ネットにはマンションの買い替え情報が溢れている。新築・中古マンションの価格が高騰し続けてきたこともあり、マンションの買い替えが話題になってきた。その先鞭をつけたのは沖 有人氏が2012年に上梓した「マンションは10年で買い替えなさい」なのか……。
ネットではマンションを買い替えた人の情報は数多く発信される一方で、買い替えなかった人の情報はあまり発信されない。だから世の中、買い替える人が増えたような状況を思い浮かべてしまう。実際のところはどうなのか。
目次
読者からの質問:マンションは買い替えが前提なのか?
誰に答えて欲しいですか?
家族構成も決まり、子育てや老後のことも考えてマンションか戸建て購入を検討しています。
- 全員
質問は、マンションは買い替えが前提なのか?です。
地域的に東京ほど土地代が高くないので、戸建ても検討に入ります。
一方、私たちにとって希望するエリアに新築マンションもあり、迷ってます。
私たち夫婦の年齢を考えると、40-45年くらいは生きると考えてます。
マンションで迷ってるのは、老後に築40年のマンションで管理は大丈夫だろうか?買い替えするのか?です。
マンション管理は個別の問題だと思いますので、40前後でマンション購入派の方は、終の住処として買っているか、買い替え前提なのか?です。
買い替えの場合、東京ほど新築マンションは少ないので、次に希望エリアにマンションがあるかわからないのも不安です(買い替え費用をどうしてるかも知りたいです)。
次の資料を手掛かりとして、順に答えていこう。
- 国交省「平成30年度マンション総合調査結果」2019年4月26日
全国の管理組合1,688件(回収率40.2%)、区分所有者3,211件(回収率38.2%)。 - リクルート「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査~シニアカップル(世帯主年齢50歳以上の夫婦のみ世帯)版」2020年8月20日
首都圏新築分譲マンションを2019年に契約したシニアカップル世帯(世帯主年齢が50歳以上の夫婦のみ世帯)256件。
築40年のマンション、管理は大丈夫か
国交省の資料によれば、マンションの老朽化問題(建て替えか修繕か)に対して具体的な方向性が出た管理組合は約2割とされている。マンションの老朽化問題についての対策の議論を行い、建替え等又は修繕・改修の方向性が出た管理組合は21.9%となっている。一方、議論は行ったが方向性が出ていない管理組合は16.6%、議論を行っていない管理組合の割合は56.3%であった。
(国交省「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」2019年4月、P12)
マンションの完成年次別にもう少し詳しく見てみよう。
マンションの老朽化問題を議論したことがない組合は、完成年次が古いほど減少するものの、築39年以上では2割を超えている(次図)。
※国交省「管理組合向け調査の結果」のうち「老朽化問題についての対策の議論の有無(その1)」(P316)データを元にマン点作成
さらに、マンションの老朽化問題を議論したことがある組合について、議論の方向性を可視化したのが次図。
築39年以上のマンションでは、「議論はしたが、具体的な検討をするに至っていない」組合は3割を超えている。
※国交省「管理組合向け調査の結果」のうち「老朽化問題についての議論の方向性(その1)」(P319)データを元にマン点作成
マンションの老朽化問題を議論したことがない組合は築39年以上では2割を超え、議論をしたことがある組合でも、具体的な検討をするに至っていない組合は3割を超えている。これらのことから、「築40年のマンションの管理は大丈夫なのか」については、大丈夫なマンションもあれば、そうでないマンションもある、というのが答え。
40歳前後でマンション購入、終の住処として買っているか
国交省の資料にも、リクルートの資料にも、ズバリのデータはないが、参考になりそうなのが、国交省の「区分所有者向け調査の結果(現在の永住意識)」に係るデータ。世帯主の年代別に「現在の永住意識」が掲載されたデータを可視化したのが次図。年齢が高くなるほど、「永住するつもりである」と答えている人の割合が増加している。30・40歳代の約半数が「永住するつもりである」と答えている。
この数字はあくまでも「現在の永住意識」なので、マンションを購入するときには「いずれは住み替えるつもりである」としていた人が、その後「永住するつもりである」と心変わりした人も含まれていることに留意する必要がある。
いずれにしても、購入時の判断はともかく、現在の心境として、30・40歳代の約半数の世帯主は購入したマンションを終の棲家と考えている。
※国交省「区分所有者向け調査の結果」のうち「現在の永住意識(その2)」(P351)データを元にマン点作成
シニアは買い替え費用をどうしているのか
リクルートの資料に、文章とともに自己資金比率の図表が掲載されている。
- 「全額キャッシュ」が51%で最も多く、自己資金比率の平均は69% 。契約者全体の平均(19.1%)と比べて大幅に高い。
- 世帯主年齢別にみると、年齢が高いほど、自己資金比率の平均も高い。
リクルートに掲載されている図を分かりやすく、マン点流に描き直したのが次図。
シニアカップル世帯(世帯主の年齢が50歳以上の夫婦)の自己資金比率は、全額キャッシュの割合がダントツで、50歳代20%、60歳代67%。次に多いのは「自己資本比率50~100%未満」で、50・60歳代とも15%。
つまり、マンションを買い替えるシニアの多くは、全額キャッシュということ。50・60歳代になって、マンションを買い替えようという人であれば、現居を売って得た現金にこれまでの蓄えをもって対応しているということなのであろう。
※リクルート「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査~シニアカップル(世帯主年齢50歳以上の夫婦のみ世帯)版」(P15)データを元にマン点作成
まとめ
購入時の判断はともかく、現在の心境として、30・40歳代の約半数の世帯主は購入したマンションを終の棲家と考えている(国交省の全国調査より)。買い替えるとしても、現在のシニアの多くは、全額キャッシュで対応している(リクルートの首都圏調査より)。
以上、質問者の参考になれば幸いである。
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