現状では住宅(マンションを含む)の省エネ基準適合は義務化されていないとはいうものの、住宅ローン控除の条件に「省エネ基準」が関係してくるので、マンション選びをしている人にとっては気になるところであろう。
マンションの省エネ性能を評価する指標として、UA値とERRがある。
- UA値(外皮平均熱貫流率)
建物の断熱性能を評価する指標で、東京23区(地域区分6)の誘導水準は0.87W/m2K。数値が小さいほど断熱性能が高いことを意味している。 - ERR(Energy Reduction Rate、エネルギー低減率)
建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律による、一次エネルギー消費量を用いた効率指標。数値が大きいほど省エネルギー性能が高いことを意味している。
UA値とERR、260件の分布図
東京23区の新築マンション260件について、横軸をUA値、縦軸をERRとして、「メジャーセブン」「非メジャーセブン」「メジャーセブンを含むJV」の3つに色分けして描いたのが次図。次図からは以下の特徴が読みとれる。
- メジャーセブン(大手不動産7社)の大半の物件は、断熱性能、エネルギー低減率ともに高い
- 非メジャーセブンの物件の中には、断熱性能、エネルギー低減率ともに低い物件が多数みられる
UA値とERR、各社中央値の分布図
横軸をUA値、縦軸をERRとして、メジャーセブン(7社)と非メジャーセブン、それぞれの中央値の分布を描いたのが次図。次図からは以下の特徴が読みとれる。
- 住友不動産以外は、非メジャーセブンも含めて、UA値の誘導水準0.87を下回っている(住友不動産はちょうど0.87)
- 野村>三菱>三井>住友 の順に、物件の設備のエネルギー消費性能が高い(野村不動産と三菱地所レジデンスはERR10%を超えているが、三菱地所レジデンスと住友不動産はERR10%を下回っている)
※大京(3件)、東急(1件)、東京建物(4件)は、サンプル数が少ないので参考扱い。
UA値を改善するのは容易ではない
現状では住宅(マンションを含む)の省エネ基準適合は義務化されていないが、将来義務化された場合の資産価値への影響が懸念される。なぜならば、ERR(設備のエネルギー消費性能を評価する指標)であれば、空調・換気・照明・給湯設備など、省エネ性能の高い設備に置き換えていくことで改善可能だが、UA値(建物の断熱性能を評価する指標)のほうは断熱性能の高いサッシへの交換だけで済めばいいが、壁・床・天井面への断熱材の施工となると大規模なリフォームが必要なうえ、階高の制約もあり容易ではないからだ。
限られた住戸のUA値0.87をクリアできたとしても、全住戸となるとさらにハードルが上がる。窓面の多い角部屋や上下に住戸のない1階や最上階は他の住戸に比べて断熱性能を確保しようとするとコストアップにつながるからだ。
「このマンションは断熱性能UA値を満たした物件ですよ」とは宣伝できない時代がすぐそこまで来ているかもしれない……。
あと、高い断熱性能はランニングコストの削減に寄与するだけでなく、室内の快適な温熱環境を確保できる点でも資産価値への影響は無視できないのではないか。
さらに詳しくお知りになりたい方は、次の記事ご参照。
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