第286回 「その家、買って大丈夫?」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

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さて、今日の話題です。

マンションを買うことは負債を背負うことでもありますが、同時に資産を持つことでもあるのです。

 

いうまでもなく、負債とは住宅ローンのことですが、毎月の返済によってこの負債は確実に減って行きます。

 

ところが、資産であるマンションの価値も経年劣化などによって減って行けば、差し引き資産(正味資産)がマイナスになってしまうかもしれません。できれば大きなプラスの資産として残ることを期待したいものです。

 

そのためには、購入するときに資産価値と将来価値という視点を持つことが大事です。

 

経年劣化してもゼロにはならないが・・・

マンションという建物は、鉄筋コンクリートで造られていますから、朽ち果てることはないものの、年数の経過によって劣化し、住み心地が悪くなりますし、見栄えも悪くなるものです。

 

また、コンクリート造とはいえ、設備の寿命はコンクリートほど長くはなく、経年劣化し、20年もしないうちに修理・交換が必須となります。それを適宜実施していけば長い居住が可能です。 とはいえ、修理・交換は個人的に行なえば十分というものではありません。

 

コンクリートも設備類も、大半は共用部分なので、所有者全員で必要資金を出し合いながら修理・交換を実行することが必須です。

 

その資金とは新築時点で集められた「修繕積立基金」と、毎月積み立てられた「修繕費」の累積金ということになります。 不足するときは、管理組合の合意のもとに臨時に徴収することになります。

 

中古マンションでも、比較的新しいものは、計画的に積立して来たので潤沢な残高がある事例が多いものの、築30年を超える古いものでは積立金の残高が不足しているケースもあります。

 

支出を極限まで抑制して来たので、積立金残高が比較的潤沢という事例もあるようですが、積立金が多いのは必要な修理を先送りして来たためらしいとも聞きます。褒められたことではありません。

 

屋上と外壁の防水工事やエレベーター交換工事などは重大問題で、手遅れにならないうちに実施して来たものの、それ以外は後回しにして来たのかもしれないからです。

 

マンションの資産価値を考えるとき、見た目の美しさという視点も重要です。事故や災害対応だけでなく、表面的な化粧も軽視できないのです。

 

 

土地は減価しないか?

土地は腐らないから建物のような経年減価はない。そう断じて良いのでしょうか? 10年程度では大きく変わらないとしても、その先は価値が変わる場所もあるのです。

 

今後は、衰退する街が加速度的に増える可能性があると見なければなりません。私たち日本人は右肩上がりの経済になれ親しんで来ましたが、バブル崩壊後、経済成長は止まり、もう30年も低成長が続いています。

 

人口増が止まり、高齢化社会が進行するに伴って、活力を失いつつあり、かつては経済で世界のお手本とされた日本も、今や世界の一等国ではなくなっています。

 

その日本の中で、東京や大阪、名古屋圏などは高い経済力を維持していると言えるかもしれませんが、1980年代の勢いはないと言えます。人口の大都市集中の勢いもスピードダウンし、大型の住宅地開発の時代も終わったのです。

 

今は、再開発によって既存の市街地を改造することはあっても、郊外で新たな住宅地を開発する必要はなくなったと言って過言ではありません。

 

経済が発展して人口も増え、伴って住宅も不足するからと大規模な宅地開発が郊外で行われた時代は終わったからです。

 

需要が減ったということを意味します。今も高い価値があると見なされている土地は、東京都心に近いエリアを除けば、関東圏を広く見渡しても、多くはありません。

 

従って、マンションを土地と建物とに分けて考えたとき、建物も土地も経年劣化する懸念があると考えなければならないのです。建物は確実に劣化して行くので、土地との合計でもマンションの価値は経年劣化するという前提を置く必要があるのです。

 

物件選びも、その前提を置いて、より慎重に運ばなければならない時代になったというわけです。

 

減価しにくいマンションとは?

そんな時代を迎えて、これからマンションを買おうとしている人が注意しなければならないポイントは何なのでしょうか。

 

①将来も良い立地であり続けるかどうか?

廃れて行く可能性はないかを考えましょう。例えば、この10年で人口構造はどう変化して来たか、それを他の市区と比較してみましょう。

②周辺市域・駅との価格差はどうか?

