住宅ローン控除の関係で調べたら、契約済みのマンションが省エネ基準不適合であることを知った方からの質問。
読者からの質問:省エネ基準不適合の傾向?
誰に答えて欲しいですか?
- 全員
○○(=ブランド名)のマンションを2年前に契約し、もうすぐ入居する者です。
住宅ローン控除の条件に省エネ基準が入ってくる関係でデベに質問したところ、契約したマンションは省エネ基準不適合であることがわかりました。
数年後には省エネ基準が義務化されるという話もあり、資産性に関するご質問への記事も拝見したところですが、ここ2〜3年に売り出された新築マンションについて、省エネ基準不適合というのはさほど珍しくない傾向でしょうか?
重要事項説明時にはあまり明確にこの点説明されておらず、デベやブランドへの疑念が若干出てきてしまっているところですが、数少ないハズレくじを引いてしまったのでは、、、という私の要らぬ心配にお答えいただけますと幸いです。
※省エネ基準に適合するためには、日本住宅性能表示基準における、断熱等性能等級(断熱等級)4以上かつ一次エネルギー消費量等級(一次エネ等級)4以上の性能を有する必要がある。
省エネ基準の適合状況
残念ながら、省エネ基準不適合状況が直接わかるような公的データは見当たらない。ただ、それに近いデータであれは紹介することができる。ひとつは国交省が調査した15年度のデータ。もう一つは住宅性能評価・表示協会が毎年公表しているデータ。以下、順に解説する。国交省データ(15年度)
国交省「住宅・建築物のエネルギー消費性能の実態等に関する研究会」の資料に掲載されている、新築分譲共同住宅 鉄筋コンクリート造(≒新築分譲マンション)の省エネ基準適合率を可視化した(次図)。大規模マンション(2,000m2以上)の省エネ基準適合率は38%(外皮性能基準適合率58%、一次エネルギー基準適合率43%)。中規模マンション(300m2以上 2,000m2未満)の省エネ基準適合率は24%(同32%、同45%)。
ザックリ言えば、15年度の段階で大規模新築マンションの4割近くは省エネ基準に適合していたということ。
国交省「住宅・建築物のエネルギー消費性能の実態等に関する研究会 第6回 配布資料3-3 P34」18年3月27日を元にマン点作成
では、もう少し新しいデータではどうなのか?
住宅性能評価・表示協会データ(15~19年度)
住宅性能評価・表示協会が毎年公表している「建設住宅性能 評価書(新築)データ」の中に掲載されている「鉄筋コンクリート(RC)造」に係る「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」の件数・割合データを元に可視化した(次図)。断熱等性能等級の等級4(ピンク色実線)は、概ね60~70%の範囲で推移している。
一次エネルギー消費量等級の等級4と等級5の合計(黄色破線)は、9割を超えていて、19年度は98%。
省エネ基準適合率は不明だが、15年度の国交省データの外皮性能基準適合率(≒断熱等性能等級適合率)が58%、一次エネルギー基準適合率(≒一次エネルギー消費量等級適合率)が43%であることを勘案すると、19年度の省エネ基準適合率は15年度の国交省と同等以上の値を確保しているのではないか。
※国交省と異なり、住宅性能評価・表示協会は、「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」の両方を満たすデータ(すなわち省エネ基準を満たすデータ)を公開していない。
まとめ
国交省データ(15年度)と住宅性能評価・表示協会データ(15~19年度)から次のことが言えるのではないか。ここ2〜3年に売り出された新築マンションの省エネ基準の適合率は少なくとも4割、ひょっとして7割を超えているのではないのか、というのがマン点調査の結論。現状では住宅(マンションを含む)の省エネ基準適合は義務化されていないし、政府は今後とも住宅への省エネ基準の義務化には慎重であり続けるのかもしれない(義務化すると”既存不適格”となった中古マンションへの影響が大きいから!?)。
先のことはよく分からないので心配しても仕方がないというのが、マン点の基本スタンスだが、省エネ基準適合化の流れは今後、体力のある大手デベを中心に加速していくものと考えています。相談者さんの期待していたような回答にはなっていないかもしれないが……。
※本資料の作成には慎重を期しているが、データの精度について保証するものではない。また、これらの情報をあなたが利用することによって生ずるいかなる損害に対しても一切責任を負うものではない。
あわせて読みたい
- 住宅ローン破たん・条件変更データを可視化 ※随時更新
- 住宅ローン借換え、皆はどうしているのか?
- 住宅ローン、おすすめの銀行はどこか(顧客満足度ランキング)
- 住宅ローン残高の推移から見えるおススメの銀行
マン点様
本件の質問をさせていただいた者です。
早速詳細にご回答いただき、ありがとうございます。
該当のマンションについては断熱等性能等級は4を取得しているものの一次エネルギー消費量等級は取得していないとの回答を受けており、実態としては98%以上の物件が4以上ということですね。。。
色々と勉強になりました。
改めて、ありがとうございます。