第279回 「損しないための究極のマンション選び」 第1部・第2部

スポンサードリンク

このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

マンション選びは中々一筋縄では行かないもののようです。希望条件を100%満足する物件はないからです。無論、誰でも頭では分かっています。しかしながら、いざ具体の物件を前にすると「あちら立てればこちらが立たぬ」と思い悩むのが常です。

筆者に相談して来られる方の過半が、気に入った点はこうで、心配や問題と感じる部分はこうですと具体的に伝えて来られます。

筆者はマンション選びの羅針盤になりたいと考えて「相談業務」を終生の仕事にしていますが、それは言い換えると、ご相談者の背中を押すことが任務と心得ているということでもあるのです。

従って、ここがダメ、これは価値が低い・・・ばかりを連発していたら、買うものがなくなってしまうので、予算その他の購入者事情を踏まえて最善の策を提示するのが現実的な姿となります。

 

マンション選びで主眼に置きたいのは資産価値です。平たく言えば、将来の売却価値がどの程度になるかという視点を持ってマンション選びをすることが大事だということですが、これを長く訴え続けています。

 

マンションは買い替えを前提にすべきだ」ということでもあるのです。しかしながら、選択したマンションが、将来高く売る、もしくは有利に売ることが難しい物件を購入してしまう人もあるのが現実です。

予算と物件のバランスを取ると、つい将来価値が低くなってしまう懸念のある物件を選択せざるを得ない人は多いのです。

 

では、不幸にして値下がりマンションを買ってしまった人はどうなってしまうのでしょうか? 何も策を講じなければ、ただ損をしたなあと苦い記憶となる、最悪は売るに売れず住み続けるほかない、住み続けてストレスを溜めこむ、などという事態が予想されます。

 

本来的には、可能な限り価値あるマンションの選び方の要諦を学習すべきですが、その部分を第2部で触れています。前後しますが、第1部では、マンションの価格の上昇・下落のメカニズムについて予備知識を持っていただきたいとページを割きました。

第3部では、理想と現実のはざまで、犯しやすい選択の過ちについて具体的に解説しています。

第4部は、この条件が値下がりを生むという事例を解説します。

最後の第5部は、値下がりしても損を最小に抑えるための策や値下がりしたときの策について解説します。

(今日は第1部、第2部をお送りします)

 

第1部   マンションは値上がりしない方が良い?

(1)相場上昇「みんなが儲かる」

購入してから何年かして売りに出した自宅マンションが、購入時から値上がりして喜んでいる人は少なくありません。エリア別に見れば、特に多いのは首都圏、なかんずく23区内に所有している人たちです。

 

ただし、値上がり幅には大きな差異があります。ある人は購入時から30%も上昇し、ある人は5%程度に過ぎないという差が現実にあるわけです。差はあれども、値が上がった人は「自分の目が正しかった」と胸を張りたくなる気分でしょう。

 

建物が劣化している中古マンションが値上がりするのはどうしてでしょうか? 詳細は後述しますが、同じような場所の同じくらいの建物内容の新築マンションの価格が値上がりしたことが明らかな場合、中古マンションの価格も新築との対比によって上がるのです。

 

例えば10年前に5000万円だったマンションが10年経過で4000万円くらいに評価されるのが普通のところ、10年後の今、新築が1.5倍の7500万円になっていたら、中古の4000万円はいかにも安いので、市場原理が働いて6000万円とか5000万円とかになるのです。

つまり、新築が7500万円で、同じ程度・条件の中古が築後10年なら6000万円でも価値があると市場では判断されるのです。

 

つまり、中古マンションの価格は新築価格に連動するということです。このような値上がりは、市場のおかげです。新築マンションの値上がりが結果的に中古市場に影響を与えているわけです。

 

新築市場の価格上昇が激しければ、中古マンションはどれもこれもみな値上がりするという恩恵に浴することになります。その典型的な時期はバブル経済時代の1980年代後半から1990年代前半でした。

そのころは、僅か数年間に新築マンションの価格が2倍以上になった (1985年に専有面積3.3㎡当たり141万円だった新築価格は、5年後の1990年には、なんと同309万円に跳ね上がった )ため、それ以前に購入した人は誰もが儲かったのです。

 

もっとも、売却をしなかった人もありますし、売却した人も、買い替え先も高いので仕方なく値上がりしていないエリアを探して住み替える必要があったのですが・・・

 

(2)価格上昇「我が家だけが儲かる」

(1)では、話を分かりやすくするため、同じような場所の同じくらいの建物のマンションとの比較としましたが、実際は同じようなマンションが近隣に売出し中でないことも多いものです。

 

販売中の物件があっても、環境も建物規模も差があり、グレード感やブランドなどの条件にも差があるものです。従って、新築相場が仮に6000万円であっても、ある中古は新築を上回る7000万円であり、別の中古は4000万円になることもあるのです。

 

これを個別要因と呼ぶことにすると、市場全体の変動が全体を押し上げたとしても、個別要因によって差が生まれることになります。

最近の5年間に5%のプラスという数字が新聞等で公表されたとしても、あくまで広域の平均値であって、物件単位に見ればマイナスということがあるのです。

 

