1991年3月に生産緑地法が改正され、市街化区域内で保全する農地として生産緑地に指定された地域は、30年間の営農義務と引き換えに宅地並みの固定資産税の課税を免れてきた。
「2022年問題」とは、最初の指定を受けて30年が経過する2022年以降、生産緑地が大量に不動産市場に放出されて不動産価格が暴落する事態への懸念である。
ところが、当初言われていたほど生産緑地が不動産市場に放出されていない。その理由は何なのか。
「外面が良い赤ちゃん」さんの質問
誰に答えて欲しいですか?
⇒三井健太、 マン点、 タビー、 DJあかい、 部長、 モモレジ、 和田浩明
生産緑地について質問させてください。
2022年問題については、ある程度は知っているのですが、そもそも論にはなりますが、なぜ生産緑地の所有者の方々はなぜ手放さないのかが気になっております。
世田谷区、杉並区、武蔵野市、三鷹市、調布市あたりで人気の駅徒歩圏内にもそれなりに生産緑地はある印象です。
もちろん農業を真面目にやっている方は手放したくないと思うかもしれません。
しかし寝かせているだけの土地も相当数あると思います。
素人考えですが、固定資産税がほとんど掛からないとはいえ、寝かせているだけなら売却した方が良い様な気がしています。
現在マンション用地不足の状況を考えるに、高額で売却できるのではと思います。
生産緑地の開発が進まない理由は何かあるのでしょうか?
23区の生産緑地、11年間で17%放出
まず、23区にはどのくらい生産緑地があるのか可視化してみよう(次図)。23区の生産緑地面積は11年間で17%減少している(08年488万m2⇒19年407万m2)。22年に向かって大放出されそうな状況は見られないのである。
しかも区内の生産緑地は練馬区と世田谷区に集中しているので、マンション用地としては必ずしも人気が高いエリアともいえなさそうだ。
※15年に江戸川区の生産緑地面積が増加したのは、生産緑地「偽装」疑惑絡みなのかもしれない。
「外面が良い赤ちゃん」さんが言及されている「世田谷区、杉並区、武蔵野市、三鷹市、調布市あたりで人気の駅徒歩圏内」のうち、三鷹市と調布市の生産緑地は多いので(次図、赤色)、ひょっとすると駅徒歩圏内にも生産緑地が残っているのかもしれない。
なぜ生産緑地が当初言われていたほど放出されないのか?
では、なぜこれらの生産緑地が当初言われていたほど放出されないのか?最大の理由は、国交省が2022年問題への対策を講じたこと。
すなわち、(1)17年に生産緑地法を改正して税の優遇処置を10年間延長したこと、(2)18年に都市農地貸借法を制定し、生産緑地を第三者に貸しつけても納税猶予が継続するように変更したこと、(3)18年に都市計画法を改正して「田園住居地域」を創設し、生産緑地で農産物の直売所やレストラン、農産物を加工するための専用施設などの建築を可能にしたこと、です。
これらの対策が功を奏したのか、国交省が18年1月に練馬・世田谷区の農家を対象としたアンケート調査結果(有効回答476件)によれば、6割以上の農家が所有するすべての生産緑地に特定生産緑地の指定を受ける意向があると回答している(次図)。
これらの対策の効果とは別に、ニッセイ基礎研究所の研究員が興味深い農家の声を伝えている。
昨年、練馬区内で生産緑地を保有する農家の方に伺った話が印象に残っている。「私が聞いている範囲で買取り申し出するのはわずか」として、その理由を次のように話された。
「今残っている農家は、地価が過去最高に高騰し、宅地化の圧力をまざまざと感じていた時期に、営農する覚悟を決めて(生産緑地に)指定した。そのような環境の中でこれまで経営が成り立つ努力をしてきた。今更辞める選択はしない。住民もあのころとは正反対で理解がある。そういう農家は後継者が決まるのも早い」
ニッセイ基礎研究所塩澤主研「2022 年問題の不動産市場への影響」18年3月20日(PDF:1.3MB)
なぜ生産緑地はあまり放出されないのか。国交省が2022年問題への対策を講じたことと、現在の生産緑地の所有者はすでに営農する覚悟を決めて生産緑地指定している可能性があること、というのが「外面が良い赤ちゃん」さんへの回答である。
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