第304回 「理想と現実的選択のはざまで」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

マンション選びで失敗したくないからと勉強するのは大切なことですが、勉強すれば勉強するほど理想が高くなってしまい、現実に買えるマンションとの距離が遠くなってしまうという人があります。

今日は、そんなときの考え方についてお伝えしようと思います。

 

買いたくても買えない事情は誰にでもある

マンション選びの際、誰でも最初に思いつくのは通勤に便利かどうかや、住み慣れた街であることなどの場所選びです。次には、今の家(賃貸マンションなど)より広い家、新しい家、設備の良い家などです。

そこには人間の持つ上昇志向のようなものが働くためでしょうか、ワンランク上の住まいをイメージするのです。

 

しかし、どのような家を望むにしても、予算と価格のすり合わせを無視することはできません。「会社まで30分で行けて、駅からは徒歩5分以内、広さは70㎡以上の3LDK、南向きで10階以上の見晴らしのよい住まい、できたら角部屋がいいな」などと思い描いてみても、予算をはるかに超える分譲価格だったら購入することはできません。

 

100㎡の広さ、山手線の内側、アドレスは港区か渋谷区、タワーマンションの上層階にあって、ブランドマンション。このようなマンションとなると、軽く2億円を超えてしまうのが現実です。

 

それを知ったあとでは、このような条件はあっさり諦め、もう少し現実的な条件を策定するはずです。今の時代は、インターネット検索で速やかに候補探しができるので、条件をいくつか入力してみれば、どのような物件が買えそうかが、たちどころに分かります。

 

駅の近くは高くて手が出ないと知る人もあります。駅に近くて広さも一定以上にこだわると、希望の沿線では通勤時間が問題だと、落胆する人もあります。

特定の市区にこだわったら、バス便になってしまう。環境は良いが、「バスは利用したくないしなあ」と悩む人もあることでしょう。

 

また、大型マンションは好きになれないからと、こじんまりした物件ばかりを探しているが、駅近ではビルの谷間のようなところにペンシルのような細身の外観。これをを好きになれなかったり、駅から10分くらいの閑静で緑濃い雰囲気の住宅街の中に見つけたマンションは、高さの制限があるためか天井高が低くてがっかりしたりと、中々良い物件に巡り合えないと悩む人がいます。

 

ようやく理想に近い物件を見つけたと思い、喜び勇んでモデルルームに駆けつけたが、予算的に届く部屋は、風通しと日当たりが悪い半地下住戸だったと落胆させられる人もあるのです。

また、予算も問題なく、話題になった大型タワーマンションに一目ぼれして申し込んだが抽選に外れること数回という人も少なくありません。

 

更に、狭い社宅を出たい願望が強いものの、いつ転勤命令が出るか読めないので、買いたくても中々踏み切れないという人もあります。

 

このように、百人百様の事情や条件、そして好みの違いなどがあるため、「これだ」と思える家に辿り着くのは簡単ではありません。言い換えると、多くの買い手が理想と現実のはざまで葛藤するのです。

 

資産価値より大事な条件

マンション選びの際に多くの買い手が気にかけることは、資産価値の高さです。言い換えると、購入してから何年か後に売りたいというとき、高く売れるかどうかという視点を持っていることを意味します。

 

リセール価値は、大事なマンション選びの条件です。いつなんどき、売却の必要が生じるか分からないからです。

そのとき、できるだけスムーズに、少しでも高く売りたいと考えるのが普通の感覚であり人間の欲というものです。古くなったマンションが値上がりするなど、初めから考えていないとの反論もあるかもしれませんが、少しでも価値の保存ができる物件を望まない人はいません。

 

資産価値は重視せず、自分にとって優先条件を満たす物件だから決めたという人がいます。これは個人の自由ですから、他人がとやかく言うべき問題ではありません。しかし、優先条件それ自体が、どれほど重要なものなのか、ここをよく考えてみる必要があるように思います。

 

●経済合理性に優先する条件もある

「建築には人を変え、人を豊かにする力がある」・・・この言葉は、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組の中で、ある建築家が語った名言です。

 

注文建築で家を建てる注文者と設計者との交流から紡ぎ出された「こだわりの家」は、住まう家族を幸せにする側面が確かにあるようです。番組から、親子関係、嫁姑の関係、祖父母と孫の関係、子供の教育の関係などを「豊かに変化させる」とでも表現すればいいでしょうか、視聴した筆者は、そんな建築の役割を感じたものでした。

 

マンションの購入でも、同じようなことが言えるように思います。例えば、「スープの冷めない距離にあるから」、「親が今は元気だけれど、もうかなりの高齢なので側に居てあげたい」――このような動機から選択する人があります・・・これらは、他のどんな条件より優先すると言ってよいかもしれません。

 

一般に、選択条件には下記のようなものがありますが、こうした動機で選択した物件は、経済合理性に反する場合もあることでしょう。

◆子供に転校させなくて良いから ◆通学距離が長くて可哀相だから

◆住み慣れた好きな場所だから ◆友達と離れたくないから

◆小規模マンションが好きだから ◆人気の駅だから

◆ステイタスを感じる場所だから ◆住んでみたい憧れの場所だから

◆売主や施工会社が信頼できるから ◆維持管理が期待できるから

◆自然環境が素晴らしいから ◆部屋が広いから

◆購入予算が少なくて済むから ◆管理費等が安いから

◆どうせ長く住むつもりがないから

 