個別要因によって、あるマンションは分譲時から30%もの値上がりになったりしますし、別のマンションは逆に30%も値下がりしたりします。無論、その中間もあるわけで、それらを平均して5%と言っているわけです。

 

乱暴に言えば、広域の平均が5%の上昇であっても、地域別に見て行くと15%上昇地域もあれば10%の下落地域もあるということです。

 

(3)値上がりして困ること

我が家が値上がりして喜んだのも束の間、売却後に住む先も値上がりしていたら、買い替えは必ずしもうまく行きません。

 

多くの場合、狭い家から広い家に、不便な家から便利な家にと、ランクアップを図るのが買い替えの狙いですが、市場全体で価格が高騰すると買い替えに当たっては追加資金も大きくなるのです。

 

1988年以前にマンションを買った人の多くは、一時期、大きな値上がりを体験しました。タイミングや購入した物件・場所によって差はあるものの、短期間に我が家が2倍、3倍になったことで驚いたものです。

 

売却した人は高値に驚くとともに、手にした金額に喜び一杯だったことでしょう。ただし、その資金でもっと良い住まいを手に入れようとすると、郊外のまだ値上がりの波が及んでいない街へ行くほかありませんでした。

売却した場所の近くは同じように値上がりしていたため、売却して得た金銭に(新たなローンなどで)追加しなければランクアップした家は買えなかったからです。

 

第2部 マンションの資産価値

資産価値とは何でしょうか? 分かりやすく言えば、いくらで売却できるかということです。これをリセールバリュー(Resale Value)と言います。マンションの場合、建物が完成した、その時から老朽化の道をゆっくり歩み始め、徐々に建築物としての価値は下がっていく運命にあります。

 

しかし、その一方で、立っている位置(場所)が価値を高めてくれることがあります。地価の上昇です。地価は、需要があれば高くなります。

 

一方、出店を希望する人が少ない、事務所を構えたい企業が少ないといった場所は、人口の流入が流出を下回っていたり、老齢化が進んでいたりして活気のない街である場合が多いと考えられます。このような場所の地価は下落します。そのような街では、中古マンションも同様に売却価格は下がらざるを得ないのです。

 

マンションのリセールバリューは「需給バランスで決まる」ということです。

 

中古になっても買い値を上回る価格で売却されるマンションが現実に存在します。東京圏に多く、残念ながら地方都市にはあまり見られません。東京圏でも、郊外では値上がりしているマンションは少ないようです。

 

永住のつもりで購入しても、住み替える可能性があります。そのとき、少しでも高く売りたいと考えるのが人情というものです。値上がりするマンション、または値下がりの小さいマンションの条件を考えてみましょう。

 

(1)中古マンションの価値は街・駅で決まる

マンションの価値を決めるのは、何と言っても立地条件です。立地条件が良いとは、具体的にはどういうことでしょうか?それを先ず説明しましょう。

 

①地域一番の立地条件かどうか:鉄道の駅に近いことが必ずしも地域一番というわけではありませんが、買い物や病院、学校、役所などが集まる「便利な場所」や、「高級住宅街」などであることが条件になるでしょう。

大都市圏では、鉄道の駅、しかも「ターミナル駅」に近いことが条件です。徒歩5分が目安となります。

②住みたい街・沿線ランキング上位のエリアにある:インターネットで検索すれば「住みたい街」のランキングが出て来ます。ランキング下位、ランキング外の街・沿線は避けましょう。

③供給稀少地域:物件供給が少ない高級住宅地。周辺の街並みが整然として緑も多く美しい。こうした街は、再開発の余地が少なく、マンション供給は滅多にないものです。つまり、とても稀少価値が高いということになります。

④都心にアクセスが良い:ビジネスの中心地に便利な場所であることも条件です。

 

・・・・・以上の4点が、立地条件の良さを示す要素です。

 

東京カンテイ社が継続調査している市場データのひとつに、リセールバリューと称するものがあります。

このデータは、新築時の価格と10年後の現在価格を比較したもので、10年前の新築時価格を100とし、現在価格(流通価格)がいくらになっているかを首都圏の駅ごとに算出して公表しています。

 

また、同データは複数の雑誌でたびたび使われていますが、そのデータを注意深く見て感じることは、以下のような点です。

 

◆マンションの資産価値を左右する場所の要素◆

①郊外よりは都心が値下がりしにくい(東京23区内が一番)

②駅から5分以内が最も値下がりしにくい

③駅前再開発で、大型SCがオープンしたり、街並みが整備されたりしても、その後の発展が伸び悩むと、あまり良い値をつけない場合がある(期待を裏切られる)

④新線・新駅の開通や延伸などがあっても、期待したほどの発展が続かない駅では、リセールバリューが下がることもある。

⑤どんなに人気の高い駅でも、開発ラッシュで新規供給が多い時期にぶつかると、中古の人気が低下し、一時的に値下がりすることもある。

⑥新しい街より、30年以上の歴史があり、成熟した街並みや集客装置となる商業施設が多数あるなど、人気を維持している街・駅の方が当たり外れは少ない。

⑦人気沿線・人気駅・人気エリアと言われる地域でも、何年か後には変化する。「廃れた街」、「発展途上の街」、「安定した人気を集める街」と区分して、10年後どうなっているかを見抜く目が必要になる。

 

