「モモレジのちょっと得するマンション選び」10回目になります。
正直なところこのシリーズは自身の手の内をかなり明かしてしまっているので若干抵抗もあるのですが、想像していた以上にご好評いただいておりますし、途中で辞めるのもあれなんで頑張ります(汗)。
さて、節目の10回目ということですし、これまでの流れを確認する意味でも目次を用意してみました。
<目次>
第1回「新築」と「中古」で発生する価格の歪みについて
第2回「階建」により歪みが発生するケース
第3回「総戸数」により歪みが発生するケース
第4回 新築時の歪みが中古市場において「是正」される理由
第5~7回「専有面積」と「部屋数」の適度な関係について
第8回「専有面積」により歪みが発生するケース
第9回「部屋数」により歪みが発生するケース
という流れを受けて、今回からはいよいよ「階による歪み」について言及していきますが、第2回で言及した「階建による歪み」とは視点は全く異なることにご注意下さい。
⇒モモレジのちょっと得するマンション選び第2回「階建により歪みが発生するケース」
第2~3回では「階建」や「総戸数」、つまり「物件属性の違い」により異なる物件間で近い条件の住戸価格に歪みが生じているケースを述べましたが、第5回以降では物件内の住戸間で価格に歪みが生じているケースを中心に解説しています。
分かりやすく言うと今回は「物件内の住戸を比べた場合に、この住戸は階数のわりには安い???」と気づけるような見方を学んでもらえたらと思っております。
※画像に意味はありません。画像がないと寂しいので掲載しております。
先日の散歩中に撮った青物横丁駅前にあるアイディ品川Ⅺです。Ⅺということからも分かるようにこの周辺にはたくさんのアイディ品川があるのですが(アウディ品川もあるなぁ・・・笑)、この物件は一味違います。
上の画像は普通でしょ、すごく普通なのですが、南側から見ると・・・
なんとバルコニー側面にソーラーパネルがビッシリ!
少し上方向に角度をつけることで日を当たりやすくしているようです。
落下しないような安全対策を万全にする必要はあるのでしょうが、南側が抜けているマンションには悪くない試みですよねこれ。目から鱗のモモレジでした。
さて本題、まずは、どんな時にその「階による歪み」が発生するかを解説していきたいと思いますが、階による歪みが発生しやすい典型的なケースはやはりタワマン(階建の高いもの)でしょうね。
階建があればあるほど階差の大小が全体の価格差(単価差)に与える影響が大きく少しの積み重ねが全体の価格差に大きな影響を及ぼすことが少なくないからです。
さて、そのタワマンの「階差」ですが、視界条件・眺望条件にも左右されますが、一般的にはおおよそ「10~50万円」となるケースが多いですね。
そして、ここで1つ大きなポイントとなるのが「マンションの価格は下一桁の数字を統一するのが一般的」という点です。デベによって下一桁を「×,××8万円」とするとかしないとかはありますが、同じ物件内で下一桁が統一されていないケースというのはほとんどありません。
※明和地所(クリオ)さんはそもそも「万円単位」でなく「千円単位」の細かな価格設定となっているので、例外になりますが・・・。
これがどういった影響を及ぼすか???
低層建の物件の場合は階差がタワマンよりも大きいので(100~200万円が珍しくない)、下一桁が統一されていても何ら影響はないのですが、タワマンの場合は階建がある分、階差が小さくなるのが普通で、10万円とか20万円という小さな数字になるのがほとんどなので下一桁を統一していることによる影響が避けられないのです。
10万円とか20万円という金額自体はマンションを検討するにあたってはそれほどインパクトのある数字ではないのですが、階建があるとどうなるでしょうか。階差10万円なら10階上の住戸との価格差は100万円差ですが、階差20万円なら200万円差です。そして、20階上、30階上となると(同じプランが20階上や30階上まで続いているケースは多くはありませんが)、2倍~3倍となるのでその10万円、20万円という階差が及ぼす影響はどんどん大きくなることがお分かりいただけると思います。
つまり、10万円と20万円はたった10万円の差でしかないのですが、別の見方をすると「10万円と20万円には2倍の差がある」わけで、「タワマンのように階建のあるケースではその10万円の差が積み重なって大きな差になる」のです。
あたり前のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、ベースがおおよそ5,000万円の物件と仮定した場合には階差が10万円なら1階あたりの価格上昇はおおよそ0.2%ですが、20万円ならば0.4%、でその間という選択肢がありえないということは「細かな価格設定がしづらい」ということに他ならないのです。例えば、10階あたり3%程度の価格差を設けたいなと思ってもそれはかなり難しくなるんですね(階差が15万円というのは基本的にありえず、10万円と20万円の階差を使い分けないといけなくなるので、それはそれで歪みを感じる要因になる)。
階差を10万円や20万円ではなく下一桁を変えるのも厭わずに12万円とか15万円とかに条件次第で細やかに設定できるのであればこの価格の歪みは限りなく生じにくくなるのですが、前述のように基本的にマンションの価格は「下一桁を統一」している結果、歪みが生じやすくなっていると言うこともできるわけです。
この歪みは地味に思われがちですが、歪みの発生頻度は非常に高く、注意して損はないもの、と言えるのではないでしょうか。
一例にはなりますが、40平米台のプラン(中心価格帯が4,000万円程度)で階差が20万円だと10フロアで約5%も価格が上がってしまうことになりますが、80平米台のプラン(中心価格帯が8,000万円程度)で階差が20万円であれば10フロア上がっても価格は約2.5%しか上がらないわけでその影響やそこから受ける印象は全く異なるものとなることを認識しておくと良いでしょう。
※ただ、短絡的に階差10万円なら下階、20万円以上なら上階がオススメと言っているわけではないのでその点は誤解しないようご注意下さい。
マンションは一物一価で個々の住戸から見える眺望や日照は千差万別で、それを金額に置き換えることは容易ではありません。投資賃貸を考えた場合には、そういった眺望面による賃料差はたかが知れているので、ほとんどのケースで低層階が有利になるわけですが、投資の場合においても将来的なリセール(出口)の「しやすさ」を重視した場合にはまた違った視点も必要となりますし、この階差なら絶対にこうすべき!というような乱暴な議論は当然にありえません。
確かに言えることは、1つのマンションの価格設定において階差が全て同じということはありえず、方角、専有面積、間取り、によっても階差を変えてくるのが普通なので、ご検討プランの階差だけを吟味するのではなく、他の向き、他の広さのプランの階差などとも比較検討することで見えてくるものが必ずあるということでしょうか。
こういった視点で価格表を穴が空くぐらい見つめてみましょう(笑)。
今までは見えていなかったことが見えてくるかもしれませんよ。
次回は、「階による歪み」についてもう少し踏み込んだ視点から分析します。
ポイントは、フロアプランが変わる前後階の単価差です。
ご期待下さいませ。
こちらもどーぞ。
立地や間取りだけでなく、価格の傾向や価格の歪みを記述し、累計1,900棟4,200室超達成。
毎日読んだら少しずつ相場感が育まれる気がする(笑)ブログ。
⇒マンションの間取りや価格を言いたい放題!