これらの選択条件は、複数が絡み合って選択されるはずです。しかし、その優先順位には「ちょっと待って」と言いたくなることが度々あります。 他人の筆者がそう思っても、買い手にとっては優先する条件なのでしょう。その選択は間違いとは誰も言いきれないのかもしれませんが、気になるのです。

 

●人生観や価値観には個人差がある

マンションに理想のものは存在しません。どこかを妥協して選択することになるものです。問題は、どの部分を条件から外してはならないかという点です。その視点から見れば、疑問に感じる選択をしてしまう人が少なくないようです。

 

「それでも構わない、この土地・街が好きだからここに住みたい」という人もあるでしょうし、管理費と修繕積立金の高さも、その人の金銭感覚や価値観によっては高くないという場合もあるのです。

 

品質はさほど悪くないが値段は驚異的な安さのユニクロ製品を買わず、1着何万円もするブランド服しか目に入らない人も少なくありません。国産車より高級外車を選択する人もたくさんいます。

 

これらと同じで、好きな物は高くても高いとは思わないのが「価値観」ではないでしょうか? 人間は経済合理性だけでは行動を決めないものです。結局、何を基準にして選ぶかは人それぞれなのです。

 

●好き嫌いの問題もある

百点満点のマンションは存在しませんから、部分的に妥協するというスタンスが必須です。ただ、他人が何と言おうと嫌なものは嫌という「好き嫌い」は、妥協できない問題でもあります。

 

ある人は、建物の外観が「何となく昔の公団住宅みたい」と言って、予算的にも問題はないのに、1億円する高級マンションを買わなかったという例があります。

設備・仕様もハイグレードなマンション、環境も良く利便性も高い建設地、文句なしの物件と言えなくもないのですが、外観デザインに工夫が足りないというか、センスがないなという印象は筆者も同感でした。

 

要するに、その人にとって「恰好の良い」マンションであることが重要な問題で、機能や利便性、品質レベルは高くても、色・テイストが好きでなかったので、「欲しい」という気になれなかったのです。

 

販売員は、設備や仕上げ材の高級感を、また場所の稀少性を懸命に訴えたかもしれません。しかし、買い手の現住居が築10年未満の分譲マンションであったことや、モデルルームを何件も見て歩いたということから推測すると、おそらく目の肥えた人なのでしょう。

また、住まいはステイタスシンボルでもあるという考えが前提にあったのかもしれません。販売員の説明に耳を貸さなかったのです。

 

生い立ちや交友関係、育った環境などが影響している可能性もあり、他人には分からない世界です。適当な言葉が浮かんで来ないので少し飛躍するかもしれませんが、「蓼(たで)食う虫も好き好き」という格言があるように、他人では量れないのが好き嫌いの問題です。

 

駅近にあり、将来のリセールバリューが高い物件になりそうと分かっていても、商店街の一角に立つようなマンションは嫌いだという人がいます。小規模で管理費が高い、駅からも距離がある、けれども区画の大きい一戸建てが並ぶ住宅地の一角に建っていたから惚れて買ったという人もいます。

 

300戸を超えるメガマンションやタワーは絶対いやだ、買うなら30戸以下のこじんまりした低層マンションが好きという人もいます。また、三菱や三井の物件しか検討しないという、盲心的なファンも少なくありません。

 

その選択の仕方は問題あり、そのマンションだけは止めた方がいいという感じるケースは筆者へのご相談者の中にも少なくありません。筆者は遠慮せずに「良い物は良い。高額・高級物件だが、物足りない」などと率直に所見を述べていますが、いつもこれで良かったのだろうかとレポートを送付した後も自問自答します。

 

人それぞれの考え方を何も知らない赤の他人の筆者が、主観を書き連ねてご相談者の進む道を左右しようなんて、何と傲岸な所作であろうか。そんな反省もあります。しかし、その所見が役に立つこともあるだろう。そう信じて続けようと思い直すのです。

 

値下がり原因を掘り下げる

以下では、中古取引の分析を通じて、購入価格から大きく値下がりしてしまったマンションの共通点を紹介します。

 

●格安マンションは値下がりする?

支線・枝線にある物件の中に、本線・幹線の物件に比べて20~30%も安い印象があって、人気になる例があります。

本線・幹線の物件が8000万円というとき、同じ面積で当該物件は6000万円前後、1階住戸などは5000万円といった低価格です。

・・・・このような価格はどのようにして実現したのでしょうか?