(2)立地条件を最優先に選択しましょう

マンションの価格は、随分と地域格差があるものです。

同じ23区内でも差異は大きく、例えば新築マンションの区別平均(2016年~2020年の5年平均)を眺めると、最高は港区で平均坪単価は@600万円を超えます。70㎡換算で1億2000万円もするのです。

 

都心に近い割には安いと人気の高い江東区は上から14番目くらいですが、坪単価@230万円、70㎡換算で4800万円と、港区とは大きな開きがあることが分かります。

最下位23番の区になると、どれだけ安いか何となく想像していただけることでしょう。

 

また、駅別に見ると「六本木」、「渋谷」、「広尾」などは新築の坪単価で@800万円もしますが、最近人気の「豊洲」はおよそ半分の@400万円と格安です。

 

東京市部では、「国立」が@251万円、「府中」@267万円、神奈川県に目を向けると「横浜」は@340万円、「日吉」は@290万円、「上大岡」は@240万円、埼玉県では「大宮」が@250万円、千葉県では「船橋」が@240万円ですが、「柏」は@170万円といった具合に大きな差があるのです。

 

このような差はどうして生まれるのでしょうか? 様々な理由・背景がありますが、簡単に言ってしまえば 「住みたい街としての人気度」と「商業施設の集積度」から生まれるのです。

 

環境がどれほど良くても、通勤に不便な場所は人気が高まりません。また、新しい鉄道が完成し、都心へのアクセスが飛躍的に向上しても、駅周辺にスーパーが1軒できたというだけでは住まいとしての魅力は乏しいはずです。

 

通勤と買い物や飲食などの生活利便性が高いこと、更に暮らしを彩る各種施設が豊富に揃っていることが人気になる重要なポイントです

 

人口が多い場所や、乗降客の多い鉄道のターミナル駅周辺には、魅力あふれる商業・娯楽施設が集まっています。金融サービスや教育産業、飲食業も多数あります。これらが豊富に集まっているエリアほど人が集まり、人が集まるから新たな施設やリニューアルされた施設が次々にできるのです。

 

東京に限りませんが、都心には職場(企業)があり、買い物施設、娯楽施設、飲食店があり、優れた教育機関などが豊富に揃っています。そのうえ、意外なことに都心は公園や公共施設の自然環境も良く、足りないものはないと言って過言でないほど何でも揃っています。

 

それゆえに、都心の住宅は価値が高く、郊外は安いのです。

 

東京と他の都市では規模の大小や距離感が違うだけで、都心と郊外の住宅価格の差は同様です。上述のことが要因になって生まれるのです。

 

マンションの価値を決めるのは、その立地条件です。これに異論のある人はないでしょう。改めて言うと、立地条件が良いとは、交通便が良い、生活利便施設が揃っている、そばに公園などがあって緑地が豊富、といったことですが、中でも交通便の良さが一番です。

 

最寄り駅から離れた場所でも、大型ショッピングセンターがあり、銀行や役場の出張所など出先機関も揃っていて、便利に思われる場所が稀にありますが、残念なことに、こうした場所は専業主婦には受けても通勤に不便なため、働き手には不評です。

 

また、駅に近くて買い物にも便利、おまけに、すぐそばには大きな自然公園が広がり、最高の立地条件だと売り手が自賛する場所もありますが、都心からは遠いという短所を抱えた物件でもあります。

 

都心へのアクセスも良く、最寄り駅にも徒歩5分と近い、且つ、買い物ほかの施設もすべて揃っているマンションとなれば、ファミリー向けなら「億ション」になってしまうかもしれません。少なくとも2021年現在、東京都心では新築に限れば8000万円以下で見つけることはできません。

 

そこで、都心に比較的アクセスの良い周辺地域で探そうとすると、最寄り駅までは近いけれども、そこからバスに乗らなければならないとか、歩けても10分以上かかるといった物件を検討することになるかもしれません。

 

こうした物件は、自然環境に恵まれていたり、大型ショッピングセンターがそばにあったりと、交通便の悪さを補う要素があり、判断を迷わせるものです。

しかし、交通便の悪い物件は、他の要素がどれほど良くても避けるべきなのです

 

通勤便が悪いマンションは、子供が高校進学などの年齢になったとき、今度は通学便の悪さを知ることになります。

 

このようなマンションは比較的安く分譲するため人気になることもありますが、それも最初のうちだけで、完売までには長い時間がかかっています。大幅な値下げをしても中々売れず、竣工後1年以上を要して、やっと完売。これが現実なのです。これは何を物語るのでしょうか?

