こんな折り込みチラシを見たことはないだろうか?
「月々のお支払い 管理費等すべて含んで9万円台」
当初月々返済額79,698円+管理費7,967円+修繕積立金3,730円⇒91,395円(当初5年間・予定)
修繕積立金が管理費の半分にも満たない。
【もくじ】
◇ なぜ、修繕積立金は安いのか?
◇ 修繕積立金の実態
◇ 「東京都優良マンション」として満たすべき修繕積立金の水準
◇ マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国交省)
◇ 修繕積立金の妥当性を簡単にチェックする方法
◇ あわせて読みたい
◇ おまけ
なぜ、修繕積立金は安いのか?
管理費を低く設定してしまうと、管理を受託するであろうデベロッパーの系列会社の売り上げ減につながるが、修繕積立金のほうは足りていようがなかろうが、系列会社の売り上げに関係ないからだ。むしろ修繕積立金を抑えることで、消費者に月々これくらいであればやっていけそうだとう幻想を抱かせる販促効果が得られる。
修繕積立金は安ければ良いというものではない。将来、修繕工事が必要になった時に積立金が不足して困るのはマンション購入者自身だからだ。
本来的には、20年〜30年程度の長期修繕計画をシッカリ策定し、将来必要となる工事費の累計額から逆算して月々の積立額を決めるべきだ。
また、段階的に修繕積立金を上昇させるから、新築時の積立金は安い、という主張も疑問だ。
段階的に上昇していく修繕積立金の支払いに耐えられない住人が出てきたらどうなるか。
国交省は「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(詳細後述)のなかで、次のように「段階増額積立方式」よりも「均等積立方式」のほうが望ましいとしている。
- 「段階増額積立方式」は、計画どおりに増額しようとしても、区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例が生じており、将来にわたり安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、「均等積立方式」が望ましい方式といえます。
- 新築マンションの場合は、購入者の当初の月額負担を軽減するため、「段階増額積立方式」を採用している場合がほとんどです(当初に修繕積立基金を徴収している場合も多くなっています)。
修繕積立金の実態
国土交通省が2014年4月23日に公表した「平成25年度マンション総合調査結果」によれば、駐車場使用料や専用使用料を除いた「現在の修繕積立金の額/月/m2当たり」は次図のとおり。「100円超〜150円以下」が21.6%(不明を除くと32.4%)と最も高く、次いで「50円超〜100円以下」が19.5%(不明を除くと29.2%)となっている。
また、完成年次が古くなるほど高くなる傾向が確認できる。
これは、分譲時に安く設定された修繕積立金が、のちに見直しで値上げされていることを意味している。
※詳しくは、「「マンション総合調査結果報告書」にみるスラム化の兆候」ご参照。
では、いったい修繕積立金はいくらぐらいであればいいのか?
「東京都優良マンション」として満たすべき修繕積立金の水準
「東京都優良マンション登録表示制度」の「認定基準」のなかに、登録するために満たすべき条件として、新築と中古のマンションの修繕積立金の額が示されている(次図)。新築55m2以上であれば月額6,000円以上、中古17年以上・55m2以上であれば1万円以上などとされている。
マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国交省)
国土交通省が2011年4月18日に公表した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によれば、新築マンションの修繕積立金の額は次表を目安として定めることとしている。マンションの分譲段階で分譲事業者設定した修繕積立金の当初月額が著しく低く設定され、必要な修繕積立金が十分に積み立てられず、修繕工事費が不足するといったことがガイドラインが公表された背景にある。
上表を図化するとこんな感じ↓
「国交省ガイドライン、販促本位の修繕費にダメ出し」より
修繕積立金の妥当性を簡単にチェックする方法
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」に基づいて、修繕積立金の額(目安)を簡単に計算できるアプリ『修繕積立金の妥当性チェック・ツール』(無料)を作ってみた。あなたが選ぼうとしているマンションの修繕積立金を簡単にチェックすることができる。
あわせて読みたい
― 修繕積立金、業者都合の「段階増額積立方式」おまけ
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