第265回 「中古を嫌う人に言いたい」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

最近5年、筆者は中古マンション推進派になったと言えるかもしれません。新築を否定しているわけではないのですが、中古を勧める理由と背景を説明しましょう。

 

新築は高過ぎる。その理由と背景

新築マンションは急激な価格上昇が続いています。2013年頃から続いていた価格高騰カーブが2019年に頭打ちになりかけ、2020年は下落兆候も明確になるかもしれないと期待した筆者でしたが、見事に裏切られた思いでした。

 

最近6年間を23区に限って見ると、平均坪単価の推移は以下の通りです。

*2015年:@326万円(前年比+13%)2014年;@288万円

*2016年:@332万円(前年比+2%)

*2017年:@357万円(前年比+8%)

*2018年:@376万円(前年比+5%)

*2019年:@371万円(前年比▲1%)・・頭打ちと思った

*2020年:@413万円(前年比+11%)・・・急激な再上昇

 

この間に、住宅ローンの金利が低下したので実質的な購買力が高まったものの、そのメリットが消し飛ぶほどの価格上昇があったため、売れ行きは悪化の一途でした。

 

売れなければ、売り出しを止めざるを得ないのも道理で、新築マンションの新規発売戸数は低落の一途をたどっています。

 

売れないのは東京都だけでなく、3県も同様でしたから、新規発売戸数は、年々減少しました。一都3県の数値は以下のような経過となっています。

 

*2015年:40,449戸(前年比▲10%)・・・2014年44,913戸

*2016年:35,772戸(前年比▲12%)

*2017年:35,898戸   (前年比+0.3%)

*2018年:37,132戸(前年比+3%)

*2019年:31,238戸(前年比▲16%)

*2020年:27,228戸(前年比▲13%)

(データ出典:不動産経済研究所)

 

中古も高いというものの

新築価格の上昇に伴って、中古人気が高まるに連れ、安いはずの中古も上昇傾向を見せるようになります。そんなに高いなら新築が良いという感想を抱く人も現れ、結局は新築に戻って検討することにした人をたくさん見て来ました。

 

しかし、厳密に比較すれば中古の方がまぎれもなく安いのです。高いと錯覚してしまうのは、ダメな新築と優良新築を比べるからです。筆者には、そう映ります。

新築並みに高値の優良中古を多数見て来た筆者は、「腐っても鯛」ではありませんが、優良中古は年数を重ねても価格が落ちない、今も高い、周辺の同年齢の中古の2割も3割も高値が付くものであることに気付きました。

 

中には、築後30年を超えて近隣の新築以上の高値で実際に取引が成立する物件もあるのです。そこまでの高値ではないものの、10年を超えて新築並みという取引実績が続く優良中古マンションは少なくないのです。

言うまでもなく、東京都区内の限られたエリアの話ですが・・・

 

新築検討のメリット

ところで、ある外国人が言いました。日本人はなぜ新築の家にこだわるのですかと。筆者は、「宗教と関係がありますね」と答えました。神道(しんとう)というのでしょうか?神代の昔から、日本人のDNAに「新しいものが良い」という観念が組み込まれて来たのかもしれません。

 

そう聞くと、伊勢神宮の「遷宮」を思い浮かべる人もあるかもしれません。

 

別の先達が言いました。「日本は木の文化、欧米は石の文化という違いがありますから」と。平たく言えば、新しいものが良いという信仰が日本人の心に根差しているのでしょう。そのことと住宅への思いが重なって来ます。

 

筆者は、こう思います。市場には大量の中古マンションの売り物があり、総量として住宅は不足していないのに、新築を作り続けるのは、日本人の心に宿している「新築信仰」と大いに関係があるのです。

「どうせ買うなら新築がいいよね」という言葉を何度も耳にして来ましたが、新築を大量供給して来た要因は、優良な中古が少ないことにあるだけではないのです。

 

しかし、業界の努力もあって、優良な中古の徐々に増えて来たのです。もはや、新築にこだわることはないと言えます。

 

とはいえ、中古は買いにくいとも聞きます。候補に挙げた物件を見学に行くと、既に何組も見学家族があって、まごまごしていると買えなくなってしまうからです。新築のモデルルームのように、2時間も3時間も滞在して質問を繰り返したり繰りかえし見学にでむいたりということもできないのが中古です。

 

売り手家族が入居していることも多いので、遠慮の気持ちも働いてしまい、ゆっくり見学することもできないものです。他方、新築マンションなら、何度も訪問できるし、先着順販売であっても品数が多いので、慌てることもないのが実態です。

 

中古のメリット

中古マンションは1戸限りです。しかし、すぐにでも入居できることや実物を買い手自身の目で確かめることができます。売れ残っている物件以外は、実物を確認できないのが新築です。映像やパンフレットなどで想像しながら品定めするほかありません。