 

そうです。やはり、交通便はとても重要な選択条件だからです。通勤・通学に不便なマンションは、やがて仕事を持たない高齢者ばかりのマンションになってしまいます。

このようなマンションは、中古として流通市場に出したときも、買い手を探すのに苦労することになるのです。

 

最寄り駅から近く、都心へのアクセスも良いという物件を探していくと、今度は広さが不満ということになるかもしれません。

そのときは、もう少し足を延ばすほかありません。そして、駅近の物件を選ぶといいでしょう。

 

遠くまで行って、更にバス、歩けても10分以上かかる、などという物件は、たとえどんなに安くても選ばない方が賢明です

 

都心へのアクセスの良さが同じ程度でも、人気の高い鉄道沿線とそうでない沿線があります。高級住宅地が多いとか、おしゃれな街がいくつか点在している、周辺に自然が多く残っている、駅や駅周辺の街並みが綺麗、有名人が多く住んでいるといったようなことが背景にあるためです。

 

複数の調査機関がときどき実施する「住みたい街のランキング」があります。そうしたランキングの下位沿線・地域は避けるようにした方がいいのです。

下位にランクされる沿線は、たとえ価格が安くても、安いことが不人気であることを自ら宣言しているのですから、手を出さないようにしたいものです。

 

<最寄り駅からの所要時間が短いほど高く売れる>

マンションは、やはり駅近ほど高い傾向が見られます。下記のデータで明白です。

 

◆東京23区・築10年中古  最寄駅からの所要時間別リセールバリュー◆

※2007年1月〜2007年12月に新築分譲され、10年後の2017年1月〜2017年12月に中古流通した分譲マンションを対象に新築分譲価格からの価格維持率(リセールバリュー)を算出。

※出典:(株)東京カンテイ

徒歩3分以内 110.1%

徒歩6分以内 99.8%

徒歩10分以内 95.0%

徒歩15分以内 92.5%

徒歩20分以内 88.6%

徒歩21分以上 77.7%

バス便  70.1%

 

(3)駅から遠い・近いは、何分が基準か?

マンションは立地条件がとても重要だと述べて来ました。

立地条件とは、都心へのアクセスがどうかや、最寄り駅までの距離、住環境などを指しますが、このうち、最寄り駅に近いことは最も重要なポイントとして挙げられます。最寄り駅に近いほど便利であるし、値打ちが高いから、どうせ買うなら駅近がいいと、誰もが考えるためです。

 

では、近いというのはどのくらいを指すのでしょうか? 3分や5分は差がないと考えていいのでしょうか?10分ならどうなのでしょうか?

 

駅の改札口から80メートル以内は徒歩1分という表示になるのですが、1分までの物件は、近過ぎて電車騒音の問題がある物件も含まれるため、1分マンションの平均値は2~6分の物件より幾分低いという結果になる街もあります。

しかし、専用デッキで駅に直結しているようなものや、地下鉄の改札口と地下通路でつながっているなど、傘なしで玄関まで辿りつけるもの、それこそ「へばりつき」のマンションは、やはり値打ちが高いと言ってよいのです。

 

バブル期(1988~1991年頃)のマンションは、駅から遠いものばかりでした。駅近の土地は一般法人が次々に買収して抱え込んだため、マンション業者は用地を購入できなかったからです。

 

当時は、駅から10分というと、「ほう、近いですねえ」と感心したものです。

最近はすっかり様相が変わり、むしろ駅前マンションが珍しくありません。

 

駅から遠い物件は販売しづらいので、マンション業者も可能な限り近いものを開発しようとします。その結果、3分、5分は当たり前になりました。7分、8分となると、ちょっぴり遠いという感じすらします。

 

マンション購入を検討している人の中には、この点に鈍感な人が少なくないようで、「徒歩10分」を近いと思っている人もあるのです。

 

ともあれ、遠くても7分以内、できたら5分を目安に選定しましょう。将来、何かの事情で売却するときが来るでしょうから、そのときに「駅近」は絶好のアピールポイントになります。

10分ではインパクトが弱いのです。3分、4分と表示することができたら大いに強みになる。このことを覚えておきましょう。

 

例外的に、駅から少々遠くても(10分程度が限度ですが)、買って大丈夫というマンションがあります。そのことを補足しておきましょう。

 

マンションの値打ちは、立地条件が一番で、次に建物の規模や外観と空間デザインなどのプランニング、更には維持管理体制などで決まってきます。

立地条件も、単純に「駅に近いか遠いか」だけで評価されるわけではありません。自然環境(公園や緑の多さなど)も影響してきます。

駅から徒歩10分と、やや遠いけれども、それに代わる大きな魅力があるならば、それでマイナスは相殺される可能性があるからです。

 

たとえば、東京ドーム1個分もある大きな公園に面しているとか、マンション自体が大型開発であって、敷地内に豊富に植栽が施され、建築後何年かしたら、まるで公園の中にマンションが建っている印象になる、あるいは駅前が公園になっていて、その公園を抜けた先に大型スーパー中心の商業施設が整備され、その隣にマンションがあるといったロケーションは「やや遠い」というマイナスを埋めてくれるのです。

 

オーシャンビュー、リバービューが素晴らしい、「駅からのアプローチ道路がまっすぐのケヤキ並木で美しい」なども「遠い」を帳消しにしてくれます。

 

(4)「管理状態」が価値を決める

立地条件が良いこと、言い換えれば、人気のある街・駅に建つマンションであることがリセールバリューを高める条件の一番ですが、もちろん個々のマンションが持つ建物としての価値も軽視できません。

 

老朽化するのは建物の宿命ですが、それを遅くする、若しくは改修工事によって新築に近づけることは可能です。それが「管理」という概念で、「マンションは管理を買え」などという格言があるほど重要な要素になっています。

 

では、管理の良いマンションと良くないマンションをどのように見分けるのでしょうか?

