すっかり新年度ですね。今年が四分の一終わったのが恐ろしいですが、心を入れ替えていまのところスムログの自己目標は達成中です。無惨様の記事で一部の方に誤解を生んでいるようですが、スムログには統一的な強制ノルマは存在せず、あくまで自発的に決めた目標を絶叫しているだけです。
さて、私のTwitterプロフィールには「タワー契約3回(各回新築リノベーションあり)」、さらにスムログプロフィールには次のくだりがあります。
自分の新築リノベーション経験を振り返りつつ、主に湾岸を中心に常に変化し続ける街の情報などを追うことで、次のリノベーションへのヒントを得ようという目論みです。
これまでお便り返しなど個別ばかりで体系だって新築リノベーションについて書いていませんでしたが、新年度ということで思うところあり新シリーズ”My Renovation”開始します。
リフォームとリノベーションの違い
最近、年度末の入居開始ピークだったこともあり、Twitterで新築リフォームが話題になっていますね。本稿はリノベーションが対象なので、そもそもリフォームとリノベーションの違いから。それぞれの用語の明確な定義はない(後述)のですが、歴史的経緯から中古住宅に対し行なうことが多く、一般論としては次あたりがわかりやすいでしょうか。そもそも英語でリフォーム(reform)が意味するのは、「制度や組織の改革・改善」です。
ですが、日本では「古くなった家の改装や改修、修繕」という意味で広まっています。
和製英語のひとつとして捉えることができるでしょう。
一方、リノベーション(renovation)が意味するのは、「修復・再生」。
つまり、日本で「リフォーム」とよばれている言葉の意味は、本来「リノベーション」が内包していたものであるといえます。
リノベーションは、リフォーム以上に「既存の施設に新たな価値を与える」という意味合いが強く、比較的大規模な改装や修復の際に用いられる場合が多いのです。
リフォーム/リノベーションの記述一般にいえるのですが、いずれも新築を対象にしていませんね。説明の図でも、ほぼ新築状態をベースラインにしています。
素敵な新築マンションをリフォームしている方が見たら怒りそうです。そこであらためて定義らしきものを探しました。
【第一話】読めばリノベがまるわかり! ZoumoくんとBuuちゃん (RENOVATITON EXPO JAPAN 2018)
「リフォーム=新築時の目論見に近づくよう復元すること」
「リノベーション=新築時の目論見とは違う次元に改修すること」
と国土交通省が定義したことになっている。けれど、じつは法律上明確な規定はないんだゾウ。
そうなんです。この記述はやたら書かれており、その根拠を探したのですが、リンクやPDFは見当たりませんでした(ご存じの方は教えてください)。とはいえ、官僚の方がせっかく考えた(らしい)ので、「新築時」を「購入時」と捉えれば、得失をあわせ次のように考えて差し支えなさそうです。
- 新築リフォーム:新築販売時の間取りそのものは維持したうえで、壁紙・エコカラットや設備などを追加・変更する
〇:コストがデベロッパー標準オプション(あれば)より安い、オプションにないものも自由に施工できる
×:間取りの変更など大掛かりなものはできない(リフォームの定義を逸脱する)
- 新築リノベーション:躯体に影響のない範囲で、間取り変更含め新築販売時にない価値を提供する
〇:スケルトンインフィル(死語?)であれば場合によっては水回りまで含む変更が可能
×:コストが一般に高くなり設計・施工期間も長くなりがち、結果として入居時期にも影響がある
なぜ新築リノベーション?