 

土地の取得費がとても安いこと、表面的な建物品質(モデルルーム)は普通レベル、見えないところでは低品質にしてコストを抑えているからです。

 

土地代が安いのは、規模が大きいため買い手がつきにくいこと、環境的に難のある場所にあること、この二つが理由です。

広い土地であれば、スケールメリットが生まれて建築費も抑えやすいのです。駐車場も金のかかる機械式でなく、平面の青空式にできます。

 

●格安マンションは売却価格も安いと覚悟しなければならない

首都圏の新築、中古の両方をウォッチングしていると、乱暴に言ってしまうと、高額マンションほど値上がりし、安値のマンションほど値上がりしていないことに気付きます。

 

郊外の、立地条件に問題ありそうなマンションを安値に釣られて買ってしまうと、のちのち後悔することが多いことを示唆するデータです。

 

銀座の土地は売り地自体が滅多にないものですが、売り地があれば1坪当たり1億円出しても買いたい人(法人)が常にいます。そんなに高い価格で購入して採算が合うのかと疑問を持つ向きもありますが、単純な採算では採算ではないのでしょう。

 

マンションも同じようなもので、換え難い価値の場所の、30年以上前の物件であっても、新築マンションと変わらない価格の人気マンション、今やヴィンテージと呼ばれる物件が都内にはいくつかあります。

 

坪単価で言えば500万円クラス、分譲時の価格を超える中古の億ションです。それでも、「そのマンションに住みたい、価格はいくらでもいい」といった需要があるのです。

 

この反対の位置付けにあるのが、格安マンション・交通便の悪いマンションです。いくら安くても結構だ、そう言い放つ買い手が多いのです。「まあ、2000万円くらいなら考えるけどね」という声すらあるほどです。

 

高値のマンションは、ますます高値になり、安いマンションは買い手を見つけることすら難しい。このような現実があるのです。

 

●高値の物件は立地が良いからだ。買うなら高い物件を!!

マンションは立地条件が全てと言っても過言ではありません・・・・・都心は高い。駅近は高い。人気のある街は高い。みんな場所の値段です。

 

一方、大手デベロッパ―の手になる優良な物件だから建物コストもかかっている、だから高いということもあります。ここからは立地以外の要素について説明します。

 

人気のある場所では、なかなか売り地が出て来ません。たまに出たら、競争入札で高値の取引が成立し、取得したデベロッパ―はそれでも強気に企画し、高額マンションを売り出します。すると、滅多に出ない新築物件というとから、短期間に完売してしまいます。

 

こうした場所の物件は、需要に比べて供給が少ないため、当然の結果でもあるのです。人気の街では、「新築がないなら中古でも」というわけで、中古マンションも高値取引が当たり前になっています。

 

また、そのような街では中古の売り物も実はあまり出ないのです。高く売れることを知っている所有者は、売ってしまうと次にここで買いたいというとき買えなくなる恐れがありそうだと考えます。または、価値ある物件だから手放すのは惜しいと思うようです。

その結果、売らずに転居する人も多いのです。

 

これらの現象から、「場所が良ければ高いけれど、それを買っておけば将来の資産価値は高まる。だから安い物件を探すのではなく、高い物件を探すスタンスが望ましい」と言えるのです。

 

勿論、人気エリアというだけで建物プランが良くないものもありますし、価格も妥当とは言えない物件もあります。また、人気の街とはいえ、ピンポイント的に良いとは言えない場所もあります。そうした基本のチェックは必要なのですが・・・

 

一般に百点満点のマンションはなく、短所を長所で補う形になるものです。バス便の短所を補うものが何かと言えば、普通は抜群の自然環境が挙げられます。開発地の周囲が自然環境に恵まれているという条件です。大きな森や河川、広大な公園などに隣接するといったことです。

 

それに加えて、マンションの敷地内に公園や散策路や遊びの広場といった空間を用意し、建物内にもキッズルームやパーティールームなどの複数の共用施設を設けたりもします。もちろん、大型マンションにしか実現できないものです。

 

しかい、これらは大規模なら駅近マンションでも見られる施設ですから、バス便の弱点を補える決定版というわけではありません。

 

2020年以降の市場変化で特筆できるのは、コロナ禍が通勤の便を最優先としなくてもヨシとする需要を増大させたことですが、それでも郊外マンションやバス便マンションが市場を牽引するボリュームになったわけではないのです

 

●価格が安ければ大丈夫か?

交通便の悪いマンションを開発分譲する企業は、更なる魅力アップを付加することに知恵を絞りますが、避けられないのが価格の抑制です。

 

徒歩物件では得られない広さのマンションが安く買えるというとき、または徒歩物件では手の届かないものばかりという地域において、それまで見たことがない安値で分譲されると知った人は、交通便を我慢する決心をします。

 

バス便マンションは、価格抑制のためにコスト削減を徹底して企画されます。その結果、あるマンションは室内の設備・仕様がB級になり、あるマンションは建物全体がシンプル過ぎる造りになったりします。

 

しかし、どんなに安くても売れ残りを抱える事態になることがよくあります。バス便物件の多くは大型だからです。つまり、数が多過ぎて売れ残るのです。言い換えると、不便を我慢する人の数が底を着いたということを意味します。

 

仕方なく、最後の手段で価格をさらにダウンするという策(値引き販売策)を採ります。建物竣工から2年近く経過しているようなケースでは、10%くらいの値引き販売は珍しくありません。

そのくらい安かったらメリットがあるのではないかと安値に釣られて動く人もあります。しかし、あまりお勧めできません。

 