 

新築の場合は管理が始まっていないのだから分かりようがないとも言えますが、ある程度は推測することができます。

 

管理費の額、修繕費の額、戸数、管理人の駐在時間や管理会社の経験などから、総合的に判断するのですが、少なくとも、金額が安いもの、管理人が常勤しないマンションは目配りが足らないために管理状態が悪くなって、値打ちが下がると思って間違いありません。

 

戸数が少ないと管理費が高くなるため、大抵は巡回管理になってしまいます。これは避けたい条件です。ちなみに、戸数が少ない高級マンションは毎月10万円もするような高額管理費を設定しても、管理人を常勤としているものです。

 

マンションは古くなれば、建物としての価値は当然落ちていきます。しかし、敷地内の植栽が見事に育ち、景観が優れたものに変わることで、新たな価値が加わることがあります。

建物の劣化を補ってお釣りが来るような要素があれば、マンションのトータル価値は上がるのです。

 

また、建物の老朽化を遅らせることも重要です。管理とは日常の点検業務や清掃業務だけではありません。「長期修繕計画」に基づき、屋上の防水は何年ごと、エレベーターや駐車設備は何年ごと、給排水管は何年ごとなどと決め、周期的な大規模修繕や設備の交換をしていくことが必須です。

 

こうしたメンテナンスをこまめに行なえば、「古い割には綺麗。不具合も少ない、住み心地のよさそうな中古マンション」という評判を取ることにつながり、リセールバリューも高くなるのです。

 

首都圏の場合、マンションの管理費の平均は、専有面積1㎡当たり約230円、70㎡なら16,000円です。建物の規模によって差があり、50戸未満の小型はやや高くて250円、100~200戸台は最も安くて200円、300戸以上の大型は少し上がって250円、タワー型は300円というデータがあります。

 

この差は、管理内容の違いが反映された結果です。大型マンションは、近年「コンシェルジュサービス」や「24時間有人管理」といった管理サービスを競う傾向が強まって高くなっています。

 

一方、小型マンションは、どうしても割高になるようで、特に管理人の人件費が高くつくことが影響しています。

100戸程度のマンションでも、30戸のマンションでも管理人は一人です。仮に管理人の平均月収を30万円としたら、100戸のマンションでは1世帯あたり3000円の負担ですみますが、30戸のマンションでは、7,000円も多い10,000円の負担となってしまうからです。

 

高い管理費は買い手に敬遠され、販売がしづらいと考える売主デベロッパーは管理人を置かない「巡回方式」を選択します。置いても週に2日だけの勤務や半日勤務などとするのです。

 

また、修繕費用が充分に積み立てられない危険も小型マンションには多いと考えられます。割高になる管理費を削ることと併せて、修繕積立金の額も抑え気味にして販売してしまうためです。

こうしたマンションは、老朽化が早まる危険を抱えることになります。

 

30年先までの長期修繕計画は、今では大抵のマンションに分譲開始時点で用意されています。エレベーターは何年で取り替えるのか、屋上の防水加工は何年周期かといったことが、こと細かく計画されているのが普通です。

そして、その費用がいくらか、それを賄うための積み立て計画も管理会社から提案という形で提示されています。

 

積立額は、途中で増額する計画になっているものが殆んどですが、どのくらい上がるのかをよく見ておくことが必要です。

ただし、そのとき、途中の増額があまりにも頻繁に行われるような物、金額が大きく跳ね上がるような物は避けるほうがよいかもしれません。

 

マンションの管理の良し悪しを測るのは簡単ではありません。管理人が常駐していればよいという単純なものではないのですが、少なくとも管理人が毎日目を光らせておくことは必須です。

 

管理人の目が光っていない上に、修繕費も少なく、そのために適切な修繕が行われないマンションはどうなってしまうのでしょうか?

 

例えば屋上の防水工事は15年に1回の割合で周期的に修繕する必要があるのですが、それをしなければ漏水して各住戸内に湿気がこもる危険が高まります。外壁のクラック(ひび割れ)も同様です。また、排水管にコレステロールが溜まり、流れが悪くなるという現象も考えられます。

 

こうした結果を招けば、日常生活において不便を感じる、不快感が募る、従ってストレスが溜まるということになるでしょう。

 

管理組合では、修繕費の臨時徴収などが議論されます。しかし、一時金の支払いができない所有者もあって、さっぱり修繕が実施されないまま、時が経過したりします。

すると、ますます居住性が悪化します。やがて、らちが開かないと見た入居者の中には、売却して転居する道を選択する例も増えます。

 

マンションは一段と老朽化が進行し、売却も困難になって行きます。仕方なく賃貸に出して転居する所有者も現われます。大規模修繕推進派は減り、賃貸マンション化して行くでしょう。このようなマンションの修繕に関する意識は更に低下して行きます。

 

こうして、満身創痍の老朽マンションとして、さらに寿命は短くなってしまいます。しかし、既に半数以上の所有者が転居しており、建て替えの声すら上がりません。こうなると、スラム化の道をまっしぐらです。

 

毎月のランニングコストが大きいと購入しづらくなる(販売しづらくなる)買い手に配慮し、入居時に「修繕積立基金」という名の一時金を取るケースが普通になっています。50万円とか100万円といった額です。これによって不足を補うわけです。

 

