このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
筆者にいただくお便りの大半は、購入マンション(契約前・契約後)の「価値評価」と「将来価格(リセールバリュー)」に関するものです。
その中には、値上がりが期待できそうにない場所で選択しようとしている方、または選択してしまった方も少なくありません。
そのような方にお送りする筆者のコメントのうち、共通点しているのは次のようなことです。
「値下がりマンションを買ってしまったとしても、メリットは十分にありますからご安心ください」と。
◆購入か賃貸か
以下、上記に続きます。
大変申し上げにくいことですが、この物件の場合、ご懸念のように売却による経済的損失を被る可能性があります。
しかし、ものは考えようと言いますが、同じマンションの同じ間取り、同じ階であったとしたら、購入する方が賃借するより充実感は大きいはずです。なぜなら、賃貸では得られない周囲の賞賛などから来る満足感、あるいは優越感、快適な暮らし、幸福感、老後の安心感などを手に入れることができるからです。それがマイホーム購入の最大のメリットでもあるのです。
こうしたものを当職は「精神的利益」と言っているのですが、これは経済的利益(得失)とは比べようがない、もしくは測り知れない大きな価値と考えます。最後はこう割り切るしかないのです。というより、本来ここにこそマンション購入の目的を見出すべきとも言えましょう。
そう述べても、気休めにしかならないという非難を浴びるかもしれません。そこで、損益分岐点の考察が次のステップとして必要になります。
経済的な側面から「賃貸か購入か」の損得の分岐点を予め知っておくべきということですね。その数字はさておき、「賃貸か購入か」をトコトン突き詰めると、答えは簡単に購入に軍配が上がるのです。その理由はこうです。
現金購入でなく住宅ローンを利用した購入でも、返済を終了したときには僅かにせよ資産が残るからです。その金額が5千万円になったか、1千万円にしかならなかったかの差はあるものの、何がしかの資産(財産)が残るはずです。
これは、賃貸マンション住まいの人には絶対に得られないものです。ボロボロの借家にただ同然の家賃で長く住み、その間に巨額の貯蓄をすることに成功したという人がいるでしょうか? もし、そのような人がいれば、借家住まいも資産を残せるという反論にはなるでしょうが、現実的な話ではありません。
借家暮らしは家主の資産形成に貢献できることはあっても、自分の資産をつくることには雀の涙ほども貢献しないのです。
さて、家賃を払い続けるより買った方が得ではないか?このように考える人が多いので、マンションにせよ一戸建てにせよ「マイホーム」と名の付く住まいを求める人が後を絶たないのですね。ここをもう少し補足しましょう。
筆者の知人にマンションを購入し、一時そこに住んでいた独身女性がいます。彼女はいま事情があって別の家に住んでおり、購入したマンションを他人に賃貸しています。彼女は、そのマンションの存在が頼もしいらしく「老後、住むところがなくて困る心配だけはない」と何度も語っていました。
しかも、住宅ローンの返済も賃貸料で賄えるので出費もほぼゼロだとのこと。きっと、賃貸マンションではありえない心の拠り所、言い換えると老後の安心感を彼女は得たのです。
別の知人は、30年以上前のことですが、20代半ばで、不便な場所ではあったものの、小さな建売住宅を買ったそうです。そのことが、職場だけでなく取引先でも「感心な奴だ」と評価され、信用にもつながったそうで、直接の因果関係は証明できないものの、出世に良い影響を与えたことは間違いないと彼の同僚から聞いたことがあります。
同級生のS君は、脱サラして成功した一人ですが、彼が10年くらい前に買った文京区のマンションはステイタスシンボルとして必須の所有物になったようです。独身なのに、100㎡を超える1LDKだそうで、この自宅マンションで役員会を開いたりもするのだとか。
最後は我田引水です。筆者の場合、あまり意識して来なかったのですが、子供のころの体験がマイホームの選び方に影響を与えたようです。家族数は変わらないのに、買い替えるたびに広い家を目指していました。個室は5畳から7畳、9畳と変化しました。リビングルームも・・・
このような例を挙げるとキリはありませんが、マイホームの選び方は人それぞれの価値観によって決まって来るのでしょう。
◆高く売りたいとしたら?
