先週末の今年最後の理事会までいろいろばたばた。その間にもいろいろはるぶーご指名の質問などが届いていたので、3件まとめて短く。
① 保管しておくべき理事会からの資料は?
② 窓ガラスのフィルムは冷房の電気代削減で元がとれるか?
③ 地権者の多いマンションってどう?
の3件です。
12/7の廣田信子さんのコミ研のフォーラムでお約束した、私のその日の講演ファイル(ちょっと盛り沢山過ぎて全部話しきれなかった)をブログにするのは次回から・・・いつになることやら。
目次
質問その1:組合資料のオーナー保管
差出人: 大掃除中
メッセージ本文:
こんにちは!
郊外板状マンション住みの者です。
管理組合からの議事録等について質問です。
住んでいるマンションでは議事録や収支報告書が紙で配られます。
過去分は一応全て保存してあるのですが、8年目となりかなり量が増えてきました。
これらについて、この資料は取っておいた方が良い、これは捨てて良い、というアドバイスがあれば教えてください!
管理組合で電子化も検討してくださっているようなので、
早く実現してくれることを願うばかりです。
保存が必須な組合のお配りもの
8年分くらいだと、まだそれほどの量じゃないから、マンションの理事会が電子化してくれるといってるなら、それを待つのも手です。電子化したとしても”マンションのオーナーだけ”がログインできるポータルサイトにてもおいてくれないと、誰でも見放題とはいかないので、実はファイルの電子化よりもそっちのほうが理事会にとっては大変だったりします。うちは過去13年分の全ての、総会の議案書や総会や理事会の議事録(数千ページになる)が全部PDFでポータルサイトに保管整理されているので、その殆どに関与した私自身も、家に置いておけないから紙では1枚も保管していません。
どうしても必要であれば、大抵の大事な資料は、管理事務室などにオリジナルを保管してあるもので、”閲覧”は可能だと思います。これは私のマンションでもそうですが、総会議事録や規約のオリジナルの保管場所を、メールコーナーに掲示してあっても、過去13年間紙のオリジナルの閲覧希望者は0。これは1期目からポータルサイトにおいてあるから、それをダウンロードしてみればいいせい。
さて、それじゃいつになるか分からないから、選択して保管して重要度の低いものは捨てていきたいという場合には、おススメの残しておくものはこんな感じでしょうか:
- 規約・細則
大抵は本で竣工時に貰っていると思います。これは絶対棄てちゃだめ - ”通常総会”の議案書:直近の3年分くらい
決算と予算案がでているので、財務状況の変化が確認できる)は私がもし”大掃除中”の方のマンションを仲介で購入する立場ならみせてほしいかなと。購入検討者に理事会が見せてくれるとは限らないからです。よくものを頼む会社に過去3年の決算見せてとかいいますよね。それと同じ。決算+予算が3年くらいあれば、財務状況(とその変化)はおいかけることができます。なので”通常総会”の資料の保存優先。大抵全議案可決されてるだけなので、”議事録”じゃなくて”議案書”です。 - 長期修繕計画と、それに対応する資金計画
大抵まとめてグラフになっていますが、マンションによっては5年に1回(かそれ以下)でしか更新されませんので、最新のものは結構昔に受け取っていたりする。”購入の検討”をするとなったら必須のものなので紙一枚ですから保管しておいた方がベター。
やばい長期修繕計画と、資金計画の図なんて組でみせたくないとかで、理事会って大抵の場合細かい情報開示には消極的なので、オーナーさんが紛失していると、中古での検討者は案外入手できないものです。
質問その2:高機能のフィルムって光熱費で元がとれるの?
差出人: 迷いネコ
いつも楽しく拝見しております。
先日、新築マンションを購入することができました。
現在インテリアオプションのうち、窓ガラスのフィルムで迷っております。
単純に紫外線をブロックするものと、日射調整ができ冷房費が削減できるというものです。
スムログブロガーの皆さまの中で、日射調整ができるフィルムに詳しい方はいらっしゃいますでしょうか。
夏の冷房費が削減できるのであれば日射調整の方を選択した方がいいと思うのですが、どのくらい効果があるものなのか、価格も少し高くなるので悩んでおります。
もし詳しい方がいらっしゃいましたら、参考までにご意見をお聞かせいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
ガラスフィルムによる光熱費の削減効果は限定的
”日射調整ができるフィルム”が不透明で向こうが見えなくなっても構わないものではなく、可視光はきちんと透過させるもので、近赤外線をカットするタイプの製品(3Mのnano70S・80Sあたりがオプション指定されることが多いかな・・・)だと思います。結論から書いてしまうと、フィルムそのものの寿命が短いために、フィルム代と、削減可能な光熱費の比較でいうと、”冷房費を削減”するのが主目的であれば、”高機能型”のフィルムのオプション施工は推奨はできません。
確かに若干の効果はありますが、効果は限定的です。窓の断熱は、窓自身を複層化⇒Low-E化するのが本筋ですが、それでも計算するとマンションの全寿命に渡って積算すれば、コストアップが辛うじて回収できるかもという程度です。
10年程度の寿命しかない割に高価な(特に、デベのOpiton設定)高機能型のフィルムを入れる”経済的”な理由は乏しいように思います。
断熱関係のオタクの”がりべん”さんのTweetを引用:
(回答を他人に書かせるとかはるぶー手を抜きすぎ・・・)
貼り替え回数の多さを考えると、LowEでも費用対効果が出しにくいと言われている中では厳しいと思います