以下で、もう少し掘り下げてみます。

 

バス便マンションの場合

バス便マンションは、格安にしたつもりでも売主の期待を裏切る結果となってしまうようです。分譲主は大幅な値引きを余儀なくされるというのがお定まりのコースです。

 

これに対し、最寄り駅から近い、概ね徒歩10分以内であるのに格安という物件をときどき見かけます。例外もありますが、首都圏郊外の駅近・格安マンションは人気を集めて短期完売という、売主にとっては笑いを堪えられない良好な成果を得る例が僅かにあります。

 

同じ格安マンションでも、駅から徒歩圏の物件とバス便の物件の差はこれほど違うのかと、マンション業者に改めて教訓を残す比較事例となっています。

 

さて、販売に成功した「郊外の駅近マンション」。その駅はどのような駅なのでしょうか? 格安で分譲できるということは、言うまでもなく、郊外の、かつ都心へのアクセスは良くない、そんな駅なのです。

各駅停車しか止まらない駅、始発駅でもない、幹線鉄道でなく支線・枝線の駅、乗り換えの不便な路線etc.

それだけではありません。郊外だから環境は良いだろうと想像しがちですが、実際に現地を確認すると、あまり好ましいロケーションでないケースが多いのです。

 

畑と雑木林、住宅地と工場や倉庫・資材置き場等が雑然と混在する未整備な街、ローカル色の濃い、また寂れた駅前商店街、良くてもスーパーが1軒だけといった光景が代表的で、いわく言い難い風景・環境なのです。

このような場所では、一見格安のように見えるマンションも割安とは言えないのです。

 

●バス便マンションの将来価値

マンション購入にあたっては、将来リセールするときの価値を購入時に想定する、若しくは考慮しておくということが大事です。いつなんどき、売却の必要が生じるか分からないからです。

そのとき、できるだけスムーズに、少しでも高く売りたいと考えるのが普通の感覚であり人間の欲というものです。その観点で、大きな弱点になるのが利便性の悪さです。

 

将来価値を決定する要素は、①立地条件(利便性と環境)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、⑤ブランド、⑥管理体制です。この中で一番比重が高いのは①の立地条件なのです。

 

立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の弱点を補うことはできません。

 

購入価格が安ければ将来の売却価格が低くても、損失は大きくないのではと考えがちです。バス便でも新築時に売れたのだから、中古になったときも安ければ売れるのでは、これはとても危険な考えです。

 

詳細は割愛しますが、100円で買った商品は20年先に50円になり、1000円の商品は逆に1500円になるといったことが不動産の市場では起こるのです。バス便マンションがどちらであるかは言うまでもありません。

 

●バス便マンションは値下がり率が大きいのか?

駅近マンションより安く分譲されたバス便マンションは、中古になったときも安いのは当然として、購入時が安いのだから売却時の価格も極端に下がらないのではないかと、つまり、同じ経過年数なら同じ比率で値下がりするのではないのかと考える人がいます。

 

ところが、そう単純ではないのです。 価格維持率で比較すれば、駅近マンションが100であるとき、バス便マンションは80とか85と低いのが実態です。

 

駅近マンションは何故100、すなわち値下がりしないのでしょうか? 経過期間中に新築相場が上がってしまい、例えば分譲時の100から10年後の現在は120とかになっているため、中古は100を維持する結果になるのです。

 

一方、バス便マンションでも10年前の100から、10年後の新築は110とか120とかになっているはずです。建築費や地価は無縁というわけではないのですから。

 

そうであれば、バス便の中古も悪くて90くらいには留まるのではないのでしょうか? なぜ、80とか85まで下がってしまうのでしょうか?

 

答は簡単です。そもそも新築時の価格が高かったからです。駅近マンションが100であるとき、バス便マンションは70以下が妥当なところ、80で買ったから、言い換えれば「高値掴み」したからです。つまり、駅前の建築費もバス便立地の建築費は大差ないため、バス便マンションにしては高い買い物をしてしまうためです。

 

●バス便マンションは割高

筆者の研究では、バス便マンションは駅近マンションの70~75%くらいの価格が妥当と思われる物件が多いのです。ところが、新築マンションに限ると10%も高い80、85で売り出しているのが現実です。

 

新築マンションの原価構成は、土地代+建築費ですが、建築費はどこで建てても大体同じなので、違いは土地代です。簡単に言えば土地代の差によって100対80の分譲価格の差となるわけで、70までは下がらないのです。

 

バス便マンションで70まで下がっている例もないわけではありません。ただ、建物品質は標準以下、付加価値は何もなし、おまけにバス停から徒歩10分も歩くような場所で、かつ自然環境も良いとは言えない、そんな物件なのです。

 

結局、付加価値もあって品質も標準以上といった優良なマンションでも、バス便物件の場合は2割安でも「割高」と見なされ、販売も苦労するというわけです。

 

苦戦マンションは、最終的には大幅な値下げ販売を断行します。そのときの価格が実は妥当であったという場合が多いようです。しかし、中には値下げ幅が十分でないものもあります。バス便マンションは価格に十分に気を付けなければなりません。

