第264回 「高値の新築。それでも新築にこだわりますか」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

毎日、具体の物件を評価して「レポート」にしつつ、お答えするという仕事をしていると、心苦しく思うこともしばしばです。

 

というのも、価格が高過ぎる物件が多いからです。中古も高いのですが。新築は一段と高く、「評価が低くならざるを得ない」ためです。

 

数年前から言い続けて来たことですが、「新築より中古がお勧め」という助言方針を変えることができず、新築の評価レポートを作成しているときに暗い気分に誘い込まれます。

 

今日は、「一段と高くなった新築マンションより、中古マンションが良い」という話を整理してお送りすることにしました。

 

新築マンションの良い点・中古の抵抗感

誰も住んだことがない新築。手あかのついていない新築。気持ちよく住めそうな新築。売主の保証が最長10年ついているので、いざという場合も安心な新築。

 

だから、新築は高くてもメリットがあると感じる買い手さんが多いのだろうと思う反面、高値に辟易することが多い昨今。

中古はどんな人が住んでいたか分からない。どこかに欠陥が隠れているかもしれない。いつ故障するか分からない中古の設備。だけど、安値で良い物件が多い中古・・・筆者の見解は変わりません。

 

しかしながら、売り出し戸数の多い新築マンションに対し、1戸しかない中古マンションは検討時間が短く、まごまごしていると直ぐに売れてしまうために、買いにくいと感じている買い手さんの声が多いのは事実です。

中古が見つけにくい・買いにくい理由を整理してみました。

 

中古は探しにくい。その理由

良い物件がない。たまに見つけても直ぐに売れてなくなってしまう。検討時間が短く、答えを出しづらい。 中古マンションを買うというのは本当に可能なのか。そんな疑問さえ頭をよぎる・・・このような感想をいただくことも多いのですが、「中古は常に先着順1戸限り。早い者勝ち」なので、「期間を決めて受付を行い、同マンションでも戸数が多い新築」に比べてみると買いにくいと感じる人が多いのは確かです。

 

しかしながら、年間の契約戸数が新築より中古が多くなったということをご存知でしょうか?首都圏の話ですが、2年前に年間の契約戸数が逆転したのです。

といっても、新築と中古を併せた販売戸数は、10年ほど前から低空飛行を続けています。新築も中古も高くて売れない状況が続いているのです。それでも、新築より中古はマシということなのでしょう。

 

その理由・背景については別の機会に書きますが、新築が少な過ぎるために中古マンションを買っている人が多いのは確かです。それでも、中古は検討しにくい、買いにくいと語る人は後を絶ちません。

 

中古はなぜ買いにくいのでしょうか? 考えられるのは、新築のような懇切丁寧さが売り手側(仲介業者)にないためだろうと筆者は分析しています。

 

新築マンションのモデルルーム・販売事務所(マンションギャラリー)を訪れたことがある読者ならお分かりのことと思いますが、モデルルーム以外にも、必要な説明資料を微に入り細に渡って用意し、模型や映像とともに展示して販売物件の紹介に努めています。

 

モデルルームもこぎれいに、かつ夢見心地にさせるかのような演出をして見学者を迎え入れてくれます。商品展示は、女性が化粧をして美しく着飾ったりするのと似ています。

 

中古マンションの場合は、新築とは大きく異なる売り方をしています。 同じ販売商品でも展示方法に雲泥の差があるのです。生活感がにじみ出ているからです。高く買ってもらいたいはずなのに、この展示方法では商品価値をおとしめることにつながるのを知らないのだろうか? 筆者が稀に同伴する中古マンションの室内を見て残念に思う感想です。

(綺麗に飾った中古マンションも稀にあるのですが、例外です)

 

新築と同等に展示するなどというのは無理に決まっていますが、もう少し何とかならなかったものかと、つい悪態のひとつも言いたくなってしまうのです。

買ってもらいたいと期待して買い手(候補者)を迎え入れているはずですから、見学者を喜ばせるための演出をしても良いのではないかと筆者は思うのです。

 

無論、反対意見のあることも知っています。生活感があった方が良いのだと。しかし、筆者はその意見には与(くみ)しません。ありのままを見せるといっても、買い手に無関係の部分まで見せる必要はないのです。

結局、雑然とした室内を見せられた買い手候補は悪い印象だけを抱いて帰路につきます。

 

筆者がよく知る人から、売るときに「まあ、モデルルームみたい」と喜んで帰った見学者が多かったというエピソードを耳にしました。日頃から整理整頓を心掛けて暮らして来た人だったのかもしれませんが、売りに出すに当たって、トランクルーム借りたとも語っていたこと、3日かけて室内の整理整頓に努めたという説明に「さもありなん」と思いながら、買ってもらう立場としては当然の行為だった。筆者はそう思いました。

 

中古の売却依頼先は?

