8/31のNHKのクローズアップ現代+はマンションが特集で、うちのマンションにも取材が入って私が対応しました。
NHK 総合テレビ 8/31 22:10~22:35放送
『どうするマンショントラブル!?“新ルール”で住民激震!?』
ある程度マンション管理に詳しい人だと、このタイトルをみて例の標準管理規約の改定の話だなとぴんとくるでしょう(ぴんとは来ない人が99%くらいかも)
放送の概要は、クロ現のホームページに掲載されているのでこちらから。
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3855/1.html
これは人類の範疇なんだろうか?って少し太めな人が、ちょっと実際よりはいい人のフリしてでているのが私です。日経だと勝手に苗字を変えられちゃうんですが、NHKさんはそのまま。
写真を借用しますね
【NHK クロ現+ホームページ 2016/8/31放送紹介より】
”標準”管理規約はマンションの憲法じゃない!
番組全体としての私の印象としては、私自身がでていたところはよかったと思うのですが、時間的制約もあるのか、立て替え編、標準管理規約改定編ともに、条件などをかなりスキップした形で誤解を招く表現になっていた点にはかなり残念でした。老朽化したマンションの建て替えを促進しましょうで、総会の賛成割合を2/3でも建て替え可能にしたとでてきますが、これはかなり厳しい条件を満たせる極めてラッキーな場合であって、実際には殆どのマンションでは今でも4/5のままです。やれ買い取りだとかで大変だから、実際にはほぼ全戸の承諾が必須で、合意形成だけでざっくり10年、4/5ぎりぎりで残り2割を踏み倒してじゃかじゃか進めていけるような甘いものではありえません。
番組中では ”標準管理規約”が”マンションの憲法のようなもの”という表現がでてきましたが、管理に詳しい人ならわかる通りこれは間違い。
区分所有法には、「前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない」といった表現が無数にでてくるので、そのマンションの規約が法律の一部のように機能します。だから『そのマンションの規約』が、憲法のようなものだというのは正しい。ただ規約を変更するには全戸の3/4の賛成が必要です。うちは年に2回程度特別決議をしてどんどん規約は変更してマンションの実情に合わせていっています。
“標準管理規約”は区分所有法と無矛盾なように作られた規約の一例としてのひな形にすぎません。多くの新築マンションに初期設定される”原始規約”が準拠するように作られますから特に新築マンションにとっては重要ではありますが、既に規約をもっているマンション管理組合を事後的に拘束するものではありません。
もちろん準拠して、自分のマンションの規約を書き換えてもいいですし、いや適当ではないと思うなら変更点は放置しても構わないわけです。
そのマンションの規約が、区分所有法の強行規定(規約で別の定めはできない)等に違反しない限り、どんな規約を作るのもそのマンションの自治の範囲内で自由です。実際にうちのマンションは、理事会がしてはならないこと・しなければならないことを無数に細則で定める一方で、標準管理規約に準拠したままであれば、総会の議決がなければできないことを多数、理事会の裁量に移してきています。
放送では、まるで、「標準管理規約」に準拠することが強制であるような、まるで法律が変更されたかのごとき扱い方で紹介されていたのは、会ったディレクターさんにも随分説明したのですが直ってなくて残念です。
この誤解 (雛形に過ぎない標準に準拠させないと違法?)は結構多くて、新聞などでも殆どで間違えて書かれているので、RJC48の理事長の多くが総会で変な質問うけて困ってます。ここマンションコミュニティの掲示板でも、こんな例が。「スレッド表題」としてちょっと変だと思うのですが・・・(書きこんだりはしてません)
⇒『標準管理規約改正に伴う町内会・自治会費の処理方法その2』
http://www.e-mansion.co.jp/bbs/thread/598529/
「議決権が3倍違う」事例が不適切
番組では、タワーと思しきマンションで、ペントハウスの人と、低層階の人との間で総会の議決権数などが3倍違っていて、ペントハウスの人が2人で、低層階5人の希望を否決する事例が紹介されていました。これも「標準管理規約」内の変化に過ぎないですから、まるで自動的にこうなるみたいな扱いは不適当ですが、その他にも別の問題があります。
”面積に比例して議決権が代わる”部分と
