屋上緑化や壁面緑化が描かれたマンション広告は、「見た目も良く、環境にも優しそうだ」と連想させる。
屋上緑化を売りにしているマンションは買いか?
【もくじ】
◇08年でマンションの屋上緑化ブームは終わっている
◇都は屋上緑化を義務づけているのだが
◇ヒートアイランド現象の緩和効果が認められないセダム
◇屋上・壁面緑化はマンション住人にとってメリットなし
◇あわせて読みたい
◇おまけ
08年でマンションの屋上緑化ブームは終わっている
09年以降、住宅系建物では屋上緑化はあまり施工されていない(次図)。08年9月15日に発生したリーマンション・ショック以降、首都圏の新築マンション着工戸数が激減し、マンションの屋上緑化ブームは終わったのであろう。壁面緑化のほうは、ほとんど普及していない。
「国交省がいうほどには増えていない?共同住宅の屋上緑化」より
都は屋上緑化を義務づけているのだが
東京都は、ヒートアイランド現象の緩和、都市景観の向上など、屋上緑化を推進するために2001年4月、改正自然保護条例を施行し、敷地面積1,000m2以上の民間建築物(公共建築物は250m2以上)を新改築する際、利用可能な屋上面積の2割以上の緑化を義務づけている(緑化計画書の届出|東京都環境局)。ただ、たとえ敷地面積が1,000m2以上であっても、「利用可能な屋上面積」がゼロであることを理由に、コストアップとなる屋上緑化を設けないことも可能だ。
でも、販促効果を念頭に、屋上緑化を採用するデベロッパーがいる。
ヒートアイランド現象の緩和効果が認められないセダム
各種の建物(マンションに限らない)に施工された屋上緑化は、植栽タイプ別に見ると、「複合」「セダム主体」「芝生主体」の施工面積が多い。「低木主体」や「コケ主体」は少ない(次図)。「同上」より
「複合」とは、庭園型の植栽で、どちらかといえば大規模でクォリティの高いマンションに採用されている。
セダム(メキシコマンネングサ)は、水分の蒸発量が少ないので屋上緑化による冷却効果が少ない(ヒートアイランド現象の緩和効果は認められない)にも拘わらず、維持管理にほとんど手間を要しないので、都内のように、屋上緑化が義務づけられているような場合に用いられている。
(メキシコマンネングサ|Wikipedia)
※セダムにはヒートアイランド現象の緩和効果が認められないことは、たとえば、「東京都環境科学研究所年報 2004:屋上緑化のヒートアイランド緩和効果」で実証されている。
セダム区は、灌水直後は蒸発散が行われたが、すぐに低下し、土壌区と類似した傾向を示した。このことから、灌水を行えない管理下においては、日中のヒートアイランド緩和効果を期待できない屋上緑化であると考えられた。
(同論文「4 まとめ」P7)
屋上・壁面緑化はマンション住人にとってメリットなし
軽量化土壌構造の研究開発が進んできたとはいえ、屋上に緑化を施工するためには、ある程度の固定荷重を見込む必要がある(躯体工事のコストアップ要因となる)。また、手入れ不要のセダムでなければ、水やりや剪定の手間が発生する(維持管理費のコストアップ要因)。
このようなコストアップは全て住人の負担であることを忘れてはならない。
住人は、植栽が屋上にあるがゆえに、いつも緑を楽しめるわけではない。
屋上に施工された植栽がセダムだとすれば、ヒートアイランド緩和効果も期待できないのである。
壁面緑化は義務づけられていないが、広告のCGが映えるなど、販促効果を期待して採用されているようなところがあるのかもしれない(マンションの壁面緑化は誰のため? )。
でも、壁面緑化はキチンと維持管理がなされないと、枯損したり、伸びすぎたりして、みっともない姿を見せることになる。
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おまけ
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