「モモレジのちょっと得するマンション選び」第13回です。
第10~12回にかけて「階による歪み」について述べてきましたが、今回からは「方角による歪み」について述べて行きます。
⇒モモレジのちょっと得するマンション選び第10回「階による歪み①」
⇒モモレジのちょっと得するマンション選び第11回「階による歪み②」
⇒モモレジのちょっと得するマンション選び第12回「階による歪みEx」
※画像に意味はありません。画像がないと寂しいので掲載しております。
直近のパークコート青山ザ・タワーの状況です。
まだ3階部分までしか立ち上がっていませんが、その丸みを帯びた外観が既に異彩を放っていますね。
たまらん・・・。
さて、「方角による歪み」と言うと、全方位に住戸があるようなタワマンにおける「南向きと東向き(及び西向き)と北向き」との単価差なんかをイメージする方が少なくないと思うのですが、タワマンの場合は単なる日照面の差以外に眺望による差(何が見えるか)も価格に大きな影響があり、その「あるべき妥当な単価差」を一般的に論じるのは簡単ではありません。
明確な答えがないからこそ「歪み」が生じやすいとは思いますし、特定の物件の価格表においてどの方角やどの階数に「歪み」的なものが存在しているのかを指摘するのは何ら難しいことではないのですが(タワマンによくあるのは北向きで日照はほぼないけど眺望面を考えたら割安感があるとかですね。最近はタワマン北向きの中古市場での価格維持率の高さが広く知られてしまったので微妙ですが、一昔前までであればタワマンの北向きを買っておけば誰でも儲かるような状況でした)、このちょっと得するマンション選びでこれまで語っているようなできるだけ「一般論」に近い形となるとその点を論じるのは少々難しいですね。
という長々とした前置きをしつつ(笑)、ここでは主に中低層マンションで見られるケースを取り上げてみようと思います。
中低層マンションにおいて「方角による歪み」を見極めるためには、「南向き住戸率」の大小が「肝」、さらに別の言い方をすると敷地形状が大きな「ポイント」になります。
私の本ブログ「マンションの間取りや価格を言いたい放題!」では常々敷地形状やランドプランについて言及しているので読者の方であればよくお分かりいただいているのではないかと思いますが、マンションの「間取りの良し悪し」を決めるのは「敷地形状」と言っても過言ではありません。
そして、その間取りの要素の中でも敷地形状によって最も大きな影響を受けるのは「南向き住戸か否か」、つまり、「南向き住戸率」であるということがマンションを探し始めてまもない方でも比較的実感しやすいことなのではないかと思います。
南北に細長い敷地形状の土地にはどうやったって南向き住戸は多く出来ませんよね???そういうことです。
で、今回の主眼はその「南向き住戸率」の大小が価格面にどのような影響、どのような歪みを発生させるかになります。
早速、以下のケースをご覧下さい。
【Aマンション】※全戸南向き
A1タイプ72㎡4,580万円(12階)
A1タイプ72㎡4,280万円(7階)
A1タイプ72㎡3,980万円(2階)
【Bマンション】※南向き住戸と西向き住戸の比率はおおよそ2:1、B1タイプは南向き、B2タイプは西向き
B1タイプ72㎡4,580万円(12階)
B1タイプ72㎡4,080万円(2階)
B2タイプ72㎡3,880万円(2階)
※AマンションとBマンションは大差のない立地条件と仮定しています。現実的にはマンションは言うまでもなく「一物一価」ですので同じ階・同じ向きの中住戸とは言え全く同じ条件とは言えないのですが、簡略化するために全く同じ条件とお考え下さい。
さて、この価格設定どう思いますか???
違和感ありますか???
A1タイプの2階は南向きで3,980万円なのに、B1タイプの2階は同じ南向きでも4,080万円という水準で100万円の差が生じています。
これは実在するマンションの数字を用いているわけではありませんが、私の経験上、販売時期がモロ被りとなっているケースを除くとこういった価格差が生じているケースというのは何ら珍しくはありません。
このような差が生じる理由はお分かりでしょうか???
