第324回 「モデルルームと実物とのギャップに失望しないために」

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このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

マンション販売は、工事中に販売を始める、「青田売り」が一般的です。

その場合、購入者は、実物を見ないで決めることになりますが、そのことが完成後の「こんなはずではなかった」という失望を生む原因になることがあります。

注意すべき点は、どこでしょうか。気持ちよく入居の日を迎えるためのポイントをお話ししましょう。

 

 分譲業者の魔法を知る

事業者としては、早く販売のメドを立ててしまいたいので、青田売りするのが普通です。完成してから売るのは、モデルルームの建設予算が捻出しにくい小型マンションの場合くらいです。

 

新築マンションは工事中にモデルルームだけで契約してもらうというのが業界の慣習になりました。大きなトラブルもなかったことから、業界全体が「青田売り」を常態化させて来たのです。

 

しかし、モデルルームと、購入した部屋があまりにも違うという印象が購入者をしばしば失望させます。購入する部屋とモデルルームが、たまたま同じタイプであればよいのですが、そうでないことが多いので、想像と違ったという買い手の失望感は、どうしても生まれてしまうようです。

 

例えば、部屋の真ん中に天井から垂れ下がった大梁(おおばり)。その圧迫感は尋常ではありません。「こんな部屋と思わなかった」と、ショックを隠せない購入者も現れます。 また、「個室がこんなに狭いとは思わなかった。本当に〇畳あるのか」などの感想も漏れ聞きます。

 

モデルルームというのは、最近では原型(標準仕様)が分からないような造りとなっているケースも多いようです。間仕切りを変更し、仕上げ材をグレードの高いものに変え、設備もオプションを加えて豪華に見せています。更には、家具やインテリアによる演出も加えて感動的な姿で登場します。

 

商品のデコレーションは商売の常道です。とはいえ、モデルルームには、見学者を錯覚させる魔法のような力が備わっているようです。

化粧を取ったらまるで別人だったというくらいに、厚化粧した役者のようなもの、または、昔の見合い写真のようなもの。それがモデルルームだと思った方がいいのかもしれません。

 

モデルルームには、「このシールはオプション品です」、「家具は販売価格には含まれません」などと、注意を促すプレートがどこかに掲示されています。

しかし、買い手は多くが素人。不慣れです。本当の姿(標準仕様)はこちらと言われても、グレードアップした方だけを見せられたら、それが記憶されてしまいます。

 

完成した購入住戸を見て、厚化粧をしていない素(す)の部屋に、詐欺だと怒りたくなるのも理解できます。しかし、「想像していたものと違う」などとクレームをつけても、売り手は涼しい顔です。

 

天井から垂れ下がった大梁の問題にしても、図面の上にきちんと表示してあるからです。重要事項説明書にも、「図面をよく確認してからお申込み下さい」と記載してあります。よく確認しなかった買い手が悪いということになってしまうのです。

 

 失望しないための次善の策は?

図面とモデルルームを睨みながら、自分の部屋はどうなるだろう。ここからオプション品や家具をはぎ取ったらどうなるだろう。これを想像することに慣れるほかに、完成後の失望感をなくす道はないのです。

 

そこで、おススメなのが、家具も何も置いていない部屋の見学。当然、別のマンションになりますが、完成済みの販売物件を探して見学に行くのです。

 

同じ売主に該当するものがなければ、別のマンションを見に行きましょう。売主さんには購入する気がないので申し訳ない気が咎めるかもしれませんが、きちんと理由を話すか、勉強のためと断れば見せてくれるはずです。

 

大抵、完成済みマンションで販売を継続中の物件であれば、本体内にモデルルームが用意されているはずです。同時期に棟外のモデルルームが残っていれば、化粧した部屋と化粧していない部屋の差がはっきりと分かることでしょう。

 

 注意したいのは天井高

勉強のために実物を見るとき、漫然と見学するのではなく、見るべきポイントを念頭に置いておく方が良いでしょう。

 

筆者が提唱するのは、「天井高」と「廊下側の個室の明るさ」のチェックです。

 

先ず天井高ですが、例外なく低い箇所があります。配管スペースが設けられるからですが、気にしなければならないのは「大梁(おおばり)の位置とその部分の高さです。業界内では「梁下寸法」と言いますが、ここを見落として完成後にショックを受けることが多いので、是非とも確認しておきたものです。

 

設計家の某氏が「ギロチンマンション」と表現していました。個室の片隅であれば問題はないのですが、部屋の真ん中付近を走っている例があるのです。大きな梁が垂れ下がり、圧迫感は半端ではありません。

 

柱と柱をつないでいる点線の位置に目を凝らし、大梁の位置を確認しましょう。それを、見学時に発見出来たら上出来ですが、その出会いは確率的に低いので、大梁の位置はどこかと常に意識しておくことも大事です。

 

 廊下側の個室の暗さもチェックしたい

廊下側の個室の暗さも、体感しておきたいものです。中廊下式のタワーマンションでは、共用廊下が「内廊下と呼ぶ室内型」のため、廊下側の個室は真っ暗な「行灯部屋」に設計されていますが、共用廊下が開放された一般マンションの場合は、廊下に面した個室に採光窓を設けるのが定石です。

 

ここに問題のあるマンションが実は多いのです。エレベーターホールと外階段の前の住戸が典型で、エレベーターと階段室が外光の何割かを遮っているからです。

 

モデルルームは、室内をインテリアで飾り、着飾った美女のように見せていますが、照明を消すと薄暗い部屋になり下がってしまうのが普通です。

 

その明るさの程度は、物件によって差があります。ひどいものは日中でも照明なしでは過ごせないのです。実物を見て体感しておくことが必要です。

 

 

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました・・・・・次は10日後の予定です。

 

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