こちらの方が、買い手の抵抗は小さいという売り手の経験則があるようで、近年は殆どのデベロッパーが一時金徴収方式を採用しています。買い手の抵抗が小さいのは、登記料など諸経費を予定しているので、そこが少し膨らむ程度という印象なのでしょう。

 

管理費が比較的低く設定できる100戸以上の中規模マンションで、分譲価格の安さを「売り」にして企画したと考えられるような物件では、管理費も意図的に抑えているケースがあります。こうしたマンションは要注意です。

 

決断する前に、「管理業務仕様書」を見せてもらうか、少なくとも管理人の勤務体制だけは確認しましょう。そして、常駐(日勤)しないマンションは、できたら購入を避けたほうが無難と覚えておきましょう。

 

中古マンションの場合も、管理状態を目視するだけではなく、管理人の勤務時間を確認し、「長期修繕計画書」を見せてもらい、かつ過去の修繕履歴などの点検も大事です。

 

 

(5)「外観・玄関のデザイン」が価値を決める

外観が威風堂々か、貧相な姿かは意外に見落としている人が多いようですが、マンションの外観の印象は、資産価値を決める大切な要素です。

 

工事中マンションの購入を検討する場合ですが、完成したとき、少し離れた所からどう見えるかを想像してみることが大事です。これは、完成予想図しか見ていないので仕方ないのですが、値打ちを決める要素のひとつです。

 

物の価値は、見た目の美しさによっても左右されます。そのひとつが、既述の適切な管理を行なうことによる美しさであり、もうひとつが「デザイン」です。デザイン性に優れたマンションは、それだけでも買い手の心を引きつけるものです。

 

外観、玄関、ロビーが主要な部分です。室内だけでなく、これらのデザインにも目を配りながら選ぶようにしましょう。大型マンションの場合には、さほど心配いらないのですが、問題なのは50戸未満の小型のマンションです。

売り手は、小さなマンションが大きく立派に見えるように、完成予想図をデフォルメ(仏語:意識的に変形させる描画手法)しています。ここに落とし穴があるのです。

 

新築マンションは、大抵が青田売り、すなわち、工事中に販売を始め、完成までに売り切ることを狙います。このため、買い手はモデルルームを見て自分の購入する部屋を想像しながら判断することを求められます。

 

青田売りは業界の常識になっていますが、買い手はそこでミスを犯しやすいと言えます。住戸もさることながら、マンション全体、なかんずく外観のイメージが正確につかめない場合があるからです。モデルルームに目を奪われて、見落としてしまうのでしょう。

 

完成したとき、当然ですがマンションは外も中も、どこもかしこも綺麗です。その美しい建物を見た買い手は、それだけで満足します。間もなく、ここで新しいマンションライフを始められるのだという喜びで一杯になるためです。

 

しかし、購入者以外の人が外観を見たとき、「何と貧相な建物か」と冷めた評価が下される物件もあります。将来売却に出したとき、見学にやってくる買い手も同じ感想を持つはずです。それが売却価格に影響を与えます。

 

分譲マンションというのは、区分された1室と共用部を合わせて売買されます。1室を購入したようでも、マンション全体を買っているわけです。自分のマンションはこれだというとき、室内と一緒にマンション全体を思い浮かべるイメージがあるはずです。

 

エントランスやロビーなども、自分の家の一部です。これらが立派であれば、きっと自慢の家ということになるでしょう。

 

駅から徒歩で帰る途中、やがて見えて来る我が家の外観は周辺を圧倒するような風格であれば、そうしたマンションの方が、陰に隠れるように建っているようなマンションより誇らしいはずです。

 

共用玄関を開けると、直ぐ目の前にエレベーターが見えている狭いロビーしかないよりは、象徴的なオブジェがあり、広くて天井が高いロビーには立派なソファが置いてある。このようなマンションがいいはずです。

 

日本は、物質に恵まれた経済大国であり、近代国家として時代の先端を行く国です。便利なモノは、そこいら中に溢れ、必要なものは何でも揃います。

機能だけを求めたら、ない物はひとつもないと言ってよいでしょう。そうしたレベルに至ると、人間が次に物に対して求めるのは、機能ではなく見た眼の良さ、すなわちデザインです。

 

これはマンションでも同じです。かつては「住めたらいい」だったのが、今は、「見映え・デザイン」にこだわるようになっています。デザインの良さはマンションの価値を高めます。少し前から、「デザイナーズマンション」という言葉、広告のキャッチフレーズを多く見かけるようになりましたが、これはこうした欲求レベルの変化を表しているのです。

 

言い換えれば、デザイン性は、マンションの価値を大きく左右するようになってきたのです。その意味から、貧相なマンションは避けておきたいものです。

貧相なマンションとは、例えば、300㎡未満の狭小敷地にペンシルのようにひょろひょろと建っている高層マンションは、どう工夫しても立派な風格を持っている姿にはならないのです。

 

背も低く、横幅もない小型マンション。こちらは、住宅地の狭小敷地に建つケースです。道幅が狭いせいで、建物の一部が斜めに欠けているものも多く、デザインというより建築規制によってできた形状です。

しかも、重厚感も風格も感じられない、中には、これが分譲マンションかと疑いたくなるような物も少なくありません。

 

