このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
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「急激な上昇」と言って良い過去数年のマンション価格。高くなったマンション、上がり続けるマンション価格、その現象を知る検討中の買い手さんの中には「待った方がよくないか」と考える人も増えているようです。
様子見をしているということですが、今日は「模様眺めは正しいか」について筆者の考えを述べることにします。
価格が高過ぎる原因(新築)
前回の本ブログで書きましたが、最近6年間を23区に限って見ると、平均坪単価の推移は以下の通りです。*2015年:@326万円(前年比+13%)2014年;@288万円
*2016年:@332万円(前年比+2%)
*2017年:@357万円(前年比+8%)
*2018年:@376万円(前年比+5%)
*2019年:@371万円(前年比▲1%)・・頭打ちと思ったが・・・
*2020年:@413万円(前年比+11%)・・・急激な再上昇
中古も高い。何故なのか?
新築が高くなれば、安いはずの中古に買い手の一部は流れます。つまり、中古人気が高まるのです。その結果、中古の価格は上昇圧力が高まります。過去10年間、首都圏の中古価格は以下のような値上がりカーブを描くこととなりました。2012年頃から目立って高くなっているのです。
これは、全ての中古物件を集計しているので、築10年以内などと区切って集計すれば、中古マンションの価格は新築マンションと大差ない数値を示すことでしょう。
中古マンションを検討し始めた人の多くが「中古なのにどうしてこんなに高いの?」と、驚きとともに残念な思いを語ります。
中古マンションの価格は、買い手の人気投票で決まるようなものです。優良なマンションはオークションによって価格が吊り上げられるかのように決まる、そんなイメージです。
無論、人気のない中古には買い手が現れず、下方圧力が強まります。
新築マンションが値下がりするとしたら
「この先、マンションの価格は値下がりしますか?」と問われることが最近は頻繁にあります。新築マンションの値下げは企業の経営を左右するので簡単に実行できないものです。そもそも新築マンションの利益率は想像されるほど高くないのです。商品単価が大きいので、利益率が小さくても儲けは大きいのですが、期間内に完売できた場合のことです。
このため、発売時点でデベロッパーの価格は良くない売れ行き予想をしながらも、利益を落とせないので高く設定してしまうのです。
それ以上の低価格にしたら、赤字になってしまうなどという限界スレスレの価格を決定する企業があるという話を聞いたことはありません。「そこまで下げるくらいなら、その分譲は凍結だ」そんなデベロッパーの声を何度か聞いたことがありますが、比率で言えば1%もないのです。
売上が立たなければ企業は存続できなくなるので、高値でも販売して利益を得ることが必須です。投げ売りしてしまうことがあるとしたら、マンション分譲ビジネスからの撤退を決断するときです。
「売出してみて売れなかったら、結局は値引き販売を始めるのでは?」そんな声も聞こえますが、その決断には別の力が働くので、これまた難しいのです。力とは何かというと、定価販売した買い手から猛烈な抗議運動が起こって、結局は全戸値引きという決断を迫られる恐れがあるからです。
歴史上、既契約者にも差額を返金したうえで大幅値引きに踏み切った例はあるのですが、稀有です。
中古の価格下方修正は早い
中古マンションは新築とは全く事情が異なります。そもそも買ったときと、売出し時期との間に10年、15年という時間経過があるので、それが価格引き下げを可能にしてくれるからです。大昔と違って、住宅ローンの金利が低く、借入元本の減少スピードが早いためです。ちょっと高い「フラット35」を利用していた人でも、10年経過で返済は20%も進みますし、民間の変動金利の場合では、結果的に25%も減っていますから、売却金額の下げ余地は大きいのです。
何かの理由があって売却を決めた買い手さん(大抵は個人)は、売れないと困ることが多く、売り出してみて買い手が決まらなければ、夫婦二人、もしくは主人一人の決断だけで値下げができます。
新築のケースのように忖度する相手はないのです。言い換えれば、中古マンションの価格下方修正は柔軟、かつスピーディです。
新築マンションの価格が下がるとき
新築限定で探すなら、待っても何も変わらない。そう思うべきです。それでも例外的に値下がりすることがあるとしたら、売り出してしまったマンションの中で売れ行きが悪すぎる物件の場合です。
しかし、売れないマンションは条件が悪い上に価格が高いから売れないわけで、値下げしてくれても買って良いマンションかと問われたら、ほぼ例外なく手を出すべきでないマンションなのです。
まだ、売り出していないマンションで価格を抑え気味に決定して来るケースはあるのでは? そんなご質問をいただいたことがありますが、「その可能性はゼロではないでしょう」と答えました。
ところが、「あなたが注目している物件は?」と問うと、返って来る答えは「好立地、大型、ブランドマンション」なのです。その種の物件は、人気物件であるはずで、少しくらい高値でも売れると踏んでいる可能性がありますし、価格調整も僅かのはずです。正式決定された価格が高いレベルでも、第1期は人気を博して好結果が出るでしょう。
一般の新築マンションで価格が下方修正される確率は低いと考えるほかありません。
今後、用地費が安くなり、建築費が低下すれば新築マンションの価格も低下傾向を見せる可能性がゼロではないものの、今のところ期待はできないのです。
マンション用地が値下がりしているという情報もありません。少なくとも都心、準都心、人気エリアは相変わらずの高値と聞きます。適地そのものがないとも聞きます。
建築費も景気浮揚策が消えない限り値下がりすることはないでしょう。短期的にはコロナ禍が各種法人の建築予定を先送りしている、マンション業者も然りで、下げ圧力が強まっているとも聞きますが、マンション業者から建築費が予算以下になったという情報は漏れて来ないのです。
待って得なのは中古だが・・・
マンション業者(デベロッパー)は、この10年で群雄割拠の時代から大手寡占の時代になってしまいました。投げ売りするような例も出て来ないのも当然です。期待できるのは中古マンションです。新築マンションが上がれば中古も上がるという関係は続いていますが、価格の下方修正余力のある個人オーナーである中古マンションには頭打ちの傾向も一部で見られます。可能性はあるのです。
その意味では、中古の方が待つメリットは大きいかもしれません。もっとも、対象物件を候補にしていると、期待外れに終わる可能性は高いかもしれません。
とはいえ、筆者は常に「購入時期は今です。買いたいと思ったときが買いの時です」と言います。将来を正確に読むなどという芸当は誰にもできないのですから。
筆者も「将来価格の予測サービス」を提供する中では、保守的で安全率を大きめに取ることにして来ました。
待っていれば値下がりすると信じる根拠は見当たりません。仮に予想が外れても、マイホームは売らない限り損も得も実現しないのです。
値下がりしてしまったときは、しばらく賃貸して様子を見ることもできるはずです。そのとき、どのくらいの賃料が取れるかどうか、借り手の出入りで空室期間が長くなってしまわないかどうか等を検討してみて問題ないなら、購入マンションが人生を大きく左右するなどということも起こらないはずです。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10日後の予定です。
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