 

●中古のバス便マンションは適正価格かもしれない

新築のバス便マンションは、その多くが割高と判定されます。しかし、中古マンションは別です。駅近マンションと比べて適正な価格まで下がって取引されるからです。

 

新築マンションは、大々的なキャンペーンを展開し、圧倒的な展示法・販売ツール等によって販売を行いますから、その販売・広告戦略によって買い手は一定期間に集中的、かつ大量に動員されます。

 

この方法によって売り手は買い手の購買意欲を高め、一気に売買契約へと誘導します。当然ながら、初期の段階では定価販売です。ただ、それで一気に全戸が完売することはないのです。初期の売出し分が売れるだけなのです。初期の人気を見て買うのは危険というわけです。

 

これに対し、中古マンションはネット検索による反響を待つ、つまりは成り行き任せといった消極的・受動的な販売(仲介)活動に依ります。しかも、価格交渉によって売り出し価格から5~10%も下がったりするのです。

 

その結果、中古のバス便マンションは妥当な価格で購入できることになります。購入価格が妥当であれば、価格維持率も標準的なレベルとなるはずです。言い換えると、売却するときの価格は、「バス便だから安い」とは言えても、「値下り率はバス便だから低い」とはならないのです。

 

筆者がバス便を論外とするのは、新築マンションを購入する人向けの警句です。 適正価格まで十分に下がった中古マンションには当てはまりません

とはいえ、価格維持率が駅近マンションと変わらないと断定できるわけではありません。何故なら、需要量において元々の差があるためです。「バス便でもいいから広くて安い」を希望する人より、便利なマンションを求める人の方が圧倒的に多いのです。

 

従って、駅近マンションには下方圧力がかかりにくく、新築購入時は少し高いかなと感じても、価格維持率はバス便マンションより高い結果となるのです。

 

鉄道支線の場合

マンションの価値について、幹線と枝線の差についても触れておきます。

 

マンションの価値に占める立地条件、この比重が大きいことは既に述べた通りですが、具体的な条件のひとつは「駅近」であることです。 駅近といっても、駅がどのような駅なのか、またどの沿線なのかによって随分差があることに留意しなければなりません。

 

鉄道には、幹線と支線または枝線と区分できます。幹線とは主要な鉄道のことで、支線・枝線とは主要鉄道から枝分かれしている鉄道のことです。

幹線鉄道は、鉄道会社が違っても相互乗り入れを実施していれば、乗り換えを要しない路線となります。従って、鉄道会社が同じか別かは無関係です。

 

枝線には、ふたつの種類があります。主要鉄道の駅で乗り換える必要があるものと、二股に分かれる駅で乗り換えなしの直通電車も運行するものがあります。ご存知の通りです。

 

幹線鉄道とは、東京都心とダイレクトにつながる鉄道を意味します。

 

いずれにしても、ここでの話は東京都区部のことではなく、首都圏の郊外都市を念頭に置いての記述であることをお断りしておきます。

 

●バス便マンションよりはましか?

枝線のマンションは割高な物が多いと言いましたが、バス便マンションよりはマシということは言えそうです。運行時間が正確であること、終電がバスほど早くないことなどが、その理由です。

 

疲れて帰って来たお父さん、最寄り駅に着いたけれども、そこからバスに乗り換えるなんて。これには大いに抵抗があるはずで、それに比べれば、電車の乗り換えはあっても最寄り駅に着いたら、我が家はもう目の前だという方がマシだからかもしれません。

 

●枝線の駅で買うなら駅前が理想

駅近マンションは、高値でも人気があるものです。首都圏の住民は利便性を優先する多忙な人が多いからです。しかし、幹線鉄道の駅前は既に建物が密集していて、マンションが新しく建てられそうな空地はなかなかないものです。待っても探しても、なかなか良い物件に当りません。

 

そこで駅から徒歩10分歩く物件を選択したりします。それさえも幹線鉄道は高くて買えない、または面積の妥協を強いられるものです。

 

仕方なく、1回乗り替えを覚悟し枝線の物件に目を向けるという選択になるわけですが、その場合に大事なことは駅からの距離は妥協しないことです。

乗り換えて到達する枝線の駅、そこからさらに遠くへ行くようなマンションの値打ちは、大きく値下がりして当然なのです。枝線の物件は、駅から歩5分以内が限界点と考えましょう。できたら駅前マンションに限定するくらいの方針で臨みたいものです。

 

住んでみたい街ランキング下位の街の場合

人気の街と不人気の街があります。東京都下なら「吉祥寺」が人気の駅で有名ですし、横浜駅もトップグループの人気駅に挙がります。都心では「恵比寿」が常に上位にランクされています。

 

対照的にランキング下位の駅は、多くが郊外にありますし、都心・準都心でも不人気の駅があります。ここでいう駅は「街」に読み替えてもらって差し支えありません。

 

不人気の街の共通点は「急行電車が止まらない」ので不便であるとか、駅周辺のショッピング施設が不足している、言い換えると「賑わいのない街」ということになります。

 