もちろん、小型マンションがすべて貧相に見えるわけではなく、敷地に緑がふんだんに配置され、美しいマンションに仕上がっている物もあります。しかし、これを工事中に自分の目で確認することはできません。

 

パンフレットにも販売事務所にも、外観パース、エントランスパースなどが大きく掲げられています。立派に見えます。しかし、出来上がりとはギャップがあるものです。

そこのところを、パースと図面から想像できるでしょうか。想像できたとしても、それがどれほどの価値を持つものかを判断できるでしょうか。

 

簡単ではありません。デザインの良し悪しには、数値的な基準はありません。「豪華」、「上質」、「格調」、「立派」、「威風堂々」、「恰好いい」といった形容詞で表わされるだけです。結局、完成したマンションをできるだけ多く見て、感覚を磨いておくしかないのです。

 

そのうえで、図面から出来上がりを想像し、たとえば「恰好いい」マンションかどうかを判断していきます。小型マンションのデザインには特に注意したいものです。

 

外観と併せて、玄関部分のデザインも大事な要素になっています。大きく張り出したキャノピー(天蓋=てんがい)とクルマ寄せがある玄関、2階までの吹き抜けになっているロビー、木製の大きな玄関ドアといった造りは、高級なホテルにも匹敵するものですが、こうしたマンションも値打ちを感じさせるものです。

 

(6)建物の規模は軽視できない

物件の規模が大きいことで様々な付加価値を生んでいるケースがあります。

様々な共用施設、広く立派なエントランスロビーなどを持ち、居住者サービス(24時間有人管理、コンシェルジュ対応など)にも優れるマンションです。

 

(7)建物のスペック・クオリティ

分譲マンションには、アパートや賃貸マンションなどに比べると、様々な機能が付加されていることに気付きます。

コミュニティルームやパーティルーム、キッズルーム、ゲストルーム、防災倉庫といった共用施設、設備的には、宅配ボックス、セキュリティシステム、太陽光発電システム、電気自動車の充電スタンドなどです。

 

管理サービスの分野でも、「24時間有人管理」や「コンシェルジュサービス」、「カーシェアリング」などが見られます。

 

こうした機能やサービスは、物件によって異なります。大型物件ほど充実していますが、小型マンションではコスト増を吸収しきれないため限定的です。大型物件の方が高機能マンションと言えるものが多いのです。

 

専有部分にも機能性の高いものと低いものがあります。いくつか、例に挙げてみます。

ディスポーザー:これにも普及タイプと高機能タイプがあります。水を流しながら使うのですが、スイッチを押すと自動的に水が流れるようになったものがあります。これが高機能タイプです。

普及タイプの方は、まず水道のレバーを上げて水を出してからディスポーザーのスイッチをオンにするという2段階の作業が必要です。

 

便器でも高機能タイプと普及タイプがあります。トイレに足を一歩踏み入れるだけで便器の蓋が自動的に開くものと手動式のもの、自動洗浄機能がついたもの、そうでないものなど、幅があるのです。

 

住宅資材としては、「複層ガラス」が挙げられます。一枚ガラスではなく、空気を間に挟んだ二枚ガラス仕立ての窓は、断熱性が高く結露ができにくいことで採用例が増えていますが、その複層ガラスも3ランクくらいに分かれるのです。

 

機能と別の概念でも、質の高い・低いがあります。

例えば、高級マンションは、外周のフェンスやゲート、中庭などの外構にも力を入れています。 フェンスは簡単に乗り越えられない高さがあり、赤外線センサーで防御していたりもします。フェンス自体もネットフェンスなどではなく、レンガの土台と重厚感のある鉄製・鋳物製などのフェンスにしたりします。

 

また、敷地のオープンスペースは花壇や植栽で埋め尽くさんばかりとし、機械式駐車機が鎮座していたりはしません。車はすべて地下格納式としています。

 

共用玄関の扉は重厚感があって中が覗けないようなデザインになっていたりします。勿論、車寄せやキャノピー(天蓋=てんがい)は当たり前にしつらえられます。

 

エレベーターは、額縁、籠の中ともに、5つ星ホテルで見るような上質で高級なデザインになっています。エレベーターホール全体も、特別な印象を与えるデザインと仕様にこだわります。

 

専有部でも、仕様は明らかに違ったものとなっています。洗面台とボウル、建具とドアハンドル、水栓金具などの材質とデザインは高級というだけでなく洗練されたものが選ばれています。

 

また、床材もグレードが違います。玄関や廊下は天然石貼りが普通で、タイル貼りとフローリング貼りの一般マンションとは一線を画すものです。洗面所の床も、一般マンションはCFシートですが、高級マンションではタイルや天然石貼りにします。

 

居室に使うフローリングも、一般マンションが木目模様が印刷された「オレフィンシート」という合成樹脂を張り付けた「シートフローリング」であるのに対し、高級マンションは「無垢材(1枚板)のフローリング」や、複合(合板)でも表面は薄くスライスした天然木の「挽き板」フローリングを採用します。

 

高級マンションは共用部の仕上げ材も違うものです。

 

高級マンションは内廊下式が当たり前ですが、その仕様も一般のマンションとは異なります。床はタイルカーペットなどでなく、ホテルなどで使われる大盤の絨毯、勿論グレードの高いものが使われます。タイルカーペットを使う場合でも、グレードは一般マンションより上級です。

