エレベーターは何戸に1基必要?

スポンサードリンク

12/7の廣田信子さんのコミ研のフォーラムでお約束した、私のその日の講演ファイル(ちょっと盛り沢山過ぎて全部話しきれなかった)をブログにするのは次回から。

毎年この時期になるとお約束で寝ていたスムログブロガーも1-2本は記事をアップして復活してくるのですが、スムログの忘年会があるせい。いくと、なぜかのらえもん先生が無惨役で、『下弦の鬼は解体』とか、『ブロガーのそっくりさんには椅子も不要。水でも飲ませておけ』とか怖い。昨年は今年は月2本!とか公約を絶叫させられたのまで、年末までにあと3本です。

リハビリを兼ねて、久々にお便り返し。
ご指名の中にはるぶーも入っていましたので。

質問は

差出人: スミログ

メッセージ本文:
みなさんこんにちは。
マンション内のエレベーターの数、何世帯に1基あると快適ですか?

ちなみに私は50世帯に一基なら快適
(相乗りする機会があまりないレベル)

70-80世帯までなら普通
(相乗りする機会が発生するレベル)

90オーバーなら不快
(購入検討から外すレベル)

で見ています。

ゴミ処理兼用エレベーターとして使用されるかなどの例外はあると思いますが、
エレベーターの快適性を重視するスムログメンバーの方の感覚を教えてください。

回答:1基あたり戸数で買うのをやめるほど単純じゃありません

スミログさんが想定しているマンションの規模・階数(とくに超高層かどうか)や複数台が1箇所に入るのかどうかなどでもこのあたりが適正という戸数はかなり異なってきます。

かなりその昔、直床嫌いの碓井さんがよく本に書いていたような、”EV1基あたり何戸以上でないと3流”みたいな単純なものではありません。

韓国のマンションでは日本でいう”2戸1”で、お向かいとの2列がEVを使って共用廊下ってのっがないスタイルが普通ですが、これを真似してとにかく沢山つければいいというものではなく、建築・修繕・維持管理のコストは、まさに戸数割で大きくなりますから設計する側からはコストと利便性のバランスの問題です。

例えばタワーの最上階王様住戸にはそのフロア範囲限定で超高速のEVをつけている場合があります。何億というおうちを買える人を待たせるもんでもないという設計思想はありでしょう。

長谷工なんかの大型の板マンだと、1基で100戸近く(超えるのは見ないので多分設計基準にしている)をカバーしているのはよくみかけますし、タワー等で多数のEVを群管理(何台もが連動して最適化されて動く)している場合には超高速なEVを入れることで、かなり1基100戸を超える場合でも渋滞は起こさないで運行可能な場合もままあります。
デベロッパーもいきなり棲んだら大渋滞とか苦情をくらうのは嫌でしょうから、それなりに考えているもので、基あたり何戸以上ならやめとかを厳しく考えていると買えるマンションがなくなっちゃいますから変な絶対条件の線引きはしないほうが吉でしょう。

#なお私のマンションは515戸に8基ですから、65戸見当。ちょっとEVが多いのは、いくつもの棟に分かれていて、実質4つ~5つのマンションにEVをつけるのと同じになるせい。これは修繕の時には4-5棟同時にやるみたいで不利です。

板マンの場合

書かれている条件は、比較的低層でかつ1棟のみの中規模までの板マンであればそんなものかなと。100戸を超えていて、EVが1台だけってマンションはあんまり設計されません。概ね書かれている条件くらいをめどに多い少ないを判断するのでよいかと。

1棟だけで100戸ちょいくらいなら真ん中あたりに、1箇所だけEVホールをつけて、そこに2基EVを入れますね。この2台並んでいるのが案外重要で、1箇所に1基だけだと、ちょうど直前に誰かが乘って最上階まで帰宅中だと、戻ってくるまで往復の時間をじっと1階で待っていることになるわけです。

これが理由で意外に不足が目立つケースは、郊外などであまり容積率があとれない(200%など)の広い土地に、渡り廊下で繋ぐなどして、多数の棟を広い敷地にいくつも立てているようなケース。あんまり高層化しない(したくない)場合に、配棟構成を複雑にして、口の字、日の字、目の字みたいな複雑な形状にしていると、あんまり渡り廊下を使わないといけない先にその建物のEVをつけるものではないので、100戸に1基めどであちこちにちらして”1基だけ”設置することになります。

このパターンは、ちょうど”今いったとこ待ち”を発生させやすいほか、住戸があちこちにちらばっているので、その住戸とEVの位置関係を買う前にチェックしないと、延々と廊下をスーパーのお買い物荷物を持って延々と歩くはめになったりします。

つまり大型低層の板マンで意外にEVが不便だは発生しやすい。

#湾岸の丸いマンションの南側の棟は、入口は真ん中あたり、西よりにEVがついているので棟の東端にお住まいの方は、一旦西にかなり歩いた後でEVに乘って、まるまる棟の長さだけ廊下を歩いて自宅に帰るとかで、多分EV利用の時間の過半が遠回りして歩いている時間のほうになります。500戸で5台なのですが、建物内の住戸位置によっては厳しい場合もでてくるかなと。

タワーの場合

この1基あたり何戸って話をすると、必ずタワマンの人が足りとるわい!とかさけびはじめることになってます。これはTwitterで、今日聞いてみたもの。案外1基100戸以上ってのがあるのはタワマンの人が多いんではないかなと。