価値観の差はあるにしても、資産価値を無視して購入する人はいないのだと筆者は思います。
お金に糸目は付けず、都心の高額なマンションを売り手の言い値でポンと買ってしまうような人だって、損を覚悟で買っているわけではなく、「立地がいいから持っておけば役に立つだろう」くらいの鷹揚さではあるが、抜かりなく資産性を意識しているのです。
資産価値はどうでもいいという人はいないはずで、住宅ローンの完済後に残る家が、500万円でも売れないような条件の悪いものよりは、5000万円の値が付くものの方がいいに決まっています。
5000万円の家を売り払って過疎地の廃屋を買い、500万円かけてリフォームして住むならば、手元に4500万円の生活資金が残るのですから。
過疎地では行政サービスも受けられないとか、いざというときに病院も遠いとか、何かと大変らしいので、過疎地は無理かもしれませんが、5000万円の資産を持った人は500万円の人より選択肢は多いに違いありません。
筆者の知人に、外国に移住してしまった人もあります。伊豆の温泉町に移り住んで暮らしている親戚もいるのです。みなさん、それなりのプチ資産家だったのです。
しかし、そんな遠い先のことではなく10年くらい後に買い替えしたいというとき、我が家が売るに売れないということになったら困るという心配もあって、リセールバリューに高い関心を持つ人が多いようです。
わが家が売るに売れないという心配は、ローンの残債以下の売値になってしまうと銀行清算のために手出しが必要になるという明確な意識を持っていることになりますが、その一方では漠然と損はしたくないという程度の関心に過ぎない人もあります。
後者の場合は「元値で売れないと損だ」という単純な計算からの誤解から来ているようにも感じます。
そのことはさておき、マイホームで暮らす満足感の根底には「優れた資産を所有している」ことがあるとも考えられます。これから購入する人が、その点をどこまで意識しているかは定かではありませんが、どうせ買うなら、資産性の高いマンションを買いたい、このような健全な欲が脳裏をかすめるのは確かです。
筆者は、評価レポートの中で必ず触れる次の一文があります。
売却のとき、できるだけスムーズに、かつ高く売りたいと考えるのが普通の感覚であり人情というものです。少しでも価値の保存ができる物件を望まない人はいません。
人情、すなわち人間の気持ちの部分に「得したい」という自然な心(感情)があって当然なのです。
◆値下がりの限界値は?
中古マンションなのに、何故値上がりするのか、そのメカニズムを知らなくても、人づてに、あるいは書物やインターネットの情報などから、値上がりした中古マンションの存在を知ります。
叶うことなら、自分が買うマンションもそうありたいとつい思ってしまうのです。しかし、最近は「ババを引く」ことへの警戒感のようなものが拡大して来たようにも感じます。 多くのお便りに、その懸念がにじんでいるからです。
「値上がりはないかもしれないが、まあ元値で売れてくれれば。そんな思いで買ったのですが、職場の同僚の「今買ったら大損するという発言を耳にして心配になりました」
「急ぐ理由はなく、4~5年先でもいいので、この物件を買うのがいいか、今回は見送った方がいいのか。できれば週末までに返事が欲しい」
こうしたお便りに答えるのが筆者の日常です。物件を調査し、関連データを探し、現地の確認もときに行い、可能な限りの根拠を添えて精緻なレポートをお届けしています。
その中で重視しているのは、「〇年後の売却のとき、〇〇万円の値下がりとなる可能性はあるのですが、そうなっても損ではありません」という答えを導くことです。
筆者なりの計算方式で「損益の分岐点」を提示し、併せて心の安寧の一助となるコメントを添えています。
どのくらいお役に立っているかは第三者が評価することですが、「物件評価レポート」も「将来価格の予測レポート」もご依頼は増え続けています。
ご依頼者の中には、稀にご自分なりのシミュレーション結果を送って下さる方もあります。その披露はいたしかねますが、読者の皆さんも「今買った場合と何年間か現状維持でいた場合」、あるいは「Aマンションを買った場合とBマンションを買った場合」、「10年後に売る場合と20年後に売る場合」、「5年以内に転勤になった場合の物件の取り扱い(賃貸か売却か)」等々を研究されるといいと思います。
そこから見えて来るものがあるからです。仮に値下がりが必至だとしても、その限界点はどの辺か、そして候補物件(購入済み物件)はどのくらい値下がりするだろうか。最悪の場合は? 期待値は? 現実は?このようなシミュレーションをお勧めします。
・・・・・・・・今日はここまでです。関連記事は、別のブログ「マンション購入を考える」の500本余の中から多数見つけることができるはずです。是非ご訪問ください。
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