筆者はかつて世田谷区に住んでいました。区単位で見れば人気の上位に挙がる世田谷ですが、駅単位に見て行くと、大きな差異があることを知りました。

 

不人気の街のマンションは、隣接の人気の街より価格は当然に安いものです。用地費が安いためです。しかし、その安さは価値に見合っているかとなると疑問です。既述の通り、用地費は安くても建築費は差がないからです。

 

隣の人気駅付近の土地より3割安で用地を取得できたとしても、分譲価格を3割安にはできないので、分譲時の売れ行きも良くはないようで、最後は値引き販売を強いられることが多いのです。

 

そのような物件の将来、すなわち中古市場での評価は厳しく、安く買えたから得になるかと言えば、期待を裏切られることが多いと考えておかなければなりません。既述のバス便マンションなどと同じ理由です。

 

タワーマンションの下層階の場合

「タワーマンションは眺めの良い上層階を買わないと価値はない」という意見を聞きます。そう考える人が多いのでしょう。確かに、上層階に人気は集まります。売主のデベロッパーは人気薄の低層階も売らなければならないので、価格を安くします。高層階はもちろん高くします。

 

ちなみに、少し前に分譲された郊外の駅前にある某タワーマンションの価格を見てみると、同じタイプ・広さでも34階が5120万円ですが、19階では4640万円となっていました。その差480万円で階数差は15層。480万円を15で割ると、平均32万円ですから、1階上ることに32万円ずつ高くなる計算です。

 

このマンションの5階は4100万円で、34階とは1000万円ほどの差があるのです。それほど実質的価値に差があるものでしょうか? 5階と34階なら、このくらいの価値の差が実際にあるような気がしますが、実際の部屋を見ていないので不確かです。

 

プレミアム住戸の眺望と値段

今度は、都心の高級なタワーマンションを見てみましょう。

 

下層階と上層階ではプラン・広さそのものが大きく異なるため比較しにくいのですが、千代田区の某マンションは、最上階(40階)のプレミアム住戸の坪単価が約@700万円、20階の一般タイプで約@550万円と、その差@150万円、仮に80㎡同士なら総額3600万円と大きな価格差があるのです。

20階と40階で、それほどの差があるものでしょうか? 疑問を禁じえないところです。

 

上下階の格差がこれほど開いていない物件もありますが、上記の例の場合、プレミアム住戸と一般住戸の室内の設備と仕様の違いだけでは説明がつきません。やはり、眺望価値の差なのでしょうか?

 

眺望の良い住戸が欲しくても、予算が足らない人は否応なく低層階の住戸に目を向けます。そんな買い手の中には、自嘲気味に「もっと上の方を欲しいが、そこまでの予算を持っていないのでねえ」や「眺望もいいけど、こんな広い家はいらない」などと述べる人もいます。

 

そんなとき、眺望は上階に設けられビューラウンジやパーティールームなどへ行って景色を楽しむことにしたらよろしいのです――このような担当営業マンの説得があるようです。

 

確かに、上層階を購入しても1日中、外を眺めて暮らすわけではないし、景色などというものは5分も見たら飽きるのです。そこに1000万円も2000万円も予算をつぎ込むというのはいかがなものかと言われると、妙に納得してしまいそうです。

 

それでも上階を求める人が多く、人気はそこに集まるもので、そんなお金持ちのために、「プレミアムフロアー」という名の特別仕様の住戸を用意し、その階は全てプレミアム住戸としたりしています。

 

このような超高層物件は数多く見られます。プレミアム住戸とは、他の階とは違う仕様になっているだけでなく、広さも大きく異なるタイプのことです。

単価が高く、広さもあるので、価格は中間階の住戸に比べて5000万円も1億円も高いのです。都心の一等地に建つ30階以上のタワーマンションでは、最上階が3億円、20階あたりで2億円といった価格が普通です。

 

プレミアム住戸の買い手は下の方の狭い住戸には最初から目をくれず、高い住戸同士の比較でどれにするかと思案する格好になるため、いかに割高な価格が設定されていても、下層階との価格差は気にならないということなのでしょう。

 

眺望の値段

眺望という要素だけを切り離して、その価値を測るのは中々難しいのが現実です。建設場所によっても異なりますし、同じ場所でも方角によって見える景色も異なりますから、価値が違って当然です。また、平均5000万円のマンションと、平均1億円のマンションでも上下階で価値観は違うはずです。

 

新築マンションの場合、価格設定の際に売主企業はいつも悩むようです。この場所、この眺望で1階あたりいくらの差が妥当かを、住戸の方位でも変わる景色をイメージしながら、A案B案・・・と価格案を作成します。数字は経験から導かれます。超高層物件が初めての業者でも、他社の実例を参考に草案を作成します。

 

それを、プレセールス段階で「第1期・予定価格表」いう名の、部分的に数字を覗かせた形にして顧客に提示し、その反応を観察します。その結果から、上げ下げの調整をして決定するのです。

 

つまり、眺望価値の妥当性は売り手も最初は手探りなのです。値段は買い手が決めるという法則に従うということかもしれません。

 