— がりべん (@garibenZ) December 20, 2021
なお、冷房負荷より暖房負荷の方が高い住宅(戸建等)だと、断熱効果がなく日射熱取得率を下げる遮熱フィルムは逆効果です
オフィスのように、庇がなく冷房負荷が暖房負荷より高い建物向きかなと
飛散防止効果や紫外線カット効果をメインにして、遮熱による光熱費削減効果はおまけ程度に考えた方がよいのかな、と個人的には思います
— がりべん (@garibenZ) December 20, 2021
(了)
私も同意見です(超手抜き;まぁがりべん氏の省エネ計算は常に正しい)
どんな安物のフィルムでも”紫外線”を止める効果はしっかりあるので(紫外線を通すフォルムをつくるほうが難しい)日焼け防止をメインにして、価格差が許容範囲なら、新築時に何千万か契約する”勢い”(後から買おうって値段じゃないので)でグレードアップするならあり。実はうちも12年前に施工してますが、まぁ勢いです。無論腕利きの専業のフィルム屋さん直で、デベオプションの半値強で済ませました。
唯一効果があるとしたら、迷いネコさんの自宅がタワーマンションなどで、どかっとガラス面が庇なしにあって、日差しがどんどん入ってくる場合ですね。タワマンでは、時に冬に近くても冷房使っているような部屋があり(大抵南向き)これは夏は灼熱地獄ですが、せっかく眺めがいいから絶対カーテン閉めっぱなしは嫌ぁって場合など。これは損得というより、快適性を買うイメージですね。日焼け防止も欲しくなりますし。
ただ綺麗に貼れば誰がやっても同じですし、施工に時間もそんなにかかりません。人気アイテムということで価格が幾重にも乗っかっているオプション会で勢いで頼むもんではないかなとは。後からでも簡単に施工できますしね。迷ったら後回し。
なお製品によっては、全く効果なしとか消費者庁に言われて喧嘩しましたみたいなものがあり(名前は怖くて書けない:けど赤外線ランプもってきて全く止めてないのは実験しました。理系なもんで)オプション設定されているのを数年前まではよく見ましたので、”フィルムの製品名でGoogle検索”はお忘れなく。国がいちゃもんつけるってのはまぁよほどの場合です。
質問その3: 地権者の多いマンションって?
差出人: 地主怖いマン
メッセージ本文:
見ていた再開発マンションで半分くらい地権者割り当てというものがありました。
そこで気になるのが、方や交換で手に入れた収入に見合わない部屋に住む地権者、
方や高収入で高いお金を出して購入した一般取得者
感覚も性質も違いすぎて仲良くできるわけないじゃんと思ってしまいます。
地権者数が少なければ問題なさそうですが、かなりの割合になる場合、管理費や修積方針、運営で揉めたりもしないのかなとかも気になります。地権者と一般取得者はどのように共存しているのでしょうか、問題は起こらないのでしょうか。
“気になるなら”避けたほうが吉かも
地権者の持ち分が多いってのには、もともと戸建てが無数に立っていたようなところを再開発でタワーにしたってパターン(賃貸回しするような小さな部屋が無数に低層階中心にできているケースが多い)のほか、どかっとまとめた面積で店舗などをもっていた会社がそのまま複合型のマンションの1階などに収まるパターンがあり、各々後で顕在化してくる問題の質が異なります。再開発をまとめた地権者が、初代の理事長などをしているケースって結構多い(地権者は理事になるメリットを熟知しているもの)案外理事会は地権者が制圧しているものです。
マンションのモデルルームの販売ビデオに、再開発組合のボスが、”このプロジェクトは俺が20年かけてまとめた”とか大威張りででてきたケースまであって、この人が理事長になったら20年位理事会やらないと互角扱いしてもらえないだろうな・・・とか。実際そのあとまぁいろいろあったと仄聞します。
理事やるつもりなら避けるしかないよねで、私は、”地権者が多い” か ”商用施設下駄ばき” のいずれかのマンションは、お値段とか以前にそもそも購入検討しません。理事会やったら大変で楽しくなさそうだから。マンションは均質でないほど理事会は運営しにくいもので、地権者多いの困難は全てこれ。
地権者の持ち分割合(議決権等)が25%を超えると、地権者に不利になるような規約改定は困難になります。その有名な例では、20.08%の議決権を有する1階のテナントオーナーが建て替えに反対なので、残り殆ど賛成でも80%の建て替え決議が否決という事例がありました。
規約などで変に地権者が優遇されていないかなどのチェックは必須だと思います。今はあんまり露骨なのはみなくなりましたが。
具体的なデメリットは前にまとめたことがあるので、こちらから。
『地権者ありマンションのデメリット』
https://www.sumu-log.com/archives/4058/
!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
ご回答ありがとうございます。過去のリンク先の内容も合わせて、欲しかった情報・ご見解が得られました。
マンションは無数の要因の組み合わせで
価値が決まるものです。
私は一回理事会ってのを仕切ってみたかったから
その視点で選びましたが、
ただ一つの要因でやめとはならないものです。
総合的に判断されますように
総合的判断仰る通りですね。
マンションの立地やスペック、値頃感等が分かりやすくもあり判断軸にされがちですが、本来長く住むのであればこういった長期的な管理運用視点でのリスクや可能性についても考えるべきという気付きになりました。
はるぶーさま!
ご回答いただき、大変にありがとうございます!!大感激です~!!
ご相談させていただき、本当に本当に良かったです。
またの質問でのご指名をお待ちしています。
なかなか時間とれなくて回答かけていませんが・・・