私がなぜあえて新築リノベーションするのか、ひとことでいうとQoL(Quality of Life)の向上のために尽きます。QCDでいうと、ややコスト(C)、入居時期(D)に影響が出るものの、それ以上の質(Q)を期待しています。マンション、とくにタワーで顕著ですが、長屋と揶揄されるとおり同じ間取りを垂直方向につなげ、水平方向で方角や間取りのバリエーションを出すことにより、多くの人に受け入れられるようにしています。眺望・方角・間取りが完全に好みに一致していればよいのですが、100%はないのがマンションですね。私の場合、特定の条件にこだわりがあり住戸を選んだのですが、正直間取りはよくなかったです。通常は自分の選択なので受け入れて住みはじめるものですが、タワーの場合は入居までの期間が長いためあれこれ考えてしまいます。
当時、浜松町に住んでいたので、できたばかりのシオサイト(死語)によく行っていました。当時はパナソニックに統合される前の松下電工のショールームで、建築家に相談できるコーナーをやっていました。図面を持ち込んで1時間枠で予約すると、無料で建築家が相談に乗ってくれて、ラフなスケッチも書いてくれるというものです。松下電工としては、住宅設備はもちろん当時からキュビオスなどのシステム家具も手掛けており、集客とビジネスにつながればという意図と思われます。残念ながら現在はやっていないようです。
たまたまご相談した建築家の方が、直接の師匠のお名前は避けますが、フランク・ロイド・ライト→アントニン・レーモンド→吉村順三という住宅設計の本流の流れをくむ方でした。図面をお見せしながら気になっている点を伝えるとずばり「これは…20世紀の住宅ですね(超意訳)」と言われたのが、いまから思うと新築リノベーションという禁断の世界に入ったきっかけでした。最新のタワーマンションのはずが、住宅設計のプロから見るとあり得なかったというオチですね。もちろん、これはあくまできっかけで、心の奥に引っかかっていたことが一気に白日の下にさらされたということだといまでは思います。そして、一度経験するとまた実施したくなるという麻薬のような存在でもあります。原理的に新築マンションを買わないとできないという抑止力があってよかったです(笑)。
建築家リノベーションという選択肢
途中まで書きかけてこのあたりで筆が止まってたところで、いつもながらTwitterで刺激をいただけるありがたいやりとりが。山田さんの拘りからすると、業者さんじゃ物足りないかも。建築士さんに頼まれた方がいい気がしました。
— いとはん (@catmonky007) April 3, 2022
いとはんさんのほうがよほど詳しそうですが、首を突っ込ませていただきました。
私も建築士さんに相談したんですけど、設計費100万円となると低予算では難しかったですが予算に余裕さえあれば建築士さんにお願いすべきだなぁと思いました。素材、照明、デザイン、構造、空間に対する知識レベルがやはり施工会社とは段違いなので。
— いとはん (@catmonky007) April 3, 2022
そもそも、よほど調べるか、私のように偶然導かれない限り、建築士さんに頼もうと思わないですよね。いろいろ探されたスカイ山田さんも、そもそも発想になかったと。
ピンキリですがある程度デザインできるとこだと最低100万円でした。もっと安い人もいますけどその差はケチる必要ないかなぁと。施工事例から地道に探すかんじです。ただ提案される素材が良質なものが多くて、そっちでどんどん予算が上がりそうな印象はありました😅
— いとはん (@catmonky007) April 3, 2022
次の記事は、依頼先を5パターンに類型化していて比較的イメージしやすいと感じます。
リフォーム会社は5のタイプに分かれる!ベストな会社の選び方 (リノベーションスープさんより引用)
リフォーム会社は、大きく5つの系統に分けることができます。
〈1〉大手ハウスメーカー系のリフォーム会社
〈2〉独立系のリフォーム会社
〈3〉不動産系のリフォーム会社
〈4〉工務店系のリフォーム会社
〈5〉設計事務所系のリフォーム会社
(中略)
「安心感が欲しい」なら、大手系のリフォーム会社
「細部までこだわりたい」なら、独立系のリフォーム会社
「物件探しからスタートしたい」なら、不動産系のリフォーム会社
「施工力で決めたい」なら、工務店系のリフォーム会社
「びっくりするような提案が欲しい」なら、設計事務所系のリフォーム会社