”面積が例え同じでも、眺望等でプレミアムのつく部屋に沢山議決権を付与する”部分とがきちんと区別されていません。
実際にはごくわずかな最上階ペントハウスを除いては、マンションの坪単価が同じマンションの中で3倍違うという例は実際には希少で、両方の組み合わせでお値段に”3倍”の差がついているわけでしょう。
もともと区分所有法の標準の設定で、総会の議決権は専有面積に比例するのはあたりまえです(38条は14条を指している)。住んでいる人数や、共用部の利用頻度などに関係なく、もっている部屋の面積に比例して管理費や積立金も徴収されますからこれは当然ですね。2倍広い部屋に住んでいる人は2倍お金を払うという義務がある以上、議決権も2倍もっていることにはなにも変ではない。たまたま、ファミリー用などで、広さがそろっているマンションでは簡易方式で”規約で別段の定めをして”1戸≡1票という設定にしているだけで、一番広い部屋と狭い部屋の面積比が2倍を超えるようなケースで、そのまま全戸1票というのは、少なくとも大手一流デベが初期設定することは少ないと思います。
今回の標準管理規約改正で変わったのは、後者の部分です。全く同じ面積の部屋でも高層階は高く取引されるから、議決権は沢山あげましょうという部分で、私にはひどく「筋悪」な規定に感じられます。
今は眺めのいい部屋に住んでいても、真ん前にタワーが建って眺望阻害を受けるかもしれないなど、広さに比例しないプレミアムには恒久的な価値が存在しません。買った瞬間に売ってみれば分かりますが、高層階のプレミアムは半分くらいは買った時点で消失しています。”広さによらない価値”には恒久性がなく、規約に使うには不適な訳です。
議決権という「権利」を余分にあげるなら、管理費等の「義務」も余分に背負ってもらわないといくらなんでも変なのではないか?
今回の”標準”改定でもこの点は放置されていていかにも片手落ちに思える。
#タワーでは、ペントハウスが数百㎡ある一方で、下層階に投資用の小さ目の1LDKなどが入る例も多いですが、番組にでてくるようなコミュニティ活動にどちらが関心があるかといえば、賃貸利回りを重視する投資物件オーナーよりは、どちらかといえば実需で自分がすんでいる高層階の人のほうではないですかねぇ。実際に、うちで積立金の値上げ議案を通したときには、面積に比例して値上げ幅の大きくなる広めの住戸のオーナーにむしろ反対は少なかったのですけれど、実態を実際に調査したのだろうか?
過去に私のブログでとりあげたことがありますので、こちらもご覧ください。
『総会の議決権数が面積に比例するのは当然? 』
http://ameblo.jp/haruboo0/entry-12151129340.html
いかにもタワーDisりにしか感じられなくて、なにもNHKがそれに乗っかることもあるまいに・・・が素朴な印象でした。
あわせて読みたい
今回のクロ現、特に前半部分にはいくつかブログが上がっています。[1] 弁護士の桃尾俊明さん
『クローズアップ現代+の感想 』
http://momoo-law.hatenadiary.jp/entry/2016/08/31/234759
…はるぶーさん実名ででてくる(x_x) 質問コーナーに質問したのはてっきり彼本人かと思っていたら違うみたい? 誰なんでしょう(わざとらしいかも)
番組の「中」で言ってくれないと意味すくないよなぁ・・・
[2] ご存じ15年くらい理事長のミッキーさん
『「どうするマンショントラブル!?“新ルール”で住民激震!?」という「クロ現プラス」 』
http://micky0011.blog.shinobi.jp/Date/20160901
… ”筋が悪い”だけで完全にわかるのは上位1%未満だと思うからここで解説。
なんかタワーにごくわずかだけ存在するペントハウスの議決権だけ強調して、その人たちが低層の多くの人の意見を踏み潰すみたいなタワーDisりネタっぽくなりやすくて、過去にくだんの標準管理規約改正絡みの記事にはのらえもんさんもかなり怒ってました。
[3] のらえもんさんメインブログ
『標準管理規約改正に合わせた根拠不明のタワマンdisりが酷い件について』
http://wangantower.com/?p=11660
その1とか名前つけると必ず続編がなかなか書けなくなるのですけれども、自分がでてくるとこまでいきつくまでに結構な長さになってしまったのでここで切りますね。本人のでてる部分への感想はその2にて。
!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
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