ところで、中古マンションの価格はどのように決まるのでしょうか?

 

「今いくらくらいで売れるかなあ?」から始まり、インターネットに発信されている売り情報を覗いてみて、自宅マンションと同じものが出ていれば、それとの比較で「およそいくら」と目星をつけるでしょうか? 同一物件に売出しがなければ近隣マンションの売出し情報を探し、それとの比較をしながら、「我が家はいくら?」と推察するのでしょうか?

とまれ、その次は、不動産仲介業者に「査定をお願いしたい」と依頼して査定書(提案書)の到着を待つはずです。

 

さて、提案書が届きました。大抵は「査定額」と「売出し額のご提案」の二本立てになっていますが、某大手仲介業者に至っては、「最終の自社買取り提案額」まで並べて来ます。

 

それを見た売主は「思ったより高く売れそうだ」や「期待したほどではないな」などと感想を持ちます。

 

ともあれ、仲介業者の2社か3社から査定書を貰って売主は考えます。「最も高い業者が良いとは限らないし、大差はないので一番熱心なA社にしようか」とか「地元のB社がいいか、大手C社にしようか」などと悩みます。

 

挙句、1社にしぼらず3社に競争して売ってもらおうなどと結論付ける売り手もあります。「専任仲介」か「一般仲介」という選択ですが、どちらがいいとも言えないので、先を急ぎます。

 

中古マンションの値引き交渉

買い手側に戻ります。

中古マンションは、後述する新築マンションに比べると値引き交渉はしやすい面があります。無論、人気の高い物件、言い換えると見学希望者が引きも切らない売り物件の場合は難しいのですが、中古物件の多くは価格に柔軟性があると言えましょう。

 

「売り手は少しでも高く、買い手は少しでも安く」と考えるものです。仲介業者の提案で売り出し価格を決めたものの、「時間がかかるようなら少しくらい値下げしても構わない」と売り手は考えます。買手は、そこに期待して「値引きしてもらいたい」と要求して来るのです。

 

売り手は、「まだ売り出して間がないので、もう少し様子を見たい」と言いながらヤンワリと拒絶するか、「即金で買ってくださるのでしたら、少し下げても構わない」というのか、タイミングや物件価値によって反応は別れます。

 

買い手は、「駄目もと」で数字をぶつけてみるのがコツです。

「端数の250万円をカットしてもらえれば、明日にでも契約します」などと言ってみることです。あっさり断られたとしても引き下がらず、「ではいくらなら売ってくれますか」と言ってみましょう。無論、売り手の目の前で直接交渉できる場面はないと思うべきで、仲介業者に交渉を委ねることになりますが、大事なのは「●●円にしてくれたら買います」と明言することです。「●●円以下なら検討してみます」・・・はダメです。

 

新築マンションの値引き交渉の成否は?

ところで、新築マンションの値引きは可能なのでしょうか?

筆者にも、「値引き交渉をしてみたいが、どのくらいの値引きが可能か」という質問がときどき届きます。筆者は、例外もありますが、基本的に新築マンションの値引きは期待できないと答えます。

 

理由は単純です。既に契約している買い手の価格と著しく乖離した低価格で販売することはタブーだからです。一般消費財なら、朝夕で価格が違っても誰も文句を言いませんが、高額商品のマンションの場合は先行契約者の目が光っており、自分より安値で販売することは難しいのです。

 

契約時の価格表を手元に残していて、自分の買った部屋の上階の同タイプが100万円も安いのは何故だとクレームをつけて来ないとも限らないからです。売れ行きが悪いらしいと知った買い手は、契約した後の経過を注意深く観察しているもので、こっそり価格を下げるなどということはしたくてもできないのです。

 

例外があるとしたら、建物が竣工していて販売を急ぐ必要に迫られながら、未販売戸数が大量にある物件の場合です。多少の値引なら仕方あるまいと先行契約者も黙認しつつ、早く売れてくれと願うからです。

 