 

また、壁や天井も仕様に手抜きはありません。壁はビニールクロス張りなどではなく、板張りであったり、特殊な壁紙を張ったりします。

 

エントランスホールやロビー、ラウンジといった共用空間の仕上げはこだわり方が特に強いものです。 これはデザインなので、パターン化したものはありませんが、イタリア産の天然石や、カナディアンメープルやチーク材などの高級材を用いたりします。

また、彫像やソファ、照明器具なども良い物を厳選して据えるものです。

 

室内はリフォームすれば、高級なもの、高機能なものに個人で変えることができます。しかし、共用部分は変えることができません。資産価値は、この共用部のスペックとクォリティの高さで決まるとも言えるのです。

 

(8)時が経過に連れて資産価値を高める「緑地スペース」

立地条件、管理、デザイン性以外に、資産価値に影響する要素として、「緑地スペースが広いかどうか」も挙げられます。

 

ときが経つに連れてマンションの価値が上がるとしたら、植樹した木々が成長し、マンションを包み込むようになったとき、あるいは敷地内道路が緑のトンネル状になったときなどです。

豊かな植栽のあるマンションは、美しいマンションとして、高い評価を受けるでしょう。

 

植栽計画がどのようになっているか、パンフレットや図面などで確認しましょう。敷地が駐車場で埋め尽くされるような設計のマンションは値打ちが高いとは言えません。

 

言うまでもないことですが、規模が大きいほど緑地面積は広いと言えますが、規模の大きいマンションは価格が下がりにくいという傾向もあります。このことは、データにもはっきりと表われています。

 

(9)マンションのブランド

ブランドは「安心」や「高品質」をイメージさせるものです。長い時間をかけて作り上げた事業者の信用力の結晶と言ってよいでしょう。

 

マンションの場合、大手の分譲、大手の施工になるものが、資産価値の高い物件に多いことを付け加えておきます。「財閥系企業、またはメジャーセブンなど有名企業が売主」、「スーパーゼネコンによる施工」なども、資産価値を上げる要素になっています。

 

メジャーセブンとは、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産、東急不動産、東京建物、大京の7社を言います。また、スーパーゼネコンとは鹿島、大成、清水、大林、竹中の大手5社を指します。

 

マンションのような高額商品は、簡単に返品したり買い替えたりすることができないだけに、慎重な購買態度になるのが普通です。最近は2011年の東日本大震災の影響もあって、建物の耐震性や耐久性などに格別の関心を見せる買い手が増えました。

 

しかし、外から見ただけでは、耐震性も耐久性も簡単に分かるものではありません。また、瑕疵とは、隠れたキズというほどの意味ですが、これは発見が難しく、何年か経って偶然に発見されることはあっても、大半は大きな事故や天災が来るまで表面化しないものです。

 

中古マンションを買う人から見ると、どこかに瑕疵があるのではないかという心配、震度4や5では大丈夫かもしれないが、東日本大震災の震度7クラスの巨大地震が来たらどうなっていただろうという心配、こうしたことは分かりようがないのです。

 

建築基準法に従って適正に建築されていれば、一応は大丈夫かもしれないが、果たして施工は設計図どおりにきちんとなされたのであろうか? その監理は厳しく行なわれただろうか?そんな疑問に一応の答えをくれるのが売主のネームバリューです。

 

言い換えれば、長年の経験と実績がもたらす企業としての信用です。

 

勿論、施工するゼネコンの技術力や自己管理能力なども重要ですが、それを発注者として監理(監督・管理)するのが売主であり、結局は売主の信用度こそが決め手になるのです。

 

メイドインチャイナの電化製品でも、現地の合弁会社に技術を供与し、製造過程を日本人スタッフが常駐して監理している日本ブランドであれば、日本人は信頼して購入します。

 

マンションの場合、それとは違うにしても、「売主が〇〇社だから」というのは、やはりマンション選びの決め手のひとつであり、これは中古マンションの場合もあてはまると言ってよいのです。

 

ブランド力・売主の信頼度が購買決定の何%を占めるかなどというデータありませんが、大きな位置を占めていることは間違いありません。

 

個人所有者が中古市場に売りに出したとき、信頼される売主が建てたマンションでない場合、購買を見送られてしまうかもしれません。そうなると、買い手を探すのに苦労し、値を下げるしかないのです。

 

その意味で、できるだけネームバリューの高いブランド物件を購入しておいた方が将来も安心、売却も有利という結論になるのです。

もちろん、上位の売主のマンションならどれでも高く売れるというわけではありませんが、有利に働くことは間違いないのです。

 

勿論、マンションの価値を決める要素は、既に見て来たように他にも多数あるわけで、ただ有名売主の物件だからというだけで選んだのでは、本末転倒ということもありますが、売主名やブランドは大きな要素であると覚えておきましょう。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10日後の予定です。

 

ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

※別サイトのブログ「マンション購入を考える」もお役立ち情報が満載です

740本以上の記事があります。

 

※マンションの売却でお困りの方も三井健太にご相談ください。

 

ABOUTこの記事をかいた人

マンション業界の裏側を知りつくした、OBだからこその視点で切り込むマンション情報。買い手の疑問と不安を解決。マンション購入を後押しします。