有名マンションなら下層階でも秘かな自慢になるかも

ところで、階数に関わらず超高層(タワー)マンションに住んでいるというだけでステイタス(地位・身分)が実感できるという意見があります。正確には「ありました」という過去形です。超高層マンション自体が珍しかった時代の意見だからです。

 

周知のように、東京ではもはや超高層マンションは珍しいものではなくなりました。郊外に行けば、駅前再開発によって建てられたランドマーク的なタワーマンションも依然として見られますが、都心ではステイタスシンボルとは言えない時代になったのです。

 

タワーだらけの街も珍しくありません。タワーに住んでいることが誇らしいと思えるのは、周辺の物件が30階程度である中に50階クラスの飛び抜けた高さで差をつけているような物件だけかもしれません。

 

また、似たようなデザインが多い超高層マンションにあって、自分のところだけが際立つ外観を誇るというようなケースなら、そこにも誇りを感じることでしょう。

 

超高層マンションは、多くの場合、300戸、500戸、ときには1000戸にもなる大型であることから、共用部分は広く豪華な造りになっています。エントランスと、それに続くロビーやラウンジは「ちょっとしたシティホテル並み」の威容を誇ります。

このような建物が完成したとき、購入者の殆んど全員が驚嘆し、感動して喜びに浸ることになるのです。

 

どのような分野につけ、誇りとは周囲の賞賛(他人が羨ましいと感じること)があってこそのことです。マンションの場合では、通俗的な言い方を許していただけるならば、「どうだ!俺の家は」と周囲に対して胸を張れる建物だからこそ、ステイタスシンボルたりえるのではないでしょうか?

 

そのような、差別化が明確な超高層マンションなら、低層階に住んでいても秘かな自慢の種になるのかもしれません。だからこそ、比較的少ない金額で下層階を購入し、価値あるマンションの住人になるのも悪くないと思う人が多いのでしょう。

 

眺望は上階に設けられた共用施設(ビューラウンジなど)が、住戸の上下の差別なく利用できるのですから、ときどき足を運んで景色を楽しめばいいのです・・・このような合理的価値観には賛成してあげたい気がします。

 

ただ、「何階?」と聞かれて困る人や下層階の住まいに劣等感を覚えるかもしれないと想像してしまう人は止めた方がいいのかもしれません。

 

30階超のタワーマンションに何度か足を運んだとき、エレベーターで上階から降りて来る家族があり、この家族は何階に住む人だろうかと想像したりしました。身なりが良く、とても上品そうな子供二人と若い両親の4人家族でした。

 

最上階のプレミアム住戸の住人だろうか? 広く高額の住まいに住んでいることだけは間違いないと感じましたが、羨ましいと感じる瞬間でもありました。

 

筆者の経験を振り返ってみると、あまり低層ではいかがなものか、せいぜい中間階までが超高層マンション購入の妥協点なのではないかという気がします。

 

とはいえ、ものの考え方や価値観は百人百様です。合理的な価値観がある一方、情緒的な価値観があるでしょうし、虚栄心の強い人・自己顕示欲の強い人、他人の目を気にしない人でも価値観は変わるはずです。

 

ゆえに、超高層マンションの2階や3階でも買い手は現われるのです。つまり、将来の売却も低層階だから売れないなどの心配は、きっと杞憂に終わるでしょう。

 

問題は価格です。安ければ買い手は必ず現われます。従って、購入価格も安い方が安全ということになります。お買い得感のある価格であれば、低層階を購入するのも間違いではないということになりそうです。

無論、その価格が「十分過ぎるレベルに抑えてあるかどうか」、この判断はケースバイケースになり、ここで一定の法則のようなものはお伝えできませんが、割り切って下層階を購入するのも一考に値すると思うのです。

 

北向きマンションの場合

東京だけの特異な現象とお断りしたうえで言うならば、東西南北どれが良いかというテーマで語るのは困難です。昔は「南向きを旨とすべし」とする意見が主力でした。今でも日当たりの良い南向きマンションの人気は高いのですが、昔に比べれば圧倒的な人気ではなくなったと言えます。

 

日本の「高温多湿気候」に合わせた住まい造りという概念は、近年の技術発展によって後退してしまったからです。以前は、住まいと言えば一戸建てでしたが、今日の東京圏では「マンション(集合住宅)」が中心の住まい形態に変化してきたためでしょうか、人工的な室温・湿度調節の機能も加わって、南向きにこだわる人は大きく減っていると感じます。

 

洗濯物を干すニーズも減っています。乾燥機付き浴室もありますし、何より在宅時間の短い家庭が多い現代、洗濯物をベランダに干したいと考える人も減ったのです。

 

以上のような事情や背景から、北向きだから値下がり率が大きいとは言えない時代になっています。

 

コンパクトマンションの場合

いわゆる単身者向けのコンパクトマンションには2つの種類があります。ひとつは全戸がコンパクトタイプで構成された「純コンパクトマンション」です。もうひとつは、ファミリータイプとの「混在型コンパクトマンション」です。

 

前者は敷地300㎡前後の小型マンションで、後者は主に超高層の大型マンションに多く見られ、下層階に配置されています。

 

