マンション価格が上がったのは、原価が上がったせい?

マンション価格はここ2-3年は少なくとも暴落はないという予測をするブロガーは多いのですが、その理由を”建築費など原価が上がっているから”と口にすると、それは『デベ側の論理』だ!とかネットで叱られているのをよく見ます。

DJあかいさんのブログ 2021年の振り返りと2022年の展望 でも取り上げられていました。上がる理由は、原価が上がるからではなく、”上げた値段で買う人がいるから”だって考えかたもあり。これは坂根さんのノートで綺麗にまとめられてます。

この2つってそんなに違う立場なの? ”同じ局面を別の面からみているだけ”なんではないの?とか思うので Tweet した割と好評。 連続ツイって最初のしか読んでもらえないので、再掲しておきます。

ポイントは、マンションの原価率は iPhone なんかよりははるかに高くて、この値段以上で売らないと、収益化できないという”下限”が案外高いということ。

価格はいつも競争の結果”ぎりぎり”に高い

マンションの値段はローンの低金利+税制をフル利用した上で、正社員2馬力の夫婦が”背伸びをすればぎりぎり買える”値段に決まる傾向があり、その値段で買う人がいる限りは上がり続けます。どっちが原因かといえば、これは買い手がいるからってのは確かです。

買われる理由は、”賃貸で住んでいるより買った方がまし”だけとは限らず、カネ余りで他の資産のつけかえみたいな理由かもしれない。都心のタワー物件などでは、オーナーの過半が在外で、そもそも賃貸にすらだしてなくて寝かせてる部屋とか沢山あって、総会の連絡つかなくて大変(日本に住んでるとも限らない)話はよく聞きます。
マンション価格と日経平均は極端に連動性がいい。とくに都心の物件は、他の形でもっているより有利であれば購入され、利用価値で値段がついているとは限らない。

ある土地をマンションにするのが一番得ではないかもしれないとなれば、ホテルにしたい人や、コロナで激増した物流センターにしたい人とも闘って一番高い値段で土地を手にいれた会社しかそこをマンションにすることはできません。

もともとマンションの値段は、上がるときには急に上がりやすく、下がるときには急には下がりにくいものだというのも、バブル+リーマンショックの前後でも検証済みのものです。上げ相場ならいくらでもトライしますが、下げ相場になったときにはそう簡単に損しては売れないからある意味当然で、下げの方向には”デベが耐えられる期間”だけは下がらないという慣性は当然あります。

図は長谷工のマンションミュージアムで数年前に掲示されていたマンション価格の歴史から。青色の価格変化が、過去50年くらいのマンションの『グロス価格』(面積も変っていくので坪単価ではない)の変化で、首都圏全体での結果ですね。





バブル崩壊の後、リーマンショックの後も含めてここ四半世紀に渡って下げ相場ってのはなかったわけで、マンションの値段が急に下がるってのを肌間隔で経験している人はみな50代より上のお爺さんばかりということ。経験がないとなんかずっと上がっていくように錯覚しがち。

ネット掲示板の”ノリ”

一方物件価格に関するネットの書き込みは、”高い”とする方向に極端に偏りがちです。某匿名掲示板(まぁここ)に書き込むの人の8割位の価格に関する感想は”高い”です。そもそもMRに来た人の1-2割しか買わないわけで、買わない人の理由の大半が”高い”からですが、殆どのマンションはちゃんと売れるわけで、実際には適正価格だったってことが多いわけです。

マンション新築板の掲示板って、留学ネタの掲示板と同じ。買ってしまった人は見にくることは一部の、マンションを毎年のように買うのが趣味というビョーキの方を除いてないわけですから、新築板には必然的に、”買わなかった”人が濃縮されて集まりやすいですからね。こんな価格で買うなんてありえないとかの怨嗟の声が多くなり、そういう人を相手に、もうじきマンションが暴落しますというコメントを、週刊誌に売っている”暴落系”の評論家の方もいらっしゃいます。

デベのミカタか!?と言われるわけ

一方で、スムログブロガーの人みたいに、かなり長期に事例を追って、価格変動をみてきた人は相場観がかなり鍛えられています。

スムログだと、マンションマニアさんやのらえもんさんが代表格ですが、あくまで高い・安いは、近隣で直近にでた物件の価格+販売実績や、中古の成約価格からの経年割り戻しで妥当価格を判断した上で、それと比較して”高い”とか”安い”と書いているわけです。

