お便り返しです。
差出人: ひろ
誰に答えて欲しいですか?:
マンションマニア, のらえもん, はるぶー, タビー, DJあかい
メールアドレス:(略)
メッセージ本文:
いつも楽しく拝見しています。
2年前に新築マンションを購入しました。
3LDKをメニュープランで2LDKに変更し、リビングと洋室を繋げて、間に引戸を付けたいと営業に相談しました。
引戸を付けるオプションは無く、設計からオーダーすれば可能だが、価格が高いので引き渡し後にリフォーム業者に頼んだ方が安いとアドバイスされ、実際にその通りにして引戸を着けました。
しかし入居後、初めての消防設備点検の際、その引戸を付けた洋室に火災報知器が無いと指摘されました。
2LDKに変更したから施工業者が付けなかったのです。(せこい)
そこで市販の火災報知器を買って天井に付けましたが、次の消防点検で、これはマンションの防災設備と繋がっていないから駄目だと言われてしまいました。
個人的にはこの洋室での火災の可能性は極めて低く、また一応市販の火災報知器も付けているのでこのまま住み続けたいのですが問題がありますでしょうか。
また、将来の売却時にこの件は弊害になりますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
禁忌事項
スムログお問い合わせフォームで、「お答えできない質問について」と次の2件が明示されております。法律に係る内容
税務に係る内容
本件は、消防法等に関係するため、直接はお答えできません。悪しからず。
…で基本的には終わりですが、スムログ読者の方のご参考になればと法律判断に直接触れない範囲で書きます。
火災報知器?
お便りにには指摘を受けたのが「火災報知器」と書かれていますが、続きの記述を見るとこれは「住宅用火災警報器」の勘違いかと思います。ひろさんが書かれており、ホームセンターで購入されたのはこの「住宅用火災報知器」ですね。続いて、次の記述があります。
2006年6月1日に改正消防法が施行されて全ての住宅に住宅用火災警報器の設置が義務化されました。
義務化されたといっても設置して消防に届け出を出す必要は無く、罰則規定もありません。
しかし、家族やご自身の命を守る為にも早めの設置をお勧めします。
※自動火災報知設備が設置されているマンションは住宅用火災報知器の設置は必要ありません。
自動火災報知設備
義務化されているが罰則規定はない…おっと法律には触れないんでした。マンションで設置されているのは上記の「自動火災報知設備」です。
ハウジングニュースオンライン:火災をいち早くキャッチして命を守る警報設備より引用:
マンションの警報設備として代表的なものは「自動火災報知設備」です。煙や熱、炎を自動的に感知する「感知器」、ボタンを押してベルを鳴動させる「発信機」、感知器や発信機からの信号を受信する「受信機」などの機器で構成され、火災を早期に知らせてくれます。延べ床面積500㎡以上のマンションには、原則として自動火災報知設備の設置が義務付けられています。消防法では、建物の構造や規模に応じて、警報設備の設置基準が細かく定められています。
「自動火災報知設備」自体はトータルのシステムなので、消防点検で1回目に指摘されたのは「感知器」がないことで、2回目はこれが「受信機」などにつながっていないという指摘ですね。
ひろさん個人としていろいろお考えはあるかと思いますが、自動火災報知設備がトータルのシステムであることをご理解いただければ、おのずと答えは見えてくるのではないでしょうか。
感知器の設置基準
その感知器の設置基準ですが、適切なページがありましたので私が法判断をしないためにもふたたび引用します。マンションNPO:共同住宅用自動火災報知設備#22.7より引用:
ご相談の内容: 2年ほど前にリフォーム済み中古マンションを購入しました。
管理会社が委託している共同住宅用自動火災報知設備の点検業者から、 「あなたの部屋だけリビングに火災報知器が設置されていない」と言われ、 管理会社から自己負担でリビングに火災報知器をつける必要があると連絡がありました。
(中略)
以下2点について教えていただきたいと思っております。
1、リビングを含む全居室に自動火災報知設備を設置する必要がある根拠となる法律(の、どの部分に記載があるのか)
2、全居室に設置が必要である場合の条件(「居室」の定義)
「回答」
(途中略)ご質問の「リビングを含む全居室に自動火災報知設備を設置する根拠」は
上記の「消防法施行規則23条4項3号ロ」での感知区域の区分になります。
感知器の設置は当然ながら、非常警報設備(戸外表示器、地区音響装置又は非常放送設備、
共同住宅用受信機)への接続工事と、動作確認試験が必要です。
内容的にも近しいので参考になるかと思います。
リノベーション時は要注意
今回、そもそもの問題は営業がコスト面で気を効かせてくれたものの、施工業者がおそらく法律をよく理解しないまま工事してしまったということですね。契約しだいかと思いますが、念のため施工業者にあらためてご相談されてはいかがでしょうか。実は、消防法はリノベーション時の要注意ポイントで、クルマなどの純正オプションと同じく、マンションの場合も保証のために一定のコストがかかっており、既存プランはそれが最低コストでできるようになっています。「設計からオーダーすれば可能」というのは、保証も含め個別に実施するためにお高くなるということですね。
リノベーション/リフォームはこれを自前で業者さんと相談しながらやることになるので、対応がピンキリとなり得ます。かくいう私も新築リノベーション時に、感知器ではありませんがスプリンクラーで問題となりかけました(これが、お便り返しの動機です)。百聞は一見にしかずでこちらのツィートをどうぞ。
「スムログ執筆陣の経験者」のひとりです(笑)。新築リノベ時に壁一面の造作家具を設置しましたが、途中で建築士さんがもしや…?と気づかれて写真のように設計変更となり間接照明もつけてみました。食器棚10センチと体積的には同じくらいかもしれませんがこれはこれでアクセントになりよかったかなと。 https://t.co/kGqYuYprqb pic.twitter.com/QrnCEC0n3E
— タビー (@tubby_TW) January 22, 2021
はるぶーさんが引用元のツィートで書かれているとおり、消防法の規定はかなり細かいので、少し壁を動かすだけでスプリンクラーの位置変更という話は見聞きします。スプリンクラーは、竣工後だといったん水を止めてから移設など手間が増えるので、感知器より大変です。私のケースでは、建築家さんが途中のチェックプロセスで気付いたので、造作家具の軽微な変更で済みました。
以上、直接のお答えはあえてしていませんが、ご参考になれば。
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タビーさんご回答ありがとうございました。
デベの営業マンも施工会社もこうなる事を分かってて言わなかったのではないと思いますし、自分でも気付かなかったので仕方ないですが、残念な思いです。
一応2回目のアフターサービスの時に言ってみます。
ひろさん、少しでもご参考になったならよかったです。
営業はわかりませんが、施工会社はわかっていてもいなくてもどちらにせよ問題ですね。
細かい法律の話は置いといて、今回の情報が基本になると思いますので交渉の材料になれば!