 

中古の良い点は、建物全体を自分の目で確認できることです。駐車場の位置、公園の姿、植栽を含む外構、マンション全体の姿、管理状態、エレベーターのスピード、室内からの眺望と日当たり、ご近所さんの印象などが分かります。

 

入居中の中古は、家具配置まで教えてくれます。よそゆきの恰好で飾った新築マンションのモデルルームと異なり、生活実感は伝わって来ます。それらを参考にしつつ、買い手は夢を膨らませることもできるでしょう。無論、落胆することも少なくないはずですが、それでも本当の姿が分かって良いとも言えるはずです。

 

中古は1戸限りであることがネックだが

話を元に戻すと、中古は先着順販売、言い換えれば「早い者勝ち」です。良いと思ったら、速やかに、それこそ即決するくらいのスピードが求められます。「何千万円もする買い物を即決せよなどと、そんな無茶な」と思われている読者も多いことでしょう。

 

しかし、そのくらいのスピード感覚が必要なのです。その覚悟がなければ優良な中古はゲットできないと言って過言ではありません。

そこで、必要な予備知識や決断のカギを持つことが求められるのです。見学してから考えていたのでは「泥棒を捕まえてから縄をなう」に等しいと言えます。つまり、事前の知識習得が必須になるということです。

 

しかしながら、多忙な人は勉強する時間も限られます。インターネット情報は混乱を招くだけで遠回りになったと語る人もすくなくありません。書籍とて同じです。筆者の著書も、自虐的に言えば所詮は一般論です。具体の物件を登場させて、その長所短所を解説しているわけではありません。

 

インターネット上の物件批評も、新築だけですし、鋭く欠点・問題点を指摘しているようでもありません。結局、どうやって勉強したらよいか分からないと嘆く人が増えている、少なくとも筆者の目にはそう映るのです。

 

中古をゲットする方法

もう10件も見学しましたが、どれも「帯に短しタスキに長し」だった。1戸限りの中古をどうやってゲットしたらいいの?そんな嘆き節を何度も聞きました。そこで、筆者は提案します。

 

「書物やインターネット上の知識と情報をいくら集めても、満足度の高い購入には至らず、それこそ永遠に探し続けることになりますよ」・・・筆者はこう助言します。「青い鳥症候群」という病にかかった人を何人も見て来ましたが、知識を詰め込めば詰め込むほど整理ができなくなります。

 

目移りしてしまい、買えなくなった人もありました。「あちら立てればこちらが立たず」・・・これが実態なのです。どこかに線を引いたり、優先順位を設けたりすることが必須です。後順位の条件は諦めるということも不可欠です。

 

これは新築でも同じですが、足が早い中古は必須の心構えとなるのです。

 

中古は何年住めますか?

日本人は「新しいものを好む傾向がある」と言いました。そのせいか、中古マンションの売買に慣れていない人、周りにも中古マンションの売買経験者が見当たらない人が多いのかもしれません。そもそも、家を売ったり買ったりを何度も繰り返す人は少ないはずです。

一生に一度で終わる人だって少なくないのですから。

 

最近は、「転勤があるので長くて10年しか住めないから、出口を考えておきたい」とおっしゃる人も増えて筆者の提供する「将来価格の予測サービス」利用者もうなぎ上りですが、ご依頼の対象物件には中古も半数以上あって、最近は「20年中古を買って15年後に売るとしたら、どのくらいの価格が期待できますか」という算定依頼も増えています。

 

日本人の性向から「新築がいいのだけど売り物がないので、中古も視野に入れています。そのかわり、できるだけ築浅の物件にしたいのです。そう思って探してきました」・・・このようにおっしゃるご相談者が多かったのですが、最近は先述のとおり20年以上の「やや古い」中古も視野に入れているご相談者も増えて来ました。

 

15年、20年中古を買ったら、仮に15年後は30年・35年の築古(ちくふる)中古になってしまいます。売れますか?売れるとしても、価格はどこまで下がってしまうのでしょうか?

 

こんなご質問とセットで「マンション評価サービス」のご依頼も少なくない昨今です。物件によって当然に差はありますが、30年も40年と住み続けることも可能です。問題は、売却価格です。売らなければ損も得もないのですが、いつか売るときが来るに違いありません。そのとき、いくらで売れるか、そこが大いなる疑問であり、期待でもあるはずです。

 

高く売れれば、老後の生活不安は和らぐことでしょうし、売却価格が高ければ高いほど老後の安心につながるのですから。預貯金が少なくても。マンションを売って得られる金銭が大きければ大きいほど良いのは言うまでもありません。

 

余命が思った以上に長かったなどと語る人は増えるでしょうし。残された家族のためにも、住まいは資産形成に役立つものであってほしい。筆者のせつなる願いです。

 
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10日後の予定です。
 

ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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