直近の事例や、築浅の成約事例よりはちょっと高くないと変でしょ?はどっちもデベが値付けを考えるときに根拠にするもので、この評価の仕方は”とてもデベ的”とはいえますから、相場比較で評価を書くと、使える記事をだしている人ほど、『〇〇はデベの味方か?!』とか書かれやすいのは確かですかね。

マンションブロガーの気持ち

ブロガーも半分プロみたいになると、わけわからん情報商材を別途売りつける必要もなくブログそのものから収益を上げています。スムログとかでいえば上位の人はみなさん個別マンションの評価がPV数の中心ですし。個別マンションの紹介へのクリックがその収益の源になっているわけです。

“管理の人”で個別マンションネタを扱わない私も、そのシステムにぶら下がっておこぼれを貰っているわけですが、”強気な相場見通し”とか”特定のマンションの買い推奨”を語るとデベ側でMRで講演してる評論家の人みたいにきっとデベからお金貰ってるんじゃないかと言われるとか、暴落だ廃墟だと語らないとなんか消費者のミカタじゃないみたいな風潮もちょっと変かなとね。

ブとロガーはモデルルームに訪問した全ての物件を取り上げるわけでもないので、おススメできる物件がとりあげられる率が高くなる。誰にもおすすめできないと思う物件を記事にしても仕方ないですからね・・・あんま誰も読みには来ない上に、叱られ発生では割に合わないですから。

コストアップを説明するのは変か?

”買う人がいるから上がる”ってのと、”土地代や建築費でコストアップだから安くはできない”ってのは案外結構表裏一体で同じことなのかもしれない。

容積率の決まった土地からそこに作れるファミリーマンションの戸数は同じで、雇えば商業などと比較すれば差別化の余地は小さいものです。

もともとマンションは利益率は大きくないわけで、土地売却のIR情報(売ったのが上場企業だと特別開示で数字のでているものも多い)で1戸いくら分で買ったなと分かると”収益化可能な坪単価の下限”は計算できてしまうところがあります。

原価率とか全く無関係に値段が決まっている iPhone なんかとは考えかたが違っていて、買い手がいるならどんどん途中で値段を上げてもいいけど、ここより下げたら赤字だよねって下限を下回ってどかっと放出はできない・・・潰れ掛けのデベのバーゲンセールを除く・・・ってのを語ると、デベのミカタ扱いされちゃうのもちょっと可愛そう。こんなマンションは坪150万だ!とか乱暴議論(どことは敢えてかきませんが)に、その値段は採算点切ってるから事業化がありえないというのは別に変ではない。

損して商売はできないから、”その値段でも買う人はいる”と考えて、その土地に入札参加するわけで、”買う人がいるから”と、”コストアップしてるから”というのは数年といった短い時間範囲で既にプロジェクト化されているものをみた場合には同じ状況を別の角度で語っているに過ぎないんじゃないかなと。

その昔、私も野村が新浦安で仕入れた土地の1種坪単価(出来上がりの容積率1坪あたりの土地の入札価格)から、プラウド新浦安の価格”下限”を掲示板に書き込んだら、そんな値段で売れるわけないやろ、お前はデベか?とかお叱りを受けたことがあります。

マンションブロガーの多くは、短期的な価格変動は”下げない”方向を予想しますが、すくなくとももう土地とか買っちゃってあそこねと分かる物件の話題が中心で、5年後10年後の相場を語る人ってあんまりいないようにも思うわけで、その主張の根拠は”損して売れない”から。

大手不動産会社も収益の中心は決して”マンション新築販売事業”ではない(IR情報が正しければまぁそう)のに、何千億も儲けていてひどいとか言われるのもちょっと気の毒な気もしないではないです。

都心は別状況?