例によって全般に新築を対象としておらず、たとえば〈1〉の代表であるスミフ「新築そっくりさん」なんて名前からしてですし、〈3〉も物件入手からなので基本的に中古が対象ですね。それ以外は新築リフォーム/新築リノベーションでも参考になると思います。
もちろんビジネスとして成り立っている以上はそれぞれに得失があるので、メリットを確認しつつデメリットはしっかり押さえるべきところです。私が経験した(というか3回ともでほかにやったことがない)建築家リノベーションはずばり〈5〉設計事務所系に属します。記事の主対象がリフォームなので「びっくりするような提案」はちょっと違う気もしますが、素人ではイメージできない、QoL向上のための提案は確かにいただけます。そもそも、上記で定義した「リフォーム」であれば、建築家の方に相談する余地はあまりないですよね。
いっぽう、建築家リノベーションでは相性は非常に需要で、実は「建築家に気軽に相談!」は条件付きで2回目もお願いできるため別の建築家さんに相談してみましたが、いまひとつピンとこず。もちろんその方も継続的に相談には乗られているので、私にはたまたま合わなかったのだと思います。別稿で書きますが、その後やりとりがあり、最初にご相談した建築家の方にお願いすることになりました。
設計監理料について
すでに初回で4千文字を超え誰も読まなくなりそうなのでポイントだけ。建築家リノベーションを実施する場合、施工は外部に委託するため、フィーとしては設計監理料になります。設計料とは?料金の相場や業務内容、告示、見積事例(住宅等)を紹介 (長沼アーキテクツ)
私の場合は定率(書いてしまうと10%)で実施いただきましたが、お給料をもらっている方が普通に考えればわかるとおり、ビジネス的にはあまり(ほとんど?)儲からないと思います。コストがかさむのは、いとはんさんも書かれているとおり素材・施工系がコストがかさむ主要因となります。スムログの下書きとして書くと、建築設計監理費については国交省の告示があるものの、リフォーム・リノベーションは対象外です。https://t.co/fmOYQOVVRl
— タビー (@tubby_TW) April 3, 2022
私の場合は定率でやっていただきましたがこれだと規模小さいと下手すると損なので、いとはんさんのような設計料方式が一般的かもしれませんね。
高くなりがちなコストに加え、外部に依頼する施工などのポイントに注意が必要です。はるぶーさんの管理ネタ同様、あまりニーズはないシリーズになるかもしれませんが、ご興味のポイントなどあれば反映していきます。
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お便り返し【タビー】 バルコニー側洋室の拡張について
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お便り返し【タビー】スライディングウォールの是非
高級物件ほど天然石の床?大理石や御影石の居住性ってどうなの?
タビー様
リフォームとリノベーションの違い、リフォーム業者のカテゴリーについて、私も実感している所です。
リフォーム(リノベーション)を検討して2年近く経ちますが、最初は大手リフォーム会社→プラットホーム運営会社からの紹介(中堅・設計系を5社)→建築士へと移行しました。
大手リフォーム会社、中堅、設計系のリフォーム会社も、”その会社の中の人”が図面を書いているとと見受けられました。中の人=CADやパースやさんです。私が会った人は、建築士のように確固たる信念がなく、施主(素人)の意見や希望をを図面に落とし込んでいるだけのように感じました。
私は、結果として建築士に依頼する事にしました。建築士ならではの意見や信念もあり、お勧めしない事やダメな事ははっきりと言ってくるし、施工のコスト管理や素材の選別、代案等もしてくれます。
特に間取り変更に伴う場合は、建築士のように”絵が描ける人”でないとなかなか難しいです。
スムログメンバーでは、タビーさんのような記事を書かれる方は稀ではありますが、新築マンションより中古マンションを購入する人が多い、昨今では貴重な記事だと思います。引き続き、アップをお願いします。
杏さん、コメントありがとうございます。
記事中に書いたとおり私は一足飛びに建築士さんに行きあたったのですが、検討の結果の出会いおめでとうございます。
まさに、だめなことやおすすめしないことをはっきり伝えていただけるのは建築士さんならではと感じていますのでシリーズでも意識します!
励ましのメッセージ恐縮です。新築MRいけてないだけという話もありますが、シリーズ化の力をいただきました。