同年代(築年数)のマンション価格(単価)を調べて比較してみましょう。駅によって随分と差があることに気付くことでしょう。駅から徒歩10分以内と線を引き、単価を計算してみましょう。単価の高い街・駅は人気のある証拠です。それは、そこに住みたがる人の数が多いことの裏返しなのです。

③今の人気が長く持続しそうかどうか?

長く人気が持続する街か、廃れてしまう可能性はないかを考えましょう。人口構造が変わるとしても、変化のスピードは緩やかと期待できるかどうか。

 

マンションの価値ある立地とは?

コロナ問題がマンションの人気地図を微妙に変化させているようですが、劇的に変わるとは考えられないのです。通勤が週2日なったから郊外でもいいと考える人も少なくないようですが、その流れが本流になるとは思えないからです。

 

かつて、マンション用地の枯渇状態であったとき、郊外居住、なかんずく新幹線通勤などまで考えられ、遠隔地居住が流行した時代もありましたが、結局その行動は本流にはならなかったのです。

 

在宅勤務が恒常化するかどうかは、勤務する企業と職種などによって変わるはずですし、今は異常事態にあるだけで、そのうち元の状態に戻るはずだと考えている人の方が多いだろうし、通勤がないから辺鄙なマンションの人気が高まるということはないとするなら、マンションの人気は従来通りに「都心に近い」、「駅に近い」に集まるはずです。

 

ミクロの好立地とは?

立地選定をマクロに考えて価値ある場所、人気ある場所を選ぶことが大事ですが、ミクロの視点も軽視できません。

 

すなわち、駅に近い・買い物便が良い・環境が良い・景色や眺望が良いといった立地かどうかです。

 

駅に近いほど、街並みは雑然とした印象になったりしていますが、適度に公園が配置された街も少なくありませんし、幹線道路に面していないことから道路騒音が少ないなど好環境の街は少なくありません。

 

一方、駅からマンションまでのアクセスも危険個所がない、道路・街並みがきれいといったマンションもあれば、暗く危険な箇所がある、飲み屋街を通らなければならないといったマンションもあります。

 

また、マンションや店舗ビルなどが密集していて、道路向かいの建物との距離が短く、プライバシー性が低いマンションも少なくないはずです。特に低層階の住戸を検討するときは注意しなければなりません。

 

 

将来性の高さを期待させる広告のコピーに注意

ここで具体の物件や街・駅を挙げて説明するのは何かと問題があるので、割愛しますが、マンションの販売という観点では「マンションを売る前に街を売る」ということが大事で、しばしば、街の魅力をアピールする広告に遭遇します。

 

無論、それは正当な広告宣伝活動であり、禁止されている誇大広告の類ではありませんが、プロフェッショナルの巧みな表現戦略によって実際以上に美化された広告も散見されます。

 

その中には、「街の発展を期待させる」大掛かりなビジュアル表現とコピーが踊っている例も少なくありません。

 

ここで具体的に解説できないのはもどかしいのですが、新築マンションは実物を見せる前から売り出すのなので、イメージ戦略は必須と理解できても、誇張されていることも多いとも知っておかなければならないのです。

 

数値で表せること、つまり駅からの距離や、建物の規模、住戸の面積などは誇張しようがありませんが、抽象的な表現によって物件価値を表す部分は広告会社のデザイナーやコピーライターの腕次第です。

 

ある意味、物件イメージが広告によって錯覚させられることがあるのも事実です。買い手は分譲主の広告戦略・イメージ戦略を冷徹に見定めることが必要です。

 

 

そのマンション、本当に買って大丈夫?

マンションを見学に行って感動して買おうと思うとき、その心理状態は「モデルルームに感動した」、「駅から近いし建物も立派と感じた」、「説明を聞いて買いたいと思った」、「このローン返済額なら無理はないと感じた」など前向きになることが多いものです。

 

しかし、熱くなって目がくもってしまう人も少なくありません。特に新築マンションは、モデルルームと接客ルームの演出が巧みで「買いたい気分を高めるため仕掛け」が少なくないものです。

 

そこで、家に帰ったら冷静になって物件価値を分析し、特に「価格が高くないか」、「欠点・弱点はどこか」などと整理・分析してみることが不可欠です。

 

中古物件の場合は、全体も個別住戸も実分を見学できますから、長短の双方を冷徹に確認・分析することができますが、新築は画像や映像、そしてモデルルームの魔法が買手を「酔わせる」ものです。その罠に嵌まらないよう戒めることが大事です。

 

 

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました・・・・・次は10日後の予定です

 

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