筆者のおススメは後者で、前者の物件購入に関するご相談には否定的な所見しか出せないのです。そのことに、いつも心を痛めます。改めて、その根拠をお話ししましょう。

 

小型マンションは、①付加価値が設けにくいこと、建築費が割高になること、大手ゼネコンは請け負わないこと、②管理費が高くつくこと、規模が小さいため③外観も見映えしないといったデメリットばかりが目立ちます。

また、コンパクトマンションには、自己居住用に求めた人の中からも賃貸に出される住戸が加わるため④賃貸比率が高いという特徴がありますが、これも懸念点です。

 

コンパクトマンションの問題点を詳しく見ていきましょう。

 

●純コンパクトマンションは小型ゆえに付加価値がない

大型マンションは、その規模自体が差別化に役立っています。大きいだけで存在感があるからです。

反対に、純コンパクトマンションは駅前通りなどの便利な場所に建つことが多いものの、小型であるゆえに目立たない、いわば周囲の建物に圧倒され埋没してしまうのです。

存在感の有無は資産価値にも影響します

 

また、玄関ホールやロビーといった共用部分の規模も、全体スケールに比例して小さくなる純コンパクトマンションは、その面でも「立派・豪華」から遠いものとなります。それが資産価値にマイナスであることは言うまでもないのです。

 

●純コンパクトマンションは居住者層が偏りがちだ

純コンパクトマンションを志向する検討者は、例外なく所有者が自分と同じ境遇にあることを無意識に望んでいると感じます。同じ仲間がひとつ屋根の下に住んでいる安心感とでも言えば良いでしょうか。

ファミリ―層がたくさん居住する中に独身の自分が住むのは肩身が狭いという心理があり、その裏返しでしょうか?

 

何となく解かるような気もします。しかし、単身者ばかり肩を寄せ合って住むということではないはずです。同じような境遇の人が多いとしても、ふだん交流があるわけでもないからです。

交流を後押しするスペースとして「ラウンジ」や「パーティルーム」などを設けている物件もありますが、無用の長物化になっていると聞きます。

 

それはさておき、様々なタイプの世代・世帯が同じ屋根の下に居住している方が、災害があったときなどに大助かりだったという例はよく聞くところでもあります。大型マンションだからという意味でもあるのですが。

 

また、様々なタイプの階層が集まるコミュニティ社会こそ普通の人間社会でもあるとも思うのです。

大型マンションなら、コンパクト住戸も絶対数としては数が多いはずですから、同じ単身者のお仲間を探すこともでき、一石二鳥なのではないでしょうか?

 

●純コンパクトマンションは管理費が高くなる

純コンパクトマンションで100戸もある大型というのは殆んど見られません。大きくてもせいぜい50戸程度の小型物件です。50戸と言っても、コンパクトばかりですから、ファミリーマンションの20戸程度の規模ですから想像に難くはないはずです。

 

規模が小さいと管理費が割高になるものです。管理費が高いと売れないと見る売主は、管理人を置かない管理体制にして販売を行います。

管理人がいないマンションは将来どうなって行くのでしょうか?そこに思いを馳せる買い手は少ない気がします。数十年後を想像できる人もいないのでしょう。不安に感じながらも、最後は「まっ、いいか」と念頭から外してしまいがちです。

 

●純コンパクトマンションは賃貸比率が高くなる

コンパクトマンションを賃貸目的で購入する人は少なくありません。どのようなマンションでも、何年か経てば賃貸住戸ができてしまうものですが、純コンパクトマンションの場合は、最初から賃貸住戸が混在するのです。

 

数年すると、その比率が一段と高まります。自己居住だった人が結婚その他の事由で転居し、売却せずに賃貸するからです。

 

分譲マンションでありながら賃貸マンションのようなものになったら、自己居住中のオーナーはどんな感覚や気分になるのでしょうか?

 

●賃貸比率が高いマンションは管理意識が低くなりがち

賃貸マンション化に伴い、管理状態は徐々に悪化する可能性が高まります。

オーナーにとって関心が高いのは、賃料が遅延せずに入るかどうかです。管理組合が総会を開いても白紙委任状を出すだけで、管理に関する意識が次第に薄らいで行きます。

 

転売が繰り返されてオーナーが変わり、現住所も分からなくなっている例があると聞きます。そのようなマンションでは、管理費や修繕費を滞納する人も増えます。大規模修繕に必要な金額に足らないときの臨時徴収などは不可能で、修繕は先送りされてしまいます。

 

タイムリーに修繕が行われないマンションは、あちこちで不具合が生じ、快適性も見栄えも悪化して行きます。管理人が常駐(日勤)していないことに加え、もともと日常管理に厳しさが足りないため、モラルも低下し、荒れ放題になって行きます。

 

住み心地が悪いマンションに嫌気して転居するオーナーが増え、賃貸比率がますます高くなって行きます。このような状態が改善されなければ、スラム化の道をまっしぐらに進むことでしょう。

 

管理人がいない、オーナーが居住していない、このようなマンションは資産価値が維持できないのです。その懸念・危惧が純コンパクトマンションには潜んでいます。

 

 

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました・・・・・次は10日後の予定です。

 

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