その最大の要因となるのが「南向き住戸率」の違いに他なりません。
Aマンションは全戸南向きなので他に特別な状況がないと仮定すると「南向きの低層階」が物件内で最も条件の悪いお部屋となるのに対して、Bマンションは全戸南向きでなく3分の1ぐらいは西向きなので最も条件の悪い住戸が西向きの低層階となるのがこの歪みの肝です。
ここで、「ちょっと得するマンション選び第3回」で書いたことを思い出してみて下さい。
第3回より引用↓
「一生住むかもしれないマイホームだし、月々数千円~1万円程度なら当初の予算より上げたとしても頑張っていい方を買おうよ!」、もしくは、両親に家を検討していることを伝えているようなケースであれば、「それなら少しだけだが援助するのでどうせならいい部屋(希望する部屋)を買いなさい!」となる方が少なくないわけで、ここでのポイントはそのようになる人の「割合」は母集団が多かろうと少なかろうと「関係ない」、つまり、その物件を検討している方のうち「一定の割合の方」がそういう風な状況になっている可能性が高いということです。
とすると、デベは価格をどのように設定する必要があるでしょうか???
「一定数の条件の良い住戸の価格を強気に設定する」と同時に「マンション内で条件の劣る部屋の価格を控えめにする」のが一般的なのです。
新築時は基本的に「選びたい放題」という状況である以上、マンション内で条件の劣る部屋は「ある程度価格で勝負せざるを得ない状況」が生じるというわけです。
↓
第三回引用ここまで。
思い出していただけましたか???
そのような事情があるため、全戸南向きだろうが、西向きがあろうが、多かれ少なかれ一部住戸はある程度「価格で勝負」せざるを得ない状況が生じ、全戸南向きのマンションにおいては南向きなのに低層階は少し弱めの値付けがなされていることが少なくないというわけです。
Bマンションにおいては3分の1が西向きで構成されているので低層階の南向きというのは検討者にとって条件が悪い住戸に映らないのです。
同時期にAマンションと Bマンションが分譲されている場合にはこのような検討者におかしいのがバレてしまうような価格設定になることはまずありえませんが、販売時期がずれている場合にはいくらネット社会とは言えそこまでの細かな住戸条件を加味した上で価格を把握分析することは簡単ではなく、物件全体の価格の下限や平均坪単価だけを見て(平均坪単価も南向き住戸率の低いBマンションの方が安くなることも少なくない)、Bマンションの方が安いとミスリードされてしまうこともよくあることです。
言うまでもなくマンションは「一物一価」なので上記で挙げたAマンションとBマンションのケースのように明確に割高・割安が明らかになるケースというのは少ないわけですが、全く同じと思える条件の住戸がなくとも「住戸単位で比較する」ことはとても大切ですね。
間取りの良し悪しも含め住戸単位で価格を比べることで初めてその物件が割安か割高かが見えてくるはずです。マンションは5%、いや2~3%でも安く買えれば実需としては大成功と言える水準だと思いますし、2~3%の差なんて同じマンション内でも簡単に発生する差ですので、「マンション単位」の分析以上に「住戸単位」での分析が重要と言っても過言ではないと思います。
売れ行きが悪く人気がない(評判が良くない)と思われるマンションでも自分やご家族的に少なからず気に入っている場合には住戸次第で十分に検討余地があると思いますし、一般的に人気がない物件で値引きなどがなされたケースでは非常に良い買い物になることも少なくありません(ひとたび完売してしまい5年も10年も経てば、新築時人気があったかなかったかの影響なんてたかが知れています。時代にもよりますが、値引きは1~2割に及ぶこともありますので、そのインパクトに勝るものはほぼありません)。
「木」ばかり見ているのもむろん危険ですが、「森を見て木を見ず」は価格(資産価値)に関して言うとかなり重大な影響を及ぼすことも少なくないので、そういった点を重視する方は今回述べたような視点を大切にすると良いのではないかと思います。
こちらもどーぞ。
間取りだけでなく、価格の傾向や価格の歪みを記述し、累計1,950棟4,300室超。
実需はもちろんのこと、投資も含め数多くの物件を購入しているからこその視点・分析がたくさん。
⇒マンションの間取りや価格を言いたい放題!