さて、リーマンの前には相場はあがったけど、後はそんなに下がらなかった(うちのあたりはそうで、むしろ2-3年後の地震のほうはが効いたか)とか書いたら、何人もの都心3区あたり中心で相場を追っている論客の方から、いやそれは違う!とか・・・Twitter 怖い。

都心といえばのショーンさんのTweetを引用しておきますね。確かに、アベノミクス以来、特にコロナ以降の急激な上げは、周辺部より都心のほうが激しい。実需とずれた値動きなのだとすれば、”コロナ後”に下げ相場がくるなら、それは激しいのかもと危惧する気持ちはなるほどとは。直前に激しく上げてきた株をジャンピングキャッチした経験なら私にも結構あります。

レインズなどで、都心の区を選んでも中古の成約価格をみてみると、成約価格ー築年はかなり幅の狭い一様な減少カーブの上に乘っていて、どこにもバブル期に高く売られた新築が高かったことの痕跡はありません。いくらで新築時に売られたかが将来での取引価格に忖度・反映されるということは起こらないわけで、以下私も同感。(しかし手抜きなブログや)

最近なんか悲痛な相談が多い

スムログに最近くるブログでとりあげて欲しいの相談メールは、若くて共稼ぎですごく高収入の人なのに、マンションが高くてもう手がとてもでない!といった悲痛な叫びといった感じのものがとても多い。

駅直結などの価値をとても高く評価するなど、”通勤時間”1分の価値を大きく考える流れがあるような気がするというのは、私もこちらでコメントしています⇒ SUUMOのブロガー座談会コメント

しかし、駅距離1分で、坪単価4-5万円分の差に評価するということは、1年で250日×2分ですから8時間、25年で200時間を100万円以上余計にお金を払って買うということです。その人の自由時間1時間5千円。
いや運動不足だからもっと歩きなさいとか医者に叱られている私としては、通勤時間とか長めでもよくね?とか。はるぶー氏は、電車の中でTweet書いてることが多い(苦笑)。

管理組合からみた危惧

一方で、”管理組合の人”の私としては危惧があります。

元々坪単価>400万なんてマンションは都心専用、大規模修繕なら一時金方式でもたった100万で宜しいの?!でぽんと争うように払う住民の方(パークマンションなんか殆どそう)が買うものでした。
それが”都内の平均”が坪400とかなった時に、1-2万積立金徴収が上がったら払えなくなるような無理な背伸びはしていない人だけが買っていればいいのですが・・・

株の世界では、信用取引の保証金として現金ではなく保有する現物株を差入れ、それを担保に現物株と全く同じ銘柄を買うことを”二階建て”と言います。同じことを自分ちでやるもんでもない。自分と自分の家族が住んでいる自宅は、”投資商品”ではないわけなので、値上がりを仮定した”10倍界王拳”を撃つのではなく、どのように10年後のマンション相場が動いても困らない人生設計をするほうが大事じゃないかなと思うわけです。

お爺さんの戯言と思っていただいていいですが、無限にアタマのいい人はいたはずなのに、バブルも、リーマンショックも”事前に発生を正確に予測”できた人は誰もいなかったわけです。次はいつなのか、その時におこることが同じなのかどうか、あてられる人もきっといません。いやぁ・・・しかし我ながら爺いっぽいことを言うようになったなぁ・・・

後日追記

コメントがついていますが、確かに途中で値段が上げ方向改定になる(もとは住友くらいしかやらなかった)とかが常態化している地区がターゲットの人は、コストアップで説明できるわけないじゃん・・・かもしれませんね。

!! 重要 !!
 本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。

スムログ記事

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ABOUTこの記事をかいた人

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

6 件のコメント

  • 通りすがり より:

    結論としてマンションは投機対象になっていて危険だと思われているのですか?それとも投資対象としてまだまだ適格だと思われているのですか?
    ツイッターならともかくスムログでは

    >“管理の人”で個別マンションネタを扱わない私も、そのシステムにぶら下がっておこぼれを貰っているわけですが

    この立場でスムログでこの発言はいかがかと思います。
    私は管理の人なので相場を語る立場にないと思われるならば1円でもお金をもらったら相場について語るべきではないです。
    プロ意識の低さがひどすぎます。

    • はるぶー より:

      結論は最後に書いてあると思うのですが? ”誰にもわからない” からどうなっても大丈夫に
      考えればで、値上がり(あるいは自分の週収入UP)を仮定しての賭けはやめたら? です。
      お金は”通りすがり”さんからは貰ってないと思いますが・・・

  • かりん より:

