えば、住み心地や実質面積より外観デザインを優先させているからですよ。
パークコート神宮北参道 ザ・タワーの外観CGを見てください。
この予想CG2の角部屋のガラスウォールの部分、よく見ると柱が中に引っ込んでますね。ご質問でおっしゃられたのはこの間取りのことをいうのでしょうか?これは「新しい街のシンボルとなる超かっこいい外観を実現するための、いわば住む側の甲斐性・やせ我慢」みないなものなのです。
これは都心部ではよくあることです。例えば、パークコート青山 ザ タワー。
これを実現するために、間取りはこのようになっています。
通常なら柱はバルコニー側に追い出します。その方が専有部の有効面積が大きくなるからです。しかしこのマンションはあえてそうせず、部屋の中に入れ、柱を表に露出させず全面ガラスで覆いました。
販売中の事例を挙げると、プレミスト東銀座築地 Arc Court。こちらも同じようにシンボルとなる弧を実現するために、専有部が割を食っています。
建設コストの事だけを考えると、複雑な形状を実現しようとするとお金も手間もかかりますし、後々の修繕も普通とは違う形で行うことになるので何かと高コストになります。
コスト最優先にするなら、余計な飾りはいれず、直方体形状で壁は真っすぐに落とす。ベランダ側に柱を出せば、リビング側は広く使えて一番いいのです。実際、郊外の板状でコスト最優先な立地ですと、どのマンションも金太郎飴的な作りになりますし、それがエリアにいくつも並ぶと街の景色が平坦になります。
そういえば豊洲4丁目の都営住宅が建て替わり、デザインが新しくなるかと思ったら、外観は昭和の作りほぼそのままで高層化しただけだったと聞いてため息が出ました…が、公的住宅は建設費と維持費を最優先した結果なのでしょう。「なんでも安いのが正義、コスト最優先」な平成末期のニッポンの症状みたいなものです。豊洲は他の場所が民間主導で素敵に仕上がってきたので、この一角だけ残念な感じになりますね。東京都ェ。
豊洲4丁目。入居前なのに既に昭和感が染み出ている。金掛けなくてももっとセンス良いデザインに仕立てることは可能なのに、それを指摘してディレクションできる人材がいないのが問題。
— わんびー@湾岸農家 (@wangan_farmer) February 6, 2021
街の価値を下げることを役人自ら行うことほど、無能で愚かで罪なことはない。#都営アパートだからゆり子のせい pic.twitter.com/E1pCjqgdU5
でも、都心部の分譲マンションで、それは許されないんですよ(迫真)
やはり土地代が高いところは建設費もかけられます。大規模ならなおのこと街の風景にもなる。そうなると、やはり外観には力が入ります。外観のためには、専有部にいくら柱がめり込もうが、お金持ちのノブレス・オブリージュ※としての貢献とあの建物に住んでいると言いたくなるようなプライド、その2つが必要なのです。
※柱の面積は専有部面積として売り物としてカウントされますが実際には使えないものです。ウイスキーは熟成過程で、目減りすることが知られていてこれを「天使の取り分」と言われます。熟成年数が多いほど天使の取り分は多いわけです。外観のために専有部に柱を抱えることを厭わないのって、なんとなくマンションの天使の取り分っぽいかなとおもってそう書きました。
こんなご意見もいただきました:
都心の超高級マンションは専有部も広め(基本100㎡超で、小さくても80㎡台後半とか90㎡)なので、インフレームでもそんなに気にならないというのもあるのだと思います
60㎡台の3LDKとか極限を攻めるマンションとは間取りの考え方が違いますね https://t.co/f3VEhB9JTf
— がりべん (@garibenZ) February 6, 2021
実体験としてはリビングに柱があってもクロスじゃなくて大理石だったり鏡張りだったりすると豪華なインテリアになるから、マイナスじゃなくてむしろプラス評価にできるのではないかと思った。 https://t.co/Wz62HNYEvk
— プードクちゃん??☀? (@1big_G) February 6, 2021
見え掛かりがいいことで流通価格も高くなるだろうから、コストとメリットでそれを受入れているに過ぎない気がしています……
— 真壁六郎太_2.1 (@nomobilemail_1) February 6, 2021
フェラーリがコストや後部座席の居心地優先だったら萎えますもんね。フェラーリならとてつもなく速くてカッコよくないといけない。
こんなに早くお返事をいただけると思わず、驚きとともに恐縮しています。
また、パークコート神宮北参道については、エントリー限定サイト内であることをあらかじめ申し上げておくべきでした。
他には、プラウド代官山フロントの95Dのリビングが近いかなと思います。こちらの間取りでは、リビングの丸い柱が壁に接していますが、パークコート神宮北参道では壁から離れて一周ぐるりと回れるようになっています。
建築の素人の当方からすると、外観のデザインと、柱のフレームアウトをなんとか両立させる知恵と建築費を出せるのが都心の高級マンションなのでは、、、などと思ってしまいます。
ともあれ、お金持ちのノブレスオブリージュという表現には納得いたしました。
もし、実際の間取りをご覧になって更なるご意見がありましたら、ぜひ拝聴したいと思います。
ご回答いただきましてありがとうございました。