新築は売主業者の値付けに従うほかない

高値の新築マンション。2020年の統計を見ても、期待を裏切る結果でした。つまり、またまた価格は上昇傾向を見せたのです。売れ行きが悪くても価格を下げられない、業界の苦悩が見て取れそうです。

 

高くても買ってくれる人がいるのは確かですし、先に述べたように新築マンションの売出し戸数は大きく減っているので、時間はかかってもなんとかかんとか売れて行くとでも考えているのでしょうか?売れ行きが悪いから値を下げるという動きは全く見られないのです。

 

買い手としては、高値でも無理なく買える範囲に収まっていれば最後はそれを選ぶということになるのでしょう。待っていても、安くて良さそうな新築物件は出て来ないなあと知るまでには時間がかかるのですが、幸いにして売れ行きが悪いので意中のマンションは半年後にも売れ残っていて、再検討ができるので、結局は時間が経てば完売に至るというわけです。

 

売主も、完売まで時間がかかっても資金繰りに困るようでもなく、完売を急ぐあまりに値引き・値下げに踏み切って利益を減らすことはしないのです。

 

まあ、交渉して獲得できるのはカーテン・家具などの備品や登記料などの諸雑費サービスが関の山なのです。買い手の一人や二人なら、決算直前の段階などに「こっそり値引き」を認めたりすることがないわけではありませんが、売り上げ計上基準は「引き渡し」なので未完成マンションで値引き策を講じることはないのです。

 

中古を狙うなら・・・

良い中古は新築と変わらないくらいに価格が高いもので、人気物件は足が早すぎてゲットするのは難しい。こう考える人も少なくありません。

確かに、ひとつのマンションから売りに出ている数はたいてい1戸か2戸ですから、「1週間もしないうちに決まってしまいました。残念!」こんな声がよく届きます。

 

特に築浅物件の足は早いのです。日本人は「新しい物が好き」らしく、新築が買えないと分かったとき、中古に切り替えたとしても、できるだけ新しいものがいいと考えがちです。このために、築浅の中古は特に足が早いのです。

 

従って、中古マンションを買うなら「見学に行ったら即答できるくらいの予備知識や事前調査」が必須です。しかし、「そんなの無理」という声も多いのです。そこで筆者は次のように提案しています。

 

「築浅、具体的には10年以下、できたら5年程度の物件を望むのは大いに問題がある」と解説します。

理由は、こうです。

①2005年頃から2010年頃にかけて新築マンションの価格は急騰しましたが、当然のように売れ行きの悪化を招きました。このため、業者は価格抑制に知恵を絞らざるを得なくなりました。

 

②そんな折に東日本大震災(2011年)が来てしまいました。このため、建築費がますます高くなりました。価格抑制は不可能なほどの状況となってしまったのです。そこで、目立たぬところで品質を下げる策に走るほかなくなったのです。これが、数年続きます。この間に価格は5%ほど下がりました。

 

③そのおかげで、2013年くらいから売れ行きは回復しますが、それを後押ししたのが住宅ローンの金利低下でした。しかし、その後も価格は上昇傾向を示すようになったのです。

 

④金利の低下は購買力を押し上げ、価格高騰の一部を吸収してくれましたが、価格の再高騰が売れ行きの悪化を招きます。売れ行きの悪さは2017年ころから目立ち始め、今に至ります。

 

高値の新築、それでも新築しか考えないという人は別ですが、中古も検討したいなら「築浅ではなく、築10年を超えるものがいい」と筆者は言い続けています。

新築志向の強い日本人ゆえに、中古を検討する際、ついつい築浅物件へ向かってしまいがちです。築浅の中古は人気が高く、価格も高くなりがちです。その様子を見ながら筆者はこう言います。

 

「狙いは築10年を超える物件です。検討時間を比較的長く取りやすいからです。理由はそれだけではありません。最近10年のマンションは品質に問題があるのが多いのに対し、10年をこえている物件の方が確かな品質の物件が多い」と。

 

検討時間は短い方が良いでしょう。速やかに答えを出すようにした方が良縁に巡り会う確率は上がるはずですから。 とはいえ、素早く答えを出すための学習も必要です。・・・・・このテーマに関しては別の機会に譲りますが、手っ取り早いのが筆者の「物件評価サービス(ショートコメントサービスを含む)」のご利用です。見学に出かける前と見学後のご利用を使い分けるとよいかと思います。

 

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10日後の予定です。

 

ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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