    原価高騰ガーはマクロを語る時は正しいと思いますが、個別の物件で住友以外のデベのここ1〜2年の売り方までコストアップで説明しようとするから変なのだと思います。
    デベとしては高く売れるなら高く売るのは商売として当たり前ですが、それを嘆く消費者をコストアップが理由なのだから納得しろとねじ伏せようとすれば反発もされるでしょう。

    • はるぶー より:

      コストアップで主に説明されるのは、例えば私が住んでいる郊外など、もともと建築費の割合が高い物件です。容積率あたりの土地代+建物の建築費を加えて、せいぜい原価率を7割には押さえないと、適性な利益率が確保できません、それでは売れないとわかっているなら、最初っから事業化しなければいいわけですし、その土地を入札してまでも購入する必要がありません。これが”デベ側の論理”ですね。

      一方ある値段で”買い手がついて”売れるのであれば、その値段よりわざわざ値引いて売る必要はないわけですから、ブログにも書いてある通りで、積算で決まるのはあくまでも事業化可能な”下限”価格です。そんなデベ側の論理はしらん、その値段じゃ買わないという自由は無論検討者にはあるわけで、その自由をどうこういうつもりはないです。

      土地の入札情報などは、売った会社が上場企業などであれば、特別開示で公表されている例も多く(大型マンション敷地)そこから、ある程度この値段以下はあり得ないだろうなというのが長く計画段階からのマンションウオッチャーをしているとわかります。
      新築探訪系のブロガーさんは、そのあたりも考えて、どのあたりの値段で人気化するかどうかは読めるところはあるわけで、いやその値段は無理でしょ(その値段で売るならそもそも事業化しないという意味)と正直に感想を書いて ”反発”されるのも気の毒かなと思いました。それがこのブログの趣旨でもあります。

      売れるかどうかは、対象としている購入検討者全体から戸数分の同意を得られるかどうかなので、”個別の検討者”が”納得”するかどうかは、その当人に固有の問題で、ブログでとりあげるのになじむ話題ではないのではと。高かったかどうかは、結果として売れ残るかどうかで決まるわけで、私が買えなくても”安い”物件もあるし、私が買えても”高い”物件もあると思うわけです。上げ相場の時はいつか相場がおいついてきますからかなりちゃれんじした価格に設定して売れるまで待つ手があります。下げ相場ではそうはいきませんが。

      私は滅多に市況ネタを扱うことはありませんが、”ねじ伏せる”ような書き込みをしているブロガーさんがいるでしょうか? 

      ーーーーーーーー

      ただ、書かれている通り、途中で値上げしましたというのは、”元々の価格”で採算点なわけですからちょっとどうかな?とは私も思いますが

  • とくめいさん より:

    >駅距離1分で、坪単価4-5万円分の差に評価するということは、1年で250日×2分ですから8時間、25年で200時間を100万円以上余計にお金を払って買うということです。その人の自由時間1時間5千円。

    いつか売却する際にも駅距離1分の価値は維持されるのですから100万円丸々損(未回収)になるわけではないという考え方はどうでしょうか。
    あと4人家族なら200時間でなく800時間として1時間1,250千円という考え方も。

    • はるぶー より:

      その考え方もあります。夫婦共稼ぎで小さなこともとかいたら1分は貴重ということで、実際に共稼ぎの購入社割合も高まるとどうじに
      駅直結などを非常に高く評価する流れがあるよねは、ブログで引用しているSUUMOのブロガー座談会でも私コメントしています。これが一時的なものなのか、りもートワークなどの流れで揺り戻しがあるのかは興味のあるところです。 もともと通勤手当の完全支給。非課税化などで、日本は遠くから通勤してくる不利があまりなかったことも確かで、やれソウルなど、他のアジアの大都市に比較して、都心ー郊外の価格差が小さかったような印象も私はもっているので、案外固定化した流れかもなとも。

      なお、私は”いつか売却する”はあんまり考えていません。各種調査でも永住志向2/3というデータもありますね。
      現実問題として殆どのマンションの1年での人の入れ替わり率は、投資目的の人が群れるとうな一部のマンションを除いては、特にファミリー用であれば年に2-3%程度にすぎません。うちは実際に13年で2割ほどしか入れ替わっていないです。

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