大型の板マンとは逆にタワマンの場合、EVは超高速のものを利用できるほか、一箇所にEVを集められるので、高層ー低層用で分けて高層用は真ん中超えるまではノンストップ運転でさばけるほか、どれか一番早くこられるものを利用できる”群管理”を採用できるので、例えば全部が上にいってしまったら1台は呼び返すなど、誰も載っていなくても無人のEVが待機場所を考えて移動しているなど、待ち時間の平均値を減らす最適化がなされています。

”平均として”最適化されているので、次のがもう向かっているとかでその人を拾わないほうが、全体としてはお得になる場合、呼び出しをうけている階をとばして運行されることがあり、オフィスビルだと気がつかないのですが、マンションだと飛ばされたのがわかる場合があって、人間は利己的にできているので、これはこれでちょっといらっ・・・としたりもします。

この場合、どう沢山のEVを組み合わせているかと、EVの速度、運行プログラムなどの良し悪しで決まる世界なので、100戸に1基より少なくても、渋滞をおこさず楽々こなしている姿もよくみかけます。この例で800戸に8基かな。(他合わせて10台だったと思う)



#大抵高層用のほうが速いEVを使っていて、ノンストップの場合に全ての階に1分以内でつける速さの物を選定するので、EVの高層・低層の切替え階のぎりぎり上がお得?みたいなコツもありますが両方停まる階だとラウンジが同じ階にあって、酔っ払い(以下削除)

タワーの場合は、最低必要なEV台数は少なくなります。高速のEVは、お値段もメンテコストも大体速度比例で高くなるので、そうそう沢山設置できるものでもありません。
たださすがに1基で150戸以上はちょっと厳しいかなとは思いますが。(最近なんか見た・・・坪400超えてなきゃ文句いわないけど)

生活パターンなど

どんなマンションでも、この時間は厳しいって時間はあって、同じ時間にどかっと利用が集中するのはどうやっても防止できません。

よくある例が小学校が集団登校で、その集合をエントランスにかける場合で、07:45にEVを使おうとすると、無数の小学生が各駅停車で乗り込んでくるというもの。
ファミリー用のマンションだと、うちで500戸ですが最盛期には1週間に1人子供が生まれてきました、500戸で年50人。その子供が小学校にいくようになるとわらわら登校班で全く同じ時間にEVに乘りますから、その時間はどうやっても大渋滞です。

これは知っていればその時間をさければいいだけですから、たまたまそうなった時間に登校で渋滞になるからけしからんというのも、ましてやそれを某匿名掲示板に愚痴るのも、ちょっと心が狭い気もする。

管理コストの問題

EVは30年一回の更新(部品がなくなるので、この周期はあんまり弄れない)とかで更新が必要で、うちは8台ありますが、高速なものなので3億円ほどを計上しています。EVの更新コストは案外大きいのです。他に、EVには保守も必要で、特に超高速(分速120メートルから上が目途)のものは独立系の保守会社がメンテできないので、保守もメーカーの”言い値”になり管理コストを押し上げます。これ全部何戸で1基のEVをもっているかの割り算。2戸1のEVのマンションが少ないのにはちゃんと理由があるわけです。(韓国は地震がないから高層化が容易で普通に20-30階上に上に積んでますからね)

うかつに速いのが沢山入っていればいいというものでもなく、大抵のデベはきちんと考えて初期設定しているものです。

王様EVのコストは・・・とかTweetして某タワー住民に掲示板で貧乏人はるぶーがっとか叱られた事例を貼っておきますね。


後日談

なんかPVとれんかったといったら、知り合いの「悪い理事会系のお友達」がみなブログの表題がいかんとかで添削しています。そうかも。適切な例を貼り付けておきます。


近況

Twitterで私をフォローしている人(@haruboo0)はご存じの通り9月頃から母親の介護とか入ってきていろいろ実家と行ったり来たりのほか、今週も国交省と管理業協会のマンション評価制度関連で講演やら、ZOOM取材やらと受けていたり、その間をぬってちょっと内職?とかしていて、自分の理事会の仕事もなかなかためまくっている状況でブログは久しぶり。
・・・ブログの中でブログを書かない言い訳をするとか、昔の新井素子のあとがきのようになってきていますが。次回からは、”あなたは自分のマンションの管理を売れますか”で4月スタートのマンションの評価制度のお話をシリーズもので。

それまで、こちらでもちょっと読んでくださいませ。両方スーモだな・・・

うちのマンションの紹介記事(SUUMO):
【開放感を満喫。革新を続ける千住のリバーサイドマンション】
https://suumo.jp/library/article/entry/to_1000571424/
…取材を私以外メインでうけてダースベーダ―感を排除

 

スムログブロガー3名での対談(SUUMO):
【新築マンション選び6つのポイント】
https://suumo.jp/front/edit/free/BB/030/kaisha/119951008/index.html
…私がこんなに痩せてるわけないとか。知らんがな。

!! 重要 !!
 本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。

ABOUTこの記事をかいた人

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

コメントを残す

「コメント」と「名前」は必須項目となります。


※個別物件への質問コメントは他の読者様の参考のためマンションコミュニティの「スムログ出張所」に転載させて頂く場合があります。
※日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)